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  • 発表日:2003/09/24
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一気に買いやすくなったAthlon 64 X2 3800+を検証する
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印刷2005/08/01 13:20

テストレポート

一気に買いやすくなったAthlon 64 X2 3800+を検証する

「CPU-Z 1.29」を利用して取得したCPU情報。駆動電圧は「1.34V」となっている。ちなみに,AMDが公開した仕様では1.35V。CPU動作クロックは2010.3MHz(2.01GHz)になっているが,これはマザーボードの仕様によるもので,正式には2GHzだ
 AMDは,デュアルコアを採用するAthlon 64 X2のラインナップに,下位モデルとしてAthlon 64 X2 3800+(以下X2 3800+)を加えた。X2 3800+は,既存のAthlon 64 X2と同じ90nm SOIプロセスを採用し,拡張命令としてSSEをサポートする。動作クロック(動作周波数)は2GHzで,L2キャッシュ容量は512KBだ。
 そんなX2 3800+の,最大のポイントは価格にある。1000個ロット時の価格は4万710円とされているから,リテールパッケージの価格は4万円台前半になると思われ,Athlon 64 X2の最大の弱点「価格の高さ」をかなり払拭できそうだ。3万円台からという安価さを武器にシェアを伸ばしつつある,Pentium Dへの対抗策といえるかもしれない。

 さて,下位モデルの登場によって,一つだけ問題が生じた。それは,シングルコア版のAthlon 64と,モデルナンバーがかぶったことだ。市場にはAthlon 64 3800+/2.4GHz(L2キャッシュ512KB)が流通している。モデルナンバーが同じなら価格も同じ,ならいいのだが,8月2日付けでAthlon 64には価格改定が入る予定になっているようで,事前情報を踏まえると,スペックと価格の関係は表1に挙げるような状態にある。



 少し整理してみよう。X2 3800+は,Veniceコアを採用するAthlon 64 3200+/2GHzのデュアルコア版と見ていい。同じモデルナンバーでAthlon 64とAthlon 64 X2を比較すると,前者のほうが動作クロックは400MHz高い一方,後者にコアが2個あるだけあって,TDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)は同じ。価格は前者のほうが若干安価といった具合である。2GHzという動作クロックで見れば,X2 3800+は,Athlon 64 3200+の倍額よりは数千円程度安価になる計算だ。
 今回はX2 3800+を入手したので,X2 3800+と同じモデルナンバーのシングルコア版に相当するAthlon 64 3800+/2.4GHz(以下64 3800+)と,X2 3800+と同じ動作クロックのシングルコア版Athlon 64である,Athlon 64 3200+/2GHzと比較してみることにする。

 以前,Athlon 64 X2が登場したときに「こちら」で解説したように,2005年夏時点のゲームタイトルにおいては,コア数の多寡より,動作クロックの高低のほうが体感速度に影響する。このため,X2 3800+が不利なのは容易に想像がつくので,今回は「どの程度不利なのか」に注目して見ていってほしい。
 なお,テスト環境は表2のとおりだ。64 3800+はVeniceコア版を用意できたので,純粋にコアの数と動作クロックで比較できるのだが,機材調達の都合上,64 3200+はVeniceコアの一世代前となる,Winchesterコアを採用したものである。全体的に,Winchesterコアを採用するAthlon 64 3200+(以下64 3200+)のスコアは低めに出ると思われるので,あらかじめお断りしておく。


今回比較用に用意したCPUのスペックを,CPU-Z 1.29で確認したもの。左が64 3800+,右が64 3200+である。やはりCPU動作クロックが規定値よりも若干高くなっているが,FSB設定は一様に201.0MHzなので,今回の横並び比較に大きな影響はないと思われる


■ゲームではやはり64 3200+相当
 まずは「3DMark05 Build1.2.0」(以下3DMark05)見てみよう。垂直同期と解像度以外の設定をいっさい変更していない状態を本稿では「標準設定」と呼ぶことにし,ForceWareから8倍(8x)のアンチエイリアシング(以下AA)および16倍(16x)の異方性フィルタリング(以下Anisotropic)を適用した状態とで,それぞれグラフ1グラフ2に分けているが,いずれもほぼ動作クロックどおりの結果。64 3800+と比べて,X2 3800+は標準設定の1024×768ドットで200ポイント近い差を付けられてしまっている。ただし,解像度を上げたり,8x AAと16x Anisotropicを適用したりするとその差がどんどん詰まるのも分かるだろう。これは,解像度が高くなったり,各種フィルタリングが適用されたりすると,GeForce 7800 GTXでもグラフィックスチップがボトルネックになってしまい,CPUの性能差が見えにくくなることを意味する。



 これは実ゲーム系ベンチマークでも同様。「DOOM 3」のTimedemoを用いた平均フレームレートをグラフ3,4にまとめたが,標準状態の1024×768ドットでは,X2 3800+と64 3800+の差は12.5fpsにもなる。それに対して,8x AAと16x Anisotropicを適用すると,グラフィックスカードがボトルネックとなって,CPUによる差はまったく出なくなるのだ。



 HardwareOCが配布する「Half-Life 2 Benchmark 1.5」を用いて,「Half-Life 2」での平均フレームレートを計測したものがグラフ5,6だ。また,同様にHardwareOCの「Far Cry Benchmark v1.4.1」を用いて計測した「Far Cry」の平均フレームレートがグラフ7,8となる。両者とも64 3800+の優位は揺るがない。とくにHalf-Life 2では,標準状態の1600×1200ドットで64 3800+が12.3fpsという大差を付けている。また,Far Cryの標準設定では,不満のない速度でゲーム画面が描画される目安となる平均60fpsを挟んで,64 3800+が7.47fpsの差を付けている点に注目したい。最新世代のゲームタイトルでは,X2 3800+だとCPUパワーがあと一歩及ばない可能性があることを認識しておくべきだろう。
 レースゲームの代表として「TrackMania Sunrise」のベンチ結果も掲載しておきたい。53秒程度で1周する「Paradise Island」というマップのリプレイを,3回連続で実行。その間の平均フレームレートを,1024×768ドットの標準設定で計測した結果がグラフ9,10だ。グラフ3〜8のfpsと同様の傾向になっている。



