プレイレポート
「FFXI」で約6年ぶりに登場する新ジョブ「魔導剣士」「風水士」先行プレイレポート。開発者インタビューもあわせてお届け
魔導剣士は“新しいタイプの盾役”
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
FFXIプレイヤーにとってはお馴染みのお二方ですが,まずは簡単に自己紹介をお願いします。
プロデューサー 松井聡彦氏(以下,松井氏):
プロデューサーの松井です。FFXIに関してはサービスイン当初から携わっています。一時期,「FFXIV」の開発も兼任していたのですが,昨年の9月に当時FFXIプロデューサーを務めていた田中(元スクウェア・エニックス 田中弘道氏)から役職を引き継ぎました。現在はFFXIをメインで担当しています。
4Gamer:
プロデューサーに就任して約半年が経ちましたが,現在の心境はいかがですか。
松井氏:
就任した直後は,プロデューサーとしてというよりも,開発スタッフとしてのブランクを埋めるのに苦労しましたね。「アトルガンの秘宝」以降のバージョンアップなど,最近手がけたはずのコンテンツに関して,意外と忘れていることが多いんですよ(笑)。大昔に担当した部分だと,結構覚えていたりするのですが。
4Gamer:
しかも今は,FFXIの全体を見なければならない立場ですしね。
松井氏:
ええ。「アドゥリンの魔境」のリリースも控えてますし,それ以外にもジョブのバランス調整にも目を向けなければなりません。
それらの作業を全部いっぺんに行うことは出来ませんので,私としてはコミュニティからフィードバックを受け,実現可能かどうか開発チームと相談するなど,出来ることから一歩ずつ着実に進めていく……そんな日々を送っています。
4Gamer:
谷口さんは,昨年のオフラインイベントの際,開発者ステージで新ジョブについて説明されていましたね(関連記事)。
プランナー 谷口 勝氏(以下,谷口氏):
アドゥリンで登場する新ジョブ「魔導剣士」「風水士」の設計を主に担当した,プランナーの谷口です。FFXIの開発チームには「アルタナの神兵」の頃から参加しており,当初はモンスターのアルゴリズムやコンテンツ周りを担当していました。2011年頃からは,ジョブ関連のバランス調整にも携わっています。
4Gamer:
それでは,今回取材した新ジョブから順にうかがっていきます。「魔導剣士」の開発はどういった経緯で始まったのでしょうか。
最初のコンセプトは“新しいタイプの盾役”で,そのためのアプローチをあれこれ模索していました。
そこで私個人のFFXIのプレイを振り返り,「赤魔道士/忍者」のジョブが,盾役として動けた時期があったのを思い出したんです。あれは本来想定していたジョブの姿とは少し違う形でしたが,とても強く印象に残るものでした。
4Gamer:
モンスターの敵対心を上げるために,魔法を絶え間なく撃ちまくるなど,やたらと忙しいジョブでしたね。
谷口氏:
さすがにアレと同じことを行うわけにはいかないので,アビリティや通常攻撃で,敵対心を上げやすいよう調整しました。さらにプラスアルファとして,“属性”を攻撃や防御に利用することに着目し,“ルーン”の仕様を考え,その結果「魔導剣士」というジョブが出来上がっていきました。
4Gamer:
さきほど実際に魔導剣士をプレイしましたが,全ジョブ中で最も忙しいと思いました。これは,ベテランプレイヤーが多いFFXIの現状を意識されてのことなのでしょうか。
谷口氏:
ええ,そうなんです……,と言えれば格好いいんでしょうけど(笑)。
