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10年以上続く“薄ミュ”シリーズで初めて山南敬助にスポットを当てた,「ミュージカル『薄桜鬼 真改』山南敬助 篇」ゲネプロ公演をレポート

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 オトメイト(アイディアファクトリー)の人気乙女ゲーム「薄桜鬼」を原作とした「ミュージカル『薄桜鬼』」(通称,「薄ミュ」)の最新作,「ミュージカル『薄桜鬼 真改』山南敬助 篇」が,2023年4月8日に都内のシアター1010で幕を開けた。東京公演は4月16日まで行われ,4月22日〜23日には大阪のサンケイホールブリーゼにて上演される。

 本稿では,初演前日に行われたオフィシャル会見と,関係者・メディア向けゲネプロ公演の様子をレポートしていく。

※後半のレポートでは,一部ネタバレになるような記載や写真が含まれるため,これから観劇予定の人はご注意ください。

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ミュージカル『薄桜鬼 真改』山南敬助 篇

■日時・会場
2023年4月8日〜16日 東京・シアター1010
4月22日〜23日 大阪・サンケイホールブリーゼ

■出演(敬称略)
山南敬助 役:輝馬
雪村千鶴 役:青木志穏

土方歳三 役:久保田秀敏
沖田総司 役:北村健人
斎藤 一 役:大海将一郎
藤堂平助 役:樋口裕太
原田左之助 役:川上将大
永倉新八 役:小池亮介
山崎 烝 役:田口 司
近藤 勇 役:井俣太良

風間千景 役:佐々木喜英
天霧九寿 役:横山真史
不知火匡 役:末野卓磨
雪村綱道 役:川本裕之
南雲 薫 役:星元裕月

アンサンブル
白崎誠也,坂本和基,橋本征弥,来夢,多田 滉,平澤佑樹,大嶌幸太,田中 慶

■スタッフ(敬称略)
原作:オトメイト(アイディアファクトリー・デザインファクトリー)
演出・脚本・作詞:西田大輔
音楽:坂部 剛
殺陣:六本木康弘
振付:MAMORU





「自分は何者なのか」を考えさせられる,
今までにない斬新な「薄ミュ」


 ゲネプロ前のオフィシャル会見には,主演を務める山南敬助役の輝馬さん,雪村千鶴役の青木志穏さん,土方歳三役の久保田秀敏さん,藤堂平助役の樋口裕太さん,南雲 薫役の星元裕月さんが登場し,舞台への想いを語ってくれた。

写真左から樋口裕太さん(藤堂平助役),久保田秀敏さん(土方歳三役),輝馬さん(山南敬助役),青木志穏さん(雪村千鶴役),星元裕月さん(南雲 薫役)
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――本作の意気込みを教えてください。

山南敬助役 輝馬さん:
 本公演のためにキャストは1か月ほど稽古をしてきたんですが,これまで築いてきた「薄ミュ」を引き継ぎながら,斬新な舞台ができていたらいいなと僕自身思っています。皆さんも劇場に来て,目で心で耳で感じていただけたら。怪我なく,千秋楽まで終えることを目標に頑張りますので,応援よろしくお願いします。

雪村千鶴役 青木志穏さん(以下,青木さん):
 歴史ある「薄ミュ」に参加できることを嬉しく思いますし,自分自身も目標にしていた作品だったので,今ここに立っていることが本当に不思議な気持ちです。皆さんステキな方ばかりで,山南さんや新選組の皆さんが,千鶴を通してより魅力が伝わるように精一杯生き抜いていきます。よろしくお願いします。

土方歳三役 久保田秀敏さん(以下,久保田さん):
 今回シリーズを通して,初めて「山南敬助 篇」をすることになりました。山南の立ち位置は影に隠れるといいますか,これまであまり表に出ない部分が多かったです。今回は(物語の)軸を担っていて,行動の裏で何を考え,僕たちに影響を与えてくれていたことを初めて知ることが出来ました。目に見えない絆といいますか,心の通じ合わせ方を楽しんでいただきたいなと思います。

