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Logicool Gの新シリーズ「Prodigy」とは何なのか。本社担当者インタビュー
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印刷2016/10/19 00:00

インタビュー

Logicool Gの新シリーズ「Prodigy」とは何なのか。本社担当者インタビュー

 Logitechの日本法人であるロジクールから,ゲーマー向け周辺機器ブランド「Logicool G」(日本以外では「Logitech G」)の新シリーズとなる「Prodigy」(プロディジ-)の3機種4製品が発表となった(関連記事)。

  • G403 Prodigy Wireless Gaming Mouse(国内製品名:G403 有線/ワイヤレスゲーミングマウス,以下 G403WL)
  • G403 Prodigy Gaming Mouse(国内製品名:G403ゲーミングマウス,以下 G403)
  • G213 Prodigy RGB Gaming Keyboard(国内製品名:G213ゲーミングキーボード,以下 G213)
  • G231 Prodigy Gaming Headset(国内製品名:G231ゲーミングヘッドセット,以下 G231)

画像集 No.004のサムネイル画像 / Logicool Gの新シリーズ「Prodigy」とは何なのか。本社担当者インタビュー
G403WL
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G403
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G213
画像集 No.007のサムネイル画像 / Logicool Gの新シリーズ「Prodigy」とは何なのか。本社担当者インタビュー
G231

 中でも注目はLogitech G/Logicool G初の「IE3.0クローン」となる2つのG403で,4Gamerでは10月20日の発売に先駆けてファーストインプレッション記事もお伝えしているわけだが,そもそも,突然出てきた印象のあるProdigyとはいったい何なのだろう?

Andrew Coonrad氏(Technical Marketing Manager, Gaming, Logitech International)
画像集 No.002のサムネイル画像 / Logicool Gの新シリーズ「Prodigy」とは何なのか。本社担当者インタビュー
 4Gamerでは,Logitech G/Logicool Gのテクニカルマーケティングマネージャーを務めるAndrew Coonrad(アンドリュー・クーンラッド)氏に,新シリーズを立ち上げた意図や,新製品の気になるポイントをいろいろ突っ込んで聞く機会を得たので,今回はその内容をお届けしたい。
 G403WLをはじめとするLogitech G/Logicool Gの新シリーズが気になる人は,(ちょっと長いが)ぜひ一読を。


なぜ「Prodigy」なのか


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。
 Logitech G/Logicool Gは先に,Prodigyシリーズを発表しました。これまでも製品名には型番とは別にさまざまなタグライン(=キャッチコピー)が付けられてきましたが,マウスとキーボード,ヘッドセットを“横に貫く”形のサブブランド展開は,初めてではないかと思います。
 「思います」と,ちょっと弱気なのは,「そういえば『Spectrum』って,フルカラーLEDの製品で横展開されてたよな」とも考えていたりするからなのですが,ともあれ,Prodigyというサブブランドに,Logitech G/Logicool Gとしてはどういうメッセージを込めているのでしょうか。

Andrew Coonrad氏:
 今まで私達は,ギリシャ神話に出てくる名前を使ってきました。それは,私達の技術を分かりやすく伝えるためだったのですが,「ギリシャ神話に出てくる名前を使う」ということが,必ずしも分かりやすさに貢献しているわけではないことが分かったのです。

4Gamer:
 それはよく分かります。「Hyperion Fury」(ハイペリオンフューリー)とか「Daedalus Apex」(ダイダラスエイペックス)」とか言われてもなあ,というのは,確かにありました。

Andrew Coonrad氏:
 たとえばご指摘いただいた「Spectrum」(スペクトラム)ですが,これも「何か」を意味する言葉であってほしかったわけです。Spectrumが入っていれば,それがRGB(=フルカラー対応のLEDイルミネーション)だと分かるという感じに。
 気付いてもらえるケースも確かにあったのですけれども,すべての皆さんに理解いただけるようなネーミングではありませんでした。

