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[GDC 2023]「メイプルストーリー」が“楽しさを継続させる”ために行ってきたこと。それを拡張する新プロジェクト「MapleStory Universe」
20年という歴史を持つ「メイプルストーリー」のライブサービスで得た知見から導き出された答えを伝え,それをブロックチェーンによりさらに拡張させた新たなプロジェクト「MapleStory Universe」(メイプルストーリー ユニバース)を紹介する,ネクソンによるセッションがGDC 2023にて行われた。
「MapleStory Universe」のProduction DirectorであるSunyoung Hwang氏による,「Web3 Forum: 'MapleStory Universe': Perfecting the Core MMORPG Experience with Blockchain」と題された同セッションのレポートをお届けしよう。
ダークで複雑なジャンルだと誤解されがちだったブーム初期のMMORPGのなかで,その概念を根本から覆すような,可愛らしいグラフィックスとカジュアルなゲーム性で注目を集めたメイプルストーリー。登場以降,多様なプレイヤー層を構築し,MMORPG,ひいてはオンラインゲーム全般の普及に大きな役割を担った。
プレイヤー数は累計約1億8000万人で,現在もその人気は大きく,約5000万のアカウントが10年以上アクティブであるという。ゲームの規模が大きくなるのに合わせて収益は上昇し,リアルイベントや有名人とのコラボなどで独自のカルチャーを築いている。
サービスを維持すること自体が大変なオンラインゲームにおいて,成長を続けながら20年という長期のサービスを続けてきたメイプルストーリーは,いったいほかと何が違うのか。氏はメイプルストーリーの“サステナブル(持続可能)なライブサービス”を実現するためには,当たり前のことだが難しい“楽しさを継続させること”が重要だと語る。
新しい要素が増えても,初めからあったゲームの楽しさが減ってしまっては継続してプレイするのは難しい。何度も戻りたくなるようなゲームにするには,ゲームの核となる楽しさの要素を知り,それを時間と共に強化することが必要なのだ。
では,メイプルストーリーのゲームの核となる楽しさはどこにあるのか。それは,The Fun of Winning Items(アイテムを獲得する楽しさ)と,それによって味わえるRX(The Reward eXperience。報酬体験)だ。「何度も繰り返し同じ場面に挑み,貴重なアイテムを入手した」「通常のやり方では敵わない強大なボスを試行錯誤のうえでようやく倒した」といった,“ご褒美”から得られる新鮮な多幸感や恍惚感を忘れられないという人は多いだろう。
良質なRXを生むのに必要なものはシンプルだ。プレイヤーに良いアイテムを用意し続けるだけ。レベルアップの道筋も違えば,コンテンツの好みも人それぞれなオンラインゲームにおいて,一貫して安定した良いアイテムを生み出し続けることは,仕事としては難しいことであるが,しかし本質の部分を見るとそれはシンプルで,解決できるものだった。
RXをプレイヤーに提案するため,開発チームは2つの基準を設けた。一つはUtility(実用性),もう一つはRarity(希少性)だ。
実用性のあるアイテムでのRXに重要なのが,新たなアイテム登場とともに,そのアイテムの価値が高まるような形でコンテンツのアップデートを用意すること。例えば氷の上を歩けるスニーカーがあるとする。その名のとおり,普通のスニーカーより氷上を歩きやすいが,氷がなければほかのスニーカーと同じだ。実用性のある報酬を用意するには,それが有効な場面も用意しなければならない。
一方,希少性のあるアイテムでのRXでは,アイテムの価値を失わないようコンテンツを管理することが重要だ。一見,取るに足らないようなアイテムでも,入手が困難なものは欲しいという気持ちが高くなる。一方,需要と供給のバランスを乱され,アイテムの価値が下がるようなことがあれば,ゲーム自体が最終的に破綻してしまう。
この価値を守るため,200人以上のプロのデータ分析チームがBOT対策にあたっているという。こうした取り組みにより,過去20年間で1000万以上のアカウントを停止。ライブゲーム運営用に特別に構築した自動化システムがそれを実現したという。
では,これから先20年のメイプルストーリーはどうなるのか。その“価値”の部分を担うユニークなRXをさらに広げる形で行われるのが,ブロックチェーン技術の特性を生かし,複数のコンテンツによって作り上げられる「MapleStory Universe」(メイプルストーリー ユニバース)だ。セッションでは4つのコンテンツが紹介された。
「Maplestory N」は,既存のメイプルストーリーにNFTの要素を追加した,ゲームのメインコンテンツだ。プレイヤーは入手したアイテムのデジタル所有権を持つことになる。「RX 2.0」と呼ばれたMaplestory NのRXは,所有権が生まれることで以前より強力な報酬体験が得られ,そのモバイル版となる「Maplestory N Mobile」とのアイテム共有,独自マーケットでの販売なども行える。
PC,モバイルの両方でアクセスできる「Maplestory World」は,ブロックチェーンゲームを構築できるサンドボックスプラットフォーム。プレイヤーがクリエイターとして参加し,メイプルストーリーのIPリソースを使って自身のアイデアを形にできるという。プレイヤーはゲームコンテンツの所有者となり,この世界での貢献によって今までにない形でのRXが得られるわけだ。
さらに,SDKアプリの提供も予定されており,それはイベントスケジューラーや報酬のチェック用ツール,はたまたヘルスケアといったアプリなど,プレイヤーの想像力次第でさまざまなアプリが制作できるという。氏は同アプリに,MapleStory NやMapleStory Worldとは異なる形でのユニバースの広がりに期待しているという。
メイプルストーリー ユニバースに抱いているビジョンとして,MMORPGとしてのメイプルストーリーの究極形があると語るSunyoung氏。ブロックチェーンが無限の拡張を可能にする仮想世界に,開発チーム,クリエイターとなったプレイヤーたちが一緒になって進化することで,既存の枠を超えたより大きなメイプルストーリーを構築し,それを現実にしていく。
課題も多いNFTだが,「(メイプルストーリー ユニバースが)メイプルストーリーの次の20年の基礎になると強く信じているし,ワクワクしている」というメッセージで,セッションは終了した。
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