インタビュー
2009年はクラン戦イベント増加で優勝を。「SPECIAL FORCE」世界大会を終えた日本代表総監督/運営インタビュー
結果を先に書いてしまうと,優勝したのは台湾代表で,準優勝は韓国代表。日本は残念ながら善戦しつつも5位となってしまったのだが,その原因と次回大会に向けての抱負,そして具体的な取り組みなどについて,日本代表の総監督を務めた石 民帝氏と運営チームの中心メンバーである佐野 亘氏に話を聞いた。
優勝/準優勝はプロゲーマー集団!
日本代表が彼らと勝負するためには必要なものとは
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは,11月22〜23日にわたって開催された2008 SF WORLD CHAMPIONSHIP IN CHINAのお話からお願いします。
石 民帝氏(以下,石氏):
「SPECIAL FORCE」世界大会で日本代表の総監督を務めた石 民帝氏 |
「SPECIAL FORCE」運営チームの中心である佐野 亘氏 |
4Gamer:
それぞれの国で予選を勝ち抜いてきたチームが代表として出場するんですね。
佐野 亘氏(以下,佐野氏):
そうです。初日は違う国の見知らぬ他人同士なので,どうしてもよそよそしくなってしまうのですが,同じゲームのプレイヤー同士ということで,2日目はかなり仲良くなっていましたね。
石氏:
お互いにハイタッチしたりして。
4Gamer:
各国の参加者や日本代表の年齢はどのくらいだったんでしょう?
佐野氏:
だいたい,10〜20代前半が中心ですね。日本代表は16〜21歳と若いほうでした。
4Gamer:
大会のルールは,どのようなものだったんでしょう?
石氏:
予選は2グループに分かれてリーグ戦を行います。5対5のチームマッチで,ヘッドセットやキーボード,マウスは個人のものを持ち込めました。マップは6種類指定されていて,その中から実際に使用されるものが試合直前に選ばれます。アイテムは,各国共通のものが指定されました。これは各国でサービス内容がそれぞれ異なっているからです。
決勝は,両グループの上位2チームでトーナメント戦を行いました。
4Gamer:
なるほど。日本代表の総監督として,何か策を練ったりしたのですか?
石氏:
やはり,過去2回優勝している韓国を倒さなければ勝利はありません。実際,日本代表メンバー達の「最強の韓国代表と戦いたい」という意気込みにはかなりのものがありました。しかし意気込みだけでは勝てないので,まずは昨年の大会の情報を集めて研究しました。
4Gamer:
なにはともあれ情報収集ということですね。
石氏:
今年の韓国代表は,SPECIAL FORCEの女性リーグから選ばれたプロチームでした。また,結果として優勝した台湾代表もプロゲーマーです。やはりプロですから,全員で合宿して練習をしていたり,マップを隅々まで研究していたりします。さすがに強敵だということが分かりました。
4Gamer:
うーむ,始まる前から厳しそうですね。
石氏:
まあ,韓国と台湾を除けば,各国ともほぼ互角の戦いができていたと思います。
日本代表の作戦に話を戻しますと,やはりいくつかの作戦を立てました。例えば,守るときは必ずマップ内の窓などに視点を合わせる。これをやっておくと,フラッシュバンを投げられて視界を奪われても,誰かが前を横切れば必ずプレイヤー名が表示されますから,反撃のタイミングを掴めます。
4Gamer:
なるほど。そういった練習はどのように行われたんですか?
石氏:
メンバーそれぞれに生活がありますから,どうしてもオンラインでチャットしながらという形になってしまいます。今回反省すべき点は,全員集まっての練習がほとんどできず,結束を固めきれなかったことでしょうね。
4Gamer:
やはりチームの結束が勝つためには重要であると。
韓国代表の試合を見ていると,マップ上のあらゆるポイントで各メンバーが何をするのか,しっかり役割分担ができています。ここでは誰が何を投げる,ここでは必ずこちらを向いて移動するといったように。そういった連携はチャットだけでなく,日頃からお互いに声を掛け合いながら練習しないと実現できないかもしれません。
4Gamer:
優勝を狙うのは,そこまでしないと難しいわけですか。結局,日本は5位という結果に終わったのですが,そこまでの経過はどのようなものでしたか?