4Gamer:
 かなり微妙なラインだとは思いますね。

G403WL(下)とG403(上)
画像集 No.008のサムネイル画像 / Logicool Gの新シリーズ「Prodigy」とは何なのか。本社担当者インタビュー
Andrew Coonrad氏:
 そうなのです。今回,Prodigyという(共通した)ネーミングを行っているのは,「Prodigyを使っている」と聞いて,Logitech G/Logicool Gの製品ラインナップにおいてどんな製品を使っていることなのかがすぐ分かるようにしたかったというのがあります。
 とてもシンプルであって,いろいろな機能を削ぎ落としてありますが,搭載している技術はナンバーワンであって,妥協は一切ありません。そういう製品がProdigyであり,Prodigyと名のついた製品は,そういう,シンプルな使い勝手を提供する製品です。そういうメッセージをお伝えしたい意図が,私達の側にはあります。

4Gamer:
 プレスリリースに「ゲームグレードの技術をあらゆるゲーマーにもたらす」という表現があって,私はこれを読んだときに「コストパフォーマンスを重視したラインナップなのかな?」と思ったんですよ。とくに“2系”の製品が2つあったので。
 ただ,そうではなく,機能的にシンプルだというのが伝えたい内容というわけですね。

Andrew Coonrad氏:
 ええ。「あらゆるゲーマーに」というのは,価格ではなく,スペック的に手に取りやすい,親しみやすいという意味です。
 価格はいろいろですが,いずれもシンプルで使いやすく,性能面での妥協は一切ない。そういうモデルをProdigyだとしています。

4Gamer:
 つまり,同じコンセプトの製品が今後出てきたとすると,そのときにはやはりProdigyを名乗るということでしょうか。

Andrew Coonrad氏:
 そのとおりです。もちろん「次に何が出てくるか」はお話しできませんが,今回Prodigyというファミリーとして打ち出しているので,今後出てくる製品でも,ファミリーのコンセプトに沿った製品であれば,Prodigyを名乗ることになると思います。
 あ,北米だと「ファミリー」ですが,日本だとファミリーは「家族」のイメージですよね。日本語で言うなら「Prodigyシリーズ」です(笑)。

4Gamer:
 たしかにそうかも(笑)。

Pro Gaming Mouse。北米市場では2016年8月に発表となり,すでに販売が始まっている
画像集 No.009のサムネイル画像 / Logicool Gの新シリーズ「Prodigy」とは何なのか。本社担当者インタビュー
Andrew Coonrad氏:
 ところで,「Pro Gaming Mouse」という製品をご存じですか?

4Gamer:
 ええ,もちろん。

Andrew Coonrad氏:
 Pro Gaming Mouseというのは現在,北米市場では販売が始まっているんですが,実はこれ,「Proシリーズの1つ」という位置づけなんですよ。

4Gamer:
 そうだったんですか!
 「Pro Gaming Mouseは,なんで3桁型番がないんだろう。G100sの特別版的な感じなのかな」と思っていて,後でその理由を聞くつもりだったんですが,いやー,びっくりです。

Andrew Coonrad氏:
 つまり,今後は,Prodigyシリーズ的なものが出てくればProdigy,Proシリーズ的なものが出てくればProということになります。ほかのシリーズは今のところありませんが,今後どうなるかは分かりません。

4Gamer:
 Proシリーズについて気になるのは,「今後,3桁型番はなくなるのか」という部分なのですが。

Andrew Coonrad氏:
 将来の製品についてお話できないということはよくご存じだと思いますが,別の角度からお話するとですね,今回,Pro Gaming Mouseが生まれた背景として,あるプロ選手が,「この形状(≒G100s)とこのセンサー(=「PMW3366」),ボタンテンションシステムを組み合わせてほしい」と要望を出してきたというのがあります。その要望に応えた結果がPro Gaming Mouseなのです。

 なので,(Logitech G/Logicool Gのサポートする)ほかの選手が,別の組み合わせで要望を出してくれば,それが製品化されるかもしれません。そのときに(Proシリーズの)何という製品名になるかは,そのときのお楽しみです。

