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日本市場限定GPU「Radeon R7 250XE」とはナニモノか? その実力と立ち位置をベンチマークで確認してみた
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印刷2014/08/25 00:00

レビュー

「日本市場限定GPU」の正体と立ち位置を探る

Radeon R7 250XE
(玄人志向 RD-R7-250XE-LE1GB/D5/1ST)

Text by 宮崎真一


4Gamerで独自に入手したR7 250XEカード。玄人志向のRD-R7-250XE-LE1GB/D5/1STとまったく同じ仕様だ
画像集#002のサムネイル/日本市場限定GPU「Radeon R7 250XE」とはナニモノか? その実力と立ち位置をベンチマークで確認してみた
 2014年8月20日,玄人志向ブランドから「RD-R7-250XE-LE1GB/D5/1ST」なる,Low Profile対応のグラフィックスカードが発表された。このカードは,「日本市場限定で投入される」というAMD未発表のGPU「Radeon R7 250XE」(以下,R7 250XE)を搭載するのが最大の特徴だ。
 税込1万800円前後で市場投入される見込みの新製品は,1万円前後で購入できるエントリークラスのグラフィックス市場に新たな選択肢をもたらすことになるが,果たして価格対性能比で魅力的な製品に仕上がっているのだろうか。4Gamerでは,RD-R7-250XE-LE1GB/D5/1STとまったく同じ仕様のカードを独自に入手できたので,R7 250XEの正体と実力をチェックしてみたいと思う。


その“中身”はR7 250Xのダウンクロック版

消費電力を抑えて補助電源コネクタフリーに


 というわけで,いきなり結論めいたことを述べてしまうと,R7 250XEは,「Radeon R7 250X」(以下,R7 250X)のダウンクロック&グラフィックスメモリ容量削減版である(表1)。

画像集#013のサムネイル/日本市場限定GPU「Radeon R7 250XE」とはナニモノか? その実力と立ち位置をベンチマークで確認してみた

R7 250XE。215-0825375という刻印から,Cape Verde XTコアであることを導ける。ちなみにXEの「E」には「Eco」「Efficiency」「Express」といった意味が込められているという
画像集#005のサムネイル/日本市場限定GPU「Radeon R7 250XE」とはナニモノか? その実力と立ち位置をベンチマークで確認してみた
 Radeon R7 250シリーズは,通常モデルとなる「Radeon R7 250」(以下,R7 250)がOland,上位モデルとなるR7 250XがCape Verde(Cape Verde XT)と,ベースとなるGPUコアが2種類あるのだが,R7 250XEのGPUコア規模は,上位モデルたるR7 250Xとまったく同じ。640基のシェーダプロセッサを搭載し,10基の「GCN Compute Unit」を編成している点で,何も変わらない。ROPユニット数やメモリインタフェース,メモリクロックといった,足回りも同じで,ブースト時の最大クロックがR7 250Xの1000MHzから860MHzへと落とされ,グラフィックスメモリ容量が2GBから1GBに減っているだけだ。
 もっといえば,R7 250Xの“リフレッシュ元”(≒リネーム元)たる「Radeon HD 7770」(以下,HD 7770)だと,リファレンスのグラフィックスメモリ容量は1GBだったので,HD7770のダウンクロック版と紹介することも可能だろう。

カード長は実測169mm(※突起部除く)だった
画像集#006のサムネイル/日本市場限定GPU「Radeon R7 250XE」とはナニモノか? その実力と立ち位置をベンチマークで確認してみた
 そんなR7 250XEで最も重要なことは,動作クロックの引き下げによって,公称最大消費電力が55Wまで下がり,結果,R7 250X(やHD 7770)では必須の6ピン補助電源コネクタから解放されていることである。カード自体がLow Profile対応であることも手伝って,最近流行の小型PCケースはもちろんのこと,大手メーカー製デスクトップPCなどでいまでもよく採用されるブックサイズ筐体など,幅広いプラットフォームで利用できるようになっているわけだ。
 余談気味に続けておくと,HD 7770の下位モデル「Radeon HD 7750」は補助電源不要のGPUだったので,その後継として見ることもできるだろう。

