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プレイヤー目線で暗黙のWin-Winを。中国でゲームアカウントの売買サービスを生業とする「PANZHI」を取材[CJ2024]
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印刷2024/07/28 19:27

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プレイヤー目線で暗黙のWin-Winを。中国でゲームアカウントの売買サービスを生業とする「PANZHI」を取材[CJ2024]

 中国のゲームショウ「ChinaJoy 2024」(CJ2024)で,創業6周年を迎えた「PANZHI Game Service」を取材した。

 同社が手がけるのは,オンラインゲームのプレイデータなど,個々人の情報がひも付けられた「ゲームアカウントの売買プラットフォーム」である。より正しく言えば“サイバー質屋”を名乗っている。

 日本でも同様のサービスは存在するが,国内事業者への取材はいろいろな意味でNGだ。その点,海外のサービスなら問題ない……とまで言いきるつもりはないが,国に認められた一大イベントに,大々的にブースを出せるほどの信用があるようだから,少なくとも黒ではない,という認識なんだろう。

 とはいえ実際はどうなのか。話を聞いてみた。

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メカパンダ。ほかにも流れ魔道士パンダ,暗黒騎士パンダ,探偵パンダなどがいる
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 取引の流れは,自身のゲームデータの価値が計れない場合は,PANZHIが独自の査定表(ガチャ利用回数,限定物の価値などを記した一覧表)をもって,かつ専門スタッフによる計上と判断で値付けする。
 といっても決定事項ではない。ユーザーにはあくまで「〜〜円でどうですか?」と,あくまで市場適正価格として提示するだけだ。

 また,値段はユーザー側で設定できる。自身の思い入れを加味しすぎると,良くも悪くも適正価格からはズレそうだが,売れないのは当人の問題だ。プレイヤー間での交渉もできるというから,それこそ日本のフリマアプリにおけるやり取りを想像すればよいのだろう。

 なお,取り扱っているタイトル数は200作品以上。サービスの累計利用者数は700万人で,取引成立数は400万件を超えたらしい。

ブースには巨大モニターのあるステージ。会場内を見晴らせる2階展望。無料のドリンクバー,休憩所,化粧台に更衣室などが用意されていた
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 このアカウント売買には当然ながらリスクがある。まず利用者間の話からすると「売却者が売り払ったあと,身分証明書や電話番号などを利用して,自分の手もとに回収できてしまう」というものだ。これにより,購入者は「買ったはずなのにログインできない!」となってしまう。

 こういった手法は,日本でも2000年代にRMT(リアルマネートレード。なんらかの手段を用いて,ゲーム内通貨や廃課金キャラなどを売買する行為)でよく耳にしたものだ。いわゆる詐欺行為である。買った側も後ろ暗いことが分かっているから,泣き寝入りも多かったと聞く。

 中国においても(……むしろ本場?),RMTは過去に“野蛮な成長”を遂げてしまったため,かつては違法かつ無法な概念であった。そうした環境を是正したいと,PANZHI Game Serviceは6年前に立ち上がった。営利企業たる彼らの利益は,利用者の取引金額の「10%徴収」だという。

特設展示は「ゲームの時代ごとの変遷」。中国でゲーム人気をカンブリア爆発させたKOF98をはじめとするアーケード期からはじまり,ブラウン管TVを用いた業界初期のコンソールゲーム期,フルアーマーの違いが味わい深いPCゲーム期,写真を撮り忘れた次世代ゲーム期を経て,現代のオンラインゲーム期へ。この終着点をもって,「我々は今だからこそ生まれたんです」と主張するコーポレート・ストーリーだ。展示の準備期間は2か月。担当者は1人。権利関係の怪しそうな写真は,ご丁寧にマスクが貼られていた
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 このマーケットは原則“値下げ市場”だ。例えば運営型ゲームを例として,「サービス初期に2万円課金で最強編成を作ったアカウント」があるとする。それを放置していたら,気付けば最新環境に太刀打ちできなくなる。こうした経年劣化により,相対的に商品価値が下がる方程式だ。
 これらのアカウントの売り手に関しては「もうやらなくなった」「稼ぎたくなった」など,実例を聞かずとも意図は想像しやすい。

