インタビュー
オンラインカードゲームの覇者,デックスエンタテインメント黒川文雄氏に聞いてみた――。今だから話せるアルテイルの道のり
今回取り上げる「アルテイル 〜神々の世界『ラヴァート』年代記」(以下,アルテイル)も,そんなセカンドゲーム的なポジションに位置するオンラインゲームの一つ。アルテイルは,2004年7月にサービスインした対戦型のオンラインカードゲームで,プレイヤーは,ファンタジーベースの世界観を背景に,クリーチャーや魔法を表すカードを駆使して戦っていく。
今でこそ累計登録会員数50万人(2007年12月7日時点)と,国内でも屈指の人気を誇るオンラインカードゲームとなったアルテイルだが,2004年のスタート当初は,プレイヤーも少なく閑散としており,文字通り閑古鳥が鳴く状況が続いていた時期もある。そんなアルテイルが,なぜ持ち直し,人気オンラインカードゲームとしての地位を築いていけたのだろうか? 業界内でよく言われる大手ポータルサイトとの連携だけがその理由なのだろうか?
4Gamerでは,そんな疑問を解き明かすべく,本作の開発/運営元であるデックスエンタテインメントの社長 黒川文雄氏にインタビューを行った。黒川氏といえば,セガの広報担当,あるいはデジキューブの取締役として,ゲーム業界では名の知れた人物。なぜオンラインゲームに取り組もうと思ったのか,そして現在に至るまでアルテイルがたどった道程などなど,“今だから話せる”話題も含めて,いろいろな話を聞くことができた。
本日はよろしくお願いします。まず,デックスエンタテインメントという会社について教えて頂けますか?
■黒川氏:
もともとは私が,映像関係や流通関係,そしてゲーム会社に勤めていたこともあり,映像,音楽,ゲームという三つのエンターテインメントを柱として扱う会社を立ち上げようと考えていまして,2003年にインデックスグループの出資を受けて設立したのが,このデックスエンタテインメントです。
■4Gamer:
セガやデジキューブなど,多彩な経歴をお持ちですよね。
■黒川氏:
会社設立の直接の経緯でいうと,おっしゃるように私はデジキューブというコンビニエンス・ストアを使ったソフト流通会社の役員をやらせて頂いたことがあって,そこで主に映像や音楽のソフトの仕入れなどを担当していました。私が担当した事業部自体は,おかげさまでそれなりの売上規模を築くようになるまで成長していけたのですが,デジキューブ全体で見ると,大作ゲームのありなしで経営が大きく揺さぶられるなど,あまり健全な経営状態とはいえない状態だったんです。
■4Gamer:
確かにスクウェア(現スクウェア・エニックス)のタイトルに依存していた感はありますね。
■黒川氏:
ええ。ですから私としては,映像と音楽の事業を独立/強化させることで,より健全な,あるいは強固な会社を作れるんじゃないかということを当時から考えていました。そして実際,デジキューブ在籍中に,その方向性で動いていた時期もあったんですよ。
■4Gamer:
おや,そうなんですね。しかし陽の目は見てないですよね……?
■黒川氏:
ええ。その旨を経営会議にかけて見たところ,「それはやめてくれ」と言われてしまったんですね。なぜかというと,当時は会社(デジキューブ)の経営状態も良くなかったし,資金的な問題もあったし,戦略的な子会社は創れない,総合的に見て「できない」という判断になってしまった。
私としては,自分がデジキューブでできることにも限界を感じていたし,それだったら会社を辞めて,自分でゼロから立ち上げてもいいんじゃないかな,と。ある意味,自分の人生の集大成にするつもりで,会社を立ち上げることにしました。
■4Gamer:
映像,音楽,ゲームというお話がありましたけど,その設立当初から“オンラインゲーム”というものに取り組む方針だったんでしょうか?
■黒川氏:
実は,まったくの最初から,というわけではないです。ゲームをやろうということ自体はもちろん最初から考えていましたし,これからの時代にゲームを扱うにはどうすればいいのか? ということは,当時から真剣に考えていました。
ただ,資本金5000万円で設立した会社でしたから,設立当初は資金的な余裕があまりなかったのもあって,コンシューマゲームのタイトルを開発するという選択肢は,正直厳しかったというのはあります。
2003年というと,まだDSやPSPといった携帯ゲーム機の市場も立ち上がってない時期ですしね。
■黒川氏:
そうです。当然,RPGなんかを作れるわけもないですし。当時は,“小さい資金でゲームを作る”ということ自体がほとんどなかったような状況だったんです。プレイステーション1の初期の時代のような夢を見れるような状況でもなかったし,我々のような新参の会社に対しては,プラットフォーマーがバックアップしてくれるワケもない。正直,悩んでいました。
■4Gamer:
それでPCオンラインゲームに?
