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韓国では77%が肯定的。さまざまな論点をはらんだセミナー「韓国RMTの今」
アジアITビジネス研究会 理事 直井善郎氏 |
アジアITビジネス研究会 理事/事務局長 田所陽一氏 |
NPO法人 アジアITビジネス研究会の韓国ITビジネス テーマ部会の第1回として企画され,韓国における最新のRMT事情を解説した講演の,内容をお伝えしよう。
アジアITビジネス研究会 理事の直井善郎氏および,理事/事務局長 田所陽一氏による趣旨説明に続いて,先に講演したのは文氏。氏はまず韓国語で挨拶し,「以降も韓国語でいいですか?」と述べたあと,おもむろに「実は日本語もできるんですけどね」と笑って,本題を日本語で進めるという,ちょっとした茶目っ気を披露した。
オンラインゲーム市場の半分にもなる
韓国のRMT市場
アンラボ 代表取締役社長 文 商準(ムン・サンジュン)氏 |
そのなかでオンラインゲームは着実に成長し続けており,2005年が1兆4397億ウォン(約1800億円),2006年が1兆7768億ウォン(約2221億円)となっている。ただしこの数字はMMORPGのような,いかにもオンラインゲーム然とした作品だけでなく,韓国式花札のようなタイトルも含んでの統計だ。
そしてこの統計には含まれていないものの,2006年における韓国のRMTの規模は,約1兆ウォン(約1250億円)と見積もられている。
さて,RMTの概要をめぐって文氏は,
■韓国ではアイテム去来(アイテムゴレ)と呼ばれている
■ゲーム会社は原則的に禁止している
■合法かどうか,まだ結論は出ていない
■オンラインゲーム産業と別の大きな市場になっている
■経済効果と金銭を狙うさまざまな問題が発生している
といった点を挙げた。大きなところは我々がすでに知っていることと変わらないわけだが,「アイテムゴレ」が法令の中でも使われる用語であること(逆にRMTという用語は使われていない),ゲーム会社の関係者も得てして本音のところで,RMTを通した自社ゲームの盛り上がりを期待しているフシがあることといった補足説明や,「合法かどうか,まだ結論は出ていない」という韓国政府のスタンスについては,注目しておく必要があるだろう。
オンラインゲーマーの77%がRMTに好意的
韓国ゲーム産業振興院の資料によれば,取り引きの68%がゲーム内通貨,24%がアイテム,9%がアカウントであるとのこと。また,詳細は未確認ながら,これまでに知られている最高額の取り引きはキャラクターで,1体で五百数十万円にもなったという。
では,“RMT先進国”である韓国の人達の,RMT体験やRMTに関する認識はどのようなものだろうか。韓国ゲーム産業振興院が,オンラインゲームをプレイしている10代〜40代の人1500人を対象に行ったアンケートによれば,RMTの経験は「ある」が51%。ある人の年間利用回数は「年1回」くらいが47%で,「6か月に1回」が18%,「3か月に1回」が12%で,「月1回」が17%だ。1回に使う金額は3万ウォン以上が48%を占め,プレイヤー同士の直接取引でなく,取り引き代行サイトを利用するケースが84%である。
そうした人々の「RMTに関する認識」はというと,「とても良い」が12%,「良い」が32%,「少し良い」が33%。つまり,77%が肯定的認識を持っており,「悪い」と「少し悪い」はそれぞれ7%,16%に留まっている。なにより,RMTが“あって当たり前のもの”になっている様子がうかがえる。こうしたRMT普及の背景には,韓国における携帯電話を使った小額決済の普及があるという。
韓国で活動するゴールドファーマーの7〜8割が
中国と関わりを持つ
さて,ゴールドファーミングには多数のゲームアカウントが必要なわけだが,ご存じのように韓国ではゲームアカウントが国民番号で認証されている。そうしたわけで,アカウントハックが付随して起こるわけであり,2006年に発覚した「Lineage」の件では,なんと22万件もの偽アカウントが見つかり,NCsoftの株価にまで影響した。韓国NCsoftのサイトには,自分の国民番号が盗用されていないか確認できるページもあるという。
また,金銭の受け渡しに伴う詐欺,ゴールドファーミングに当たってのAuto Mouseハック,スピードハック,BOTプレイ,そしてプレイバランスへの影響などは,言わずもがなの問題だ。
セキュリティツールメーカーであるアンラボの業務との関わりで言うと,こうしたRMT/ゴールドファーミングの広がりもあって,2006年は2005年に比べて新種のコンピュータウィルスの登場数が60%も増加し,新種ウィルスのうち半数はトロイの木馬系(中国産が多い),それも一般的な個人情報のみならず,ゲームアカウントを狙うタイプが増加しているという。前述したように,盗み出されたアカウントには確たる利用価値があるのだ。
「ゲーム産業振興法」は原則提示
課税と合法性は別問題?
