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プロデューサーの考える“三On像”とは何か? 新情報満載の「三國志 Online」インタビューは,プレイヤー必読【後編】
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印刷2008/05/29 17:49

インタビュー

プロデューサーの考える“三On像”とは何か? 新情報満載の「三國志 Online」インタビューは,プレイヤー必読【後編】

黄河蜀のある日の合戦,戦闘開始前。人,人,人,人……。二つの軍による合戦なので,優にこの倍の人数が1フィールドで激突する。本作の最大の売りだ
画像集#025のサムネイル/プロデューサーの考える“三On像”とは何か? 新情報満載の「三國志 Online」インタビューは,プレイヤー必読【後編】

前編は「こちら」


 軽めの内容から入った前編に引き続き,後編は,新ダンジョンや新ゾーン,部曲砦などを中心に,より大きめの内容について聞いてみた。プロデューサー上野氏の考える三On像とはいかなるものか,今後の本作はどうなっていくのか。今後しばらくの方向感が見える後編も,ぜひお読みいただきたい。



進歩が遅くないですか?――前倒し気味でコンテンツを追加すべきであるというのが,運営としての考えです


4Gamer:
 ところで,正式サービスが始まってからの「歩み」が遅いと感じているのは,私だけでしょうか。もう少し早い動きをしてほしいというのが,正直なところなのです。合戦があるおかげで,コンテンツ消費型の作品にはなりきっていないものの,まだ新しい「コンテンツ」が組み込まれていないですよね。

松本氏:
 今,ユーザーの皆様からもご指摘を受けているところで,我々も重く置けとめている部分です。

4Gamer:
 あぁでも……良く考えてみると,正式サービスが始まってから,まだ2か月半しか経っていないんですね。1回目のプレオープンあたりから考えてるから,すごく長くやってる気がしてるんでしょうか。
 もうあれだ,公式サイトに,“正式サービスから××日目!”みたいに書いておきましょう。オリンピック開催とは逆パターンで。

上野氏:
 いや,そこまで強調しなくても(笑)。でもとにかく開発としても,これまで以上にピッチを上げて追加要素を制作しています。

4Gamer:
 コンテンツやゲーム内の状況を考えるときにいつも思うんですが,実はずっと昔から上野さんの主張は一貫して変わらず,「社会人でも楽しく」「レベル上げを苦痛にしない」などを見事に実践していますよね。

上野氏:
 そう言っていただけるとありがたいです。しかし,こんなにも早くレベルが上がってしまうものかと,ちょっと驚きがあったことは否めません。おっしゃっていただけたように,当初からレベル上げで苦労するのは避けたくて,なるべく早く上がって,メインコンテンツである対人戦をやっていただけたらと思っていましたが,もう少しゆっくり上がっていくと想定していました。

4Gamer:
 レベル30を越えたあたりから“数値”としてのレベル上げはややキツくはなってきますが,軍略が効率良すぎるんじゃないですか? 実は私はあの作業感にちょっと馴染めずあんまりやっていないんですが,確かに効率はいいですよね。フィールド自体はちょっと単調な感じは否めませんが。
 ……そういえば軍略といえば,引っ込めちゃった投石軍略はどうなりました?

上野氏:
 まだ調整中なんです。すみません。

4Gamer:
 効率が良すぎた?

上野氏:
 いえ。内容として投石だけをやる軍略なのに,戦闘スキルがどんどん上がるのはさすがにおかしいんじゃないか? と思いまして。

4Gamer:
 いっそ投石スキルを作ってみるとか。

上野氏:
 一つのスキルとしてキャラクターに持たせるには,ちょっとコア過ぎじゃないでしょうか(笑)。

4Gamer:
 ダメですかね(笑)。合戦時に投石乗れる人が限られちゃうのでちょっとポリシーにそぐわないか……。
 ともあれ,レベルが苦労なく上がるようにしているというのはよく分かります。しかし,失礼を承知で言うならば,レベルを上げ切った先のコンテンツが合戦しかない――正確に言うならば,レベルがMaxじゃなくても十分参加できますが――そんな状態では,いくら合戦が面白いものだとはいえ,なかなかモチベーションが保てないのです。正式サービスから2か月経っても新しいコンテンツが入っていない以上,おそらくは「予定どおり」なんだと思いますが,では一体,なぜこんなにレベルを上げやすくしてしまったんでしょう。

画像集#001のサムネイル/プロデューサーの考える“三On像”とは何か? 新情報満載の「三國志 Online」インタビューは,プレイヤー必読【後編】
松本氏:
 三國志Onlineは,一つの武器や生産の能力を上げるのは,ほかのMMOタイトルより早いと感じられるかもしれません。しかし職業という概念がないため,すべての能力を上げるのは,やはり時間がかかります。ここが,長い時間プレイできる方と,短い時間プレイされる方とが同じフィールドでプレイできることに繋がっているわけです。それでもかなり早い方はいらっしゃいますが。

4Gamer:
 なるほど。確かに普通のMMOとは違って,明確にかつ極端に「上級者」と「ビギナー」の住む世界が違うというわけじゃないですよね。いまのところ,せいぜい荊州とそれ以外,でしょうか。
 あと,「効率重視のレベル上げ」の速度は凄まじいものがありますよね。いつだったか,レベルキャップが30から40になったとき,キャップ解放のその日に40の人を何人も見かけて,さすがにちょっと心配になった記憶があります。