■黒川氏:
これは偶然の出会いではあるんですけど,そのように悩んでいた時期に,私の友人でゲーム関連のマーケティングをしている人物から,現在は弊社のスタッフとして活躍する,ゲームのプランナーを紹介されことが一番最初のキッカケでした。
■4Gamer:
それがアルテイルだったんですか?
■黒川氏:
ええ。最初のプレゼンを受けて,非常に可能性を感じました。同時に,マーケットは非常に小さい/ニッチだろうとも感じましたが……。
ただ,カードゲームが好きなお客さんは必ずいると思いましたし,私もそんなにカードゲームに詳しかったわけではないのですが,それこそ公園なんかで子供達がポケモンや遊戯王などを遊んでいるのを見たときに,「これはネットの特性をいかせるんじゃないか」と考えました。
■4Gamer:
ネットの特性をいかせる,というと?
■黒川氏:
リアルなカードゲームだと,遊ぶのにゲームショップであったり公園であったりという一定の場所に集まらないといけないわけですけど,オンラインであれば,24時間どこからでもプレイヤー同士をマッチングできるわけで,そこに新しい遊びの“場”が作れるんじゃないかと感じたんです。
■4Gamer:
なるほど。
■黒川氏:
また当時はこういったオンラインのカードゲームというもの自体がありませんでしたから,もしかしたら,我々が先行していけるのではないか? そして先行者利益を享受できるのではないか? というビジネス的な打算もあったことは否定しません。
さらに言わせていただくならば,セガ,そしてデジキューブといった会社でゲーム関連のマーケティングをさせて頂いた経験上,パッケージ販売というビジネスモデルに限界を感じていたというのはあります。一度売ったらそれでお終いというスタイルが,どうにも釈然としませんでした。
■4Gamer:
なるほど。そういうビジネスをずっと見てきたわけですしね。
■黒川氏:
はい。そういう意味でも,会社設立当初から「これからはオンラインゲームだ!」みたいに考えていた節はありましたね。そしてその結果,アルテイルというタイトルに出会えたのではないかと思います。
2度の作り直しがあった「アルテイル」の開発秘話
アルテイルの開発自体はスムーズに進んだんですか?
■黒川氏:
いやぁ……それがなかなか(苦笑)。
2003年の6月あたりからプロジェクト自体はスタートしたわけですが,当初は,6か月もあれば完成するというスケジュールでした。予算も,詳しくは言えませんけど,数百万円というレベルです。
■4Gamer:
サーバー代なども含めて数百万円?
■黒川氏:
ええ,サーバー代なども含めて。私も最初は「本当にそれだけでできるんだろうか?」と正直疑問には思っていたんですが,開発スタッフが「できます!」と答えていたので,まずは彼らを信用することにしたんです。
ただ……結論から言ってしまいますと,6か月が経過した2003年末になっても,ゲームがまともに動く状態には至らなかったんです。もちろん,定例の進捗ミーティングなどは行っていましたが,出てくるものが毎回同じになってきて,埒があかない状態になってしまった。
■4Gamer:
失礼ながら,ありがちといえばありがちな話ですね……。
■黒川氏:
ええ,本当に。そこで開発関係者を集めて,「あなた達だけで本当に作れるの?」といういやな話をすることになって……。結論としては,「すいません,できません」という話に落ち着きました。
■4Gamer:
やっぱりサーバープログラミングなど,そのあたりで行き詰まったんでしょうか。
■黒川氏:
もちろんサーバープログラムなどの問題もありましたが,データベースなど,もうあらゆる部分で行き詰まっていましたね。ともかく,「このままでは完成しない」という結論に至ったので,私としては,新しい別の開発会社に再開発をお願いすることに決めました。デザイン/グラフィックスなどの素材はそのまま流用しましたが,基本的には,全部作り直すという形です。
■4Gamer:
ゲーム開発会社ですか?
