2004/08/26 21:09 |
今年のBest of GC賞のPCゲーム部門には,あの「セトラーズ」シリーズの最新作である「The Settlers:Heritage of Kings」が選ばれた。昨今やや人気が下降気味だった本シリーズだが,この受賞が復活劇の始まるとなるかもしれない。
グラフィックスの細かい描き込みで知られる同シリーズは,1993年にAmigaで登場して大きなヒットとなり,その後も様々なプラットフォームに移植されながらも発展してきたワケだが,第5作めにあたるHeritage of Kingsは,これまでのスタンスから大きく外れている。グラフィックスが従来のほのぼの路線から一転,リアル志向へと変貌を遂げているのである。その変わりっぷりは,画面を見ただけではまったく異なるソフトに見えてしまうほどだ。 セトラーズのようなタイトルがゲーム大賞として選ばれるのは,筆者としては正直やや意外だが,本作の開発を手がけるBlueByte Software社は,ドイツでも古参の開発チームとして日本でも知名度があるメーカー。現在では,UBI Software社のアメリカ東海岸の拠点として成長しているRed Storm Entertainemnt社傘下のブランドになっている老舗だ。 また「Civilization」のオリジナルメンバーとしてMicroprose社で頭角を表し,最近では「Tropico」を手掛けたシミュレーションゲーム開発者のブルース・ミリガン(Bruce Milligan)氏によって監修されているなど,本作は,確かに注目度が高くても不思議ではないタイトルだといえるかもしれない。 Heritage of Kingsは,さまざまな点でこれまでのシリーズとは違っている。まず目に付くのは,やはりそのキャラクターだろう。これまではデフォルメされた可愛らしい2Dキャラクターたちが画面中を往来していたのだが,今回からは頭身が均等になった3Dモデルが採用されており,ほかのRTSのユニットに近い形状となっている。リアル指向のグラフィックスが採用された理由は定かではないが,どうも北米のゲーム市場を視野に入れた変更の模様。
ただグラフィックスは変われど,本作の大きな特徴でもある"村人たちの多様性"は健在で,農夫から鍛冶屋,パン屋,博士,発明家に至るまで,ゲーム中には70種類にものぼる職業が存在する。それぞれのキャラクターには目的意識や特殊技能が備わっており,生産や売買に成功するほど経験値が溜まって成長していく。物資や人員の流れを考えながら,適材適所にキャラクターたちを配置して町を作り上げていくというマイクロマネージメントの面白さは当然ながら受け継がれており,木材一つにしても,木材伐採所,そして木材精製所,さらには家具屋というように,全部で60種類ほど用意された施設を次々と建設していかなければならない。 ちなみにHeritage of Kingsで登場する王国は全部で七つとなっており,プレイヤーは,クローフォード,バルメシア,クレイコート,フォークラング,カロイックス,古代王の地,エヴェランスといった架空の王国を選択することになる。それぞれには特色のある王が存在しており,地勢の雰囲気や気候も大きく異なるとのこと。エジプトやローマなどの実在文明を元にした種族が登場したこれまでのシリーズと比べて,本作はファンタジー色が強くなっているようで,舞台設定としては,一つの王国が市民戦争により弱体化し,幾つもの勢力へと分裂した時代(世界)なのだという。 またファンタジー色が強くなったのは世界観だけではなく,ヒーローユニットが登場するという部分にも見受けられる。ゲーム中にはエリックやピルグリムなどと名付けられた6人のヒーローがおり,戦闘や内政をサポートする特殊能力を発揮して,プレイヤーを助けてくれるのである。 今回は筆者自身が試すことはできなかったが,ほかのファンがプレイしているのを眺めていた限り,かなり既存のリアルタイムストラテジーに近い作風になっているような気がした。兵士ユニットにはそれぞれ経験値の概念が存在し,戦況がどのようになるかは,個々のユニットのレベルによっても大きく左右するようだ。
3Dグラフィックスとなったことで,さまざまな面で大きく変貌を遂げたセトラーズ最新作。テイストとしては,北米市場や近年のRTSファンをかなり意識したものになってはいたが,お膝元であるドイツ本国でも高い評価を受けていたようで一安心。UBI Software社は,今年末のリリースを目標に制作している。(奥谷海人)
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