松本氏:
 今の様子を見ると,前倒し気味でコンテンツを追加すべきであるというのが,運営としての考えです。この2か月半の間に,正式サービス開始,三国制覇の開始,ハンゲームさんとの提携など色々あってずいぶん慌しくしていましたが,内部的には大きく動いた期間でした。プレイヤーの皆さんの動向分析やご意見の収集なども行ってきましたし,これからは,コンテンツの追加だけではなく,タイアップやオンラインイベントといった部分でも“攻めの姿勢”を見せていきたいです。

さらに先のお話――新ダンジョンと新ゾーン


画像集#015のサムネイル/プロデューサーの考える“三On像”とは何か? 新情報満載の「三國志 Online」インタビューは,プレイヤー必読【後編】
上野氏:
 今松本が言ったように,プレイヤーの皆さんの動向はちゃんと見ているので,今後追加していくべきものも見えてきています。多くの人が総合レベル40まで上がっているのだから,そのレベル帯で遊べるものを追加しよう,とか。



4Gamer:
 例えばRaidみたいなものとかですか? というか聖獣はどうなったんでしょうか。

上野氏:
 今の合戦状況を見ていると,聖獣はまだ早いかな,と思っています。レベルキャップとそれに伴う追加技能,技能枠拡大,新しいダンジョン,軍略,新装備を計画しているところです。

4Gamer:
 でも例えばダンジョンだけでは,キツいと思うんですよ。完全にプレイヤー視点でのセリフになってしまいますが,今のままだと「行くモチベーション」がないですよね。

ダンジョンの敵は,なかなか個性的で面白い。昇進クエストと生産素材くらいでしか用がない人が多いのが,ちょっと残念
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上野氏:
 もちろん,同じようなダンジョンを,対象レベルを変えただけで実装しても面白くないですし,攻略する楽しみもないでしょう。今度「氷雪峰」というダンジョンを追加するんですが,そこにはやりこみ要素をもった遊びを入れます。

4Gamer:
 お,「やりこみ要素」。どんな要素ですか?

上野氏:
 高レベル向けの遊び方を提供しようと考えているので,少しコア向けなものになってしまうかもしれません。まず「氷雪峰」は3層構造になっていて,一番上に到達するにはいくつかの試練を受ける必要があり,それを達成することで道がひらけるという要素があります。

4Gamer:
 フラグみたいなものがあるわけですか? それとも単にクエストかな。

上野氏:
 単純なものではないですよ。例えば2層目は複数の経路があり,それぞれのテーマを持った試練的な要素を達成する必要があります

4Gamer:
 テーマ……? 内容が気になりますねえ。

上野氏:
 すいません。試練そのものの内容に関わる話になってしまうので,これ以上は今は勘弁してください。

4Gamer:
 残念。できるだけ早い発表を期待して待っています。
 しかし確かにちょっと凝ってますね。最上階にいくモチベーションは何でしょう?

上野氏:
 「貴重なアイテム」でしょうか。現状では,今まで出ていたようなアイテムと比べると“一線“を越えたのもありかな,と思っています。もちろんその分対象レベルは高めです。10人ダンジョンなので,相当やり応えが出ると思いますよ。

4Gamer:
 10人用なんですね。氷雪峰って広いんですか?

上野氏:
 プライベートダンジョンなので独占して自由にプレイできますし,それなりに「広い」物になっています。ただ,広くて時間がかかるのではなく,途中で中断し,後日続きから再開のような仕組みも用意します。

4Gamer:
 再開……? 例えば,入り口で何かの道標――って変ですが――みたいなものに触れると,前回の到達ポイントから開始できる,とかですか?

上野氏:
 ちょっと違います。一つの階層をクリアすると,次の階層へ入れるキーアイテムが手に入るんですが,それは一度使うとなくなるものです。なので,そのまま使って先に進むか,今日はここでやめてまた明日にするか,選択肢を持って遊ぶことができます。

新ダンジョン「氷雪峰」の,今回初公開画像。シンガポール開発の本作は,日本語版の前にまず英語名がつくらしいのだが,このダンジョンの名前は「Ice Cave」。漢字の偉大さと,日本語名を付けている人のセンスを感じる
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4Gamer:
 なるほど。比較的コア向けのコンテンツを一つ足すにも「不便を感じさせない」という意志が見えますね。

上野氏:
 何時間もかけないとクリアできないような,そういうものにはしたくないんです。

4Gamer:
 しかしプライベートダンジョンって,その新しい場所に限らず,実は割と仕掛けが凝ってますよね。ですから,ここにプレイヤーのモチベーションがないのはもったいないと思ってるんですよ。なんというか,もうちょっと何か「今日はPD行くか!」と思えるものがあってほしいな,と思ってます。
 最後のボスMobまで倒してクリアすると,名前の横にマークみたいなものが付くとかどうですか。戦闘機乗りみたいですが。アイテムという報酬も分かりやすいんですけど,生産品が割と強めの設定のゲームなので,ドロップアイテムでバランスを壊すのもなかなか忍びない気はします。ダンジョンクリアまでのタイムアタックシステムを導入して,公式サイトに名前が載るとかも楽しそうですね。

プライベートダンジョンは,飽きるほど全滅するくらいでも結構楽しい。アイテムルートも偏らないようになっているし,野良パーティでも楽しめるのでぜひ一度は行ってみよう。運にもよるが,装備品などを入手できる(画面右端)こともある
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松本氏:
 そうですね,ゲーム内の何かのランキングが,ゲーム内の掲示板や,公式サイトにも掲載されると面白いかもしれません。