4Gamer:
 ああ,「Pro」の意味がようやく分かりました。

Andrew Coonrad氏:
 そういうことなんですよ。

 ただ,1つ付け加えると,Pro Gaming Mouseだからといって「プロ用」だとは受け取ってほしくはなかったりもします。語源的には,Proはもちろんプロですし,Prodigyには「ダイヤの原石」という意味があるので,「これから上手くなっていく人向け」的なイメージを受けるかもしれません。
 けれども,そういった人達向けの(対象となるユーザーを限定した)モデルではなく,Proであれば「プロの意見を集約して開発したモデル」,Prodigyであれば「シンプルなモデル」なんですね。ネーミングは対象ユーザーではなく,モデルの立ち位置を示したものであることを理解いただけると嬉しいです。

4Gamer:
 なんでこんなにしつこく製品名の話ばっかり聞いてくるんだとお思いでしょうが(笑)。

Andrew Coonrad氏:
 (笑)。

4Gamer:
 少なくとも日本ではずっと,Logitech G/Logicool Gのマウスは,型番で認識されてきたんです。たとえば「Chaos Spectrum」だと,相当なファンでもないと製品名をイメージするのは難しいですが,「G900」なら,ゲーマー向けマウスが好きならまず「ああ,あれね」と分かるくらいに,Logitech G/Logicool Gの製品型番は浸透しています。
 なのでPro Gaming Mouseに3桁型番が付いていないのは本当に衝撃的で。これはぜひ真意を確かめねばなるまいと。

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Bracken P. Darrell(ブラッケン・ダレル)氏(CEO, Logitech International)。写真は2016年2月にスイスで撮影したもの
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ロジクールの公式Webサイト。最近のリニューアルでとてもシンプルな見た目になった
Andrew Coonrad氏:
 そこまで私達の型番が浸透しているということは,私達のやり方が上手かったということですね(笑)。
 ただ,いまのLogitech G/Logicool Gは,いろいろなことが変わっているタイミングなんです。数年前にCEOがBracken(ブラッケン)に変わって,Logitech全体としても変化のあるときだというのもありますし。

4Gamer:
 それはWebサイトのデザイン変更や,ロゴ変更などからも感じられますね。

Andrew Coonrad氏:
 その変化に対して,大なり小なり抵抗が生じるというのは,必ず起こることなので,私達としても想定しています。
 ただ,私達としても,今後のことも考えて,絶対にそのほうがいいと信じているからこそ,変化を今起こしているわけです。

 Pro Gaming Mouseについてお話するなら,あえて(3桁)数字を使っていませんが,これによって,Proという言葉がどんどん浸透していくでしょう。
 Pro Gaming Mouseという製品名は,私達がいかにしてこの製品をデザインしたのか,プロ選手の要望をどう汲み取ったのかというストーリーを色濃く反映したものになっています。そういう(ストーリーをベースとする)ネーミングの変化が,これからもどんどん進んでいくことになると考えています。

4Gamer:
 となると,その「ストーリー」を,これまで以上に伝える努力が,Logitech G/Logicool Gには求められますよね。私が記憶する限り,プレスリリースにはそういうストーリーは書いてなかったはずですが,どういう形で伝えていくことになりますか。

Logitech Gの英語版製品ページでは,Pro Gaming Mouse開発の背景に関するビデオをチェックできる
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Andrew Coonrad氏:
 サイト上では,「Pro Gaming Mouseをいかにして開発したのか」を描くビデオを上げています。「Cloud-9」と「Team Solo Mid」の2チームから1人ずつを呼んで,彼らが欲しいと言っていた,彼らが希望するスペックとデザインのモデルを開発した,という話ですね。
 では日本ではどうかというお話になるかと思いますが,日本で正式にローンチするときには,もっとお話できることが出てくると思います。

4Gamer:
 期待しています。


IE3.0クローンとなったG403,その理由と目的


IE3.0
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4Gamer:
 実際の製品についても聞かせてください。
 G403については本当にいろいろ聞かねばならないわけですが,何と言ってもまずはあの形状についてです。これまでの「Logitech G/Logicool Gデザイン」と一線を画した形状で,もっとはっきり言うと「IntelliMouse Explorer 3.0」(以下,IE3.0)とか「Razer DeathAdder」(以下,DeathAdder)的なわけですが,あの形になった経緯を聞かせてください。

