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2011年,ハンゲーム×コンシューマゲームメーカーの共同開発ラッシュが始まった! でも……なぜ!? 黒川文雄事業部長に,その真意を聞いてみた
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印刷2011/08/29 00:00

インタビュー

2011年,ハンゲーム×コンシューマゲームメーカーの共同開発ラッシュが始まった! でも……なぜ!? 黒川文雄事業部長に,その真意を聞いてみた

ゲーマー獲得の意思を明確に掲げ
ハンゲームを日本のNo.1ゲームポータルに


4Gamer:
 今やハンゲームは3900万ユーザーアカウント,「Mobage」と「GREE」はそれぞれ1500〜2000万アカウントを獲得しており,各コンシューマゲーム機も数百万台という規模で普及しています。これだけ規模が大きくなると,それぞれがカバーしている客層はすでに被っていますよね。しかし,Mobage/GREEが勢いを増していると騒がれているにも関わらず,ハンゲームの公式サイトを見ると,同接数が落ちている気配もありません。

画像集#010のサムネイル/2011年,ハンゲーム×コンシューマゲームメーカーの共同開発ラッシュが始まった! でも……なぜ!? 黒川文雄事業部長に,その真意を聞いてみた
黒川氏:
 先日,社内で「TERAのクライアント(※約25GBある)をダウンロードしているあいだ,ハンゲームのスマートフォンアプリやブラウザゲームを遊んでもらおう!」という冗談を言っていたのですが(笑),それに近い使い分けを,すでに皆さんがやっているんじゃないでしょうか。

4Gamer:
 NHN Japanはすでにさまざまな分野に手を広げていますが,今のハンゲームで“提供できていない面白さ”があるなら,それは何でしょう?

黒川氏:
 難しい質問ですね……直接の答えにはならないかもしれませんが,実のところ,ハンゲームはゲームポータルというよりも,アバターを介した「コミュニケーションポータル」の意味合いが強いんです。本来であれば,もっとゲーマー層が多くなって然るべきですし,そうなるべく我々もサイレントなゲーマー層を取り込まなければなりません。
 またモバイルでは,NHN Japanはフィーチャーフォンで早くから展開していたにもかかわらず,あとから来たMobageさんやGREEさんに何周も遅れをとってしまいました。そこでスマートフォン事業では,その遅れを取り戻そうとしています。
 今までは,どこか「アバターポータルでも収益性が高ければその方向性もあり」という考えがありましたが,ゲームとスマートフォンを本気でお客様に訴求しない限り,ハンゲームは真のNo.1にはなれないんです。なので,そこを強化して新しいお客様を取り込むことが,今のハンゲームに求められているステージになります。

スマートフォンでハンゲーム
画像集#017のサムネイル/2011年,ハンゲーム×コンシューマゲームメーカーの共同開発ラッシュが始まった! でも……なぜ!? 黒川文雄事業部長に,その真意を聞いてみた

4Gamer:
 でも,ゲームよりアバター(≒コミュニティ)が強いというハンゲームの現状自体は,決して悪いことではないとは思うんですよ。少なくとも数年前は,アバター型のビジネスモデルが「革新的だ」と言われていたし,それは今のコミュニティサービス全般にも繋がる一つの指針になったと感じています。
 でも一方で,ゲームそのものにお金を払うという方向で,MobageやGREEは急成長し,現在もそれを維持していると言えますよね。それに対して,ハンゲームとしては何を感じ,どう対応をしていくつもりなんでしょうか。

黒川氏:
 だからこそ,もっとお客様を取り込めるんじゃないか,本来のハンゲームの存在価値であるゲームの部分を強化して,もっとゲームに関心の高い方にアピールできるんじゃないかと考えているんですよ。

4Gamer:
 例えばですが,ハンゲームは,ほかのポータルより客単価が高いとか低いとか,そういったデータなんかは出てるんですか?

黒川氏:
 タイトルによりますね。ARPPU(有料会員あたりの月売上)でいうと,ファミスタ オンラインですと平均5000〜6000円くらいと少し高めで,ほかのタイトルなら2000〜5000円くらいの間が普通です。アバターのほうは,一人あたりの客単価は低いんですが人数が圧倒的なので,かなりの収益になっています。

4Gamer:
 ハンゲームが日本でサービスを開始した当初は,韓国でもアバターを使ったコミュニティポータルが話題になっていましたよね。そこでの遊びはコミュニケーションが中心,ビジネスもアバターの販売がメインで,ゲームはいってしまえばオマケでした。
 しかし,先ほどお話しにも出たように,現在のソーシャルゲームでは,プレイヤーはゲームを進めるためにお金を払っています。この変化はどこから生まれたと考えていますか?

