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「Falcom Music chronicle」の特典CDに収録される「TO MAKE THE END OF BATTLE」のブラスバンドアレンジについて話を聞く。ファルコムの楽曲はブラスバンドと相性抜群
2013年3月21日にキャラアニから発売される予定の書籍「Falcom Music chronicle」では,添付の特典CDに,「YsII」の楽曲「TO MAKE THE END OF BATTLE」のブラスバンド(吹奏楽)アレンジが収録される。
このたび,「TO MAKE THE END OF BATTLE」の収録現場を取材する機会を得たので,ブラスバンドアレンジを手がけた上倉紀行氏(日本ファルコム楽曲のアレンジでおなじみ,jdkBANDで,キーボードを担当),演奏を担当した「ブラスエクシード」のコンサートマスターである福井健太氏(「ほしのありかざんまい」CD の楽曲,「beat」(ビート)で,ソプラノサックスを担当),jdkBANDのドラム担当で,数多くのファルコムミュージックに関わってきた岡島俊治氏に話を聞いたので,その模様をお伝えしよう。
「日本ファルコム」公式サイト
――収録お疲れ様でした。まずは,本日の感想をお願いします。
福井健太氏(以下,福井氏):
楽曲を作った会社(日本ファルコム)と一緒に,新しくアレンジしたものを演奏することは普段ないので,すごく新鮮な気持ちで録音できました。大変でしたが,達成感はかなりあります。
上倉紀行氏(以下,上倉氏):
福井さんが言ったように,達成感で一杯ですね。ファルコムさんの楽曲をブラスバンドにアレンジするのは,今回が初めてでした。ですから,それに関係できたのがすごく嬉しいです。ブラスエクシードの演奏も素晴らしく,良い収録ができたと思います。
――ゲームミュージックをブラスバンドで演じてみての感想は,いかがでしょう。
福井氏:
最初は,「オリジナルの雰囲気と違うものになってしまうんじゃないか」ということが怖かったんですが,結果的にすごく親しみやすいものになって,安心しました。
――実際にブラスバンドの演奏を聴いて,どう思われましたか。
上倉氏:
岡島俊治氏(以下,岡島氏):
上倉さんも言ったように,ファルコムミュージックの歴史の中で,ブラスバンドアレンジはなかったんですよね。そういう意味では,新しい歴史が誕生した瞬間を見られた気がします。でもそれより,上倉さんを見て「おまえ,指揮もできるのか!」って思いました(笑)。
上倉氏:
昔少々かじってまして……。でも,ひどい指揮でもちゃんと音楽になるんですね。今回は,そこも勉強になりました(笑)。
福井氏:
指揮の能力じゃなくて,曲を知っている人がやっていることが大切なんだと思いますよ。
――ちなみに,岡島さんは今回,どの楽曲をアレンジされたんですか。
岡島氏:
「白き魔女」の「迷いの森」をアレンジしています。基本的にはパーカッション,アコースティックギター,バイオリンなどを使ったアレンジになっています。これもいい感じですので,ぜひ期待していてほしいですね。
――「Falcom Music chronicle」用に「TO MAKE THE END OF BATTLE」,そのほかにも「Cry for me,cry for you」と「Get Over the Barrier! 」がブラスバンドアレンジされましたが,それぞれの特徴を教えてください。
上倉氏:
「Get Over the Barrier!」はさまざまなアレンジバージョンが出ているんですけど,今回は「英雄伝説 零の軌跡 Evolution」で自分がアレンジしたものをベースに,ブラスバンドアレンジに落とし込んでいます。今までは打ち込み主体で作っていたんですが,今回はそれが生音で再現されているので,強烈に心に残ります。個人的にはすごく気に入っています。
福井氏:
上倉氏:
また「Cry for me,cry for you」はもともと歌もので,僕自身もその印象が強かったんです。その一方で,Cry for me,cry for youをインストゥルメンタルでやるとどうなるのか,というワクワク感もありました。実際に鳴らしてみたらしっくりきたので,これは正にブラスバンド向きの曲だなと感じました。
福井氏:
メロディが伝えやすいので,演奏していて気持ちいいですね。収録中にはマシントラブルもありましたけど,終始ノッて演奏することができました。
上倉氏:
ゲーム音楽って,生楽器でアレンジしようとすると音域の制限が出てきちゃうんですが,今回は色彩豊かに,ブラスバンドの特性を生かしたアレンジができたと思います。いつもライブでやっているアレンジに比べると,とても新鮮です。
福井氏:
実際に演奏して,どちらも難度の高い曲だなと思いました。ただ,結構僕ら寄りというか,うちのオーケストラでも現代の音楽はバンバンやっているので,なじみやすかったということはありますね。演奏面での苦労はまったくなかったですよ。
――今回は楽譜も起こされてますが,「TO MAKE THE END OF BATTLE」を実際に演奏してみたいという人に対して,アドバイスがあれば教えてください。
福井氏:
テンポをキープして,「絶対にそのテンポなんだけど,曲の表情が変わっている」ということが表現できれば,いい緊張感でクライマックスに向かっていくと思います。挑戦しようと思っている人は,ぜひ頑張ってほしいですね。
上倉氏:
今回のブラスバンドアレンジ,とくに「TO MAKE THE END OF BATTLE」は,中高生でも演奏できるようにしようと知人と相談したんですが,実際にフタを開けてみると,割と難しかった(笑)。でも,難しすぎるようなら,その部分だけ抜かすとか,どんな形でもいいから,楽しみながら演奏してほしいと思います。いろいろな解釈をして,自分だけの「TO MAKE THE END OF BATTLE」を作り上げてください。
――ところで,ブラスバンドアレンジの演奏会は予定されていますか。CDに収録するだけではもったいない気がしますし,期待したいのですが。
上倉氏:
ええ,いろいろな人な聴いてほしいと思います。ただ,今は曲数が少ないので,10曲くらいになったら,ぜひやりたいですね。
――それでは最後に,読者に一言お願いします。
岡島氏:
福井氏:
聴きたいと思っている人達,演奏したいと思っている人達に,我々の音楽を楽しんでもらいたいと思います。今回のブラスバンドアレンジで,楽曲をより身近に感じてもらえるでしょうし,これからも多角的に広がっていくと思います。
上倉氏:
今回,指揮もやらせてもらったんですが,大人数のアンサンブルが紡ぎ出す音楽って,すごく魅力的だなと感じました。こういう音楽もいいなあって,あらためて実感しましたね。ただ,指揮棒を振っていると,演奏のテンポが早くて楽譜がめくれないんですよ(笑)。ですから次回は聴く側として,自分がアレンジした曲をゆっくり楽しみたいです。
――本日は,どうもありがとうございました。
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