Andrew Coonrad氏:
 当然,その質問はあると思っていましたよ(笑)。
 ご指摘のとおりG403はIE3.0やDeathAdderに似ているわけですが,ただ,これは彼らの後を追った結果ではありません。

 たとえば,「一般ユーザー向けマウス」を見てください。ほとんど同じような形をしていますよね? これはなぜかというと,クラシックで伝統的な形だからです。
 同じように,IE3.0やDeathAdderもゲーマー向けマウスとしてクラシックで伝統的な形です。ゲーマー達はそれを触ると,「ああ,いつも使ってるマウスと同じだ」という感覚になるんですが,G403で私達が目指したのも,まさにそれです。

 Prodigyシリーズがシンプルな使い勝手を追求したものだというのはすでにお話していますが,その実現にあたって,とてもクラシックで馴染みのある,そして(手に持ったとき)馴染みやすいマウスを目指したんです。

MX510
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4Gamer:
 「結果,その形になった」と。IE3.0クローンのメーカーは皆さんそうおっしゃいます(笑)。
 私も,Logitech G/Logicool Gが何かの製品を模倣したとか,そういうことを言いたいのではありません。気になるのは,「Logitech/ロジクールにとっての,ゲーマー向けマウスのクラシックというのは,『MX510』(※MX510 Performance Optical Mouse)とか,そっちの形状ではないのかな」という部分です。
 MX510の方向には行かず,かなりIE3.0寄りの形状になったのはなぜなのでしょうか。

G502RGB
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Andrew Coonrad氏:
 「Logitech/ロジクールとしてのクラシック」がそこにあるのは,まったくもってご指摘のとおりです。
 ただ,その観点でお話すると,私達のしたいことは,「G502RGB」(※「G502 Proteus Spectrum RGB Gaming Mouse」)で,おそらくできているのではないかと。ほぼ完成に近い形になっているでしょう。

4Gamer:
 なるほど。それは確かにそうかもしれませんね。

Andrew Coonrad氏:
 実際,G502RGBというのは,世界で一番売れているゲーマー向けマウスなんですよ。なので,「Logitech/ロジクールのクラシック」の現在は,G502で実現できていると思っています。

 ただ,そんなに売れているG502を買わない人達もいるわけです。ではなぜ買わないのかと言えば,もっと一般的な「別のクラシック」を好むからではないかと考え,最終的にG403では,私達のクラシックではない,一般的なクラシック,つまり,多くのゲーマーにとっては違和感を覚えにくいマウスの形になったのです。

G402
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4Gamer:
 それは分かりやすい説明だと思います。
 ただ,あえて“5系”“4系”という言い方をしますが,“4系”の従来製品というのは,どちらかというと,G502RGBに連なる“5系”のサブセットというか,“5系”のマウスから機能を削ぎ落としてFPSプレイヤーに訴求するような製品展開になっていました。
 たとえばいま「G402」(※「G402 Hyperion Fury Ultra-Fast FPS Gaming Mouse」)を使っている人からすると,G403には断絶のようなものを感じるのではないかとも思うわけですが,その点はどう考えていますか。

Andrew Coonrad氏:
 ご存じと思いますが,3桁ナンバリングの頭はTier(ティア)を,2つめは製品タイプを表します。「0」ならマウス,「1」ならキーボードといった感じですね。そして3つめが通し番号です。
 ですので,G402というのは,4が付いたマウスの3番めだったわけで,その次に当たるのが今回のG403ということになります。

4Gamer:
 別にそこに連続性があるわけではないということですね。

Andrew Coonrad氏:
 そういうことです。

4Gamer:
 納得できました。ありがとうございます。
 さて,形状についてはもう1つ――形状というか,外装についてですけれども――ありまして。

Andrew Coonrad氏:
 なんでしょう?