上野氏:
 ダンジョンクリア回数とか,クリアタイムとかを見られるようになる仕組みは開発でも意見が上がっていて,将来的にやりたいと考えています。
 ちなみに報酬であるアイテムに関してですが,まずは生産との兼ね合いで考えて,生産品に付けられる霊玉を検討しています。これですと生産というコンテンツを殺すことにもなりませんし。もしこれが単純に強力な武器をドロップするだけですと,武器系の生産者は浮かばれませんし,その後への発展性もなくなってしまいますので。

4Gamer:
 アイテムは使っていれば必ずいつか壊れるので,仮に武器や防具だとしても,そう大きな問題にはならないかもしれませんよ。生産も,ときどき突き抜けた性能のアイテムとか出来ると面白くなる気がします。いま以上に何十回も作ることになっちゃう気もしますが……。

上野氏:
 ベース部分を上げちゃうと性能のインフレが起きませんか?

4Gamer:
 あぁ,いえ。もちろん付加部分に関して,です。今はMax20%ですが,それが例えば50%になる,みたいな。

上野氏:
 なるほど。今後拡張していくフィールドやゾーンは想定レベルが上がっていくので,武器や防具の性能もそれに合わせてもうちょっと上げても大丈夫な気はしますね。霊玉ですでにパワーインフレの兆しはありますし,注意深く調整したいです。

4Gamer:
 まぁでも,「アイテムが必ず壊れる」というのは,個人的には良いシステムだと思ってます。袋の耐久度がゼロになっても中身が落ちないのは不思議ですが(笑)。

上野氏:
 袋については,何か新たな価値を付けて,耐久度も気になるような発展系を検討してます。でもアイテムが壊れる件に関しては,実は社内からも色々な意見が出ました。

4Gamer:
 あれ,そうなんですね。自分が生産好きだからそう思ってるだけなんですかね……。生産する側にすれば,壊れなければ生産品が流通しなくなって,生産というコンテンツの意味そのものがなくなってしまいますし。
 しかし,プライベートであればアイテムは出しやすそうですね。ずーっと常駐する人がいても,ほかのプレイヤーに影響するわけではないですし。

上野氏:
 プライベートダンジョンにした理由として,そういう部分はあります。

4Gamer:
 ちなみにその氷雪峰は,マップのどのあたりに追加されるんですか?

上野氏:
 益州の奥地になります。

4Gamer:
 あれ。新ゾーンかと思ったら予想外でした。では,すでに名称だけ出ている新ゾーン「涼州」フィールドの特徴は? 涼州といえば馬超とかシルクロードとか,夢(?)の広がる要素が多いんですが。

上野氏:
 新ゾーンとなる涼州は,荊州や司隷といった勢力に属さないゾーンとなります。ここには,騎馬民族の村があり,新しいクエストや軍略などができるようになっています。
 想定は高レベル向けです。ご想像どおり,雰囲気はこれまでとちょっと違ったものになります。騎馬民族村にちなんだ新しい衣装もここで追加されますよ。

4Gamer:
 新しい衣装! ……あ,鎧じゃなくて衣装ですか? ちなみに生産で作れるものでしょうか。

上野氏:
 入手方法についてはまだ検討中なのですが,なにせ民族衣装ですので,生産ではなく何らかの報酬的なものになると思います。

新フィールド「涼州」の,こちらも新公開画像。シルクロードの雰囲気(?)満点。民族衣装までは見られなかったが,衣装関係は割と定評のあるコーエーだけに,ちょっと期待したい
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さらに先のお話――部曲砦


4Gamer:
 ときに,部曲砦はいつごろ導入を予定してるんですか?

上野氏:
 三国制覇のシーズン終了後,つまり秋口には入れたいと思っています。

4Gamer:
 想像してたよりちょっと遠い気がします……。最終的にどんなものになるんでしょうか。

上野氏:
 当然,家具とか置きたいですね。生産設備とか銭荘もいいですねえ。

4Gamer:
 家具屋があるのは把握してますが,家具は作れるんでしょうか。

上野氏:
 作れてもおかしくないですよね。また強い敵を倒したときの名誉的なオブジェを置いたりもしたいでしょうし。

4Gamer:
 家具が作れたりすると,木工に光が?

上野氏:
 いえいえ,どこか1クラスにまとめちゃうことはしません。

4Gamer:
 あぁ,そりゃそうですね。LotRO(ロード・オブ・ザ・リングス オンライン)なんかもそうでした。しかし,砦内に生産設備や銭荘を導入したら,街に人がいなくなっちゃって寂しくなりませんかね。

上野氏:
 確かにそことの兼ね合いは重要ですね。また,部曲砦の建造には,単なる生産やドロップ品の配置だけでは終わらない,育てていく要素も入れていくつもりです。

4Gamer:
 育てる……? サイズが大きくなったりとか,見かけが変わったりとかそういうことですか? というかそもそも,部曲砦は他人から見えるオブジェクトとして存在するんでしょうか。

上野氏:
 ごめんなさい。細かな仕様までは現段階ではお話しできないんですが,仲間と一緒に協力して何かを育てていく要素にしようとしています。また部曲砦は,部曲用のプライベートな空間なのですが,もちろん設定によって部曲員以外の人も訪れることができるようにもしますよ。

