インタビュー
「ラグナロクオンライン」は新たなプレイスタイルを目指す――経験値テーブルの大胆な変更など,カンファレンスで発表されたアップデートの真意をガンホーに聞いてみた
このイベントでは,ラグナロクオンラインの世界一の対人戦ギルドを決定する大会「Ragnarok World Championship 2013」が行われ,日本代表が熱戦の末に準優勝を飾った。さらに,日本代表の5ギルドと各地域代表がチームとなって戦う団体戦「世界対抗戦」では5戦全勝で日本チームが完全勝利するなどの好成績を収めて,会場を大いに盛り上げた。
そんな白熱した試合の合間に行われた「ラグナロクオンライン カンファレンス」では,プレイヤーが気になる今後の大規模アップデートの内容が公開された。
この中で注目なのは,「レベルキャップの開放」と「キャラクターの経験値テーブルの変更」だろう。正直なところ,3次職の育成はかなり厳しいと考えるプレイヤーも多かった(いまもそうだが)。3次職実装から約4年,なぜいま……と,考えてしまうファンもいるだろう。
今回4Gamerは,カンファレンス前日の11月23日に,ROファンにはBOSSの愛称でお馴染みのオンライン本部長 飯野 平氏に話を聞いてみた。2014年はどのような形でROのサービスを行っていくのか。そして今回のアップデートの真意とは。
・「RWC2013&11thアニバーサリー・フェスタ」のメインステージで行われた「ラグナロクオンライン カンファレンス」でROの最新情報が公開に。レベル上限開放を含む次期大型アップデートは2014年春に導入予定
・「ラグナロクオンライン」「11thアニバーサリー・フェスタ」は人気ゲーム実況者が多数登場する賑やかなステージに
・世界対抗戦は完全勝利なるも,RWCの日本連覇はならず。日本代表が準優勝を飾ったRWC2013観戦レポート
経験値テーブルの変更により実現する,新たなプレイスタイルで楽しめる「2014年のラグナロクオンライン」
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
これまでは,モンスターの経験値を上げたり,討伐クエストを実装したりして,レベルが上がりやすい環境を整えてきました。一方で,「経験値テーブルの変更はしません」とずっと話していましたが,なぜいまになって変更に踏み切ったのでしょうか。
まず,私達が2014年の「ラグナロクオンライン」(以下,RO)を,どのようにしてきたいと考えているのか。そこからお話しさせていただいたほうがいいかもしれません。
12年目のROは,これまで以上に「爽快さ」と「やりこみ度」を両立させる形で,充実させていきたいと考えています。簡単に言えば,レベル帯ごとに遊ぶコンテンツを用意し,それを遊んでいただいているうちに,自然に,短期間でキャラクターが成長するようにします。それによって,2キャラ目,3キャラ目にチャレンジしやすいものにします。
これは「プレイスタイルに合わせた変化」と言うほうが,分かりやすいかもしれませんね。
4Gamer:
それは,プレイヤーの遊び方が変わってきたということですか。
飯野氏:
そうです。3次職が実装されてからも3年ほど経っていますが,当時の「MMORPGのプレイスタイル」のままプレイされている方と,「新しいプレイスタイル」で楽しまれている方の二極化が進んできていると感じています。
4Gamer:
新しいプレイスタイルというのは?
飯野氏:
いまはPCでゲームを遊ぶよりも,スマホで手軽に楽しむことが多いですよね。また,ROを長く遊んでいるプレイヤーさんの年齢も上がってきて,昔に比べて遊べる時間が少なくなっていると思います。
4Gamer:
確かに,長くMMORPGを遊んでいるような人だと,時間が取りづらい立場になっている人も多いでしょうね。
飯野氏:
そう考えたときに,昔のように「じっくり数十時間,数百時間をかけてレベルを上げる」というプレイスタイルに合わせて設計した当時の経験値テーブルは,いまの時勢に合わないなという結論になりました。
4Gamer:
そこで,経験値テーブルの変更が出てくるわけですね。ちなみに現在のプレイヤーは,全体的にどれくらいまでレベルを上げているのでしょうか。
飯野氏:
現在のキャップになる,BaseLv150に到達したキャラクターが,相当数いることが分かっています。その一方で,BaseLv100-120あたりで停滞しているプレイヤーも多くいるんです。
4Gamer:
キャラクターの育成によくある,逆三角形にはなっていないわけですね。
飯野氏:
はい。BaseLv150のプレイヤーはかなり多くて,(現在の経験値テーブルと成長スピードのバランス上)BaseLv130-140が少なく,次に多いのがBaseLv100-120になんです。ですから,このBaseLv100-120の層に向けて,経験値アップイベントなどを実施し,BaseLvを上げていただこうという意図があったのですが……。
4Gamer:
計算どおりには上がらなかった?
