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  • 発表日:2003/10/23
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印刷2024/06/13 17:00

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AIがゲーム攻略情報でプレイをお助け? PCのチューニングまで面倒を見てくれる「Project G-Assist」は何ができるのか

 COMPUTEX 2024の開幕直前である6月1日,NVIDIAは,CEOであるJensen Huang(ジェンスン・フアン)氏による基調講演を行った。その内容は,エンタープライズ向けGPUサーバーやGPGPU関連製品が中心で,民生向け製品に関連する発表や言及は非常に少なかった。
 では,COMPUTEX 2024において,NVIDIAのブース展示がエンタープライズ関連,GPGPU関連ばかりだったかというとそうでもない。本稿では,ゲームファン向けの新技術「Project G-Assist」(以下,G-Assist)を実際に体験してみた様子をレポートしたい。

G-Assistのデモコーナー。右の人物は,今回のデモを担当したGuillermo Siman氏(Senior Product Manager, NVIDIA)
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 「COMPUTEX 2024」に合わせて,NVIDIAは,AIをゲームに応用する重要な発表をいくつか行った。AIがプレイ中のゲームを認識してアドバイスをくれる「Project G-Assist」や,AIベースでゲームに合わせて話すNPCを作る「ACE for Games」のアップデートなど,興味深い内容をまとめてみた。

[2024/06/03 19:43]


ゲームプレイをレクチャーしてくれるAIアシスタント


 買ったばかりで初プレイのゲームで,システムや操作がよく分からず,面白さを感じる前にプレイするのをやめてしまったことはないだろうか。あるいは,謎解き要素で行き詰まってしまい,「この扉がどうしても開かない」ことで先に進めず,プレイを中断したゲームもあるのではないだろうか。
 そんなときに頼りになるのは,ゲームの攻略サイトや攻略本だが,今自分が知りたい情報がどこにあるかを見つけるまでが面倒だ。やはり,そんなときには,そのゲームに詳しい友達が横にいてくれるのが手っ取り早い。

 そんな都合のいい友達を,人間で作るのは難しいが,AIならば実現できる。ということで,NVIDIAは,自然言語による対話をしながらゲームプレイを指南してくれるAIアシスタントとして,G-Assistを発表した。


 大前提として,G-Assistは,今のところ独立したアプリケーションとして設計されており,「GeForce Experience」や特定のゲームに含む形で提供されるものではない。ただ,今回のデモでは,プレイ対象ゲームを「ARK: Survival Ascended」(以下,ARK)に限定しており,G-Assistは,ARKの専門知識データを学習済みだ。
 ゲームをプレイ中に,あらかじめ決められた操作コマンドを入力すると,GeForce Experienceの一部機能のように,AssistのUI部をゲーム画面上にオーバーレイ表示したり,閉じたりできるようになっている。

 NVIDIAの担当者が,まず見せてくれたのは,ゲーム画面の照準を,ゲーム内の恐竜に合わせたあと,声で「この恐竜はなに?」と質問するものだった。

「この恐竜はなに?」と質問すると……
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 一瞬の間を置いて,G-Assistは,回答ウインドウの中につらつらと,「この恐竜,トリケラトプスは,中生代後期,白亜紀に棲息した草食恐竜で……」という解説を(英語で)表示しつつ,それを音声でも読み上げた。
 担当者によると,G-Assistは,会話の進行によってはリアルタイムにゲーム画面をキャプチャして,コンピュータビジョン的な処理を行い,対象が何かの推論をクラウド側のAIに問い合わせているそうだ。つまり,「この恐竜はなに?」の質問に対する回答は,ゲーム内容に依存した知識から推論したものではなく,ゲーム画面に登場しているトリケラトプスの外見的特徴から,汎用の知識データから推論したやりとりとなっていたわけだ。
 なお,言語解釈部分は,「ChatGPT」のような既存の大規模言語モデルを活用しているという。

G-Assistの動作概念図
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ゲームの攻略情報についても事細かく教えてくれるG-Assist


 続いて,ARKのインベントリ画面を開くと,画面には,プレイヤーがそれまでに取得した素材や弾薬などのアイテムが広がる。そこで担当者は,「トリケラトプスを手懐けるにはどうしたらいい?」とG-Assistに声で質問した。
 するとG-Assistは,「トリケラトプスを手懐けるには,麻酔弾で眠らせて,その目覚めとともにベリー類を与えてはどうでしょうか」と音声で回答する。

 この場面では,先述した「この恐竜はなに?」とは,異なる経路での推論を行っていると担当者は説明する。
 まず,ゲーム画面をキャプチャしてG-Assistに見せる処理系までは同じだ。しかし,質問に回答するには,ゲーム内容に特化した知識が必要だとG-Assistは判断する。すると,学習したARKの専門知識を参照して,「ゲーム内ルール」(≒ゲームメカニクス)に基づいた情報を参照して推論を進めるのだ。

そのほかにもデモでは,「このゲームで一番強い防具はどれ?」「このゲームで一番強い武器はなに?」というような,ゲームの攻略情報に付いての質問を,G-Assistにぶつけていた
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 気になるのは,「ゲームの内容に特化した知識」の入手先だ。
 これらの専門知識についても,G-Assistはクラウド側のデータを参照したり,あるいはインターネット検索のようなことを行ったりしているのかと聞いてみたところ,その返答は予想外なものだった。
 専門知識データ自体は,ネットからリアルタイムで参照してはおらず,事前に,学習データとして,G-Assistのローカルデータ領域に取り込んだ情報を参照しているというのだ。

