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[AGDC 2007]ラフ・コスター氏「どこでも遊べるゲーム作り」を提唱
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印刷2007/09/07 23:01

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[AGDC 2007]ラフ・コスター氏「どこでも遊べるゲーム作り」を提唱

「メタバース」や「MMORPGのWeb 2.0化」などを推進し,ゲーム業界ではかなり進歩派の印象があるRaph Koster氏。今回の講義でも,ゲーム開発者達に向けた啓蒙的な内容だった
画像集#004のサムネイル/[AGDC 2007]ラフ・コスター氏「どこでも遊べるゲーム作り」を提唱
 Raph Koster(ラフ・コスター)氏といえば,開発者会議では常連のスピーカーで,MMORPG開発者の中でも一目置かれる存在だ。「Ultima Online」のリードデザイナーからSony Online Entertainmentのチーフ・クリエイティブ・オフィサーまでを務め,現在は独立してAreaeという会社を持つに至っている。そんな彼の今回の議題は,「どこでも遊べるためのゲームデザイン」(Designing for Everywhere)というものだった。
 Areaeで,Koster氏がどんなゲームを開発しているのかについては,のっけから「新しい会社でやっていることを目いっぱいお話ししたいのですが,残念だけどできないんです」と言われてしまい,相変わらず分からずじまい。しかし氏が,今回のセミナーを含めた最近のスピーチで,常に「プラットフォームに惑わされない完全にオープンな世界」を標榜しているのは,業界の動向を鋭く観察している読者ならお気づきだろう。

 さて,そんなKoster氏は「Club Penguin」「I Love Bees」「Kongregate」「HotorNot」「Fantasy Football」などの画像が並べられたスライドを提示。「これらのミニゲームサイトや擬似ゲームサイトに共通しているのは,EverQuestよりもプレイヤー人口が多いことだ」と述べる。実際プレイヤー人口という点では,ポータルサイトなど,従来のPCゲームでないものが十中八九というのが,Koster氏が以前から指摘していることだ。
これらのゲームの共通点とは? Koster氏に言わせると,それはEverQuestよりもプレイヤー人口が多いことだ。ゲーム開発者は,ゲームの文法を忘れてしまったのではないか,というのがKoster氏の最近の懸念である
画像集#003のサムネイル/[AGDC 2007]ラフ・コスター氏「どこでも遊べるゲーム作り」を提唱
 ただ,今回は「これらの共通点を探っていて気づいたのだが,我々のような従来のゲーム開発者は,いったい何がゲームであるのかという前提を忘れてしまっているのではないだろうか」と,かなり手厳しい。「もうWeb 2.0について話すのも聞くのも飽きたけど,なぜ我々はゲーマーがアセットに手を加えることをそれほど嫌っているのか」とKoster氏は続け,MySpaceやAmazon.comを引き合いに出しながら,Web 2.0制作者はユーザーが手を加えることを前提に設計し,そのプロダクションバリューを抑えながらもより良いサービスへと変化させているのだと説明する。

 Koster氏は,この後「ゲームの文法」(Game Grammar)に話を進める。「チェックできた項目が多いほど面白い体験となるはず」と提言した,ゲーム文法の要注意項目は九つあり,それを解説すると以下のようになる。

●ゲームとは「システム」だ
ゲームはプラットフォームに依存せず,どんな場所でもプレイできるようなものでなければならない。ゲームのメカニックな部分が強固なものになれば,その周囲はいくら変更しても内容は変わらない。(プレイヤーが仮想の球団オーナーとなる)Fantasy Footballも,ブラックボックスとなるコア部分は変更させずとも,野球やサッカーなどに容易にモディファイできる。

●どんなボタンでも構わない
近年のコントローラは複雑すぎる。Pong(1972年)のアナログボタン1個,Atariシステム(1979年)のバイナリボタン3個,ファミコン(1985年)世代のバイナリボタン6個といった具合に進み,PlayStation(1994年)では14個のバイナリ(のちに2本のアナログスティックも)と,時代を経るに従ってユーザーインタフェースは進化している。しかし,これは一つの世代の慣れを示すものであり,新参者にはどんどんハードルが高くなっている。ゲーム開発者は,もう一度「無垢の時代」を思い出したほうがいい。

●時間をかけて
リアルタイムの緊張感は理解できるが,人間の脳もゲームのアルゴリズムも,反応に対する反応をしているだけで,要はターンベースである。FPSだって,60fpsのターンベースゲーム。しかし,プレイヤーは思考に時間をかけられるほど負担は少ない。

スロベニアの学生が制作したFlashゲーム「Line Rider」は,現在ツウなWebユーザーに大人気らしい。それを既存のMMORPGやFPSと比較すると,Koster氏の挙げるゲームの文法9か条には,ここまでの差が出てくる
画像集#005のサムネイル/[AGDC 2007]ラフ・コスター氏「どこでも遊べるゲーム作り」を提唱
画像集#006のサムネイル/[AGDC 2007]ラフ・コスター氏「どこでも遊べるゲーム作り」を提唱
●反応は速い
その一方,ゲームの反応は速いほうが良い。プレイヤーは,結果を早く見たいからだ。「テトリス」や「Bejeweled」などは,その典型例だろう。

●Side by Side - パラレルゲーム
Koster氏は,プレイヤー同士が対戦するCompetitive(競争)ゲームが増える中,かけっこのようなParallelゲームが忘れられているのではないかと提言。Parallelゲームというのは氏の造語であるようだが,MMORPGにおいても「World of Warcraft」に人気があるのは,「モンスターをやっつける」という共通の目的を作ったからではないかと説明する。

●セーブできるプロフィール
プレイヤーは,プロフィールをセーブすることでやりがいを見出す。一つのプレイヤープロフィールを使い回せるようなシステム作りも必要。

●クラスレス
クラスシステムを導入することで,プレイヤーのゲーム体験の幅は狭まってしまう。ホッケーのオフェンスとゴールキーパーではプレイの仕方がまったく違うのと同じで,その専門化はプロ(コアゲーマー)を作る結果となる。

●グラフィックスは関係なし
3Dグラフィックスにしたから,HD対応にしたからといって,ゲームそのものが変化するわけではない。Web 2.0というのは,コードではなくデータの革新なのだ。

●好きに変更
ゲームのメカニズムを変更しない限り,プレイヤーは好きなようにアセットをモディファイできるようにするべきだ。

画像集#002のサムネイル/[AGDC 2007]ラフ・コスター氏「どこでも遊べるゲーム作り」を提唱
 Koster氏は,先に挙げたゲームポータルや擬似ゲームサイトが,このゲームの文法の多くの条件を満たしているのに比較して,既存のMMORPGやFPSはどれだけ外れているかを解説。最後に,場内にいた開発者に向けて,「皆さんが現在作っているゲームが,この九つの文法の条件を満たしているか,一度確認してみてはいかがでしょう」と締めくくっていた。
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