テストレポート
取り回しが良くなった「Razer Naga Hex V2」は,何が“MOBA向け”なのか。LoLでの使用感をレポート
サムレストやボディ形状の見直しによって,ホールド感はアップ
ただ,サムレスト(=親指置き場)の場所が小さく,マウスを持ち上げようとした時に親指がサイドボタンを“誤爆”してしまったり,薬指の置き場がはっきりせず,ホールド感が薄かったりと,ゲーマー向けのマウスとしては課題の多い製品でもあった。
今回発売されたNaga Hex V2では,そういったマイナスポイントを取り払うべく,設計自体に見直しが入っている。まず,大きく変更されたのが左サイドボタンだ。Naga Hexは六角形にこだわった配置だったが,Naga Hex V2ではボタンが1つ増えたうえ,すべてが小さな円弧状となり,円を描くような配置となった。Hexはいずこに。
ただ,Hexというコンセプトを犠牲に得たものは大きい。Naga Hex V2のサムレストは,Naga Hexの倍以上に広がっており,とっさにマウスを掴んだとしてもボタンを押し間違えることはめったになくなった。また,ハニカム構造のゴム製サムレストが採用されているので,とくに「つまみ持ち」した時の安定感はなかなかのものだ。
また,本体右側面では薬指を置く場所が広くなり,全体的なホールド感も高まっている。取り回しに関する課題点は,うまく改善されたといえるだろう。
その一方で,左サイドボタン自体の操作性について言うと,首をかしげる部分が多い。Naga Hexは,親指をサムレストに置いた状態で,7時の位置にある[4]ボタンを除くすべてのボタンを押すことができたが,ボタンがサークル状に広がってしまったNaga Hex V2では,3時の位置にある[3]ボタンと,8時の位置にある[5]ボタンがどうしても押せないのだ。したがって,[3]と[5]を押すには,サムレストから親指を大きくズラさなければならない。
形状こそ違えど,サムレストの周りにボタンを配置するというデザインは,初代と同じなので,サムレストに親指を置いた状態で周りのボタンにアクセスできるというのは,Razer Naga Hexシリーズの根幹を成している部分であるはず。それを踏まえるとするならば,Naga Hex V2は,ボタンを1つ増やしたことで使いづらいボタンも1つ増えたことになる。実質的にアクセスしやすいボタンの数は,Naga Hexと変わらないのだ。
Naga Hexと同じく,Naga Hex V2も「Razer Synapse」(旧称:Razer Synapse 2.0)を使えばキーマップのカスタマイズができるので,押せない部分は新たに搭載されたスクロールホイールのチルトでフォローできなくもないが,あまり現実的ではない。
何が“MOBA向け”なのかが見えてこない
しいてMOBAで重要とするならば左右のメインボタンだろう。MOBAではクリックでの移動が基本であり,常に動いていないと相手のスキルの的になってしまうので,ほかのジャンルと比べてクリックの回数は非常に多い。現にLogicool G(日本以外ではLogitech G)からは,このメインボタンの耐久性やクリック感こだわった製品がMOBA向けとして登場済みだ(関連記事)。
そう考えると,Naga Hex V2の“MOBA向け”というのは,いったいどの部分を指しているのだろうか。製品情報ページを見てみると,「MOBAゲーミング用に最適化された7ボタンのメカニカルキー採用サムホイール」とあるので,やはりこの特徴的なサイドボタンこそMOBA向けであるというのが,Razerの主張のようだ。
しかしながら上述したとおり,MOBAのホームポジションからアクセスできる範囲でボタン数は事足りるので,正直なところこの謳い文句には首をかしげてしまう。
では,Razerはこのサイドボタンをどう使ってほしいのか。それは,製品サイトで公開されている「League of Legends」(以下,LoL)と「Dota2」のプロファイルを見れば分かる。
とくにコンボが重要となるチャンピオンであれば,キーボードのほうが正確かつ素早くプレイできる。Razerは「ゲーム中の効率を最大限に高めるための事前設定済みMOBAプロファイル」と謳っているが,本気なのだろうか。
Communicationプロファイルは,ボタン1つで「Gank please」や「Go for dragon」といったコミュニケーションが取れるというもの。これはそれぞれのワードを1文字ずつ入力していくマクロを使って実装している。このマクロが割り当てられているボタンを押すと,まず[Enter]キーが押されてチャット入力状態になり,そのあと一文字ずつキーが叩かれ,最後に[Enter]キーで送信という流れが1秒以内に完了するのだ。なんという力技であろうか。
当然ながら,このマクロ稼働中にほかのキー入力があれば,それがそのまま送信内容に反映されてしまう。また動作が不安定なのか,集団戦中にこのマクロを使うと最後の[Enter]が反応せず,チャットボックスを出したまま動けなくなるという状況に陥ることもあった。
唯一まともだったのが,Itemプロファイルだ。LoLの初期設定では,アイテム使用ボタンが数字キーの[1]〜[7]なのだが,ホームポジションからでは[6]と[7]が届かないのである。このプロファイルでは,[6][7]キーを親指の第一関節で押せるので,なかなか便利だった。やはりサイドボタンは,ホームポジションでカバーできないキーを押すのに利用するのものと理解すべきだろう。
ケーブルの長さは実測約2.1m。布巻き仕様だが,柔軟性は高めだ |
Naga Hexには,本体底面にサイドボタンの切り替え機能スイッチがあったが,Naga Hex V2では従来製品で言う「Num」で固定だ |
サムレストからアクセスできるボタン配置の利便性は秀逸。そこに価値を見いだせれば十分にアリ
製品自体はMOBA向けと謳われているものの,それこそあまりボタン数を必要としてないアクションRPGやFPSであれば,覚えやすいボタン配置のNaga Hex V2の真価が発揮されるのではないだろうか。Razer Nagaはボタンが多すぎる,かといってRazer DeathAdderではボタン数が物足りないという人にマッチした製品で,あまりMOBA向けというところを意識しないほうがいい結果になるのではなかろうか。
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