飯野氏:
BaseLv100-120の層のプレイヤーも,時間が経てばレベルが上がってBaseLv130-140の層に移っていくだろうと考えていましたが,さまざまな形で経験値の獲得イベントをやっても,BaseLv100-120から動かないんです。つまり3次職の状況として,BaseLv100-120前後と,BaseLv150とで二極化してしまっているんですよ。この理由が,先ほどお話しした「新しいプレイスタイル」によるものだと考えています。
4Gamer:
一つ確認したいのですが,BaseLv150が多いというのは,キャラクター数で調べた結果でしょうか。本気で攻城戦をやっているプレイヤーはBaseLv150が当たり前で,1人で複数のキャラクターをBaseLv150にすることも少なくありませんし。
キャラクターの総数ではなく,アカウントごとにまとめて調べた場合でも,BaseLv150が1キャラクター以上いるアカウントはかなりの数になっています。
4Gamer:
なるほど。
飯野氏:
おっしゃられているように,攻城戦はBaseLvが高いほど有利になるので,熱心な方はBaseLv150まで複数のキャラクターを育てています。逆に言えば,BaseLv150になってしまうと,攻城戦かエンドレスタワーぐらいしか活躍できる,楽しめるコンテンツがないんです。
そこで,レベルキャップを開放するとともに,BaseLv160向けの「Episode9.2 決戦」を皮切りに,新たなコンテンツを展開していくことになりました。運営としては,そうした新コンテンツを途中で育成が止まっている3次職の方にも遊んでほしいんです。
やはり,自分のキャラクターがより強くなっていくのを実感しながら,新たな冒険に挑むというのは,MMORPGの宿命であり,醍醐味ですから。
4Gamer:
確かにそうですね。つまり,経験値テーブルの変更は,BaseLv100-120前後で止まっているプレイヤーのレベルを引き上げて,新コンテンツに挑んでもらいたいという意図があるわけですね。
飯野氏:
はい。先ほどお話ししたプレイスタイルの方は,新コンテンツが遊べるところまでたどり着くのにかなりの時間がかかってしまいます。もう少し手軽にレベル上げができる一方,余裕ができたら複数の職業を育てて,同じコンテンツを違う方向から楽しめる。それが,これからの「RO」の遊び方として適しているだろうと考え,そのために,まずは経験値テーブルを変更することにしました。
4Gamer:
昔に比べれば,今のROはレベルが上がりやすくなり,上位2次職も育てやすくなりました。それを3次職まで広げていこうということなんですね。
飯野氏:
そうです。BaseLv150以上がくる以上,3次職自体が壁になってはいけません。MMORPGはキャラクターを育てる楽しみがゲームの核の一つで,昔はそこに時間をかけるのが当たり前でした。しかし,これからのROは各レベル帯に向けてどんどん楽しめるコンテンツを用意します。それを遊びながら,楽しんでいる間に,いつの間にかレベルが上がっていくようなイメージで,みんなで集まって楽しんでもらうというMMORPGが本来持つ面白さを体験してほしいですね。それが,2014年に目指すROの形です。
経験値テーブル変更に伴うキャラクターへの影響は?