黒川氏:
 一つには,日本のモバイル端末の場合,キャリア課金でゲームを遊びながらでも支払いが手軽にできることがあるでしょう。小額で時間を買っているつもりだったのが,気づいたら結構まとまった額になっていたというケースが多いと思います。これがケータイでなければ,もっと心理的なハードルがあったかもしれません。



ゲーマーの獲得/育成と同時に
ソーシャルゲームが開いたステージの“次”を生み出す


4Gamer:
 では,先ほどの“提供できていない面白さ”を踏まえてもらって,2011年末からローンチされるタイトルを含め,中長期的にはどういった方針で事業を進めていくのでしょうか?

画像集#018のサムネイル/2011年,ハンゲーム×コンシューマゲームメーカーの共同開発ラッシュが始まった! でも……なぜ!? 黒川文雄事業部長に,その真意を聞いてみた
黒川氏:
 奇麗事をいうつもりはないのですが,やはり「ゲームを遊んでくださる人」を増やしていかなければなりません。これはコンテンツ業界に携わる者にとっての課題です。
 とはいえ,もはやゲーム専用機だけでゲームを遊ぶ時代でもありませんし,かといってケータイなどで遊べるものが「求められているゲームのすべてか」と言われると,それもまた違うと思います。

 中には,6000〜8000円くらいで販売したパッケージと同等のものを,数百円でケータイ用のコンテンツとして販売するところもありますよね,それでは一時的に売上が上がっても,結果的にパッケージを買うお客様を逃すことにつながってしまいます。
 そういう時代のなか,我々自身はもっと展望をしっかり持って,デバイスの発展とともに,有意義に時間を過ごせて,そしてその時間を楽しいと思ってもらえて,なおかつそれを続けてもらえるようなものを提供していくことで,新しいお客様を獲得できるのではないかと考えます。新しいエンターテイメントコンテンツを消費してくださるお客様も増えていくのではないか,と。

4Gamer:
 先日,SCEの吉田さん(※)もまったく同じことを言っていましたね。

※吉田修平氏:SCEワールドワイドスタジオ プレジデント。SCEのソフト開発の総責任者。PlayStation VITAの開発にも携わっている

黒川氏:
 え,そうなんですか? でも私は常々そう思っているんですよ。「無料でゲームが遊べる」というのは,決して間違っていないんですが,さらに楽しむためににお金を払っていただく部分がないと,結局,ビジネスが立ち行かなくなってしまいます。そこでいかに気持ち良く,いかに能動的に,いかに有意義にお金を使っていただけるかというところが,我々に求められている部分になるんです。

4Gamer:
 なるほど。少しゲームからは離れるのですが,エンターテイメントにお金を払うことについて,黒川さんはどうお考えですか? 昨今では景気の影響などもあって,財布の紐が固くなっていると言われますが,エンターテイメントにお金を払う人はいなくなったりしませんよね。

黒川氏:
 私は,「共有体験」がキーなのではないかと考えています。映画にしても,レンタルビデオやDVDやBlu-rayが登場するたびに「劇場がなくなる」と言われてきましたが,それは今でも残っていますよね。むしろシネコンは増えています。そこには,その時代の共有体験みたいなものがあるのではないか,と。
 今でいえば,Mobage/GREEですよね。誰かがやってるから,誰かに薦められたから,あるいは「このアイテムが欲しいから,君もやって」と誘われて始めて,体験を共有している。あるいは体験を(やっていない人に)広げていく。時代は変われど,エンターテイメントの共有体験という部分は,こういった感じであり続けているのではないでしょうか。
 映画でいうなら,決まった時間に始まって,上映中は時間に拘束され,皆で同じスクリーンを見るという,言ってしまえば非常に「不便」なエンターテイメントです。しかし,そこでしかできない体験,そこでしか共有できない何かがあるんです。
 それと同じことが,今,パーソナルなツールの中でも起きているんじゃないか,ということですね。我々は,それをオンラインゲームとして再現しようとしているんです。

4Gamer:
 なるほど。今のお話でいえば,映画にはコンテンツそのものの面白さだけでなく,ショッピングコースと組み合わせるなど,トータルなエンターテイメントとして価値を演出するケースも見受けられるようになりました。
 一方でゲームは,新しい動きがあるたびに,すぐ「従来型のゲームはもうダメ」といった話に飛躍してしまったりする。