また,子供が親の国民番号を使ってゲームを楽しみ,そのゲームをやめるに当たってアイテムやキャラクターを売るといった,比較的問題の少ないケースでも,重く罰せられてしまうといった,運用上の課題も残されているそうだ。
そして,2007年7月1日には,RMTへの課税が開始された。半年で600万ウォン以上1200万ウォン未満の取り引きであれば,RMT取り引き代行サイトが申告を代行し,1200万ウォン以上であれば個人事業者として登録し,申告する必要があるという。
ただし,この課税に際して韓国政府は,RMTが合法か非合法化という判断は保留している。税が課されるのに非合法な可能性が残るというのは少々分かりづらいが,議論は続行中ということだ。
中国では,オンラインゲーム市場より
RMT市場のほうが大きい?
アンラボ クライアントビジネス室 クライアントソリューション課/課長 V3ブランドマネジャの愼(しん)麻由美氏 |
まず市場規模についてだが,前述のとおり2006年の韓国では,オンラインゲーム市場とRMT市場の規模がそれぞれ約2375億円(※典拠資料が異なるため,前出の数字よりやや大きい)と1250億円,日本では208億円と150億円,中国では約1164億円と2179億円である。注目すべきは中国で,オンラインゲーム市場よりもRMT市場のほうが,規模が大きいのである。
また,2007年5月には盗んだアイテムをRMTサイトで販売して1億ウォン(約1250万円)もの売上を上げた犯罪団が検挙されたが,彼らの犯行は中国製のハッキングツールを2000万ウォン(約250万円)で購入し,ゲームサーバーをハッキングするという大胆なものだった。プレイヤーのみならず,サービス業者のセキュリティも脅かされているのが現状というわけだ。
日本は今後,RMT大国になるのか?
その一方で,韓国のRMTは現在,ゲーム産業振興法と課税の開始によって,萎縮傾向を見せている。この傾向が続けば,中国の「作業場」が日本のオンラインゲーム市場をターゲットに定める可能性が高まると予測する。
そして,小額決済とHDTVの普及が,コンシューマゲーム/アーケードゲーム出身のオンラインゲームタイトルを本格展開させていったあとに,日本におけるRMTの成長期が訪れると見る。最終的にはパチンコ産業の「三店方式」(景品の交付,景品の買い取り,換金済景品のパチンコ店への再売却を,それぞれ別の業者が行う)と同様に,法的規制が行われるのではないかという予測を示した。
日本のオンラインゲーム市場で,韓国と同様にRMTが成長してからその規模に応じた規制が行われるのか,それとも枠をはめるのが先になるのかは,現時点で分からない。とはいえ,法的観点に限れば禁じられていないことはやってよいと考えざるを得ないのが自由社会の原則であり,多くのパブリッシャの禁止をよそに,日本のRMT市場は現時点で確実に成長を続けている。
愼氏が示した,CASAと韓国ゲーム産業開発院の資料によれば,韓国と日本におけるRMTの「認知度」は,それぞれ80%と5%。数字が具体的に意味するところはいま一つ分からないものの,韓国産オンラインゲームが多くサービスされる日本で,RMTの“リアル”な論点がまだ十分に共有されていないことは事実だろう。業界の各「プレイヤー」達による実質的な議論を進展させるのに,いまが貴重な残り時間に属することだけは間違いないようだ。
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