4Gamer:
 そういえば,先日行われたアンケートでは,部曲砦についてどんな意見が多かったんでしょうか。

松本氏:
 倉庫的なものと,のんびりと生活できる要素,が強かったですね。

4Gamer:
 のんびりしたいんですね。いわゆるギルドハウスのノリで,身内でまったり,というあたりでしょうか。せっかく三國志なんだし,部曲砦の取り合いとか……はちょっとコアすぎるか。

上野氏:
 のんびり要素は重視して作成を進めています。仲間同士でまったりと自分たちの砦を築きあげることを,まず目指しています。その上で,その砦を使ってさらに遊べるような要素を追加できるといいなと。

4Gamer:
 砦を使って遊べると,部曲同士の連携なども生まれてきて面白そうですね。

さらに先のお話――三国制覇の行く末と大きなタイムスケジュール


4Gamer:
 しかし,29日のアップデート然り,今までお話に出た新ダンジョンや新フィールド然り,言葉が悪くて申し訳ないんですが,「コンテンツ追加」ではなくて「機能追加」の一つですよね。当然やってみるだろうしそれ自体に問題があるわけではないですが,遊び方の横の広がりを増やしていくものではないと思っています。
 ここまでのお話では,コンテンツの追加という部分がまだ見えてきていません。そのあたりを聞きたいのですが,やはり現状ではメインコンテンツであろう,三国制覇をまず聞かせてください。現状では,勝ってもさほどのメリットはないですよね。まぁ負けてもデメリットがないので,それはいつぞやのお話のとおりではあるのですが,広い目で見たときの存在理由が弱すぎないかなぁ,と思ってます。

合戦後の様子。1戦が3試合(3陣)に分かれて同時開催になることが多いので,自分が参加していない陣の結果が気になって仕方がない。ゲーム内に置かれている合戦結果を見られる掲示板(じゃないか)に,こうやって群がるわけだ。画面右は,筆者が参加した中で最も“熱かった”試合。こういう試合が多いと面白い。疲れるけど
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上野氏:
 もともと物質的なメリットにはしたくないのです。あくまでもプライズです。

4Gamer:
 おっしゃることはよく分かるのですが,それにしてもちょっと存在が薄くないですか。例えば,制覇戦とイベント戦にしても,もうちょっと何か大きな違いを付けてみるとか。

上野氏:
 それはあるかもしれませんね。例えばイベント戦では,負けてもいいからと,思い切った戦い方をしてほしいと思っているのですが。

4Gamer:
 国や個人に対して,分かりやすい形で明確なメリットがない状況では,制覇戦の勝ちに大きな喜びがないのと同様に,イベント戦だし負けてもいいから違うことをやろう! というのもなかなか難しいと思うのですが。それを踏まえて,制覇戦はこれからどのような感じになっていくのか,教えてください。

上野氏:
 三国制覇に関して今確実にお話しできるのは,報奨品はあれで終わりではないということと,先々,物ではない名誉となりえるものを入れる予定があるということです。

4Gamer:
 ガード固いですね……。ではほかのことでもよいのですが,「コンテンツ」の追加といえる何かを考えていたりしませんか?

松本氏:
 アンケートをお送りいただいたユーザーの皆様からのご意見や,いただいているご要望などを元に,開発・運営で今後のアップデートをよりニーズに合ったものにしようとしているところです。

上野氏:
 今までの話で挙がった,フィールド部分の具体的なコンテンツや,部曲戦の改良バージョン,クリアしたら終わりというわけではない軍略は,まず当然計画上にあります。そしてやはり重要なのは,それらが制覇とどうかかわっていくかということです。一つ一つのアップデートが,制覇のための合戦という大きな流れに収束されていくというメインストリームに昇華されていくところにご期待いただきたいですね。

4Gamer:
 新ダンジョン,新フィールド,レベルキャップ解放,三国制覇の新要素,部曲砦……と色々なお話が出ましたが,時系列に並べるとどんな感じの順番で,それぞれいつごろになりそうですか?

上野氏:
 6,7,8,9月と連発でアップデートを行っていく予定です。

松本氏:
 今後もどんどん要素を追加していく方向で考えているので,期待してもらっていいと思いますよ。

上野氏:
 現状のパッチのペースは1か月に1回,月末に,まとめて入れる感じにしようと思っています。スケジュールどおりであれば,8月が一番大きなものになるかもしれませんね。

4Gamer:
 レベルキャップ解放については,涼州に合わせる感じですか?

松本氏:
 いま言った期間のどこかに入れる感じですね。

4Gamer:
 なるほど。上限は10くらい上がる感じですか? もちろん,まだ調整しているところだと思いますが。

上野氏:
 予定としては……まだ迷っているところですが,10を考えています。

松本氏:
 当然ですが,レベルキャップの開放と同時に,新技能や新しく生産することが可能な装備品が数多く入る予定ですから,ご期待ください。ただし,装備品の装備条件は今までと一緒,とは限らないですけどね。そのあたりを含め,詳細は発表をお待ち下さい。

29日21:00に,新画面をもらったので追加。いずれ追加される,新たな合戦場「関」の初公開画面だ。名前から想像した雰囲気そのものではあるものの,やはりこの,建築物を含んだ立体構造は見逃せない。ここでどんな戦いが繰り広げられるのか,いまから楽しみだ
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効率の良い経験値稼ぎ――単なる繰り返し作業での成長から脱却することが必要だと認識しています


