レビュー
60種類もの「水上艦」「航空機」「潜水艦」に乗って戦える欲ばり太平洋戦争アクション
バトルステーションズ:ミッドウェイ
日本語版
兵器の操縦者,部隊長,指揮官
それぞれの立場で太平洋戦争を戦う
「太平洋戦争」はミリタリーゲームのメジャーな題材であり,新旧さまざまな作品が存在するが,本作はその中でも割と個性的な存在だ。バトルステーションズ:ミッドウェイの最大の特徴は,太平洋の主役である「水上艦」「航空機」「潜水艦」という異なるカテゴリの多数の兵器,そのすべてを操れるアクションゲームだということにある。
一口に「水上艦」といっても,小型ボートから巡洋艦,戦艦,そして空母などさまざまなタイプがあり,それぞれ推力性能や搭載兵器,耐久力などはもちろん,運用目的や任務まで違ってくる。ゲーム内でプレイヤーが操作できる兵器の種類を全部合わせると,なんと合計60以上もあり,それぞれ違ったプレイフィールを味わえるのだ。
そして本作では,マップ上のあちらこちらで戦っている多数の自軍兵器に,いつでも乗り換えて操作できる(ミッションやゲームモードにもよるが)。敵の陸上施設に向けて戦艦からの艦砲射撃で第一撃を与えてから,第二派として攻撃機で急襲,といったコンビネーション技を自分の操作で行える。また,戦場マップから敵の近くにいるユニットを探し出し,局地戦を次々と転戦するような遊び方も可能だ。
太平洋戦争に登場した,数多くの兵器を操れる。「水上艦」「航空機」「潜水艦」3カテゴリすべての登場兵器を合わせると,その数は60を超える |
テクスチャのレベルは,まぁまぁといったところ。よく見ると甲板で乗組員がせっせと働いていたり,空母に格納される航空機が翼を折りたたんだりと,細かい箇所にこだわりが感じられる |
さらには単体の兵器を操作できるだけではなく,部隊長や指揮官として各部隊へ指示も与えられる。まあこれについては後ほど詳しく書くが,つまりこれ1本で,太平洋戦争におけるアクションとストラテジーの両方を満喫できるゲームというわけだ。
バトルステーションズ:ミッドウェイは,兵器の種類こそ豊富だが,乗り換えを手軽に行えるのが魅力。フライトシミュレータのように,実機の再現度の高さや操作システムの緻密さが,ゲームとしての魅力に結びつくケースもある。しかし多くのライトゲーマーにとって,難しくて煩雑であればあるほど面白い……とは限らないのである。本作では,ややこしい予備知識をほとんど必要とせず,ゲーム内に登場するさまざまな兵器を気軽に操れるのだ。
各兵器の操作システムは,ある程度簡略化/共通化されている。基本的な操作システムを見ていくと,水上艦/航空機/潜水艦ともに「W」/「S」キーで推力の増減,そして「A」/「D」キーで方向舵の操作を行う。Shiftキーで武器を選び,照準を合わせてクリックで射撃,たったこれだけ。視点は一人称/三人称の切り替えが可能で,要するに一般的なFPSの操作とほぼ同じスタイルといってよい。機銃,対空砲,大砲,魚雷,爆雷など,武器の種類によって扱い方や適性は変わってくるが,発射時の操作はShiftキーで武器を選び,照準を合わせてクリックするだけと非常にシンプル。海空の各種兵器,そしてその武装を状況に応じて使い分けていくのが,このゲームの面白いところだ。
本作をプレイする前は,「3タイプの兵器の基本操作方法を覚えるだけでも大変そうだなぁ……」と少々不安に思っていたのだが,実際にはまったく逆だったことに驚いた。ここは大きなアピールポイントといえるだろう。
シングル用キャンペーンの各ミッションはストーリー仕立てとなっている。米軍視点のみだが,太平洋戦争の流れを追体験できる内容だ |
グラフィックスはなかなか綺麗な割に,マシンの処理はかなり軽い印象。大海原での壮大な戦いを,海から空から満喫しよう |
本作の主なゲームモードは,シングルプレイ用の「キャンペーン」と「個別シナリオ」,そして「マルチプレイ」の3種類。シングルプレイ用のキャンペーンは,アメリカ軍の新米士官“ヘンリー・ウォーカー”の視点で,真珠湾攻撃からミッドウェー海戦までを,全11ミッションでたどる内容だ。太平洋戦争の史実に詳しい人ならいうまでもないと思うが,米軍は真珠湾攻撃での奇襲などを受け,太平洋戦争の序盤は劣勢を強いられる。だがその後は日本軍からの猛攻に耐え忍びつつ,ミッドウェー海戦で大逆転というダイナミックな展開となる。