画像集#004のサムネイル/2011年,ハンゲーム×コンシューマゲームメーカーの共同開発ラッシュが始まった! でも……なぜ!? 黒川文雄事業部長に,その真意を聞いてみた
黒川氏:
 従来型のゲーム,とくにコンシューマゲームは1対1のコンテンツです。その一方で,ソーシャルゲームは1対n,あるいはn対nという多人数が交流するからこそ広がったのではないか,と考えます。その中では,先ほどのお話しのように「これ欲しいから君もやって」といった,人間関係を消費するような新しい遊び方も生まれています。本質は不変だけれど,時代に合わせて変化する。ネット対戦が受けているのも,同じ理由でしょう。
 テレビもそうですよね。双方向性,視聴者参加という形で,今は一方的に番組を流すだけではなくなっています。

4Gamer:
 これだけ人間関係が希薄になっている時代ですから,お互いの人間関係を成立させるきっかけが必要なんでしょうね。その一つが,今はソーシャルゲームということなんでしょうか。

黒川氏:
 時代の移り変わりの中で人間関係が希薄になっています。日本人的な意味での人間関係を維持したり,確認したりするツールの一つとして,ソーシャルゲームのあり方は正しいものでしょう。もちろん,それがずっと続くわけでもないですから,いずれまた新しいものを生み出さなければならなくなるとは思います。ソーシャルゲームは今の時代だからこそ評価され,支持されたと想っています。

4Gamer:
 オンラインゲームに関していうなら,MMORPGにおけるパーティプレイは共有体験としてイメージしやすいですよね。
 その一方で,例えばFacebookのソーシャルゲームでは,“フレンド10人から承認を得ないと建造物を建てられない”といった,人との関わりを強要する仕組みがあって,それが1ボタンでスマートに完結してしまう。結果,見知らぬ人からも依頼が殺到したりするわけですが,それが果たしてコンテンツを軸に「コミュニケーションをとっている」と,ひいては「共有体験をした」と言っちゃっていいものかというところは,やはり疑問が残るんです。面白いのは面白いんですけれど。

黒川氏:
 それがずっと続くとは思えないですよね。ただ,そういった今があるから次が芽生えてくるという気持ちもあるので,必要な過程なのかなとは考えています。

4Gamer:
 それでは長くなってしまいましたが,最後に何かメッセージをいただけますか?

黒川氏:
 はい,ありがとうございます。ハンゲームは2010年に10周年を迎え,今,NHN Japanではこれまでと違うものを作ろうと考えている最中です。私どもは,お互いチャレンジできるパートナーと仕事をしたいと考えています。もちろん,私どものほうでも積極的にアプローチしていきますが,もしNHN Japan/ハンゲームと一緒にブラウザゲームを企画・開発してみたいという企業様がいらっしゃれば,ぜひ,お声掛けください。

 「これまでと違うものを作ろうと考えている」と言いましたが,一方で,我々は「愚直にやっていくしかない」とも考えています。タイトルや会社のネームバリューに甘えるのではなく,どれだけ真剣に作り,いかに皆さんに届けるかということが重要なんです。モノ作りをするうえでは作ったゲームをいかに遊んでいただけるかどうかが大事なんですよね。
 かけられるお金の中で,どれだけ良いものが作れるかに費やす努力,それはこれからも大事にしなければいけませんし,その結果が遊んでくださる方を増やしたりということにも繋がります。「これはダメだな」と思われたらやっぱりお客さんは離れてしまいますから,そうならないためにも,より真剣にモノ作りを続けなければなりません。
 これは私自身も含めて,すべてのオンラインポータル,ゲームパブリッシャ/デベロッパが意識すべきことです……と,いってしまうと風呂敷広げすぎですかね(笑)。

4Gamer:
 いやいや,同じ考えを持つ人は決して少なくないはずです。
 本日は,ありがとうございました。

画像集#013のサムネイル/2011年,ハンゲーム×コンシューマゲームメーカーの共同開発ラッシュが始まった! でも……なぜ!? 黒川文雄事業部長に,その真意を聞いてみた

 もともと黒川氏は非常にバイタリティがあり,これまでもゲーム業界でさまざまな活躍をしてきたのだが,このインタビューからは,氏がNHN Japanに入社してから,これまで以上に充実した日々の業務に邁進している様子が読み取れるのではないだろうか。
 ここ数年の間に,日本国内では積極的にオンラインゲームを企画・開発しようという機運がすっかり減退しているなかで,老舗ゲームポータルのハンゲームが続々と国産ブラウザゲームを展開していくというのも,4Gamerとして心強い限りである。
 この記事が掲載される頃には,「ブラウザ カルネージハート」と「プラネットフロンティア」の正式サービスが開始され,「シュヴァリエ サーガ タクティクス」のより詳細な情報も発表されていることだろう。最近ではめっきり少なくなってしまった,国産オンラインゲームの発展を願う意味でも,今後の展開に注目したいところだ。

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「ブラウザ カルネージハート」インタビュー

「シュヴァリエ サーガ タクティクス」インタビュー

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