テストレポート
「Radeon RX 480」の消費電力は「Radeon Software Crimson Edition 16.7.1」で下がったのか。検証結果報告
英文リリースノートによれば,PCI Expressリンクの帯域幅が適切でなかった問題を解決して消費電力を引き下げたうえで,明示的に消費電力を下げるためのスイッチを「Compatibility Mode」(互換モード)としてRadeon Settingsに追加し,さらに,「明示的に消費電力を下げた」結果として性能が若干低下するのを相殺すべく,最大3%の性能向上を実現する最適化も行っているという。
では実際のところ,RX 480のリリースに合わせて登場した一つ前のドライバ「Radeon Software Crimson Edition 16.6.2 Hotfix」(以下,Crimson 16.6.2)とは,消費電力と性能面でどれだけの違いが出ているのか。RX 480のリファレンスカードを使って,取り急ぎ確認してみたい。
ドライバを入れ替え,Compatibility Modeの有効/無効を切り換えてテスト
また,前述のとおり,Crimson 16.7.1にはCompatibility Modeがあることから,その影響を見るべく,有効/無効を切り換えた状態でもテストを行うことにした。グラフ中ではスペースの都合から,「16.7.1(CM:OFF)」「16.7.1(CM:ON)」と書き分けるので,この点は注意してほしい。
テスト方法は基本的に4Gamerのベンチマークレギュレーション18.0準拠。ただし,少しでも早くテスト結果を掲載すべく,今回の検証対象は「3DMark」(Version 2.0.2724)と「Tom Clancy’s The Division」(以下,The Division),「Fallout 4」,「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド ベンチマーク」(以下,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチ)の4つに絞った。テスト解像度は1920
なお,テストにあたっては,テスト状況によってその効果に違いが生じる可能性を排除するため,CPUの自動クロックアップ機能「Intel Turbo Boost Technology」を,マザーボードのUEFI(≒BIOS)から無効化している。
なお,ここまでのテスト環境およびテスト方法は,対象のゲームタイトルが減っていることを除くと,RX 480のレビュー記事とまったく同じ。そのため,Crimson 16.6.2のスコアは当該記事のものを流用するので,あらかじめお断りしておきたい。
Compatibility Mode有効時は消費電力が確実に低減。無効時は「若干下がって,性能が少し上がる」
というわけで,最も気になる消費電力からチェックしていこう。ここでは,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の消費電力を比較してみることにした。テストにあたっては,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時としている。
結果はグラフ1のとおりで,Crimson 16.7.1の導入によって,RX 480の消費電力はCrimson 16.6.2導入時から最大で4W低下しているものの,劇的な変化はない。3DMarkとFallout 4に至ってはほぼ変化なしだ。
一方,Compatibility Modeを有効化すると,Crimson 16.6.2導入時と比べ,RX 480は明らかに消費電力が下がった。具体的には15〜19Wであり,これは「効果アリ」と言い切ってしまっていいと思う。
では,テスト中の動作クロックとGPUコア電圧にはどの程度の影響が出ているだろうか。AMDは,内製ツール以外ではGPUコアクロックの推移を正確には追えないとしているので,コアクロックのほうは参考値になることを断ったうえで,今回は「GPU-Z」(Version 0.8.9)で追った結果をグラフ2,3にまとめた次第だ。
これを見ると,GPUコアクロック,GPUコア電圧ともに,Crimson 16.7.1の“素”とCrimson 16.6.2の間に,大きな違いはないのが分かる。そもそもAMDはGPUではなく,PCI Expressリンク周りに手を入れたとしているので,この結果も納得だろう。
ただ,Crimson 16.7.1でCompatibility Modeを有効化すると,明らかに低いGPUコアクロック,低いGPUコア電圧が目立つ。おそらくはこれが,先述した消費電力低減の直接的な要因だと思われる。
ここからはベンチマークスコアを見ていく。
まずグラフ4は3DMarkの結果で,ここだとCompatibility Modeを無効化したCrimson 16.7.1が,Crimson 16.6.2と比べて1〜2%高いスコアを示している。電力周りの制御により性能低下はなく,むしろAMDの言い分どおりの最適化が“効いて”いる印象だ。
Crimson 16.7.1でCompatibility Modeを有効化すると,Crimson 16.6.1比で約97%のスコアとなった。残念ながらこちらはドライバの最適化による性能低下を相殺できていないが,この程度なら許せるという人もいるのではなかろうか。
グラフ5,6はThe Divisionの結果だ。
ここでは3DMarkと異なり,Compatibility Modeを無効化した状態のCrimson 16.7.1がCrimson 16.6.2の99〜100%というスコアで,性能向上は認められない。Compatibility Modeを有効化すると95〜96%程度で,Crimson 16.6.2とのスコア差が若干開いた。
続いてグラフ7,8はFallout 4の結果だが,ぱっと見て分かるとおり,テスト対象の3条件で違いはほとんどない。つまり,消費電力がCrimson 16.6.2導入時より15W,Crimson 16.7.1のCompatibility Mode無効時より14W低いCrimson 16.7.1のCompatibility Mode有効時に得られる性能は,比較対象とほとんど変わっていないのである。
この結果が,おそらくはCompatibility Mode有効時のベストではなかろうか。
FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチの結果はグラフ9,10にまとめた。
ここでの結果は3DMarkやThe Divisionを踏襲していると言っていいだろう。Compatibility Modeを無効化したCrimson 16.7.1はCrimson 16.6.2と比べて101〜102%程度というスコアを示し,一方でCompatibility Modeを有効化したCrimson 16.7.1は,Crimson 16.6.2の97〜100%程度に落ち着いている。
RX 480ユーザーはともあれCrimson 16.7.1の導入が吉。Compatibility Modeも要注目だ
以上,Crimson 16.7.1の効果を見てきた。とにかく掲載を急いだ結果,サンプルが少なくなったのは申し訳ないが,ひとまず,Crimson 16.7.1の導入によって,多少なりとも消費電力が下がるのは間違いない。リファレンスデザイン版RX 480カードを購入した人であれば,ひとまず導入が正解だろう。
また,新設のCompatibility Modeも,なかなか興味深い機能だと言える。確かに性能は最大で5%ほど低下するのだが,消費電力は目に見えて低下し,最適化がハマったタイトルでは(AMDの言うとおり)性能低下が無視できるレベルに留まるからだ。
海外では,自己責任でのGPUコア電圧引き下げというのも語られていたりするわけだが,RX 480の消費電力問題に,保証の範囲で対策するという観点で,Compatibility Modeはアリだと思う。
ただし,ドライバの導入作業,それ自体は自己責任となるので,その点はくれぐれもご注意を。
AMDのCrimson 16.7.1配布ページ
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