カードはLow Profile対応で補助電源コネクタなし。さらにGPUクーラーは1スロット仕様なので,小さなPCケースへ組み込むにあたってのハードルが低い
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GPUクーラーを取り外したところ
画像集#007のサムネイル/日本市場限定GPU「Radeon R7 250XE」とはナニモノか? その実力と立ち位置をベンチマークで確認してみた
 搭載される1スロット仕様のクーラーは,50mm角相当のファンを搭載するもの。その下にはGPUとグラフィックスメモリチップ4枚が置かれているが,GPUクーラーのヒートシンクと接触しているのはGPUのみだ。電源部は2+1フェーズ構成のようで,ターゲットとなる市場に見合った,かなり簡素なものとなっている。
 なお,搭載されるメモリチップはSamsung Electronics製のGDDR5「K4G20325FD-FC04」(0.4ns品)。メモリクロックは表1のとおり4500MHz相当(実クロック1125MHz)なので,メモリチップの仕様的には500MHz相当のマージンが設けられていることになる。

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GPUクーラーを取り外した状態のカード全体
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メモリチップは4枚で合計容量1GBを実現


上位モデルと下位モデル

そして競合のGT 740と比較


R7 250XE搭載カードの外部出力インタフェースはDual-Link DVI-D×1,HDMI(Type A)×1,アナログRGB(D-Sub 15ピン)×1。このクラスのグラフィックスカードとしては標準的だ
画像集#010のサムネイル/日本市場限定GPU「Radeon R7 250XE」とはナニモノか? その実力と立ち位置をベンチマークで確認してみた
 テスト環境の構築に入ろう。今回,比較対象には,R7 250XとR7 250,そして「現行モデル,かつ市場価格が近い競合製品」から「GeForce GT 740」(以下,GT 740)を用意した。ただし,独自に用意したR7 250X搭載カード「SAPPHIRE R7 250X 1G GDDR5 PCI-E HDMI/DVI-I/DP」は,ブースト時の最大コアクロックが950MHzとリファレンスより低かったので,「Catalyst Control Center」の「AMD OverDrive」から1000MHzに引き上げて利用していることをあらかじめお断りしておきたい。

 そのほかテストに用いたハードウェア構成は表2のとおり。グラフィックスドライバはRadeon用が「Catalyst 14.7 RC3」,GeForce用が「GeForce 340.52 Driver」で,いずれもテスト時における最新版となる。

画像集#014のサムネイル/日本市場限定GPU「Radeon R7 250XE」とはナニモノか? その実力と立ち位置をベンチマークで確認してみた

 テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション15.2準拠。ただし,R7 250XEがエントリー市場向けGPUなので,今回は「エントリー設定」が用意されているテストでは積極的にエントリー設定を用い,それ以外では「標準設定」かそれに準拠したテストのみを実施することにしている。テストに用いた解像度は1600×900ドットと1920×1080ドットの2パターンだ。

 なお,「Core i7-4790」の自動クロックアップ機能である「Intel Turbo Boost Technology」は,テスト状況によって挙動が変わる可能性があるため,マザーボードのUEFI(≒BIOS)から無効化している。


R7 250XとR7 250のほぼ中間の性能

対GT 740では上回るケースが多い


 というわけでテスト結果である。グラフ1は「3DMark」(Version 1.3.708)の総合スコアをまとめたものだ。R7 250XEはR7 250Xの約91%,R7 250の111〜124%程度となった。対R7 250XでGPUコアの最大クロックは86%に留まるR7 250XEであるものの,常に最大コアクロックに張り付いた状態で動作するわけではない以上,おおむね順当なスコア差だと述べていいだろう。R7 250に対しては,GPUコアの違いによる地力の違いと,2倍というROPユニット数の違いが出ているという理解でいい。
 競合製品との比較では,Fire Strikeで約14%,同テストのExtremeプリセットで約44%のスコア差を確認できた。メモリ周りの仕様でいえば互角か,GT 740のほうが優勢なだけに,ここは3DMarkに向けたCatalyst側の最適化効果が出ているといったところか。