4Gamer:
 G403を実際に手に持って,ゲームでも使ってみましたが,衝撃的だったというか,面白いと思ったのはコーティングなんですね。
 とくに,両サイドのコーティングはラバー風なんですけれども,少なくとも,これまで試してきたLogitech G/Logicool Gにはない,とてもいい感じだったのですが,調べた限り,このコーティングに関する説明が全然ないのです。たぶんここには(ブランド自体のタグラインである)「Win with Science」なところがたんまり入っていると思いますが,そこを聞かせていただけますか。

画像集 No.017のサムネイル画像 / Logicool Gの新シリーズ「Prodigy」とは何なのか。本社担当者インタビュー
Andrew Coonrad氏:
 G403で目指したのは,「持った瞬間にすぐに使いやすいと思ってもらえるようなマウス」です。なので,側面のラバーコートをとても良いと思っていただけたというのは,まさに我々の意図したとおりですね。
 残念ながら詳細はお話できませんが,G403では,誰もが,ぱっと持って,使いやすいと思えるマウスにすることが,最重要ポイントでした。ラバーコートもそれを実現するための一要素ということです。

4Gamer:
 秘密だけれども,やはりそこに「何か」はあると。それを聞いて納得しました。
 ただ,少し気になったのは,そのラバーコートに,傷というか,染みのようなものを確認できたことです。箱から開けた時点で,なんかこう,まだら模様のようになっているんですね。

4Gamerで入手したG403の本体左側面を代表して掲載。箱から開けたままの状態で,一切手は触れていないが,初期サンプルはこんな感じのまだら模様になっていた
画像集 No.018のサムネイル画像 / Logicool Gの新シリーズ「Prodigy」とは何なのか。本社担当者インタビュー
 擦ると消えるので,個人的には全然気にならないのですが,しかしご存じのとおり,日本のユーザーは箱を開けるときの体験を大事にしますから,「汚れてるじゃないか」「傷だらけじゃないか」と思うかもしれないと,少し危惧しています。
 少なくとも私が確認した限り,4個すべてで同様の現象を確認できたのですが,これはどう受け止めればいいでしょうか。サンプルだけの問題ですかね?

Andrew Coonrad氏:
 正直なところ,どのような傷なのか,染みなのか分からないので,コメントのしようがありません。また,そういう報告もありません。なので,「たまたま,その4個でそういう問題があった」という可能性はあります。
 ただ,ご存じのとおり,私達は品質を厳重に管理してきています。そこに対してそういう報告をいただいたので,すぐ,品質管理部門に連絡を入れます。ご連絡ありがとうございます。

4Gamer:
 私も,写真を撮ってお送りしますね(※記事で掲載した写真を実際に送信済み)

Andrew Coonrad氏:
 お待ちしています(※)。

※その後,本稿掲載までの間に氏から連絡があった。いわく,製造工場で症状を確認し,改善に入ったそうだ。具体的には,拭き取り用の特殊な洗浄液を調達して,製造ラインの最終工程に「洗浄液を用いた拭き取り」作業を追加したという。これにより,インタビュー本編で指摘した「汚れ問題」は解決を見たという理解でいいだろう。


G403WLの無線技術は,本当にG900と同じなのか


4Gamer:
 さて,G403のワイヤレスモデルで非常に重要なのは,無線技術の部分だと思います。
 トピックは「G900と同じ無線技術」というところですが(関連記事),まず,無線周りの技術は100%同じなのでしょうか。それとも,何らかの違いを含む,“G900相当”の技術なのでしょうか。

Andrew Coonrad氏:
 100%同じです。もちろん,ワイヤレス技術を構成する,ひとつひとつのパーツまでもが何もかも同じかと言われると,私はエンジニアではないので,お答えできません。
 ただ私は,スペックについては社内でも自負できるくらい精通しています。その立場から完全に保証できることとしてお話できるのは,センサーとワイヤレス技術,バッテリーは,G900とまったく同じものを使っているということです。

4Gamer:
 それを聞いて安心しました。

Andrew Coonrad氏:
 G900と確実に異なるのは(形状やボタンの数,配置を除くと)メインボタンのメカニズムですね。G403は,「G302」(※「G302 Daedalus Prime MOBA Gaming Mouse」)や「G303」(※「G303 Daedalus Apex Performance Edition Gaming Mouse」)と同じ「Spring Tensioning System」をメインボタンに採用していますが,G900は「Mechanical Pivot Design」になっています。