4Gamer:
経験値テーブルの変更による影響も確認したいのですが,経験値テーブルが変更されると現在のキャラクターの経験値はどうなるのでしょうか。正直に言えば,あふれた分の経験値が無駄になるかどうかという点です。
現在調整中ですが,実装された直後は基本的に現在のレベルを保持しています。ですがモンスターを倒すと,すぐに1レベル上がると思います。その先のあふれた分の経験値の扱いについては3次職実装時など従来のケースと同じ形になる予定ですが,詳細については,後日公式サイトで公開させていただく予定です。
4Gamer:
これまで経験値テーブルを変更せずに,モンスターの経験値でバランスの調整を行っていましたが,新しい経験値テーブルにあわせてモンスターの経験値も調整されるのでしょうか。
飯野氏:
経験値テーブル変更のタイミングでは,この変更によって経験値効率が突出してしまう2マップに関してのみ調整を行う予定です。「ブワヤの洞窟」では,モンスターの再出現時間の調整を,「グラストヘイム 最下層地下洞窟02」では,「ごっついミノタウロス」のステータスと獲得経験値を調整します。そのほかは,BaseLvの拡張を行うときに調整を加えるまでは,現状のままでいこうと考えています。
4Gamer:
資料を見ると,未転生キャラのテーブルも変更されていますね。
飯野氏:
スライドのグラフは上位2次職から3次職へのものですが,経験値テーブル自体は低レベル帯から手を入れます。レベルが低いほど違いが分かりづらいと思いますが,必要経験値は現状と同じか,それよりも減ります。とくにBaseLv100から120ぐらいまでは,必要経験値がこれまでの半分ほどになるので,かなりレベルを上げやすくなると思いますよ。
4Gamer:
なるほど。戦闘教範などの一定時間取得経験値がアップするアイテムについては,何か仕様の変更があるのでしょうか。
飯野氏:
ひとまず現状のままとなります。これも一緒に変えてしまうと,テーブルがどう変わったのかを実感できなくなると思うので,12月中は大きな動きをするつもりはありません。まずは素のままでプレイしてもらい,もっと稼ぎたいプレイヤーは,戦闘教範やネットカフェをご利用いただくという部分はそのままです。
4Gamer:
経験値テーブルのアップデートのときに,何かキャンペーンなどは行わないのでしょうか。
飯野氏:
カムバックキャンペーンのような施策は,実施する予定があります。これまでのテーブルで育てるのは無理という方もいると思うので,この機会にぜひ戻ってきて試してみてください,というものを12月中にできればと考えています。
4Gamer:
その際,装備の貸し出しなどはないのでしょうか。以前とはバランスもかなり変わっていますから,おそらく必要だと思うのですが。
飯野氏:
それも一つのアイデアですね。その場合はレンタルアイテムという形になると思いますが,検討していきたいと思っています。
BaseLv165へのレベルキャップ開放で新スキルが実装
BaseLv175の実装時期はプレイヤー次第?
4Gamer:
続いてレベルキャップ開放についてお聞きします。最大レベルがBaseLv165ということですが,これはBaseLv150から見た公平パーティ(※)のレベル差限界の15にあわせての設定なのでしょうか?
※パーティの獲得経験値の設定で,レベル差に関係なく,その名のとおり公平に経験値を分配する
飯野氏:
そのとおりです。実は韓国のレベルキャップはBaseLv175ですが,BaseLv160,BaseLv175と2回のアップデートに分けて到達したものなんです。本来ならば一気にBaseLv175まで上げる予定だったそうで,日本ではそうしてほしいという要請を受けていました。
4Gamer:
韓国からは,一気に25の開放という話が来ていたんですね。そうなると,あっという間にレベルを上げる人もいるでしょうから,16以上のレベル差はすぐに発生するでしょうね。
飯野氏:
そうなんです。経験値テーブルが変更されてやっとBaseLv150になったのに,友達はBaseLv175とはるか先に行ってしまって,また一緒に遊べない。そのような事態は極力避けたいので,日本としては公平圏内の15に留めるという判断を下しました。
4Gamer:
なるほど。経験値テーブル変更が12月中で,レベルキャップ開放が春ということですが,つまりこれは「春までにキャラクターのBaseLvを150まで上げておこう」というメッセージと受け取っていいんでしょうか。
飯野氏:
まさにそのとおりです。その4か月ほどで育成スピードに慣れてもらい,BaseLv135まで上げて公平圏内に入り,みんなでBaseLv150を目指していただければ。また,すでに150になっている方などは,余裕があるなら2キャラめ,3キャラめの育成にチャレンジしてもらいたいというのもあります。
今すぐレベルキャップを開放してしまうと,すでにBaseLv150のプレイヤーさんがすぐにBaseLv165になるだけで,それ以下の方々が追いつけず,結局,現在の状況を引きずるだけになってしまいますから。運営側としては,なるべく多くの方に,同じレベル帯で遊んでもらえるような状況を作っていきたいと考えています。
4Gamer:
そうすると,BaseLv165から175まで引き上げるタイミングは,例えば半年後にBaseLv175まで開放しますとかではなくて,プレイヤーのレベルの上がり具合を見て判断するといった感じになるのでしょうか。
飯野氏:
我々としても想定している時期はありますが,明確な時期は決めません。おっしゃるとおり,プレイヤーさんの育ち方を注視して,決めるつもりです。
4Gamer:
ただ,スーパーノービスや影狼・朧はBaseLv160止まりですね。これについては理由はあるのでしょうか?