残念ながらこのキャンペーンを,日本軍の視点でプレイすることはできない。だがそれとは別に,海戦/空戦/水中戦に焦点を当てた個別シナリオが計10種類用意されている。これらの個別シナリオのうち,八つは日本軍視点のもので,中には戦艦大和の活躍をテーマにしたものもある。キャンペーン用のシナリオが史実をなぞった展開なのに対し,個別シナリオでは歴史の“if”を存分に堪能できるだろう。
マルチプレイに関しては,最大8人参加可能で,GameSpyとLANがサポートされている。専用の対戦サーバーや,対戦結果に応じたレーティングなどといったシステムはなく,マルチプレイは比較的あっさりとした内容だ。大勢で遊べば楽しそうな作りなだけに,マルチプレイにはもう少し力を入れてほしかったところ。
ローカライズに関しては,ごくたまーに珍訳が一部見られるものの全体的には高水準。日本軍の兵士は,ちゃんと日本語でしゃべる |
マルチプレイは2〜8名,10種類のマップでプレイできる。言語の関係もあり,多くの日本人にとってはシングルプレイ向けのタイトルといっていいかも |
水上艦/航空機/潜水艦の3タイプ
60種類の兵器を手軽に乗り換えできる
先述したように,本作の魅力は,「水上艦」「航空機」「潜水艦」という異なるジャンルの兵器を手軽に運用できることにある。だが,手軽とはいってもそれぞれの作り込みが甘いというわけではなく,こだわるべき部分はなかなかしっかりしているのだ。それでは実際にどのようにして,各兵器を運用していくのかを見ていこう。
○水上艦
本作に登場する兵器の数は本当に多い。それぞれ微妙に挙動が異なるため,ユニットを乗り換えるたびに新鮮にプレイできる |
射撃時の操作は簡単。カーソルを合わせると,弾薬の装填準備や距離などに応じて枠の色が変わっていき,これが緑のときにクリックすればだいたい当たる |
水上艦は主に,「主砲」「対空砲」「魚雷」「爆雷」の4種類の武器を使い分けて戦っていく。主砲は,海上の水上艦や地上建造物など,あまり動かない標的に対して強烈なダメージを与えられる。対空砲は,機銃/機関砲などいくつかの種類があり,敵航空機のような素早く動くターゲットに対して有効だ。ただし,できるだけ引き付けて発射し,さらに機体を直接狙うのではなくターゲットの移動を先読みして狙わないと,命中させるのは難しいだろう。
魚雷は対艦用として優れた威力を持つが,発射および装填にとても時間がかかり,相手に避けられられやすいのが難点。そのため進行方向を先読みし,さらに複数の魚雷を扇状に発射するといったコツが必要となる。最後の爆雷については,細かな狙いを定められないが,海中深く潜っている潜水艦に対して洋上から攻撃できる唯一の武器だ。
○航空機
航空機は対艦/対地攻撃において,その高い機動性を生かした三次元的な戦い方を得意とする。なんといっても醍醐味は,地面すれすれまで一気に降下して爆弾を落とす“急降下爆撃”。目標へまっしぐらに向かう機動の途中で投弾するため命中精度が高く,また見た目の迫力もピカイチだ。もう一つ,水上艦を攻撃する場合は魚雷も有効だが,かなり高度を低く保って落とさないと,着水時に暴発してしまうので要注意(実戦でそんなことは起きないのだが)。
そのほか,地上施設などに対して有効な機銃掃射や,爆撃機タイプの場合は水平爆撃などといった攻撃も行える。
航空機にはもう一つ,重要な役割がある。格闘戦(ドッグファイト)だ。航空機で航空機を叩き落す戦闘であり,最もアクションゲーム的なテクニックを必要とする。
○潜水艦
また,海中深くへ潜ることで敵からの攻撃/探知は回避できるものの,艦内に備蓄できる酸素量には限りがあるため,定期的に浮上して外気を補給せねばならない。また深く潜りすぎると,今度は水圧で艦体がダメージを受けてしまうので,これも考慮する必要がある。水上艦や航空機と比べると制約の多い兵器だが,敵の目をかいくぐって見事に目標を轟沈した瞬間は格別だ。
また本作では,複数ユニットによる部隊単位での運用が可能だ。とはいっても同時に複数のユニットを操作するわけではない。部隊としてユニットを登録すると,移動や攻撃などでオート操作のオン/オフ設定ができる。オンにすれば勝手についてくるので,ややこしいことを考える必要はなく,隊長気分を満喫できるだろう。
ちなみに単体ユニットの操作中でも,オート操作の設定を行える。応用例としては水上艦でのプレイ中,「魚雷回避などの複雑な操作をプレイヤーが行い,その最中の敵戦闘機への攻撃をAIに任せる」といったことが可能だ。