G403の2モデルではいずれも10gの錘を搭載できる
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4Gamer:
 錘(おもり)も分かりやすい違いですよね。
 G900では,バッテリーやら何やらを搭載していたら配置する場所がなくなったということでしたが,今回はワイヤードモデルだけでなくワイヤレスモデルにも10gの錘が付いています。
 サイズ的にはG403とG900でそれほど変わらないと思うんですが,今回錘を採用した理由は何でしょうか。

Andrew Coonrad氏:
 そもそも,目指すところがG900とG403ではまったく異なっていたというのが大きいですね。
 G900はとにかく軽さを追求したモデルで,そのために特殊な外殻設計すらしていたくらいですから,そこに錘を付けると言うこと自体がコンセプトから外れていたというのがあります。

 対してG403は,一般的なデザインというのがコンセプトで,クラシックな設計も採用していますから,そもそも筐体デザイン上の制約はありません。そこで,軽いマウスではなく,重いマウスが欲しいという人のために,重量増加のギミックを追加したというわけです。
 一言でまとめるなら,「まるっきり異なる設計をしているから」といったところでしょうか。

4Gamer:
 G403でもう1つ気になるのは,ワイヤレスマウスのワイヤードモードです。これはワイヤードモデルとまったく同じ挙動が得られるという理解でいいのでしょうか。

画像集 No.020のサムネイル画像 / Logicool Gの新シリーズ「Prodigy」とは何なのか。本社担当者インタビュー
Andrew Coonrad氏:
 まったく同じになるはずですよ。
 これはエンジニアリングサイドの話になりますが,ワイヤレスモデルへUSBケーブルを差すと,無線でコミュニケーションを取っているトランスミッタが無効になって,MCU(※マイクロコントローラ)側でのコミュニケーションに切り替わるからです。
 なので,G403WLをワイヤード接続したときの挙動は,(ワイヤードモデルである)G403をつないだときと完全に同じになるという理屈です。

4Gamer:
 今回の,最近のLogitech Gのマウスは全部そうなんですけど,マウスのソールが非常にユニークな形状をしています。今回の403はマルカッコが2つ付いているような,光学センサーの周辺に六角形みたいなのがついてますよね。

 最近,とあるマウスパッドのメーカーさんと話をしたときに,マウスソールというのは真円型がベストであるという話が出たんですよ(関連記事)。真円型でないと,滑らせたとき,滑らせた角度によって摩擦係数が変わってしまう。だから,円以外は本来的にはあり得ないと言っていました。
 一方で,最近のLogitechのマウスにそういう形状のものはおそらく1つもありません。一般ユーザー向け製品でも,楕円こそあれ,真円のものはないと記憶しています。
 そのマウスパッドメーカーさんの考え方について,G403を作っている立場から,どう思われますか。

Andrew Coonrad氏:

 興味深い質問ですね。エンジニアに確認して回答します(※)。

※後日,エンジニアからの回答がテキストでもたらされた。それによると,マウスソールの形状と素材は,250kmというマウスの移動耐久性テストをクリアするためのものだそうだ。250kmの移動に堪えるだけのソール面積を確保するために計算した結果,あのような形状になったとのことである。Logitech G/Logicool Gがそこまで言っているわけではないものの,摩擦係数の最適化よりも,耐久性のほうを取った,ということなのだろう。摩擦係数的には十分な数字が出ているという見解が出ているのかもしれない。


G213という「Prodigyキーボード」の狙いと,G231の事実確認


4Gamer:
 キーボードとヘッドセットのことも聞かせてください。
 また型番の話になって申し訳ないんですが,“2”系のキーボードって初めてですよね。G213で“2”を採用した理由は何ですか。

G213
画像集 No.021のサムネイル画像 / Logicool Gの新シリーズ「Prodigy」とは何なのか。本社担当者インタビュー
Andrew Coonrad氏:
 番号は至極単純な理由です。
 9,8,7,6と来て,「G310」(※「G310 Atlas Dawn Compact Gaming Keyboard」に,日本ではリリースしていませんが「G410」(※「G410 Atlas Spectrum RGB Tenkeyless Mechanical Gaming Keyboard」)というモデルも出て,数字が埋まってきたのです。
 そんな中で今回,ラバードームを採用するメンブレンキーボードを新しく出したということで,2から始まるのはごく自然なことだと考えています。