4Gamer:
 ついにレベルキャップ解放ですか。高レベル帯のコンテンツ云々という話はいったんさておくとしても,あの経験値の上がりっぷりを見る限り,運営サイドにそのつもりはなくても,軍略以外に人が行くことがなさそうに思えます。

画像集#007のサムネイル/プロデューサーの考える“三On像”とは何か? 新情報満載の「三國志 Online」インタビューは,プレイヤー必読【後編】
上野氏:
 軍略にあそこまで多くの方が集中するのは,ちょっと予想外でした。

4Gamer:
 うーん,でもレベルを上げるという部分に関して言うならば,ほかのコンテンツの引きが弱いので,仕方ない部分だと思います。
 しかしその軍略ですが,パターンを作るまでは楽しいと思うのですが,パターンができると本当にそれの繰り返しになるじゃないですか。完全に効率だけを追求するフィーチャーになってしまっています。もうこうなると,単なる“作業”ですよね。

上野氏:
 レベリングに最も効率がよい手法を見つけるスピードは本当に凄いですよね。もはや“それを見つけるまでも一つのゲーム”なのかもしれません。

4Gamer:
 敵のPopタイミングやAIに乱数を加えてみるとかはどうなんでしょうか。

上野氏:
 AI関係は常に手は加えています。Popタイミングを変えるのは面白いアイデアですが,スコアの存在がある以上,いまは難しいと思います。ただ,“超“みたいな難度があって,入ったときにランダムでその難度になる,とかだと面白いかもしれませんね。

4Gamer:
 あぁ,そうか。スコアがありましたね。確かに難しそうです。でもランダム発動の“超”難度とかはアクセントになって面白そうですね。ホントに“超”だとちょっと困りますが。

上野氏:
 それくらい難しくしておいて,“超”をS評価でクリアできたら全員が何かもらえる,とかいうのもアリかもしれませんね。……ちょっとコア向けかな。

4Gamer:
 例えば,一見すると「これはちょっと無理だろ」と思えるようなコアプレイヤー向けの軍略とかの存在は,一部であればアリなのかもしれません。それでもどうにかして攻略法を見つけ出すでしょうし,そういう部分で頑張れば良いことがあるというのは,プレイヤーのモチベーションとしてはアリだと思うんですよ。その“超”難度を推奨するわけではないですが。

上野氏:
 もともとが,行く軍略がランダムで決まるのはどうなんだろうと思ったので,ほぼ固定にしているのですが,そういう部分での不透明さはいいかもしれませんね。

4Gamer:
 今だと,「S回し」ならまだしも,割と「B回し」という控えめな効率追求も盛んですし。そうなると,もうホントに作業以外の何物でもないですよね。慣れれば絶対にハプニングは起こらず,絶対に死なない,と言っても過言ではないですし。まさにただの竹簡狩り状態。
 個人的には,「そんなにしゃかりきになってレベルを上げなくてもいいじゃない」と思う半面,レベルを上げる以外の「何か」がないからやっているんじゃないかという気もしています。

上野氏:
 効率プレイが良い悪いという問題はさておくとしても,軍略というコンテンツにはプレイヤーの皆さんにとって遊び方がいろいろあるはずなのに,レベル上げの手段としてしか選ばれていないという部分には,さらなる楽しみ方をご提供できるよう手を入れたいです。

様々な功罪を併せ持つコンテンツ,軍略。手を入れる要素はまだいくらでもありそうなので,今後の進展に大いに期待したい
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4Gamer:
 ランクがすなわち獲得経験値であり,そのランクは時間で決まることが多いので,結局のところダメージソースが最優先になっちゃってますよね。これはこれで良いのですが,ちょっと手を入れてもらって遊び方が増えるとよいなぁ,と思っています。「ヒールしてる暇あったら呪詛撒いて」「寝かせてる暇あったら火炎柱撃って」というのは,「ランクを上げる手段」としては非常に正しいんですが,ゲームとしてはちょっと微妙な気もしますし。

上野氏:
 確かに,経験値稼ぎに走ると攻撃的な徒党にせざるを得ないですよね。軍略のバランスそのものをいじるか,もしくは経験値稼ぎ以外の部分を考慮できるようなシステムにしたいです。軍略の遊び方が何種類もあって,プレイヤーの皆さんはそれぞれそれを気分で選べる,というのが理想的ですね。

松本氏:
 理想形としては,効率の良い経験値稼ぎのプレイモデルが,変化のあるもの,もしくはやっていて作業感のないものになればと考えています。効率に走りすぎて,本当は別の軍略をやりたい方ができていない可能性もありますし,そこもどうにかしたいですね。
 例えば,同一レベル帯の軍略を一通りSクリアすると特典があるとかでしょうか。色々と仕様上の障壁があるのでクリアすべき課題は多いですけどね。

4Gamer:
 今のままであれば,いっそもう「竹簡獲得クエスト」を作るのはどうですか。多くの人がハッピーになるし,竹簡を血眼になって探さなくてよくなって,上野さんのおっしゃるデザインポリシーにもマッチするんじゃないでしょうか。