石氏:
実は2日目は決勝戦のみが行われる予定だったのですが,急遽主催者から連絡があり,予選敗退した3か国で「5位決定戦」を行うことになったんです。予選敗退が決まったときは,さすがに日本代表メンバー全員落ち込んでいたんですが,頑張って5位になったときは大喜びでした。元気になって「上海蟹でも食べに行こうぜ!」「オー!」って感じでしたね(笑)。開発のDragonflyのスタッフからも「日本代表は去年よりも強くなっている」といわれましたよ。
5位に躍進した日本代表
来年は優勝を目指す
4Gamer:
なるほど。去年と比較して,今回日本代表が強くなった要因は何だと思いますか?
石氏:
前回は日本が初参加ということもあって,弊社の取り組みが甘かったんです。今年はその反省を踏まえて,予選からしっかりと準備をし,両国国技館で決勝戦を行い,5万以上あるクランの中から本当に強いチームを選抜しました。大きな違いはそこですね。
4Gamer:
前回の選抜は,今回ほどの規模ではなかったと。
規模的にはそうなります。
今回日本代表となった「lol」というクランは,近距離の戦いを得意とする強いチームだと思います。しかし,世界大会の予選では,緊張して今一つ実力を発揮できなかった感がありますね。2日目に2勝して5位を獲った結果を考えると,現地で練習できる期間がもっとあれば,初日からいい成績が残せたかもしれません。
また使う予定だったキーボードが,飛行機での運搬中に故障してしまったということもありました。それも時間があれば,もうちょっと何とかできたかもしれません。
佐野氏:
ほかの国だと,前日に入って練習したりしていたんですよ。
石氏:
今,写真を見返すと出発前は皆ガチガチに緊張しています。帰国直前は,皆笑顔なんですけれども。
佐野氏:
そのあたりは参加メンバーの皆さんの問題ではなく,ハンゲームとNHN Japanが世界大会にどういう姿勢で取り組むかという課題ですね。
石氏:
あとは,苦手なマップをなくさなければなりません。例えば今回予選で使われた「ミサイル」マップは,日本であまり人気がなく,lolが練習しようと思っても相手がいなかったりしたんです。そのため,普段からすべてのマップが頻繁かつ均等に使われるよう,運営側で工夫する必要があります。
佐野氏:
結局,ミサイルでは2回くらいしか練習できなかったんですよ。
4Gamer:
対戦ですから,練習相手がいないとどうしようもないわけですね。
石氏:
lolくらいのレベルだと,互角に戦えるクランも少なくなってしまうんですよ。
佐野氏:
SPECIAL FORCEプレイヤー全体のレベルアップを図り,底上げしなければならないと痛感しています。今後は定期的にクラン戦を盛り上げるイベントを行うなど,レベル自体の底上げを目指す必要があるでしょう。実際に企画も進行していますよ。
4Gamer:
つまり,来年は優勝を狙うわけですね。
石氏:
はい! いろいろと弊社の課題はありますが,そのくらいの意気込みで取り組みます!
4Gamer:
ぜひ頑張ってください。期待しています。
「2008 SF WORLD CHAMPIONSHIP IN CHINA」特設ページ
新キャラの名前は「ワタナベ」
2周年を迎えたSPECIAL FORCEの方向性は
4Gamer:
それでは年末年始に行われるアップデートやキャンペーンのお話をお聞かせください。
佐野氏:
まず12月18日に新キャラクターが追加されます。
タイで人気の女性芸能人をモデルにしていまして,日本では「ワタナベ」という名前で展開します。
4Gamer:
渡辺さん?