さらに本作では,指揮官的な立場も味わえる。TABキーを押して表示される戦場マップ上では,敵味方のユニットが記号で表示されており,それぞれのユニットに「移動先」や「攻撃先」を指定できるのである。これは要するに,ごく簡単なリアルタイムストラテジーをイメージしてもらえばよい。さすがに,この画面だけで戦闘に勝てるほど細かい指示は出せないが,大部隊による攻撃を計画できることで,単なる3Dアクションとは一線を画する存在となっている。
戦術マップ上で自軍へ指示を出しているところ。左クリックでユニットを選択し,右クリックで移動/攻撃先を指示。最小限の操作で行えるようになっている |
それぞれのユニットに対して,移動や攻撃などのAIのオン/オフを設定できる。この機能のお陰で,数多くのユニットを操るときも混乱せずにすむ |
シングルプレイのボリューム不足が若干気になるが
ミリタリーのベテラン/初心者に関係なくお勧め
逆に腰をすえて取り組もうと思ったら,結構細かいことができるのも嬉しい。例えば空母に格納されている戦闘機で部隊を編成するとき,機体の種類や数,搭載させる兵器などを細かく指定できる。ゲームに慣れていったら,オート操作の各項目を段階的にオフにしていくことで,さまざまな手ごたえを感じられるだろう。
オート操作を利用すれば,たとえ混戦に陥ってもほとんど混乱しなくてすむ。ちなみに自分の操作から離れたユニットは,基本的にオート操作になる |
アクションの完成度は高いが,ストラテジーに関してはおまけ程度と考えるのが妥当。このあたりは次回作に期待したいところだ |
本作の大きな特徴である,アクションとストラテジーの融合についてだが,これはストラテジーの部分に物足りなさが感じられた。例えば戦場マップでのプレイ時に,複数ユニットをドラッグで選べないなど,ユーザーインタフェースを含めて全体的に作り込みが甘い。ただし,本作ではストラテジー要素などおまけにすぎないといえばそれまでなのだが。
しかし,本作のシングルプレイの内容は,本作の特徴を必ずしも生かしきれてはいないように思えた。例えば最初のシングルプレイ用キャンペーンの真珠湾攻撃の場合,“ボート操作→対空射撃→爆雷→戦闘機によるドッグファイト”といったふうに切り替わっていく。さまざまなシチュエーションがテンポ良く次から次へと出てきて,登場人物によるカットシーンも多く,退屈さがない。
だが見方を変えると,きっちりと流れが決まっているキャンペーンでは,「いつでも戦場内の好きなユニットに乗り換えできる」という本作の要素との相性があまり良くないのである。
敵艦に向け,角度を付つて魚雷を発射したところ。操作システムはシンプルだが,細かな運用テクニックは結構あって,上級者でも手ごたえがある |
空母への着艦のような難しい操作も,本作ならセミオートで行える。面倒な部分はAI任せで,面白そうな部分だけ自分でプレイすればいいのだ |
この点は個別シナリオでフォローしてほしかったところだが,いかんせんシナリオの数が10と少ない。仮に,だだっ広い戦場の中のそこかしこで,局地戦が行われているようなマップを舞台にしたフリープレイモードがあれば,本作の特徴的要素が一気に脚光を浴びているはず。印象も大きく違っていたことだろう。
総合評価としては,本作はベテラン/ビギナーに関係なく,太平洋戦争の海戦に興味がある人に向けて,強くお勧めできるタイトルである。あとはシングルプレイのボリュームを増やし,マルチプレイももう少し整備してくれれば,海戦ゲームの定番シリーズになれる可能性も十分あるだろう。
欧米では本作の続編「Battlestations: Pacific」の制作が発表されており,はたしてどのような進化を遂げているか実に興味深い。続編がリリースされるその日を,本作をプレイながら楽しみに待ちたいと思う。
欲をいえば,日本軍視点でのキャンペーンもプレイしてみたい。このあたりは次回作「Battlestations: Pacific」に期待だろうか |
本作は総合的に見て,太平洋戦争の勇壮な雰囲気を楽しめる優れたタイトルである。ミリタリー系のタイトルに手を出しにくかった人には,とくに強くお勧めしたい |
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