 一方,買い手については個々人で事情が異なりそうだが,一番多いのは「最新環境についていけなくても,便利アイテムなどが充実した安価なデータで快適にはじめる」パターンのようだ。誰しも完璧に整えられたデータを求めているわけではない。中途半端にも価値があるのだろう。

 それに,最新環境まで網羅しているような商品は単純に高そうである。それならと,需要を満たしつつ,よりお買い得な掘り出し物を探すようになっていく。ある意味,家探しの優先度問題に似ている。

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 さて,このアカウント売買の最大のリスクは「法」である。

 日本の場合,今どきのゲームはほとんど,いや(アカウントに価値が見いだせるような大手オンラインゲームなら)すべてと言ってもよさそうだが,利用規約で「アカウントの譲渡や売買の禁止」に触れている。
 つまり,メーカー側は「やめて」と言っている。言っているが,この一文自体は日本の法ではない。訴えられて初めて法の場に引きずり出されるだけだ。もちろん,非常に分の悪い立ち位置のおまけ付きだが。

 一方,中国に関しても利用規約の文言はほぼ同質であり,大半のゲームがアカウント売買を同じように禁じているという。
 けれどもPANZHI側は「メーカーは譲渡や売買を禁止にしておかないと,プレイヤー間のもめ事が起きたときにリスクを背負うことになる。だから行為の是非ではなく,危険回避のために禁じている」と言った。
 ゆえにPANZHIは,ゲームメーカーが画一的に負おうとしないリスクを代わりに背負うとし,自分たちで処理することを決めたという。

※立派な言い分にも思えるが,商魂のたくましさにも思える

 そのうえで,2017年可決の「中華人民共和国民法一般原則」では,オンラインゲームアカウントなどの仮想財産の概念に初めて触れられ,法的保護が条文に盛り込まれた。2020年施行の「中華人民共和国民法典」では,仮想財産の法的地位がさらに明文化されたという。

 その結果,彼らは「民法上は違法ではない」と言えるのだろう。

 仮に,もしも詐欺行為が起きて,購入者の手もとから売却者のアカウントが取り上げられたときは,購入者に代わって売却者に料金を要求する。アカウント購入後に「ガチャに3万円課金した」など,データの価値が明確に変動しているときは,追加料金も計上して要求する。

「もちろん,もめ事はたくさんあるんですけど,もし詐欺師がいたなら,私たちが代わりに警察に通報したり,裁判所に訴えたりしますよ」

 などの保険もバッチリだ。しかも,これは建前のセールストークではないようで。ブースには「これまでに勝ってきた訴訟状の束と山」が展示されており,ガラスの向こうで誇らしげにライトアップされていた。

とても力強く輝いている,勲章(勝訴)を持つ英雄たち
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 最後に「それでも,なんでわざわざリスクを抱えにいく方向の商売をしているのでしょう?」と尋ねてみた。

 返ってきた理由は2つ。PANZHIは「プレイヤーの皆さんと友達になれるサービスでいたいからです」とのこと。自分たちもゲーマーなので,プレイヤー感情が分かる。アカウント譲渡の利も分かるし,かつてのRMT市場の野蛮さも目にしている。そのため,ゲーマーたちと常に同じ目線で,真摯な姿勢と熱愛をもってサービスを提供し,ゲーマーたちとよりよい関係性を築いていく。それが会社のビジョンだという。

 ブースに利用制限なしの無料のドリンクバーや休憩所,一般参加のコスプレイヤー向けの化粧台や更衣室を用意しているのもそう。CJ2024でたくさん配られる配布物をまとめやすいよう,この会場で最大サイズの無料ショッパーを用意しているのもそう(ショッパーは広告戦略の一環でもあるだろうが)。会場マップを自分たちで独自に作ったのもそう。すべては社訓である「真摯」と「熱愛」の四文字を遂行するために。

 その点,残りの理由はもう少しシンプルだ。

「プラットフォームとして一番カッコよくいたいからです!」

 国や法の話は置いといて,実に気持ちのよいスタンスに思えた。

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「ChinaJoy 2024」公式サイト

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