上野氏:
 ずばりそのものが獲得できるんですね。でもあの手のものは取ってしまうと終ってしまいますからねぇ。

4Gamer:
 うーん確かに。……いや,長安の街で売り捌くという手もありますよ。

上野氏:
 なんていうかこのゲームでは,竹簡を最終目的にしては駄目なんだと思います。あくまでも,継続していれば取れるようにしなきゃいけないですよね。
 どちらかといえば,このゲームは何でもできるがゆえの,個性をどう出していくかの課題があるわけです。そのなかでいつかはみな同じになるのでは面白くないわけです。たとえば装備を個性的にできたり,その装備に合わせたユニークな技能をどう組み合わせるか考えるような,そういった要素をメインにしていこうと考えています。またそれに合わせて,単なる繰り返し作業での成長から脱却が必要だと認識しています。

4Gamer:
 確かにそうですね。せっかくクラスを変更できる作品なんだから,最大限それを活かせるようなシステムが,プレイヤーとしても理想的だと思います。それにしても,正式が始まって2か月半で課題がいっぱいありますね。ないよりはいいですが。

上野氏:
 よく言われます。でも現実的には,正式サービスが始まって,プレイヤーの皆さんが大勢で“何か”――我々が想定していなかった何か,ですね――をしたときに,初めて分かることも多いんです。

4Gamer:
 これからは大きめのアップデートも含めて入るとのことですし,期待してます。

上野氏:
 期待に沿えるように頑張ります。

4Gamer:
 今日はなんだか弱気ですねえ(笑)。

松本氏:
 期待していただいて大丈夫ですよ(笑)。一連のアップデートによって,プレイヤーキャラクター自身の成長要素や,部曲砦などにより内政的な要素も入り,さらに新MAPなど非常に幅も広く,奥も深いコンテンツになると自信をもっております。

便利さを追求することは面白さを損なう――便利になると,「不透明な部分」がどんどんなくなっていくんです


4Gamer:
 ちょっと攻撃的なインタビューになっちゃったので,話題を少し変えますね。
 多くのところに馬で一瞬で移動できたり,銭荘の許容量がかなり多めだったり,逆にいまでもゲーム内のメール配信サービスがなかったり,オークションシステムがなかったり,「ゲームが持つ自由度」に関しては,意図的に不便な部分なども踏まえつつ結構考えて動かしているのかなぁ,という印象を受けるのですが,実際はどうなんでしょうか。

上野氏:
 以前から記事などでも,「オークションシステムは慎重に考えてほしい」みたいなことをおっしゃってましたよね。

4Gamer:
 オークションシステムに関しては,節操なく導入することは個人的には反対なんです。あればとても便利なのはよく分かっていますし,普通のMMORPGには付きものではあります。いままでやってきたようなMMORPGのほとんどに実装されてましたし。でも街に人がいなくなりがちなので,オンラインゲームとしての魅力を削いじゃうと思うんですよ。とはいえ,ないとそれはそれで不便なのも,痛いほど理解はしていますが。

上野氏:
 オークションは例えば,一人数点だけ,みたいな制限を加えれば,懸念なさっている状況にはならないですし,本当に売りたいものだけをオークションに出してくれるかもしれませんね。ともあれおっしゃるように,便利さの追求は諸刃の剣なので,本当に難しいと思います。入れれば,生産する人も買う人もすごく便利でしょうけど,ふと街を見てみると誰もいない。

4Gamer:
 ちょっと寂しいですよねぇ。

上野氏:
 リアルで買い物をするのに,Webの通信販売で買うのと,実際に出かけてウィンドウショッピングしながら財布をあけて買うのとでは,大きく違うと思うんです。

4Gamer:
 よく分かります。うまく言葉にできないですが,その二つには気分的にも大きな隔たりがありますよね。

上野氏:
 感覚的なものではあるんですけどね。

4Gamer:
 オークションシステムを入れるのであれば,極論ゲームワールド内でやる必要はないとさえ思ってます。公式Webサイト上にあればいいんじゃないですかね,ああいうものは。

上野氏:
 大きく出ると,オンラインゲームそのものがこれから抱えていく命題だと思うのですが,便利であることを突き詰めていくと,それはもはやゲームとはかけはなれたものになってしまうかもしれないですよね。とはいえ,不便すぎるのも困ります。

4Gamer:
 んー……例えばキャラクターの移動とかそうですよね。例えばSecond Lifeは,事実上歩く必要性なんてほとんどないんですけど――まぁあれはゲームじゃないですが――「ワールド」そのものを楽しみたい私には,ちょっと味気なく感じました。
 ちょっと面倒なこと,ちょっと大変なことをがんばってやった結果として,例えばレベルアップだったりレアアイテムだったり,もしくは目には見えないけど友達とのつながりだったり,そういう「報酬」があるからプレイを続けるんだと思うんですよ。小さな成功体験の積み重ね,とでも言いましょうか。なんでもかんでも便利に易しくすればいいわけじゃないという部分には,大いに賛同です。

画像集#009のサムネイル/プロデューサーの考える“三On像”とは何か? 新情報満載の「三國志 Online」インタビューは,プレイヤー必読【後編】
上野氏:
 戦闘を代わりにやってくれるシステムを持つゲームすらでてきましたが,このまま「これは便利だろう」というものをどんどん積み重ねていったら,その結果としてプレイヤーがやることが何もなくなってしまうというのは,あんまり笑えませんよね。
 そういった便利さは,おっしゃったようにゲーム内ではなく,Web上でやったらと思うことがあります。私はもともとWebゲームも作っていたので感じるのですが,MMOとは割と親和性があると思うんです。お互いに長所と短所があって,それが結構補える関係なんですよ。例えば分かりやすい例では,通勤中に携帯電話で生産の材料を集めておこうっていうのもできるわけです。

4Gamer:
 ……やるんですか?