佐野氏:
はい,カタカナでワタナベ。まだ価格は未定ですが,ゲーム内通貨のSPで購入できます。装備品は武器やアクセサリーとも,従来のキャラクターと同じものが使えます。
石氏:
あとは,すでに11月に実装していますが,「乱入システム」ですね。合わせて,何人参加しているかなど,試合の状況をロビーから確認できる機能も実装しました。今までは実際に試合を始めるまでにちょっと時間がかかっていたので,それに比べてかなり便利になっています。
カジュアルな3Dシューティングというスタンスを崩さず
さらなる飛躍を目指す
4Gamer:
なるほど。アップデートによって新規タイトルに負けないような機能も実装されていると。
石氏:
新しいルールを適用した対戦モードも追加される予定があります。まだ時期は未定ですが,近いうちに発表できるかもしれません。
4Gamer:
イベントやキャンペーンはどうでしょう?
佐野氏:
おかげさまでSPECIAL FORCEは2周年を迎え,累計登録会員数も280万人を越えています。そこで先日「安心宣言」というものを掲げさせていただきました。これは主に,今まで十分でなかった不正対策を強化しようというものです。その結果,どうなったかというのも皆さんにきちんとお伝えし,安全に楽しんでいただける環境を整えていこうとしています。
4Gamer:
やはりチート対策への要望が多いのでしょうか?
佐野氏:
4Gamer:
会員数が280万人ともなると,不正云々を抜きにしても,やはり初心者と既存プレイヤーの差は大きくなってしまいそうですが。
佐野氏:
そうですね。操作方法をまとめたPDFファイルを配布したり,実際に対戦する前の段階で一通り練習できるようにしたりしています。やはりSPECIAL FORCEの場合だと,「ハンゲーム」という素地もあるのか,FPSなどの3Dシューティングに慣れていない人も多いようで,さらなる施策を考えなければなりません。
もともとSPECIAL FORCEでは,ガチガチのFPSではなく,カジュアルな3Dシューティングを楽しんでいただきたいと考えています。FPSはジャンル的にハードルが高く,どうしてもマニアックになってしまい,プレイヤーを選んでしまう部分があります。そのため,敷居を下げて,たくさんの方に遊んでいただけるように,様々な施策を行っているんです。
コワモテのイメージだが,2009年は従来にも増してカジュアルな方向を狙っていくというSPECIAL FORCE |
4Gamer:
なるほど。
佐野氏:
先日開始した「ムービーリーグ」も,根本の考え方は同じです。ゲーム内では撃ち合いだけでなく,かくれんぼのような楽しみ方をしている人もいます。そこを動画としてニコニコ動画に投稿してもらうことで,よりカジュアルな遊び方を広げていこうということです。今後もその点は強く打ち出していきますよ。今も31日連続で毎日何かしらイベントを開催するなど,誰でも気軽に楽しく参加できるような方向で攻めています。
4Gamer:
その方針は,正式サービス開始前から一貫して変わっていないということですね。それではSPECIAL FORCEのプレイヤーと4Gamerの読者に向けてメッセージをお願いします。
佐野氏:
12月は毎日イベントを行っています。2009年は今までと変わらず,いやそれ以上に頑張っていきますので,よろしくお願いします。
石氏:
おかげさまで世界大会では,前回よりもいい成績を残せました。次回は,皆さんと情報を共有して,よりよい結果を出せるよう頑張っていきます。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
わずか2年で累計登録会員280万人という,日本で展開しているオンラインアクションゲームとしては急成長を遂げたSPECIAL FORCE。その主な要因は,インタビューでも触れられているとおり,誰でも気軽に楽しめるカジュアルな3Dシューティングという路線を確立できたことにある。よりリアル,よりシリアスな方向を目指してしまいがちで,結局マニアックなプレイヤーしか残らないという,ほかのFPS/TPSとは一線を画しているといえるだろう。
しかしその路線を強化してきた結果として,どうにも全体的なプレイヤースキルの向上が進まず,結果として世界大会では思うような結果が残せないという状態を招いてしまっているのも事実だ。カジュアルの追求とプレイヤースキル向上の両立を目指すのはなかなか大きな課題のように思われるが,サービス開始から3年目となる経験を活かした,さらなる飛躍を期待したい。
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