4Gamer:
 メンブレンだと“1”系もありますが,それよりは上位のTierだと。

Andrew Coonrad氏:
 ですね。G213には「メンブレンだけれども,メカニカルキーボードに近い打鍵感」という特徴を与えています。
 たとえば押下圧は「Cherry MX」スイッチと同じに設計してあったりしますね。偶然,他社も「メカニカル風なメンブレンキーボード」を出していますが,今回私達が言えるのは,G213がProdigyの1つとしてローンチされたということです。

4Gamer:
 ええ,そこは理由を伺おうと考えていました。

画像集 No.022のサムネイル画像 / Logicool Gの新シリーズ「Prodigy」とは何なのか。本社担当者インタビュー
Andrew Coonrad氏:
 Prodigy,つまり,シンプルでクラシックであるということです。
 「クラシックであること」をテーマにした場合,スイッチはメカニカルではなく,メンブレンということになりますよね。だからG213はメンブレンなのです。

 ただ,「メンブレンだけれども,ゲーム用途に足るスペックで」ということを意識すると,押下圧をメカニカルキースイッチに近づけたりする必要が出てきます。なので,そういう調整は行いました。

4Gamer:
 そのG213で気になったのは,一般的なメンブレンキーボードと比べて4倍速いという表現がリリースにあったことです。あれは何でしょうか?

Andrew Coonrad氏:
 レポートレートの速さですよ。

4Gamer:
 ああ! そういうことでしたか。なんだ,もっと深い何かがあるのかと(笑)。

Andrew Coonrad氏:
 一般的なメンブレンキーボードだと,USBレポートレートは125Hzですが,G213では500Hzに上げています。だから4倍というわけです。
 ご存じとは思いますが,キーボードは「どの地点のキーが打鍵されたか」によって,実際にキーを打ってからそれがPCに反映されるまでの間,本当にほんとうにわずかですが,遅延が生じます。その遅延を極限まで短くしようというのが,ゲームグレードの証であって,だからこそG213はLogitech G/Logicool Gの一員になっているのだと,そういうことです。

4Gamer:
 G213についてはもう1つ,非常に大きく,かつ着脱不可のパームレストが大きな特徴となっていますよね。
 着脱不能ということは,当然のことながら机上における専有面積が大きくなるわけですが,着脱式ではなく,固定で取り付けた理由を聞かせてください。

画像集 No.023のサムネイル画像 / Logicool Gの新シリーズ「Prodigy」とは何なのか。本社担当者インタビュー
Andrew Coonrad氏:
 そこも「シンプル」というテーマによるところですね。ユーザーにパームレストを付けるか外すか選ばせるというのは,それだけで煩わせることになってしまいます。なのでG213では最初からパームレストを付けました。

4Gamer:
 私個人としては,パームレストは自宅でも会社でも常に使う派なので,まったく抵抗がないんですけれども,ご存じのとおり日本は欧米と比べて一般的に家が狭いので,ちょっと大きいと感じる人も多いのではないかと思うんですが,いかがでしょう。
 日本以外でも,アジア市場をリサーチすると,パームレストが固定なのは大きすぎて困るという声はけっこう出てくるんじゃないかと思うのですが。

Andrew Coonrad氏:
 正直にお話すると,そういうリサーチがなされたのか,されたとしてデータがあるのかは,分かりません。
 ただ,個人のお話としてパームレストをお使いということですが,それはつまり,パームレストにメリットを感じているということですよね? 机上が狭くなるデメリットよりも。

4Gamer:
 ええ。

Andrew Coonrad氏:
 私としては,「机上のスペースは狭いし,小さいキーボードのほうが本当はいいんだけど,でもG213だったらしょうがないか」と言って,購入いただけるといいなと思います。

4Gamer:
 そこにメリットを見出してほしいということですね。
 さて,G213については最後の質問です。今回G213でLogitech G/Logicool Gは防水機構を採用しました。Logitech/ロジクールがゲーマー向けキーボードで防水機構を付けたのは今回が初めてではないかと思うんですが,その理由は何でしょうか。