上野氏:
 例えば,の話です。そうやって時間や手間のかかる素材を集めは携帯などで済ませておいて,ゲームにログインしたらちょっと生産して,そのついでに長安でウィンドウショッピングでもするか,とか。数少ないプレイ時間を有効につかえるような発展を目指したいですね。

4Gamer:
 “世界”そのものを,知らない多くの人と体験するのがオンラインゲームである,と個人的には思っているんですが,そういう部分が抜け落ちがちですよね,どんどんシステムを便利にしていくと。

上野氏:
 便利になると,先ほど話した「不透明な部分」というものが,どんどんなくなっていくんですよ。

4Gamer:
 とはいえ,社会人でも普通に楽しめるというコンセプトを維持しながら,そういった方向を考えていくのは,相当に難しいことじゃないですか? 様々な人が挑戦して,破れてますよね。

上野氏:
 だからこその目標なんです。

追撃準備完了! 今後に期待して待て


街の至るところにいる,アクションのないNPC達。世界観とのインタラクトを考えると,彼らにも何か役目があると嬉しいのだが
画像集#029のサムネイル/プロデューサーの考える“三On像”とは何か? 新情報満載の「三國志 Online」インタビューは,プレイヤー必読【後編】
4Gamer:
 三Onはとても優等生的な作りなのですが,逆にはみ出たところがなく型にはまっており,飛び抜けた「何か」がまだ感じられません。そのあたりを今後どう料理していくのか,非常に気になってるんですよ。

上野氏:
 そこが一番難しいところです。
 できるだけコアにはしたくないけれど,コアなところを入れないと,ゲームが深くはならない。これはたぶん真実だと思います。先ほどのお金の遣い道の話にしても,何もしないのではなく,まず1回何か入れてみるかという感じで,少しずつコアにしていくとか,同じコンテンツにコアな遊び方を追加するとか,そういった方向性で考えているところです。現状のプレイヤーの皆さんの動向を見ている限り,バシッとコアなものを追加しちゃうと,多くの人には不要なコンテンツになっちゃうんですよね。

4Gamer:
 なるほど。このインタビュー前に,上野さんの昔のインタビュー記事を改めて読み直したんですが,昔から姿勢とポリシーが一貫して変わっていないんですよね。そこはとても素晴らしいと思っています。
 しかし同時に,三Onは元の出来が良いだけに,この“コンパクトにまとまった感”がすごくもったいないなぁ,と思っています。まったくストレスなく動く1000人規模の合戦や,自在にクラスを変えられるキャラクターシステムなど,いくらでも化けそうな要素が埋まっているのに,まだそれを生かし切れていない気がしていて。

29日のアップデートで,クエストもいくつか追加された。慎重に慎重にコンテンツを追加するチームの姿勢と,コンテンツを凄まじい勢いで消化するプレイヤーの本能。落としどころは,どこになるのだろうか
画像集#031のサムネイル/プロデューサーの考える“三On像”とは何か? 新情報満載の「三國志 Online」インタビューは,プレイヤー必読【後編】
上野氏:
 ありがとうございます。正式サービスが始まって今まで,サービスの基礎を固める部分で色々とやることが多くなかなか思うように動けなかったんのですが,その間もずっとユーザーの皆さんの遊び方や動向はレポートにしてチェックしてきました。
 今まで述べてきたように,今後はやっと“攻め”の姿勢に転じられると思います。ユーザーの皆さんもぜひ期待して待っていてほしいです。

松本氏:
 上野が言ったように,まさに今までは立ち上げでばたばたしていましたが,今後は運営としても積極的な姿勢を見せていきたいと思います。キャンペーンやイベント,公式サイトも含めて新しい展開を見せて行きたいと思います。

4Gamer:
 公式サイトにも今後に関する情報が皆無ですしねえ。せっかく公式ブログまであるのに! 開発とかアップデートについての情報は,なにがしか欲しい気がするのですよ。

松本氏:
 そうですね,開発情報とかアップデート情報についてはできるだけ早く公開したいと思っています。それ以外にも公式ブログについて新しいコンテンツとしてユーザーさんに楽しんでいただく内容はないか色々考えています。先日合戦激闘録も入りましたし,一つ合戦をピックアップして,どなたかに合戦の論評をしていただくなども面白いかもしれませんね。

上野氏:
 作成中の案件はなかなか出せませんからね。

4Gamer:
 出さないというのはポリシーでしょうし,絶対に出すべきだ,とまでは思いませんが,運営/開発チームが何をしようとしていて,どんな方向に向かおうとしているのかという情報は,なんらかの形で出すほうがいいのではないでしょうか。あ,もしかしてそれがこのインタビューなのか。

上野氏:
 おっしゃるとおりです。

4Gamer:
 では,その今後の方向性は,どうやって決まっているんですか?