正直なところ,アクションゲーム好きの自分が遊んで面白いものを作ろう,という思いが強かったですね。自分が遊んで面白くないと,FFXIプレイヤーを納得させることはできないでしょうし。
4Gamer:
なるほど。あとは忙しいのと同時に,“難しい”とも感じましたが。
谷口氏:
今回プレイしてもらったキャラクターはレベル99で,アビリティなどが全部開放されている状態でしたからね。たとえば同時に付けることが可能なエンチャントルーンの数も,最初にアビリティを習得するレベル5の段階では1個です。レベル1から育成していけば,魔導剣士の能力が少しずつ開放されていくので,印象は違ってくると思いますよ。
とはいえ,忙しいジョブであることに変わりはないので,腕自慢の方はぜひチャレンジしてみてほしいです(笑)。
FFファンの考える風水士をFFXI向けにアレンジ
4Gamer:
では続いて,もう一つの新ジョブの「風水士」についてお願いします。
風水士は,これまでのFFシリーズ作では3や5などに登場しています。そのためか周りからは,「まだ風水士を作らないの?」といったことをよく言われていたんです。
ですので,「アドゥリンの魔境」で新ジョブを導入することが決まったとき,「とりあえずは風水士だろう」といった雰囲気が最初からありました。
4Gamer:
過去のシリーズ作でお馴染みのジョブを,FFXI,つまりMMORPG上で再現する際,どういったところに苦労されましたか。
谷口氏:
風水士の能力を素直に再現しようとすると,「黒魔道士」の精霊魔法と被ってしまう部分が多いんです。また,風水士ならではの強みとして,現在いる“地形”を利用した魔法が使えますが,これを仮にFFXIで再現すると,フィールドに戦術が縛られてしまいがちです。
4Gamer:
確かに,そのままの形で持ってくるわけにはいかなさそうですね。
谷口氏:
そこで,風水士の“大地の力を具現化する”設定は引き継ぎつつ,そこから具体的にどういった行動をするのかを,まっさらの状態から考えていきました。
4Gamer:
その結果アタッカーではなく,“支援系”のジョブになったというのが興味深いです。
谷口氏:
仮に風水士をFFXIでストレートに表現すると,精霊魔法に特化したアタッカーになりますが,このジャンルには黒魔道士,学者,赤魔道士がすでにいます。風水士ならではの差別化を行うことは難しいと判断しました。
そこで別のジャンルに目を向けたところ,パーティメンバーの強化や敵の弱体化といった“支援”に関して,現在は詩人とコルセアがいるものの,ある程度の部分しか補えていないことに気が付いたんです。
4Gamer:
詩人やコルセアの支援能力は強力ですが,“掛け分け”など,独特のクセのようなものがありますよね。
谷口氏:
ええ。呪歌などの効果を持ちつつ,掛け分けにおけるクセをなくしたいと考えた結果生まれたのが,“インデコルア”の風水魔法です。その他にも,詩人やコルセアとは違ったアプローチで支援や弱体が行えないかな? と考えながら,風水士のジョブ設計を進めていきました。
4Gamer:
先ほどプレイした際は,立ち位置が“後衛寄り”なのかな? と感じました。支援系であることを踏まえると,意外とありそうでなかった方向性のジョブですね。
谷口氏:
基本的には,後衛として動くことになると思います。インデコルアやジオコルアの風水魔法を使いつつ,空いた時間は精霊魔法などでパーティに貢献する感じです。ですので,精霊魔法のランクも十分に実用的なレベルで設定しました。
レベルキャップ開放の予定はなし?
アドゥリン関連のコンテンツとして,「魔境インスタンス」「マイ牧場」などが発表済みです(関連記事)。今回の取材で,それらを含めた拡張データディスク全体についての話をうかがうことは可能ですか?