Andrew Coonrad氏:
 G213では,シンプルであるというのが重要なテーマですが,それともう1つ,さまざまな(タイプの)ゲーマーに使ってほしいというのもあります。
 たとえばその層の中には,何か,たとえばビールを飲みながらゲームをプレイする人もいるでしょう。私もよくやりますが。

 そういう,(ながらプレイの最中に)飲み物をこぼして,それだけでキーボードがダメになってしまったという経験が,私自身,何回かあるわけですが,そういうケースでもG213なら安心できるよというメッセージになったらいいなと考えています。

 まさか水中で使うような人はいないと思いますが,万が一水がかかったとしても安心できるというのは,それだけでも「ちょっと欲しいな」というとっかかりになると思っています。

4Gamer:
 分かりました。
 最後,G231についてですが,まず,簡単な確認をさせてください。

G230
画像集 No.024のサムネイル画像 / Logicool Gの新シリーズ「Prodigy」とは何なのか。本社担当者インタビュー
 G231は「G230」(※「G230 Stereo Gaming Headset」)の接続インタフェースを4極3.5mmミニピンに変更して,3極3.5mmミニピン×2変換アダプターを付けたものという理解でいいですか?

Andrew Coonrad氏:
 はい。ただ,もっと分かりやすい表現として,「家庭用ゲーム機に対応したG230」というのがあります。

4Gamer:
 ああ,やはりマイナーチェンジなんですね。

Andrew Coonrad氏:
 ただ,そこにもProdigyファミリーとしての目的があります。
 Prodigyではより多くの人に使ってもらうゲームデバイスのファミリーです。であれば,PCだけでなく,家庭用ゲーム機にも対応しているというのは,あって当然の要素と言えるでしょう。
 そういった背景もあって,(Prodigyシリーズを立ち上げるこのタイミングで)G230に,家庭用ゲーム機標準対応という新要素を付加したのです。

4Gamer:
 つまり,音質を左右するコンポーネントはまったく同じだと。

Andrew Coonrad氏:
 ええ。音質に関する部分は同じですね。
 ProdigyとしてのG231についてもう少しお話させていただくと,今回,G231をProdigyファミリーに入れたのには理由があります。

画像集 No.025のサムネイル画像 / Logicool Gの新シリーズ「Prodigy」とは何なのか。本社担当者インタビュー
 たとえば先にG403やG213を購入した人がいたとして,その人が店頭でG231を見て,製品ボックスに「Prodigy」と入っているのを見れば,「ああ,このヘッドセットは,自分が使っているのと同じシリーズなんだ」と,親近感を覚えることができると思うんですよね。
 そういった意図もあり,(G230のマイナーチェンジモデルを)G231 Prodigyとしてローンチしたということです。

4Gamer:
 まだ市場では普通にG230が流通していると思いますけれども,あれはもう在庫限りで,順次G231へ切り替わっていくというイメージでいいでしょうか。

Andrew Coonrad氏:
 そうですね。G230の出荷は完了していて,その後継機種としてG231が発表になったということになります。
 価格は変わっていませんが,家庭用ゲーム機との接続に対応していて,あと実はケーブルも少し改善しています。そういう意味でも,G230を続けることの必要性は低いので,近いうちに(G230は消えて)G231へ切り替わるでしょう。

4Gamer:
 先ほど音質は変わらないとおっしゃいましたが,ケーブルの改善というのは耐久性とか,そちらの改善ということですか。

Andrew Coonrad氏:
 ええ。編み込みに使っている素材を実は少し変えています。これが具体的にどれくらい耐久性を長くしているのかというところまでは確認できていませんが,ただ,もともとG230の時点で十分に耐久性の高いものを採用していたので,G231でドラスティックな変化まではありませんね。
 これまでどおりの品質をしっかり保証できるものなので,安心してお使いいただけると思います。

4Gamer:
 分かりました。質問は以上です。長時間ありがとうございました。

Andrew Coonrad氏:
 北米のメディアにも,こんなに根掘り葉掘り聞かれたことはありませんよ(笑)。ではまた今度!

画像集 No.003のサムネイル画像 / Logicool Gの新シリーズ「Prodigy」とは何なのか。本社担当者インタビュー

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