画像集#010のサムネイル/プロデューサーの考える“三On像”とは何か? 新情報満載の「三國志 Online」インタビューは,プレイヤー必読【後編】
上野氏:
 ロードマップにあるものと,新たに要望として浮上してきたものの両方をマージして「さてどうするか」と優先順位を決めていくわけですが,その検討のためのミーティングは頻繁に行っています。当然,緊急性の高いものはその場で決めています。最近は,週に最低2回はミーティングして意志疎通を図っています。幸いTV会議システムがあるので,物理的な距離はほとんど気にすることなくやりとりはできています。議論が白熱することもしばしばありますよ。

松本氏:
 開発サイドは,やはり堅実志向なんですよ。運営としては,会議で決まったことを自信もって打ち出したいんですが,開発サイドは若干慎重すぎるかなぁと思ったりすることもちょっとあります(笑)。

4Gamer:
 “ちょっと”だけなんですか?(笑)

上野氏:
 発表したいネタではあるけれど,ちょっとだけ待ってね,というのはよくあります。実装できる形にならないと,本当に自信を持って言えるわけではないですし,その状態にならないと公開も難しいと思います。口にしてから「無理でした」というのは話になりませんしね。

松本氏:
 確かに,プレイヤーの皆様を裏切ってしまうのは一番避けたいです。それでも,今まで慎重すぎた気はします。立ち上げの時期でいろいろなものが同時並行だったので,今後落ち着いてくれば,余裕をもって対応できると思います。

上野氏:
 そのあたりをまとめて,もう一度日本に出張する機会を作ろうかなぁ。

4Gamer:
 日本は「出張」する場所なんですね(笑)。
 ええと,時間もずいぶんかかっちゃいましたし,最後に三國志 Onlineのプレイヤーのみなさんに,お二方からコメントをよろしくお願いします。

上野氏:
 ユーザーの皆さんにご要望をいただいている内容に関しても,追撃体勢が整ってきました。今までは開発状況に関しては不透明に見えてしまっていたかもしれないですが,今後はどんどん開発情報をリリースさせていただき,安心して遊んでいただけるような環境にしていきます。ぜひ期待してお待ちください。

松本氏:
 立ち上げの混乱も去り,運営としても積極的に運営をやっているということを見せていきたいと思います。詳細は追って発表いたしますが,ゲーム内イベントも着々と準備中ですので,どうぞご期待ください。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。


 以上が,2時間以上にわたって行われた,上野/松本両氏へのインタビューだ。根掘り葉掘り聞いたことの,ほぼ全貌が余すところなく入っているはずだ。

 インタビュー中でも幾度となく触れているが,上野氏はかねてより一貫して「時間のない人に優しい仕様」「義務感から来る脅迫観念を与えないゲームデザイン」を目指しており,確かにそれは,三國志 Onlineで一定の成果を出している。レベルはとても上がりやすく,ちょっとくらいレベルが低くてもメインコンテンツ(合戦)には触れられ,生産にしても,レア素材を集めるだけで数日かかるような,“時間のある人最強”のコアな仕様にはなっていない。
 複数人数がいないと倒せないような強大な敵はおらず(いるにはいるが,倒さねばならない相手ではない),仮に一人で黙々と遊んでいたとしても,ほぼ間違いなく最大レベルまで到達できる。すべてが優しく,すべてがイージーで,巷のMMORPGに必ずつきまとう「先行者有利」の構図は一切感じられない希有な作品だ。

 しかしそれは裏を返せば,「とことん遊びたい人には不満が募る」仕様であることもまた事実だ。時間をかければ/努力すればそのぶん報われる,というのは“ゲーム”として正しいあり方の一種であることはおそらく疑いのないところだが,そういうものを排除したことが設計思想の根底にある本作では,「やることがありません」という分かりやすい形での噴出になりかねない。
 コアなコンテンツ――時間がとことんある人が,とことん楽しめるコンテンツ――は,そもそも本作の設計思想には存在しないものであり,それをとやかく言うことはしないし,そもそもメディアが文句をつける筋合いではない。とはいえ,上野氏が当初考えていた以上に「ゲーム慣れ」したプレイヤーが多いようではあるし,それを開発/運営が認識していることもインタビュー中のセリフから読み取れる。そんなこんなの状況を踏まえつつ,彼らが一体今後どうしようと思っているのかを聞いてみたのが,このインタビューだ。

 お二人とも「万が一のこともあるし,プレイヤーさんをがっかりさせたくないから決まっていないことを話したくない」と口が堅かったが,インタビュー中にポツリポツリと新情報も登場し,今後の展開予定もある程度聞き取れたのは大きな収穫だった。上野氏の考える「理想」は,誰も成功していない人跡未踏の地だが,現実との落としどころを計りながら,どこまで推し進めていけるのだろうか。ユーザーのコンテンツ消費速度を,膨大な人員とコストのパワーでねじふせる形のMMORPGが未だ多いこの状況下で,その手法が実際にどこまで通用するものなのだろうか。

 最大の売りで,かつ筆者が知る限り現在最高レベルの“実用度”にあると言っても過言ではない「合戦」は,純粋にプレイヤーの数だけがコンテンツの面白さを支えるファクターとなる。オンラインゲームはただでさえプレイヤー人数が大事なファクターなのだが,本作におけるそれは,その重要度たるや半端ではない。
 そんなプレッシャーを背負いつつ,舵取りには微妙な修正を加えつつ,夏に向けて本格稼働を始める本作。三国志の世界の広大さを考えると,まだまだ追加すべき要素は多そうだ。今後の発展を,楽しみに待ちたい。


――2008年5月16日 収録
  • 関連タイトル:

    三國志 Online

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