松井氏:
今回は各コンテンツの担当者が同席していないので,それらに関してはまた機会を改めさせてください。
4Gamer:
では質問の方向を変えまして。アドゥリンの導入に伴い,レベルキャップの開放など,キャラクターの成長に関するシステムは用意されるのでしょうか。
松井氏:
成長という意味では,アドゥリンの各コンテンツを通じて,新たな装備品を獲得してもらうことが大きいですね。長期的には,メリットポイントの拡張なども検討しているものの,まだスケジュールを発表できるような段階ではありません。レベルキャップの開放は今のところ予定していません。
4Gamer:
FFXIの歴史を振り返ると,レベルキャップを開放するタイミングがちょっと独特ですよね。レベル75の時代が約6年半も続いたあと,トントン拍子で99まで開放されたときは驚きました。
松井氏:
最終的にレベル99まで上げようという話は,自分から提案を行い「ヴァナ★フェス2010」で発表しました(関連記事)。しかし,あれは少々急ぎすぎだったかもしれません……。
4Gamer:
ヴァナ★フェス2010では,「FFXIV」の新情報が一気に公開されたことも含め,個人的にはスクウェア・エニックス側からMMORPGの世代交代を促しているのかな,と当時感じたのですが。
松井氏:
当時の経緯を申しあげると,FFXIは長いあいだレベル75を基準に,各エリアのモンスターやマイキャラの装備品など,ゲーム全体のバランスを調整していました。これらのデータ量は膨大なものですが,仮にレベルキャップの開放を行うとなると,全部に対しバランスを再調整する必要があったんです。
4Gamer:
なるほど。
松井氏:
ただ,キャラクターの成長はRPGの本質的な面白さに結びつくため,プレイヤーからの要望は常にありました。そこで,レベル上げとは別枠の成長システムとして“メリットポイント”を導入したものの,遊び方が少しずつマンネリ化していったのは否めません。そういった状況が積み重なり,レベルキャップの開放に踏み切ったわけです。
4Gamer:
そういった事情があって,レベル75から99までを短期間で一気に開放したわけですね。
松井氏:
いま振り返ると,FFXIのレベルキャップが99になる頃には,「FFXI」から「FFXIV」へ世代交代が行われているかなという予想も社内にはあったのですが。いざ蓋を開けてみると,読みが外れた部分もありました。
4Gamer:
実際,現在もFFXIは月額課金のビジネスモデルでありながら,16台ものサーバーが稼動しているわけで,これだけ見ても国内最大級のMMORPGであることは明らかですよね。
松井氏:
アビセアを導入した当時は,レベルキャップを最低でも「10」は上げねばならないと感じていましたが,それくらいで留めておくべきでした。そうすれば,たとえば今回のアドゥリンのリリースに合わせて再び開放,といった展開も行いやすかったでしょう。正直言って悔やまれますね。
4Gamer:
ゲームシステム的に,レベルの数を3桁にすることは難しいのでしょうか。
松井氏:
システムの根幹に関わる部分なので,詳しい検証作業が必要になります。メニューの表示周りを調整する必要はあるものの,110や120辺りまでなら対応できそうな手ごたえはあるのですが……。少なくとも,さらなるレベルキャップの開放をアドゥリンのリリースに合わせて行うというのは,考えていません。
PlayStation 2版も問題なくプレイ可能
数年後には新規プレイヤー層にもアピールしたい
4Gamer:
“スクウェア・エニックスのMMORPG”という括りで考えると,「FFXIV」のβテストが本格的に始まり,また「ドラゴンクエストX」のサービスも堅調という状況です。あらためて,FFXIの立ち位置についてどのようにお考えでしょうか。
サービス開始から11年目に突入するFFXIには,長年続けてくれている熱心なファンが大勢います。彼らに向けて,新しい遊びをどんどん提供していかねばなりません。また同時に,FFXIに復帰してくれた人が「やっぱり落ち着くよね。楽しいよね」と言ってくれる作品でなければなりません。
その目標に向けて突き進んでいくのが,現在のFFXIの基本ステータスであり,私の使命だと考えています。
4Gamer:
MMORPGの長期運営を踏まえると,そういった既存/休眠プレイヤーだけでなく,新規プレイヤーを受け入れるための施策も必要になるかと思いますが,その点についてはいかがでしょうか。
松井氏:
現状最優先すべきは,アドゥリンを軸に,既存プレイヤーに満足してもらうことです。それをクリアしてから,段々とレベルを下げていって,今から約2年後を目処に,低レベル帯までまんべんなくカバーするのが理想です。
そうしてゲームシステムの受け入れ体制が整ったあとに,新規ユーザーに向けた施策を大々的に行いたいですね。
4Gamer:
PC,PlayStation 2,Xbox 360で同時展開するクロスプラットフォームは,FFXIが躍進した大きな要因の一つです。しかし現在,たとえばPlayStation 2版のサポートが,FFXIにとっての足枷になったりはしていませんか。
松井氏:
クロスプラットフォームはFFXIが選んだ道なので,受け入れるしかないですし,それに対してどうこう言うつもりはありません。
現在,PlayStation 2本体の製造は停止していますが,SCEの修理対応は継続しています。HDDの使用容量の問題も解決しており,たとえばアドゥリンの途中でクローズといったことは絶対にありません。ですので,PlayStation 2版で遊んでくださっている方も,気兼ねなく手に取っていただければと思います。
4Gamer:
たとえば風水士の“ジオコルア”は,パーティメンバーを指定するという形ですが,あれは地面に直接“羅盤”を置いても良さそうですね。システム的な制約により,それが行えなかったのかな,と思いましたが。
松井氏:
ええ。まぁ正直言って,メモリ周りの制限には苦労させられることが多いですね。
4Gamer:
他社のタイトルになりますが,「信長の野望 Online」のように,PlayStation 3版の展開は検討されないのでしょうか。
松井氏:
それについては現在は考えていません。実はPlayStation 3版を作るには,PlayStation 2とは別の部分で制約があったりするんです。HDDの使い方や,サービスポリシーなども違いますしね。
それに,開発とサポートに必要なリソースの兼ね合いもあります。クロスプラットフォームとはいえ,やたらと手を広げることがFFXIにとってプラスになるかというと,そうは限らないんです。
4Gamer:
昨年のヴァナ★フェス2012では,ユーザーインタフェース(UI)のリニューアルを予定していることが発表されました。あれは,PC版だけの機能なんですか。
松井氏:
そうですね。ただ,あれに関しては元々,アドゥリンのリリース前に実装することを目標としていましたが,アドゥリン関連の開発を優先するべく,押し出される形になっています。現在の導入時期としては,アドゥリンのリリース後を予定しています。
ヴァナ★フェス2012では,開発ロードマップも発表されていましたが,それらの進捗状況はいかがでしょうか。
松井氏:
率直に言って,大分破綻してしまいました(苦笑)。
いずれ何らかの形で,現在の状況をきちんとお伝えする必要があると感じています。
4Gamer:
FFXIVは今後盛り上がっていきそうですが,現在FFXIのプロデューサーを務める立場として,どのように受け止めていますか。
私個人としては,吉田(FFXIVプロデューサー兼ディレクター 吉田直樹氏)の,プレイヤーさんに向かって誠実に伝えるスタンスは,非常に勉強になります。
一方,FFXIのプロデューサーの立場として考えると,FFXIVの影響を受けるのは避けられないですが,それに対して何かを行ったりはしません。私がやるべきことは,アドゥリンを含め,胸を張ってFFXIのサービスを続けていくことです。
4Gamer:
このまま行くと,アドゥリンのリリース日と,FFXIVのβテストやプロモーションの時期が被ってしまいそうですが,どちらかをずらすことは検討されましたか?
松井氏:
アドゥリンは今期のプロジェクトとして出すのが前々から決定していました。一方,FFXIVは「新生」に相応しいクオリティに達し,吉田がOKを出すことを最優先しています。結果的に双方のタイミングが近くなってしまったものの,ずらすことは最初から考えてなかったですね。
4Gamer:
分かりました。では最後に,最後にそれぞれの立場から,アドゥリンのリリースに向けて意気込みをお願いします。
谷口氏:
新ジョブの「魔導剣士」は,これまでFFXIで培ってきたモンスターの知識と,プレイヤーの操作テクニックが存分に試されるジョブに仕上がっています。また「風水士」に関しても,これまでとは違ったアプローチによる支援系ジョブということで,とくに後衛を好む人に幅広く楽しんでもらえると思います。
どちらも丹精込めて手がけたジョブなので,じっくり楽しんでくれたら嬉しいです。よろしくお願いします!
松井氏:
私は元々,バトル系の開発や調整を担当していました。現在はプロデューサーとしてFFXIを統括していますが,バトル周りのバランスは,これからも責任を持って行っていきます。
これからアドゥリンがリリースされるという状況ですが,実装後の各コンテンツのバランス調整も継続的に行いますので,率直なご意見,叱咤激励などなど,思うところがありましたら,遠慮なくお知らせください。
4Gamer:
ありがとうございました。
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