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[AGDC 2007]ラフ・コスター氏「どこでも遊べるゲーム作り」を提唱
Areaeで,Koster氏がどんなゲームを開発しているのかについては,のっけから「新しい会社でやっていることを目いっぱいお話ししたいのですが,残念だけどできないんです」と言われてしまい,相変わらず分からずじまい。しかし氏が,今回のセミナーを含めた最近のスピーチで,常に「プラットフォームに惑わされない完全にオープンな世界」を標榜しているのは,業界の動向を鋭く観察している読者ならお気づきだろう。
さて,そんなKoster氏は「Club Penguin」,「I Love Bees」,「Kongregate」,「HotorNot」,「Fantasy Football」などの画像が並べられたスライドを提示。「これらのミニゲームサイトや擬似ゲームサイトに共通しているのは,EverQuestよりもプレイヤー人口が多いことだ」と述べる。実際プレイヤー人口という点では,ポータルサイトなど,従来のPCゲームでないものが十中八九というのが,Koster氏が以前から指摘していることだ。
Koster氏は,この後「ゲームの文法」(Game Grammar)に話を進める。「チェックできた項目が多いほど面白い体験となるはず」と提言した,ゲーム文法の要注意項目は九つあり,それを解説すると以下のようになる。
●ゲームとは「システム」だ
ゲームはプラットフォームに依存せず,どんな場所でもプレイできるようなものでなければならない。ゲームのメカニックな部分が強固なものになれば,その周囲はいくら変更しても内容は変わらない。(プレイヤーが仮想の球団オーナーとなる)Fantasy Footballも,ブラックボックスとなるコア部分は変更させずとも,野球やサッカーなどに容易にモディファイできる。
●どんなボタンでも構わない
近年のコントローラは複雑すぎる。Pong(1972年)のアナログボタン1個,Atariシステム(1979年)のバイナリボタン3個,ファミコン(1985年)世代のバイナリボタン6個といった具合に進み,PlayStation(1994年)では14個のバイナリ(のちに2本のアナログスティックも)と,時代を経るに従ってユーザーインタフェースは進化している。しかし,これは一つの世代の慣れを示すものであり,新参者にはどんどんハードルが高くなっている。ゲーム開発者は,もう一度「無垢の時代」を思い出したほうがいい。
●時間をかけて
リアルタイムの緊張感は理解できるが,人間の脳もゲームのアルゴリズムも,反応に対する反応をしているだけで,要はターンベースである。FPSだって,60fpsのターンベースゲーム。しかし,プレイヤーは思考に時間をかけられるほど負担は少ない。
その一方,ゲームの反応は速いほうが良い。プレイヤーは,結果を早く見たいからだ。「テトリス」や「Bejeweled」などは,その典型例だろう。
●Side by Side - パラレルゲーム
Koster氏は,プレイヤー同士が対戦するCompetitive(競争)ゲームが増える中,かけっこのようなParallelゲームが忘れられているのではないかと提言。Parallelゲームというのは氏の造語であるようだが,MMORPGにおいても「World of Warcraft」に人気があるのは,「モンスターをやっつける」という共通の目的を作ったからではないかと説明する。
●セーブできるプロフィール
プレイヤーは,プロフィールをセーブすることでやりがいを見出す。一つのプレイヤープロフィールを使い回せるようなシステム作りも必要。
●クラスレス
クラスシステムを導入することで,プレイヤーのゲーム体験の幅は狭まってしまう。ホッケーのオフェンスとゴールキーパーではプレイの仕方がまったく違うのと同じで,その専門化はプロ(コアゲーマー)を作る結果となる。
●グラフィックスは関係なし
3Dグラフィックスにしたから,HD対応にしたからといって,ゲームそのものが変化するわけではない。Web 2.0というのは,コードではなくデータの革新なのだ。
●好きに変更
ゲームのメカニズムを変更しない限り,プレイヤーは好きなようにアセットをモディファイできるようにするべきだ。
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