藤堂平助役 樋口裕太さん(以下,樋口さん):
 「山南敬助 篇」の幕が開き,長年一緒にやってきた輝馬くんが座長としてセンターに立っているのを見ると「うわっ」ってなります(笑)。すごく感動もありますし,嬉しく思っています。輝馬くんはともに頑張ってきた仲間だからこそ,側で支えていけたらと思います。

南雲 薫役 星元裕月さん(以下,星元さん):
 初めて「ミュージカル『薄桜鬼』」の世界に参加させていただくということで,最初は稽古の時にすごく緊張していましたが,一座の皆さんがステキな方ばかりで。薫は9年ぶりの登場ということで,前回とも違う薫像を自分なりに紡げたらいいなと思っております。

――ご自身のオススメシーンと,自分以外のお気に入りや見どころだなと思う場面を教えてください。

輝馬さん:
 オープニングがすごく好きです。これまでの華やかさとはかけ離れた始まりで,どう物語の終わりにつながっていくのか,期待して観ていただけたらなと思います。「薄ミュ」を愛してくださっている皆さんは驚かれるかもしれませんが,これも1つの魅力だと感じて好きになっていただけたら嬉しいです。
 自分以外のシーンでは,本作にある楽しい曲の“宴”が見どころですね。僕は(過去作でも)出たことがないんですが,過去には裸で踊り狂う男たちもおりましたし(笑)。

久保田さん・樋口さん:
 ありがとうございます。

輝馬さん:
 ほかにもお箸とかお茶碗を持って踊ったり,本当に酔っているようなときもあったり。今回もこれまでに負けないくらい楽しい宴のシーンがありますので,観ていただけたらと思います。

青木さん:
 自分のシーンはどれもステキで1番は決めきれないのですが,千鶴目線で見た新選組の心の通じ合いや関係性を大切にしたいと思っています。
 自分以外のシーンでは,激しい殺陣のシーンがたくさんあるんですが,歌とともに表現されていることが多く本当にかっこいいので,注目していただきたいです。

久保田さん:
 観劇する前に「自分は何者なのか」というという想いを胸に置いておいていただけると,観ていてより感じるものがあると思います。なぜ自分はここにいて,何のために生きて,というテーマが,いろいろなところで散りばめられています。それが最後に集まり,壮大なメッセージになっているので,僕らも演じていて楽しかったし,涙する部分もありました。言葉の重さ,偉大さを感じ取ってもらえたらと思います。

樋口さん:
 僕目線だと「山南さんが千鶴と……」って思うと,恥ずかしくてたまらない。

一同:(笑)。

久保田さん:
 演じている輝馬くんも含めてね。

樋口さん:
 千鶴と山南さんはこれまで会話するだけだったのが,一歩踏み込んだ関係になっています。稽古で2人のシーンも見させてもらったのですが,こっぱずかしくて!

久保田さん:
 直視したことないよね。

樋口さん:
 そうなんですよ。お客様もそんな気持ちになると思うので,2人の行く末を見守ってもらえたらと思います。また平助と山南さんは,刀を交えるシーンもあります。真剣な殺し合いでもありますが,長年一緒にいた2人だからこそ楽しんでいる部分も見えるかもしれないので,注目してほしいです。

星元さん:
 薫は,ドロドロした心情がフィーチャーされています。志穏ちゃんと2人で相談して,お互いを信頼し,今回の私達だからこその双子の関係性を表現できました。そのため,どのシーンも見どころ満載になっていると思います。
 全体のシーンでは,宴です。薫は全編通してシリアスなので,はじけている皆さんを袖で見ながら,音楽にのって楽しんでいます。お客様にも一緒に盛り上がってほしいです。

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――稽古中に印象に残っていることや,カンパニーの様子を教えてください。

輝馬さん:
 僕が,人としても役者としても愛してやまない近藤 勇役の井俣太良さん。ずっと「薄ミュ」に居続けてくださるので,現場で姿を見ただけでホッと安心します。また,芸歴30年以上のベテランにもかかわらず,僕らに合わせて一緒に楽しんでくださっているのも嬉しいです。カンパニーの雰囲気はとてもいいですし,劇場に入ってスタッフさんたちの愛もより強く感じました。同じ作品を作るキャストとスタッフ一同,向かっている先が一緒というのは素晴らしいと思います。

青木さん:
 本当に温かい稽古場で,和気あいあいとしています。でもシーンに入るとグッと集中して,それぞれの感じていることを表現していて,私も受け取るものが多く,返そうと感じる現場です。また先ほどの裕月さんのお話にもありましたが,「2人だから作れる双子があるよね」ってことでいろいろお話をしました,ね。

星元さん:
 ね!