画像集#015のサムネイル/日本市場限定GPU「Radeon R7 250XE」とはナニモノか? その実力と立ち位置をベンチマークで確認してみた

 次にグラフ2は「Battlefield 4」の結果だ。ここでもRadeon R7 250シリーズ3製品の力関係は3DMarkと変わらずで,R7 250XEは,R7 250Xの90〜91%程度,R7 250の110〜113%程度というスコアになっている。
 注目したいのはGT 740とのスコア差で,BF4がRadeonに最適化されていることもあって,27〜31%程度という,かなりのギャップが生まれた。AMD独自API「Mantle」ではなく,DirectX 11モードでこれというあたりはインパクトが大きい。

画像集#016のサムネイル/日本市場限定GPU「Radeon R7 250XE」とはナニモノか? その実力と立ち位置をベンチマークで確認してみた

 一方,全体的にGeForceが健闘を見せる結果になることが多い「Crysis 3」のテスト結果をグラフ3で見てみると,R7 250XEは対GT 740で91〜97%程度と,若干届かない結果となった。
 Radeon同士で見たときのスコアは,1600×900ドットだとR7 250X寄り,1920×1080ドットではR7 250寄りとなっている。

画像集#017のサムネイル/日本市場限定GPU「Radeon R7 250XE」とはナニモノか? その実力と立ち位置をベンチマークで確認してみた

 「BioShock Infinite」だと,R7 250XとGT 740のスコアは拮抗している(グラフ4)。厳正を期せばR7 250XはGT 740比で98〜99%程度のスコアだが,実フレームレートでは1fpsも違っていないので,ほぼ互角と見ていいだろう。
 Radeon同士の比較だと,R7 250X比で91〜92%程度,R7 250比で約109%なので,見事に中間の場所にあるといえる。

画像集#018のサムネイル/日本市場限定GPU「Radeon R7 250XE」とはナニモノか? その実力と立ち位置をベンチマークで確認してみた

 「The Elder Scrolls V: Skyrim」のスコアをまとめたグラフ5では,再びR7 250XEがGT 740に対して優位性を見せている。スコア差は4〜8%程度なので,BF4ほどではないものの,意味のない数字というわけでもない。
 Radeon同士の力関係はここでも変わらずだ。

画像集#019のサムネイル/日本市場限定GPU「Radeon R7 250XE」とはナニモノか? その実力と立ち位置をベンチマークで確認してみた

 グラフ6は「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」(以下,新生FFXIVベンチ キャラ編)を「標準品質(デスクトップPC)」で実行した結果だが,スコアの傾向はSkyrimとよく似ている。1920×1080ドットで,スクウェア・エニックスの示す最上位指標「非常に快適」のラインである7000を上回っている点は評価できよう。

※グラフ画像をクリックすると,平均フレームレートベースのグラフを表示します
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 DirectX 11世代のゲームタイトルである「GRID 2」でも,スコア傾向はSkyrimや新生FFXIVベンチ キャラ編と変わらない(グラフ7。R7 250XEは,R7 250Xの88〜90%程度,R7 250の111〜113%程度,GT 740の7〜8%程度というスコアに落ち着いている。

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R7 250Xから消費電力は確実に低下

GPUクーラーの冷却性能と静音性は「見た目どおり」


 本稿の序盤でお伝えしたとおり,R7 250XEではR7 250Xから消費電力が下がっているが,実際のところ,どの程度の違いがあるのだろうか。ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の消費電力により比較してみることにしよう。
 テストにあたってはゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時としている。

 その結果がグラフ8で,アイドル時のスコアはほぼ横一線となった。なお,Radeon R7 250シリーズは,アイドル状態が続いてディスプレイ出力が無効化されると,さらに一段消費電力を下げる「AMD ZeroCore Power Technology」(以下,ZeroCore)に対応しているが,それを利用した場合,R7 250XEとR7 250Xは60W,R7 250は59Wにまで消費電力が下がることを確認済みだ。
 一方のアプリケーション実行時は,なんといってもR7 250より消費電力が低い点が目を引く。上位モデルたるR7 250Xとの比較では10〜15Wの違いもあり,R7 250XEの低消費電力ぶりが光る印象だ。