■黒川氏:
そうですね。Playstation 2などのソフトの開発実績があると売り込みがあった会社さんでした。しかも実質的には,そこのたった一人のプログラマさんが作り上げたのが,最初のアルテイルという感じになりますね。
■4Gamer:
なんだかゲーム業界黎明期みたいなお話ですね……。おそらく,私が最初に触れたアルテイルもその頃のバージョンだったと思います。
■黒川氏:
ちょうど正式サービスが開始された直後あたりでしょうか? その頃のアルテイルは,まだまだ完成度の低い箇所が多くありましたし,お世辞にも出来が良いとは言えない状態だったと思います。また当時は,運営状態もひどいもので,ゲームサーバーの監視などが人力(目視)で行われていただとか,今だから言える部分も多々あります(苦笑)。
■4Gamer:
サーバーの監視ツールなどを使ってなかったんですね。
■黒川氏:
お恥ずかしながら,その通りです。基本的には,先ほどお話ししたゲーム会社さんに運営も一緒に任せるというスタイルだったのですが,そのゲーム会社さんも――当たり前といえば当たり前ですが――オンラインゲームに関するノウハウがほとんどない状態で……。結果として,品質の低いサービスを提供することになってしまいました。
■4Gamer:
その当時に大々的な広告展開などはされていましたっけ?
■黒川氏:
まったくしていませんでした。とてもそういう状況じゃなかったといいますか,簡単に言えば「身の丈に合わなかったから」という感じですかね。正式サービス開始からしばらくの間はプレイヤー数も伸び悩んでいましたし,月々の売り上げもひどいものでした。会社としてかなり苦しい時期が続きましたが,ランニングコストを抑えて,じっくりやっていくしかないという思いもありました。
■4Gamer:
ちなみに,サービス開始当初の売り上げはどのくらいだったのですか?
■黒川氏:
うーん……確か最初の月が100万円前後とか……そんなレベルだったと思います。開発費がどうこう言う前に,ランニングコストとかを考えるともう全然駄目というか(笑)
■4Gamer:
うわ,それは厳しい。
■黒川氏:
売り上げ/ユーザー数的にも厳しかったんですけれど,この頃のアルテイルはまだまだプログラム的な問題も山積されてました。その後ガマニアさんに繋いだ(サービス提供)ことで,おかげさまで一気にユーザー数が増えて,その後にハンゲームさんに繋ぎ込みをさせて頂くと,瞬く間にサーバーがダウンしてしまったりだとか。プレイヤー,そして協力会社の方々に多くのお叱りを受けた時期でもあります。
■4Gamer:
今はサーバーも安定していますし,ゲームもかなり快適になっていますよね。
■黒川氏:
ええ,2004年7月のサービス開始から10か月くらいは騙し騙し運営する形で続けていたのですけど,さすがに「これでは厳しい」という結論に至って,もう一度ゼロから作り直すことになったんです。クルマで言うならば,シャーシなどの基礎部分から作り直すような,本当に一番最初の基本設計からのやり直しとなりました。
■4Gamer:
それは以前と同じ開発会社に依頼したのですか?
■黒川氏:
いえ,今度はゲームとは関係ない開発会社にお願いすることになりました。この会社は,いわゆるFlashやWebシステムの開発に長けた会社で,ゲーム開発の実績はありませんでしたが,サーバープログラムやシステムの設計などに関しては高いノウハウを持っていました。この会社と出会えたことで,現在のアルテイルがある,といっても過言ではないと思います。
■4Gamer:
初期のプロトタイプから含めると,今のは三つめのバージョンということですね。
■黒川氏:
そうなりますね。この三つめのアルテイルが完成した時点で,プレイヤーさんにもだいぶストレスなく遊んで頂けるような状態になってきたので,広告活動に関しては,バナーやアフィリエイトなど積極的に行う方針にシフトしました。登録者数が目に見えて増えていったといえるのは,この頃くらいからではないかと思います。
■4Gamer:
しかし,開発会社をいわゆるゲーム会社以外にすることに不安はなかったのでしょうか?
■黒川氏:
私の個人的な経験からではあるんですけれど,やっぱりパッケージの売り切りビジネスを長年やってこれられたようなゲーム開発会社さんでは,オンラインゲームというソフトの開発は厳しいのではないか? という感覚があるんです。
■4Gamer:
それは継続的に開発/運営が必要だという部分などですか?