青木さん:
 稽古場でも心強く,一緒にいることも多かったです。また言動が重なってしまうことも出始めて……,より双子に近づいてきているのかなと思います。

久保田さん:
 先ほど宴の話が出ましたが,前回の公演(「LIVE3」)で土方さんがついに脱いじゃいました。今回はどうなるのか……。土方は史実では全然飲めませんが,私はお酒が大好きです。酔っている感じが出てしまうかもしれませんが,そこは優しい目で見てください(笑)。

樋口さん:
 こんな感じで,稽古場でも和気あいあいとしております。キャストが同じ方向に進んでいて,演出・脚本の西田大輔さんが引っ張り,輝馬くんが背中で見せてくれて。本当に見たことがないような作品をお届けできると思いますので,期待していてください。

星元さん:
 稽古場から団結力がすごく,私たち今回から参加する組はどう入っていこうという想いもあったのですが,温かく迎え入れてくださいました。私個人としましてはデビュー作で西田さんが演出する作品に出演し,7年の時を経て再びご一緒できたのが嬉しくて,ご縁の巡り合わせを感じていいなと思います。また新しい出会いもあり,キャストやスタッフの皆さんに感謝しながら,やっていきたいと思える現場でした。

――最後にメッセージをお願いします。

星元さん:
 初の「山南敬助 篇」ということで,お客様も注目していると思います。南雲 薫は悪役ではあるかもしれませんが,この子なりの主張を伝え,お客様にも何かを受け取っていただけたらいいなと思います。この作品の見せる桜か雨か,その先をぜひ見ていただけたらなと思います。よろしくお願いします。

樋口さん:
 今回は「闇」「光」「影」というキーワードがあり,歌詞にも入っています。光の中にも闇があって,闇の中にも光がある。そのなかで人間が葛藤して,居場所を見つけていく,メッセージ性の強い作品になっています。皆さん楽しみにしていただきたいです。

久保田さん:
 裕太が言ってくれたように,光の当たる裏には影ができる。光が当たる部分だけが正解じゃなくて,影にも考えや正解がある。今回の作品を通して,自分が何者であるかをあらためて持って帰っていただけたらなと思います。

青木さん:
 重厚感のある作品だと思います。心の奥底にしみこんで積もっていくような,お客様の心のなかそれぞれで,一筋の光を見つけていただけるような作品になっていると思います。観劇いただけるのを,楽しみにお待ちしています。

輝馬さん:
 山南敬助を軸に進んでいくのですが,ほかの人物に焦点を当てた物語や展開にも注目していただきたいです。本作は一役者として見てもすごくオシャレで,そことまったく違う新選組の熱量や生き様がうまくミックスされているので,ぜひ楽しみにしてください。

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――ありがとうございました。

※以下,ネタバレを含む記載や写真が含まれるため,観劇前の人はご注意ください。

羅刹に未来はあるのか――。
山南の抱える苦悩と愛情が鮮やかに描かれる


 物語は,山南敬助が苦悶の表情を浮かべながら,赤く照らされた舞台を這う不穏な場面から幕を開ける。そして新選組幹部たちの会話によって,彼が二度と刀を握れないほどの大怪我を追ったとの情報がもたらされるのだった。地を這いながらも力強く,しかし切なさを感じる歌声を聴かせる山南と,真っ直ぐに視線を上げて清らかな声を響かせる雪村千鶴の対比がとても印象的なオープニングだ。

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 父親を捜しに京都を訪れ,ある事件をきっかけに新選組に出会った千鶴は,彼らとともに行動するようになる。そして彼女は山南から,父の綱道が人を化物=羅刹に変えてしまう“変若水”の研究をしていたという衝撃の事実を聞かされてしまう。綱道を見つけて研究を続けると危うい面をのぞかせる山南だが,そこには彼の新選組に対するある想いが……。