インベントリ画面を開き,取得した素材や弾薬に関連した質問をしている様子。最近のRPGなどにありがちな,複雑なスキル成長についてのアドバイスもしてほしいものだ
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 「そのゲーム内容に特化した専門知識データの存在元はどこか」と,さらに質問すると,ARKに関連したゲーム攻略サイトや,そのほかのゲーム情報メディアなどだという。つまり,G-Assistに喰わせる専門知識の学習データは,インターネット上から仕入れたもの。しかし,G-Assistに与えるときには,事前に「G-Assist SDK」に含まれる学習データ生成ツールで,学習データを作成しておく必要があると言うことだ。

 大規模言語モデル系のAIが,自分の知識にない情報について,虚言を交えて出力する現象を「ハルシネーション」(Hallucination)と呼ぶが,これを抑え込む技術に「Retrieval-Augmented Generation」(RAG)というものがある。担当者によると,G-Assistは,専門知識については,このRAG技術を活用してハルシネーションを抑え込んでいると説明していた。
 RAGは「検索拡張生成」とも呼ばれる技術で,大規模言語モデルのような生成系AIの実装において,学習データを汎用と専門に切り分ける実装形態として,主流になりつつある。たとえば,機密情報に関わる知識やプライバシーに関わる知識は,意図的にクラウド側に置かないことで,性能面とセキュリティ面を効率よく両立させられるAI運用形態と見なされているからだ。

COMPUTEX 2024の基調講演で,IntelのCEOであるPat Gelsinger氏も,今後のAI実装形態にRAG技術の導入が必須となっていくことを見据えて,データ種別ごとにサーバーに搭載するプロセッサを適材適所に変えていくという予想を披露していた
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PCの性能設定もG-Assistにおまかせ!?


 G-Assistのデモを実行していたPCは,最上位モデルのGPUである「GeForce RTX 4090」だった。そのため,ARKは常時,100fps以上のフレームレートが出ており,余裕で動いていた。担当者は,ここで「GPUの消費電力を下げてほしい。だけど60fpsを維持してほしい」とG-Assistに命令する。するとG-Assistは,GPUのパフォーマンスを意図的に落としてみせた。

 G-Assistは,PC内のデバイスドライバからの情報取得と,設定変更を行うインタフェースを備えているため,ゲームの実行性能調整を,自然言語による会話で行えるわけだ。
 GPUの動作クロック調整は,ユーザーが手動で調整したり,グラフィックスカードメーカーが提供する設定ソフトで自動化したりできるが,G-Assistは,調整APIを通してバックグラウンドで行ってくれるわけだ。これは便利だし,面白い。自分のPCが,まるで「ナイトライダー」の「ナイト2000」(人工知能搭載スーパーカー)にでもなったみたいだ。

 そのほかにも担当者は,「現在のCPUとGPUの利用率をグラフで出力」と命令して,G-AssistによるPCの制御で何ができるかを披露していた。

CPU利用率とGPU利用率のグラフ。G-Assistがリアルタイムで作成したものだ
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 一連のG-Assistデモは,筆者を含めた多くの参加者にとって興味深かったようで,担当者にはさまざまな質問が飛んだ。最後にその概要を紹介したい。

 まずは,ゲーム攻略情報の専門知識データについて。
 「G-Assistに与える攻略データを,ゲームファンが勝手に作成していいものなのか,それともゲーム開発側に許諾が必要なのか」という質問だ。
 これについては,現在もゲーム攻略情報がユーザーによって作られており,それらに対する反応は,パブリッシャや開発会社によって異なるので,G-Assistについても同様の扱いになるだろうとのことだった。また,こうした攻略情報を,無償か有償かはともかく,ゲームのパブリシャや開発元,あるいは大手ゲームメディアが公式に提供するスタイルもあるだろうとも述べていた。

 「G-Assistを動作させると,そのPCにどの程度の負荷がかかるのか」という質問もあった。
 もちろん,G-Assistの動作には一定の負荷をともなうので,ハイエンドクラスGPUとエントリークラスGPUでは,ゲーム性能は変わってくる可能性はあるとのこと。最終的な仕様は確定していないが,担当者は「ひとつの可能性」として,たとえばユーザーに,以下のような選択肢を設けることを検討していると述べていた。

  • ハイエンドGPUの場合
    クラウド依存を減らして,多くの処理系をローカルPC側で行う。ローカルPC側のシステム負荷は高くなるが,AIのレスポンスは低遅延にできる
  • エントリークラスGPUの場合
    多くの処理系をクラウド側で行うため,ローカルPC側のシステム負荷は低くなるが,AIのレスポンスはそれなりに下がる

 「G-AssistはNVIDIA GPUユーザー専用のものになるのか」という質問もあった。
 「技術上は,処理系のすべてをクラウド側に任せることで,NVIDIA以外のGPUユーザーでも利用できるようなサービスにはできるだろうが,このあたりは上層部の判断になるだろう」とのことである。

 最近は,あらゆる分野でAIを活用していこうとする動きが見えるが,ついに,ゲーム攻略やPCチューニングの分野までAIがやってくるとは……。4Gamer読者に多いコアゲーマーは,この時代の流れをどう捉えているのだろうか。

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