■黒川氏:
ええ。私もセガやデジキューブといった会社を経ているから分かるんですけれど,パッケージビジネスの場合だと,どうしても開発を終えた時点で「すべてが終わりなんだ」という空気というか,文化みたいなものがあります。それこそバブリーな時代には,開発が終わったらみんなリフレッシュ旅行にいってしまうみたいな話もありました。
でもオンラインゲームだと,アルテイルがまさにそうだったんですけど,開発が終わって,サービスがスタートしてからが本番ですし,とくにアルテイルの場合は,一度沈みかけたタイトルを再度活性化させるかという点において,会社一丸となって企画や運営面での不断の努力を尽くしてきたといえると思います。インターフェイスのスピードアップなどを含め,アルテイル復活に関しての実行や運営に関しては,メディアに登場している弊社の宮本プロデューサ率いるチーム全体の尽力が大きいですね。
■4Gamer:
確かに,継続的な開発/運営の難しさというのは,業界内では良く言われることですね。
これからのアルテイル。これからのデックスエンタテインメント
アルテイルといえば,最近では海外展開に力を入れ始めていますよね。今年(2007年)の夏には韓国でのサービスがスタートしていますけれど,海外市場の感触についてはどうですか?
■黒川氏:
韓国展開は,正直なところ苦戦しています。韓国でアルテイルをサービスしてくれているLievo Korea自体も,ほかの大手ゲームポータルに比べると知名度も低いですし,基礎になる部分の集客がなかなか難しいという状況ですね。
■4Gamer:
そもそも,オンラインカードゲームの土壌自体,韓国にはあるのでしょうか?
■黒川氏:
ハンゲームさんが展開している「Fantasy Masters」(邦題:シュミッドディーヴァ)が,韓国ではオンラインカードゲームの先駆者的な存在ですね。高い人気を誇っていると聞きますから,土壌はあると思います。
■4Gamer:
なるほど。それでは,北米に関してはどうでしょうか? あちらでも,すでに「Magic Online」という,いってみればカードゲームの王者のようなタイトルが既にオンライン化されています。なにか差別化というか,勝算みたいなものはあるのでしょうか?
■黒川氏:
北米はまだ,アルテイルの予告ティザーサイトしか公開していない状態ですが,お客さんの反響には手応えを感じています。確かにMagic Onlineという,あまりにも強力なライバルは存在していますが,アルテイルの狙うターゲット層を考えると,実はそれほど被らないのではないか,という気がしているんです。
■4Gamer:
確かに同じジャンルではありますが,まったく別物な感じはありますね。
■黒川氏:
ええ。例えば,「ポケモンカードゲーム」や「遊☆戯☆王デュエルモンスターズ」といったトレーディングカードゲームは北米でも大きな人気を獲得しましたが,それは「Magic: The Gathering」とはまったく違うお客さんを惹きつけたわけですよね。それと同じように,Magic Onlineとアルテイルは棲み分けが可能なのではないかと考えているんですよ。
■4Gamer:
おっしゃることは分かります。
■黒川氏:
先ほど差別化,というお話がありましたけど,そういう意味では,アルテイルのカードのイラストには,Magic: The Gatheringなどにはない魅力があると考えています。日本の漫画/アニメなどは世界で高い評価を得ているコンテンツですが,アルテイルも,大勢の人気イラストレーターさんにご協力頂いていますから。個人的に思うことは,日本人のイラストレーターが描いたイラストは絵の密度が高くクオリティも大変高いと思います。
■4Gamer:
確かに,アルテイルのイラストは人目を引きますね。ちなみにターゲット層が違うというお話ですけれど,アルテイルのプレイヤー層はどういったものになるのでしょうか?
■黒川氏:
10代後半から30代前半にかけて,という感じですね。コア層は20代前半に集中しています。また,プレイヤーの大半が男性だったのが,最近は女性の比率が上がってきている。というのも特徴でしょうか。
■4Gamer:
割と若い層ですね。……ちょっと聞きづらいのですが,アクティブユーザー数や客単価などはどのくらいなのでしょうか? パンヤなどで注目されたアイテム課金モデルは,月額課金に比べて客単価が高いことが業界内では注目されました。アルテイルも,ビジネスモデルとしてはアイテム課金に類するものだと思うのですが,それだけ若い層が中心だと,金額のほうが気になったりします。
■黒川氏:
カードゲームではカードの発売が統計数値に大きく影響いたしますので,アクティブユーザー数をはじめとした数値の定義が難しいので,ちょっとそちらは避けさせて頂きますけど,ARPU(=客単価)でいえば,高い水準を維持できているのではないかと思います。
■4Gamer:
例えば,月額課金の平均月単価が1500円/人前後だとすると,アイテム課金では,それが3000〜5000円/人になると言われています。ちょっと古い数値かもしれませんが。それと比べるとどうでしょう?
