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[GDC 2011]NVIDIAが「Kal-El」の動作デモを展示。直撮りムービーで性能を確認しよう
さて,2011年現在,スマートフォンにおいて主流となっているグラフィックスコアは,PowerVR SGX系だ。MotorolaのAndroid 3.0搭載タブレット「XOOM」などが登場するなど,タブレットでの存在感は光るものがあるTegraだが,スマートフォンというジャンルにおいて,Tegraが追う立場にあるのは確かだ。
Kal-Elと言われてもピンとこない人のために「ドラゴンボール」で喩えると,要は「カカロット」みたいなもの。「スーパーマン」の,生まれ故郷における名前である。搭載タブレットが2011年夏,スマートフォンも年内に登場すると予告されているKal-Elは,ARM系の4コアCPUと12コアのGPUを統合したパワフルなチップである。
Kal-ElのCPUパワーはTegra 2比で2〜5倍。ゲーム性能は3倍に達するという。CPUコア数とGPUコア数がそれぞれ2倍と1.5倍なのだから比較的妥当な数値といえるだろうか。
そんなKal-Elを搭載したデモ機が,NVIDIAブースで実動デモ展示されていた。
3週間前のニュースで「すでにサンプル出荷中」とはなっていたものの,現実問題として,チップ自体ができあがったのは数週間前だそうだ。大急ぎでデモ機を組んで,なんとかGDC 2011に間に合わせたとのことである。
デモ機はAndroidベースのタブレットで,液晶パネルの解像度は1368×768ドット。Kal-El自体は最大2560×1600ドット表示に対応し,3D立体視をサポートしている。12SPのGPUコアを搭載することは発表されていたが,「New」とされているので,Tegra 2のものよりは新しい世代のGPUコアをベースとしているようだ。
Kal-Elの試作機で動いていたのはUnigineの「Sanctuary Benchmark」。ベンチマーク値を聞いてみたが,ちゃんと取ったことはないとのことで,単にデモモードで動くだけのプログラムだったのかもしれない。
Unigineというと,最近ではDirectX 11対応の「Heaven Benchmark」が話題を集めたところだが,Sanctuary Benchmark自体はDirectX 9&10相当の機能を使ったプログラムとなっている(※DirectXではなくOpenGL ES 2.0ベースの実装だが)。
先月バルセロナで行われたMobile World CongressにおいてAndroidプラットフォームへの対応が発表されているため,最新製品としてGDC 2011の会場で展示されていることに不思議はないものの,高画質を売り物にしたゲームエンジンのデモが滑らかに動いているのにはちょっと驚きである。
Kal-ElのGPUコアがどの世代のものかなどについては,まだ答えられないとのことで,技術的に突っ込んだ情報はまったく得られなかったのだが,とりあえず,Kal-El搭載タブレットでSanctuary Benchmarkが動いているデモを直撮りしてきたので,ぜひムービーをチェックしてほしい。
少なくとも,DirectX 9世代相当の技術でかなり綺麗な絵を出してもこれくらいのパフォーマンスが出るということなので,「ちょっと前のPCゲームくらいのクオリティのゲームがタブレット端末で動いてしまう可能性がある」と言い換えてもよいだろう。Sanctuary Benchmarkをダウンロードして,ムービーの動きよりも滑らかではないという環境だと,今年登場するAndroidタブレットに負けている。
ゲームプレイ環境としてのタブレット端末はなかなか侮れない存在になってきそうなので,Android端末にあまり興味のなかった人も,Kal-Elの登場以降は,タブレット(や,NVIDIAが「スーパーフォン」と位置づける)高性能スマートフォンに注目しておいたほうがよいかもしれない。
ちなみに,スーパーマンの次はバットマン(Project Wayne),X-Man(Project Logan),Iron Man(Project Stark)と,アメコミシリーズのコードネームが与えられた新製品が続々と登場する予定になっており,性能はTegra 2を1としたとき,5倍,10倍,30倍,100倍と強化されていく予定である。今後の新情報に期待しよう。
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