韓国でも2段階に分けて,キャップを引き上げたとお話ししましたが,韓国ではまず3次職をBaseLv160にして,次にBaseLv175に引き上げました。そのBaseLv175に引き上げたときに,スーパーノービス達がBaseLv160になりました。これは純粋に作業的な問題だったようです。
BaseLv160であれば,3次職のBaseLv165の公平パーティ圏内ですので,日本では同じタイミングで入れることにしました。韓国側は,ちゃんとBaseLv175まで上げるつもりとのことなので,そこはご安心ください。
4Gamer:
分かりました。いくつか3次職の新スキルや長いあいだ未実装だった精霊システム,ホムンクルスSなどが実装予定とのことですが,これらはいつごろの実装になるのでしょうか。
飯野氏:
春のレベルキャップ開放時に実装する予定です。
4Gamer:
新スキルなどに関係する職業については,ステータスやスキルリセットが行えるようになるのでしょうか。
飯野氏:
まだ少し先なので具体的には確定していませんが,その可能性はあると考えておいてください。新スキルがスキルツリーのどこに入るか,スキルがどのステータスに影響するかにもよるので,それが確定するまでしばらくお待ちいただければと思います。
4Gamer:
ところで,レベルキャップを開放するとなると,レベルを上げるために必要な装備品の数も増えます。それにあわせてレアアイテムのドロップ率を上げるなどの調整は行われるのでしょうか。
飯野氏:
レアアイテムは,手に入れる楽しみもあると思いますので,確率の変更などは考えていません。もちろん,武器や防具などそれぞれのレベル帯で使えるようなアイテムは随時追加していくのでご安心ください。とはいえ,ROはカードシステムもあるため,武器の買い換え需要はあまり高くないんですよ。
4Gamer:
必要なものを作ってカードを挿したら,当分の間はそれで大丈夫という感じですよね。運営側としては,今回のレベルキャップ開放や経験値テーブルの変更で高レベルキャラクターが増えることもそうですが,それによって攻城戦が活発になることも期待されているのではと思うのですが。
飯野氏:
いろいろとコンテンツが増えていっても,ROのエンドコンテンツが攻城戦であることに変わりはありません。いまは気軽に参加できる「攻城戦TE」もありますので,レベルが上がったから試してみようという人が増えていくことを期待したいです。もちろん,運営側としてもワールド対抗戦のようなイベントで,興味を持っていただけるようにしたいと考えています。
4Gamer:
レベルが上がりやすくなると,TEのレベル上限を上げてくれという要望も出てくるかもしれません。ただ,TEは現役で攻城戦に参加しているプレイヤーも多く,あまりトレーニングになってないという話も耳にしますが。
飯野氏:
TEのレベル上限引き上げは反応を見て,というところですね。ただ,あまりトレーニングになっていないという意見につきましては,「戦い方を知っている現役の攻城戦プレイヤーに混ざって,いろいろ教えてもらいながらトレーニングする」という形を想定していたのですが,蓋を開けてみるとギルドごと新規参入するケースが多く,練度の差でなかなか勝てないというシーンもあるようです。もっと初心者が楽しめる,体験会のようなGMイベントをやっていきたいと思っています。
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