 そんななか新選組幹部さえも負傷させる風間千景率いる鬼の一族が出現し,山南は自らも再び刀を振るうべく,変若水を飲んで羅刹になる道を選ぶ。藤堂平助や千鶴の説得でも折れることなく,志のために生きようとする山南の姿は尊く,同時に精神的に追い詰められている悲壮感があって切なくなった。

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 千鶴は,ある事情で彼女を求める風間から,綱道が自分たちの勢力にいることも聞かされる。さらに新選組が羅刹を生み出すのを止めるように忠告を受けた千鶴は,山南に変若水や羅刹が何なのか問い,彼が秘めている想いの一端に触れるのだった。そこで山南と千鶴が,デュエットで心を通わせる光景は,とても優しく温かな気持ちになった。

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 しかし,新選組を取り巻く情勢は,時とともにどんどん過酷なものになっていく。御陵衛士として伊東一派と行動していた藤堂が,鬼によって大怪我を負い,一命を取り留めるため変若水により羅刹となった。さらに新政府軍の新兵器などによって,新選組は常に劣勢を強いられるようになっていく。新政府軍に対抗するために,より羅刹隊を活用すべきだと主張する山南と,それに反対する土方歳三の意見が対立する。世間では羅刹の仕業と思われる事件も発生して,山南の立場はより複雑なものになっていく。羅刹として闇を生きる山南の居場所は――。

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 本作では,山南はもちろん,近藤 勇をはじめとする隊士たちの絆や想いも丁寧に描かれている。新選組や仲間を想う気持ちは同じはずなのに,時代の流れに翻ろうされ,時には辛い決断を下さなければいけないことも……。それでも志を曲げない彼らの生き様が本当にかっこよく,何度も心を揺さぶられて,目頭が熱くなった。

 また,山南も含めた羅刹という存在を,本作であらためて見つめ直すことができたのも筆者にとって大きな収穫だった。人とは異なる存在になっても,彼らがいる意味,意義,いろいろなことを考えさせられた。

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 そんな新選組のことを側で見守っている千鶴も,彼女に顔がよく似た南雲 薫との絡まった縁を抱えていている。彼女の抱える運命,そして山南との未来には何が待っているのか……ぜひご自身で見届けてもらいたい。

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 「薄ミュ」と言えば,迫力のある殺陣も見どころだ。本作も重低音の効いたリズミカルなサウンドに合わせ,隊士たちが見事なアクションを披露する。強い想いを歌にのせて戦う場面も多々あり,それぞれが示す覚悟が感じられた。また本公演では,客席を利用した演出も! ステージを飛び出した演出によって,より迫力あるアクションを楽しめた。

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 ここまではシリアスなシーンを中心にお伝えしてきたが,打って変わってシリーズおなじみの隊士たちが歌い踊る楽しい宴シーンも,もちろん用意されている。オフィシャル会見でキャスト陣がおすすめしていた通り,とてもコミカルで,シリアスな展開が多い本作でホッっと息をつける貴重な場面だ。こちらにも,ぜひ期待しよう。

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 配信プラットフォーム「シアターコンプレックス」にて,本公演のライブ配信(見逃し配信付き)が決定している。対象となるのは,4月23日12:00公演(全景定点映像)と,大阪千秋楽の4月23日17:30公演(スイッチング映像)だ。

 チケット価格は,全景定点映像が2800円(税込),スイッチング映像が3700円(税込)。販売期間は4月16日12:00〜4月30日20:00までとなっている。ライブ配信は公演配信開始から公演終了までだが,見逃し配信はライブ配信終了後から2024年4月30日23:59までで,配信期間中は何度でも視聴可能だ(見逃し配信は,配信準備に1時間程度時間がかかる場合もあるとのこと)。

 また,大阪千秋楽の4月23日17:30公演(スイッチング映像)は,2023年5月3日12:00〜5月16日23:59までアーカイブ配信のチケットも販売される。価格は3700円(税込),視聴期限は購入から7日間だ。

 さらに,2023年9月6日に発売が決定した本公演のBlu-ray(税込1万780円) / DVD(税込9680円)の予約受付も始まっている。詳しくは,公式サイトのBlu-ray / DVDページをチェックしよう。

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