連載
レトロンバーガー Order 12:1990年代のインターネットを思い返したいからPSソフト(?)「ARC SYMPHONY」ファンサイトへモデムで接続編
「ARC SYMPHONY」は,Aether Interactiveから発売されたRPGです。当時のPlayStationはスクウェア(現スクウェア・エニックス)を代表として,多くのJRPGメーカーがしのぎを削っていたプラットフォームだったので,「誰もが知ってる名作RPG」にはなれませんでしたが,3Dグラフィックス黎明期のゲーム市場に小さくない影響を与えました。
映画化もされましたが,映画版「トゥームレイダー」や「バイオハザード」などが大成功を収めて“ゲームの映画化”が一般的になる前だったので,映画版「ダブルドラゴン」や「モータルコンバット」などと共に,映画史の中に埋もれてしまっています。
一部でファンフィクションの創作ブームが起こるなど,強いファン層が形成された作品ですが,名作として顧みられることもカルト作として語られることもないような,ある意味で不遇のタイトルとなっています。個人的にはPlayStationクラシックに収録されることを期待したのですが,さすがに入りませんでしたね……。
Grabbed some pretty obscure PS1 games recently. Had no idea they even released Arc Symphony in NTSC. Thanks for hooking me up, @sophiapark_ pic.twitter.com/wBFRx1BU49
— Ben Gelinas (@bengelinas) 2017年5月12日
2000年前後の家庭用ゲームに親しんでいた人なら,こういった「メジャーではないが強い印象のあるゲーム」は,何かしら1本あると思います。最新の大作ゲームを追いかけたり,Steamでインディーズゲームを掘り起こしてみたりするのは楽しいですが,それに疲れたらこういうゲームを振り返ってみると,自分のゲーム歴のルーツ的なものを見つけられるのではないでしょうか。
favorite JRPG on PS1?
— Kevin Snow (@bravemule) 2017年5月14日
あー,懐かしいなあ「ARC SYMPHONY」。飛空艇で世界を周るサトシの大冒険。4Gamer読者で知ってる人は,どれだけいるのでしょうか。やっぱりそんなにいないですかね。まあ,なにせ実在しないゲームですしね。
I found this in a vintage clothes store. What is this game????? pic.twitter.com/vfgxD371LG
— Daniel is in Austin (@C418) 2017年5月13日
はい,実在しないゲームです。PlayStation用ソフト? 映画?
ないよ!(架空のファンサイトなどで綴られている設定です)
架空の「ARC SYMPHONY」ファンサイト
そんな建前の小規模なバイラルマーケティングでPRされた(実際のところ,宣伝というよりモキュメンタリー的な演出でしょうが)のが,実在するAether Interactiveから2017年5月に発売された本当の「ARC SYMPHONY」。PlayStation向けでなく,PC/Mac/Linux向けの,RPGでなくアドベンチャーゲームで,itchから2.99ドル以上の任意の価格にて購入できます。
ゲームの内容は,かつてのユーザーになりすまして,「ARC SYMPHONY」のファンコミュニティを覗き見るというもの。プレイ時間が短いゲームですが,海外メディアでは体験の新鮮さから好評を得ています。全編英語ですが,表示される文字はマウスドラッグによる選択とクリップボードへのコピーが可能なので,Google翻訳などに投げ込めば日本語しか読めないという人でも楽しめるのではないでしょうか。
Webサイトは一度無くなってしまうと,残骸や跡地すら基本的には残らないのが寂しいところ。SNSの発達などにより,ゲームの個人ファンサイトや有志のコミュニティサイトなどは数を減らし,セガBBSも遠い過去のものとなり,先日「Yahoo!ジオシティーズ」がサービスを終了したりもした今だからこそ,「ARC SYMPHONY」で1990年代のインターネットに思いを馳せてみるのも一興では。……まあ,さすがにPlayStationの時代で,CUIはまだしもグリーンディスプレイのPCって設定はどうだろうと思ったりはしますが。
あ,ちなみに映画版「ダブルドラゴン」とか「モータルコンバット」とかは実在します。「ARC SYMPHONY」と並べちゃうと嘘っぽくなりますけど,マジです。
Aether Interactiveは「ARC SYMPHONY」のほか,ブラウジングやメールのやり取りでシナリオを進めていく「Subserial Network」を2018年に発売していて,こちらはもっとボリュームの大きい作品です。
- 関連タイトル:
ARC SYMPHONY
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