※1人=1アクティブユーザー
■黒川氏:
なるほど。そういう意味ですと……。うーん,アルテイルは若干高いかもしれませんね。
■4Gamer:
それは凄い。客単価が高いとは,噂には聞いていましたが……。
■黒川氏:
イベントなどでも多くのプレイヤーさんに来て頂けますし,アルテイルは,熱心なプレイヤーの方々に支えて頂いているタイトルだと思っています。
あと,まだ「気が早い」とお叱りを受けるかもしれませんが,北米展開を足がかりに,ヨーロッパ各国へも進出していければとも考えているんです。そして,ゆくゆくは世界中のプレイヤーとオンライン対戦が実現できればいいな,と。オンライン上に遊びの場を作るという当初の志を考えると,そういう形が理想だと考えていますから。
そういえば,最近では「キングオブワンズ」というカードゲームを再リリースしようとしていますよね。コミュニティサイトである「アルテイルネット」なども含めて,デックスエンタテインメントとしては,やはり“オンラインカードゲーム”という路線を強化していく方針なのでしょうか?
■黒川氏:
そのつもりです。今はまだ詳しいことを言えないのですが,オンラインカードゲームという分野に関して,ある大きなプロジェクトの準備もしているところです。
■4Gamer:
大きな……といいますと,何か既存のトレーディングカードゲームのオンライン化などですか?
■黒川氏:
さすがにまだ詳しくは言えません(笑)。
ただ,最近は「オンラインカードゲームの代表的な会社」ということで,いろいろなお話を頂けるようにもなりましたし,私達には,アルテイルを通じて得た貴重な企画,運営ノウハウがあると考えています。そのノウハウを活用できるのではないかなと。
■4Gamer:
それは,新しいオンラインカードゲームの開発/運営を請け負うであるとか,他社にソリューションを提供するという意味でしょうか?
そのような可能性も含めて,です。とはいえ,オンラインカードゲーム自体はまだ発展途上の分野ですし,楽な道のりではないとも思いますし,進めているプロジェクトがどうなっていくかもまだ未知数です。時期が来たら発表させて頂ければと思います。
■4Gamer:
分かりました。それでは最後に,4Gamerの読者に何かひと言お願いします。
■黒川氏:
もともとアルテイルという作品自体は,“アンチMMORPG” “国産オンラインゲーム”というものを掲げてスタートさせたプロジェクトでもありました。いろいろと紆余曲折はありましたが,おかげさまで,今では多くのプレイヤーの皆様にご支持頂けるまでになりました。今後とも,より高いレベルのサービスの実現を目指して,スタッフ一同頑張っていきたいと思います。
■4Gamer:
本日はありがとうございました。
さて,いろいろと興味深い裏話が聞けた今回のインタビューだが,中でももっとも印象的だったのは,アルテイルが実は2度も「根本から作り直された」タイトルであるという事実だろう。「スカッとゴルフ パンヤ」の成功以降,それこそ雨後のタケノコのようにタイトルが発表された国内のオンラインカジュアルゲーム市場ではあるが,成功したと言えるタイトルは,そう多くない。国内外を問わず,多くのオンラインゲームが表れては消えていったそんな状況の中で,なぜアルテイルというタイトルは生き残ることができたのか。今回のインタビューでは,その理由の一端を垣間見られたような気がする。
実を言うと,今回のインタビューは,12月初冬に筆者自身が何気なく(正式サービス直後以来久しぶりに)アルテイルを遊んでみたことに端を発している。遊んでみたところ,2004年のサービス開始当初とは見違えるほどシステムが良くなっていることに驚き,半ば勢いで取材を申し込んだ……という経緯があるのだ。
本作が紆余曲折を経て,登録会員数50万人を誇るタイトルへと成長した理由。そこには,マーケティング的な側面ももちろんあるだろう。しかし何よりも,黒川氏自身が語っていた「オンラインゲームは,サービスが始まってからが本番」というフレーズを,言葉通りの意味で実践(サービス向上のためには作り直しも辞さない)できていたこと,それこそが,大きな,そして本質的な要因だったように感じられてならない。MMORPGなどと比べて,システムの再構築が比較的容易(コスト面でも)であったことなど,いくつかの好条件もあったかもしれないが,粘り強い開発と運営を続けていった結果が,現在の成功に繋がっていることは疑いないだろう。海外からの買い付けではない,自社開発というものの強みが,上手く活かせた一つの例だといえるのかもしれない。
今では一定の成功を収めたと言えるデックスエンタテインメントだが,今後,同社がオンラインゲームという市場に対してどうアプローチをしていくのか。準備中だという新プロジェクトも含めて,これからの動きに注目していきたい。
- 関連タイトル:
アルテイル 〜神々の世界『ラヴァート』年代記
- 関連タイトル:
KING OF WANDS
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