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  • 発表日:2003/09/24
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印刷2006/12/20 20:08

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AMD,2007年以降の施策概要を説明,「Radeonは引き続き重要」

 日本AMDは,米国で2006年12月14日に開催された「2006 AMD Analyst Day」を受けて,国内でも今後の技術&ビジネス戦略の概要を発表する説明会を開催。そこでは,AMD本社のセールス&マーケティング担当執行副社長のHenri Richard(アンリ・リチャード)氏がメインスピーカーとして登壇し,2007年以降,将来の戦略について語った。

Henri Richard氏(Executive Vice President and Chief Sales and Marketing Officer, AMD)
 ATI Techhnologies(以下ATI)買収後のAMDによる,GPU(グラフィックスチップ)とCPUの統合や,他社製の特定用途向けプロセッサをシステムに組み込んでいく「Torrenza」(トレンザ)構想などは,すでに断片的に語られており,一部は4Gamerでも触れたことがある。だが,それらはいったい,どのような見通しのもとに計画されているのか。リチャード氏は一言,「いずれコア戦争は終わる」と,明快に断じてみせる。

 現在は消費電力対性能比が重視され,マルチコアCPUに切り替わるフェーズにある。そして,現在採用されているのは同種の(ホモジニアスな)CPUコアを複数持つマルチコア,あるいはマルチプロセッサだが,近い将来,具体的には2010年前後に,それぞれ異なる機能を持つ(ヘテロジニアスな)プロセッサ=アクセラレータが利用されるようになると,リチャード氏は述べる。そして,特化した機能を持つさまざまなアクセラレータが,CPUとともにやってくるというビジョンを「Accelerated Computing」として紹介した。

「No Core Wars」と,コアの数で優劣を語る時代は2010年以降に終わるとリチャード氏はいう(左)。CPUとGPU,旧ATIが持っていたSoC(システムオンチップ)やコアロジックに加え,それらの融合形態となる「Accelerated Processors」が,AMDの柱の一つになるという(右)。興味深いのは右のスライドに「UMPC」(Ultra Mobile PC)の文字が見えること。Fusionで参入か?


向こう3年間のプライオリティを示したスライド。サーバー用CPUこそ8コアへ向かうものの,それ以外ではあまりコアの数が強調されていないのが分かる
 これはある意味,理に適った将来の見通しだろう。プロセッサ数を増やしても,パフォーマンスはなかなかリニアには伸びない。4Gamerのハードウェアレビューを定期的に読んでくれている人には釈迦に説法だが,パーソナルコンピューティングの世界ではとくにその傾向が強く,コア数に応じたパフォーマンスの伸びは早い段階で頭打ちになると思われる。そうしたトレンドを予測した結果がTorrenzaであり,ATIの買収というわけだ。
 GPUとCPUは機能が異なるアクセラレータだから,それらを組み合われば,一種のヘテロジニアスなマルチプロセッサを構築できる,というわけである。

 やや余談気味だが,クロック周波数の伸びはいずれ頭打ちになり,その先に来るのはマルチプロセッサ,あるいはマルチコアだろうと,IT業界に関わる人間は誰もが予測していた。にもかかわらず,IntelがNetBurstアーキテクチャにこだわったため,マルチコアへの移行でAMDに後れを取る結果になったのは,読者の多くが知るところだろう。
 巨大な資金力と技術力を誇るIntelは方針転換後,「Coreマイクロアーキテクチャ」で一気に巻き返しを図ったが,AMDにはインテルほどの余力はない。だからこそAMDは,将来のトレンドを読み,早めに手を打っていく必要がある――リチャード氏のプレゼンテーションは,そのことを強く感じさせるものだった。

■グラフィックスカードは「止めない」

Accelerated Computingのイメージ
 ところで,先に開催されたAnalyst Dayでは,米AMDの幹部から「ハイエンドグラフィックスは儲からない」という趣旨の発言が飛び出した。同時にAnalyst Dayでは(当たり前といえば当たり前なのだが)GPUとCPUを統合した製品「Fusion」(開発コードネーム)などを模索する動きについての説明が多かったこともあり,一部ではAMDがハイエンドの単体グラフィックスカードビジネスを終息する方向に向かっているのでは? という憶測も出ていたほどだ。

これらはAnalyst Dayのスライドより。FusionやAccelerated Processorsに関する説明が多く行われた


Radeonは,「ATI Radeon」という製品名に変わるものの,引き続き主要製品の一つであり続ける
 この点について確認したところ,リチャード氏は「ハイエンドを含め,グラフィックスカードビジネスを止めることはない」と断言。「確かにメインストリームの一部はFusionの中に溶けていくが」と断ったうえで,Fusionがすべてを置き換えることはなく,「ATI Radeonをベースとした単体グラフィックスカードは,新生AMDにとって引き続きメジャーな製品であり続ける」という。そしてハイエンドも含めて,単体のグラフィックスカード製品に向けたGPUビジネスをAMDは続行するという見通しを示した。

 質疑応答で挙がった,「利益の上がりにくいハイエンドGPUを,利益の上がるものにするため,どのようなビジネスモデルを作っていくのか?」という問いに対する明確な回答はなかったが,ご存じのとおり,ハイエンドのGPUには,次世代のメインストリームグラフィックスに向けた先行投資的な意味合いもある。したがって,利益がそれほど上がらないからといって,すぐに止めてしまうということは考えにくい。
 もちろん10年先は分からないが,当面,ATIブランドのグラフィックス製品はハイエンドを含めて継続されると見ていいだろう。

 なお発表会では,非常に守備範囲の広いプロセッサメーカーとなった新生AMD各部門の現状と見通しが語られた。「引き続きトッププライオリティはサーバー市場にある」(リチャード氏)としながらも,PCはもちろん,堅調な家電や携帯電話市場においても,引き続き高い成長が期待できるとした。

デスクトップ&ゲームコンソールの市場規模はGPU,GPU,チップセットを合わせ129億ドル,またゲームコンソール(Xbox 360とWii)向けチップは同20億ドルと見積もる。旧ATI製品で,AMDブランドに変わった,デジタル家電向けSoC「Xilleon」,携帯電話向けSoC「Imageon」は,引き続き好調に推移するという見通しが示された


 全体として,ATIを買収した意味や意義を明確に示す説明内容発表だったといえる。Torrenzaに代表されるAccelerated Computingを目指す方針が(改めて)強調され,そのなかでATIが持っていた技術の役割や位置づけがはっきりと分かった。また,旧ATIがカバーしていたデジタル家電分野が加わり,AMDのビジネスが広がったことも明確になった。
 Torrenza構想に基づく最初の製品は,早ければ2007年にも登場してくるだろう。AMDが考えるAccelerated Computingがどのように結実するのか,PCゲーマーとしては興味深く見守っていきたいところだ。(米田 聡)

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