 しかし,「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」(以下FFXI)では少し様相が異なる(グラフ11,12)。64 3800+が優位な点は変わらないものの,X2 3800+が64 3200+に有為な差を付けているのだ。
 これは,Athlon 64 FX-57について検証した「こちら」の記事の結果とよく似ている。あのときは,最新世代のSan Diegoコアを搭載するAthlon 64 4000+/2.4GHzが,最も古い世代のClawHammerコアを搭載したAthlon 64 FX-55/2.6GHzよりも,FFXIで高いスコアを出していた。今回も,X2 3800+はManchesterコア,64 3200+はWinchesterコアと異なっており,これがスコアに影響を及ぼしているようだ。



■非常にクールなX2 3800+
CPU-Z 1.29を利用して,CnQ有効時の状態をチェックすると,CPUクロックは1GHz,駆動電圧は1.1Vまで下がっているのが分かる
 パフォーマンスの検証に続いて,動作時の発熱と消費電力についても確認してみよう。OS起動後,30分間放置した状態をアイドル時,30分間「午後べんち」を実行し続けた状態を高負荷時として,それぞれの状態における消費電力とCPU温度を測定した。消費電力はワットチェッカーでシステム全体の値を,CPU温度はマザーボードに付属するASUSTeK Computer製ハードウェアモニタリングツール「PC Probe」で見ている。このときテスト環境はバラック状態で,PCケースには組み込んでいない。室温は26℃。CPUクーラーはAthlon 64 4000+/2.4GHz用のAMDリファレンスを使用している。
 結果はグラフ13,14のとおりだ。省電力機能であるCool'n'Quiet(以下CnQ)の有効/無効に関わらず,高負荷時だとX2 3800+の消費電力は64 3800+より25W大きい。これはデュアルコアによる増加分と見ていいだろう。しかし,それでも64 3200+と近い値でもあり,デュアルコアといっても,消費電力の増加はかなり抑えられている。
 CnQを有効にすると,アイドル時には動作クロックが1GHzまで低減するため,そのときの消費電力は92Wとかなり低い。とくに64 3200+の値95Wをさらに下回っている点は特筆に値し,ManchesterコアはWinchesterコアよりもさらに低消費電力化を果たしたCPUコアであるといえる。
 これはCPU温度でも顕著に現れており,CnQを有効にすると,X2 3800+はアイドル時に30度と,64 3200+の33度を下回っている。高負荷時でも53℃とCPU温度は十分に低く,消費電力やCPU温度に関しては非常に優秀だ。



■マルチスレッド環境で良好なパフォーマンスを発揮
 最後に,ゲーム以外の一般的なアプリケーションにおける性能の指標として,PCの総合性能を計測する「PCMark05」の「CPU」ベンチの結果を見てみよう(グラフ15,16)。両グラフの結果を分けたのは,単純に見やすさの問題である。グラフ16に分けたほうの値がほかと比べて大きすぎるためで,他意はない。また,項目名の頭にある「ST」「MT」は,順にシングルスレッドテスト,マルチスレッドテストの意味である。
 傾向は明確で,シングルスレッドテストでは64 3800+,マルチスレッドテストではX2 3800+が(程度の差こそあれ)例外なく高い値を示している。これは当然といえば当然の結果だが,ファイルの圧縮や解凍など,マルチスレッドに対応したアプリケーションではX2 3800+のほうが64 3800+よりもパフォーマンスが優れるわけだ。また,シングルスレッドのアプリケーションであっても,同時に複数のアプリケーションを実行する場合は,デュアルコアのAthlon 64 X2 3800+のほうがパフォーマンスが高いことになる。



 以上の結果をどう見るかだが,いまここに5万円の予算があったとして,純粋にゲームにおける性能を追求するのであれば,64 3800+を選ぶべきだろう。価格改訂後の予想実売価格は4万円以下なので,予算は1万円以上浮くことになる。最新環境では今一歩の結果になる可能性は覚悟のうえで,さらに予算を浮かせて,それをグラフィックスカード購入資金に割り振るというのであれば,VeniceコアのAthlon 64 3200+というのも悪くないだろう。
 逆にいえば,ゲーマーがX2 3800+を選ぶ条件というのは,これに当てはまらない場合になる。MMORPGなどでは,ゲームをプレイしながらWebブラウジングすることも珍しくなく,以前「こちら」で紹介したように,デュアルコアをそれぞれのアカウントに割り振り,2アカウントでプレイするといった場合にX2 3800+は有効だ。
 FPSなどのプレイヤーでも,ゲームが終わった後で,戦いの模様を「Adobe Premiere Pro」など,マルチスレッドに対応したムービー編集ソフトで加工したりするなら,意味があるだろう。こういった「複数のスレッドを同時実行する環境」が,ゲームに絡んで多発しそうな人にとってこそ,Athlon 64 X2は価値がある。
 繰り返すが,純粋なゲーム用CPUとしては割高だ。だが,それでも,手に届く価格帯に降りてきたAthlon 64 X2が,ゲーマーにとってこの夏,注目すべきCPUであることは間違いない。(宮崎真一)


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