画像集#022のサムネイル/日本市場限定GPU「Radeon R7 250XE」とはナニモノか? その実力と立ち位置をベンチマークで確認してみた

 ちなみに,TechPowerUp製GPU情報表示ツールである「GPU-Z」(Version 0.7.9)で3DMark実行時におけるGPUコア電圧を追ってみたところ,R7 250XEは1.17V,R7 250Xは最大1.125Vだった。もちろんこれは「入手した個体について言えば」という話なので,R7 250XEのすべてがR7 250Xより動作電圧が高いとまではいえないのだが,仮におおむねこういった傾向なのだとすれば,R7 250XEは,R7 250Xとしての動作試験にパスしなかった個体を,低クロック化したものということになるだろう。動作クロックの引き下げ効果は大きいとも言えそうである。

 最後にGPUコアの温度も確認しておこう。ここでは,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」とし,アイドル時ともどもGPU温度をGPU-Zから取得することにした。
 テスト時の室温は24℃で,システムはPCケースに組み込まず,いわゆるバラック状態に置いている。

入手したSapphire Technology製R9 250Xカードは,2スロット仕様のGPUクーラーを搭載する
画像集#012のサムネイル/日本市場限定GPU「Radeon R7 250XE」とはナニモノか? その実力と立ち位置をベンチマークで確認してみた
 結果はグラフ9のとおり。それぞれGPUクーラーが異なるうえ,温度の取得方法やファン回転数制御方法も別々なので,横並びの比較にあまり意味はない。あくまでもR7 250XEの温度がどの程度まで上がるのかを確認する参考にしてもらえればと思うが,R7 250XEは78℃と,少なくとも低くはない――問題のあるレベルでもないが――結果となった。GPUクーラーの冷却能力は「見た目どおり」と評するべきだろう。

画像集#023のサムネイル/日本市場限定GPU「Radeon R7 250XE」とはナニモノか? その実力と立ち位置をベンチマークで確認してみた

 また,そんなGPUクーラーの動作音は,筆者の主観であることを断ったうえで続けると,決して静かではない。もちろん,うるさいと目くじらを立てるほどではないのだが,小径のファンが高速回転する以上,相応の動作音は覚悟することになる。静かなモデルが欲しい場合は,今後,2スロット仕様などのクーラーを搭載したモデルが登場するのを待つことになりそうだ。


1万円前後の価格帯ではまずまずの存在

価格が落ち着いてからが勝負か


 今回取り上げた比較対象のGPUが搭載されたグラフィックスカードの税込実勢価格は以下のとおりだ(※2014年8月25日現在)。

  • R7 250X:9800〜1万5000円程度
  • R7 250:8200〜1万3500円程度
  • GT 740:8800〜1万4000円程度

 対して,玄人志向によるメーカー想定売価は税込1万800円前後なので,“初値”の時点だと,R7 250Xの最安値クラスより高いということになってしまう。GT 740の“リフレッシュ前”モデルとなる「GeForce GTX 650」(以下,GTX 650)を搭載するカードが市場にはまだ残っており,しかも処分価格となって安価なものなら9000円前後から購入できるという事実を踏まえても,高い価格対性能比を求めてエントリークラスのGPUを探している人にとって,いますぐR7 250XEが有力な選択肢になるかといえば,答えはNOだろう。

画像集#011のサムネイル/日本市場限定GPU「Radeon R7 250XE」とはナニモノか? その実力と立ち位置をベンチマークで確認してみた
 しかし,GTX 650カードが市場から消え,また,R7 250XEカードの価格も落ち着いてくると,1万円を下回る市場において,性能と消費電力のバランスに優れた製品として評価されるようになるはずだ。少なくともGT 740に対しては互角以上の立ち回りを見せているわけで,年末商戦期には,補助電源コネクタを必要とせず,Low Profileにも対応したリーズナブルなグラフィックスカードとして,注目を集めるようになるのではないかと思う。
 AMDはR7 250XEが流通することになった経緯を発表していないので,「なぜ出てきたのか」は想像するほかないが,向こう数か月単位で見れば,エントリー市場に面白いGPUがやってきたということになりそうだ。

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玄人志向のRD-R7-250XE-LE1GB/D5/1ST製品情報ページ

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    Radeon R7 200

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