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「サドンアタック」のチート使用で書類送検された事件を神奈川県警が説明。JOGAの情報共有会をレポート&運営のネクソンにインタビュー
これは,ネクソンがサービス中のオンラインFPS「サドンアタック」において,チートツールを使用した被疑者3名を,電子計算機損壊等業務妨害容疑で警察が書類送検したことについて,神奈川県警の協力で事件の説明を行うというものだ。今回4Gamerでは,この情報共有会を取材し,その後ネクソンにインタビューを行ってきた。順にお伝えしていこう。
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情報共有会は,神奈川県警本部のサイバー犯罪対策課の面々によって進行された。サイバー犯罪対策課は2013年4月に立ち上がった課で,現在は60名ほどが所属しているという。今回は,事件を担当した責任者以外にも,広報などを担当する対策係や,技術指導係も登壇していた。
まずは事件概要についての説明が行われた。今回の被疑者は,チートを実行していた徳島県の少年A,チートツールを作成,販売していた福島県の少年B,奈良県の少年Cの3名だ。いずれも学生で,それぞれが実際に会ったことはなく,ネット上でやり取りを行っていたという。
BとCは,技術の披露および金儲けを目的に,チートツールの作成・販売サイトを運営していた。両者は,このサイトの宣伝のために,Aにチートツールを利用することを推奨し,さらにチートツールそのものを無償で提供していた。このチートツールは,対戦相手のキャラクターの頭部が巨大化する「ビッグヘッド」や,相手の上空から攻撃できる「空中浮遊」,障害物の裏側を見ることができる「ウォールハック」など,30数種類の内容がセットになったものだ。
一方Aは,もともとチートツールを利用してサドンアタック内を荒らしていたが,B,Cから提供されたツールのほうが性能が良かったため,それを利用し,さらに荒らしている様子をライブ配信して,売名行為を行っていた。
B,Cはこのチートツールの販売により,2年間で約810万ウェブマネーの売り上げを,Aはアフィリエイト広告で約50万円の収入を得ていたという。
少年らのチート行為により,ネクソンは「苦情対応」「技術的防御措置」「外部委託による24時間監視措置」など,通常業務では行わない特別な対応に迫られ,相応の業務負担および経済的負担を受けた。これが電子計算機損壊等業務妨害事件として認められたことで,書類送検に至ったというわけだ。
さて,今回の事件では,最終的に電子計算機損壊等業務妨害が適用されたが,実のところ,罪名は著作権法や不正指令電磁的記録に関する罪(いわゆるウイルス罪),不正競争防止法といった候補もあったのだという。今回は,A,B,Cの3人がそれぞれ役割を分担して,共犯で業務妨害を行ったという判断が下された。しかし,今後同じような事件を扱うときには,候補にあるようなほかの罪状となる可能性もあるそうだ。
また,少年達の両親は,子供がこういった事件を起こしているということを知らなかったという。驚くべきはAの環境だろう。両親は自宅にネット環境を用意していなかったというのだ。実のところ,Aは近所の無線LANを利用してチート行為およびサドンアタックのプレイを行っていた。そのため,捜査も難航し,Aの特定に至ったのはネクソンの協力が大きかったというが,ともあれ,これは「子供にネット環境を与えなくても,こういった事件を起こす,あるいは巻き込まれる可能性がある」ということに他ならない。だからこそ,今回の事件のことをもっと親に知ってもらいたいと,神奈川県警は述べていた。
ちなみに,神奈川県警はそれぞれの少年の取り調べを行っており,Aはオンラインゲームが大好きだが,「目立ちたい」という気持ちがおかしな方向に向かってしまったタイプだったと印象を話す。捜索令状を持ってAの自宅に入り,「なんで来たか分かる?」と声をかけると,事の重大さに気付いたのか謝罪していたそうだ。
一方で,BとCは金儲けを目的に,お小遣い稼ぎの感覚でチートを販売していた。どちらがとは明言していなかったが,「どうしてチートツールを作ることがいけないのか」という反応もあり,「何がいけなかったか」の説明を行ったとのことだ。
今回書類送検された3名は全員少年だったわけだが,ゲームで悪質な行いをする者には未成年が多く,それが事件に発展する可能性もあるということを,普及啓発していくことが大事であるという。それと同時に神奈川県警は,悪質な事案に対しては検挙を行い,その情報を発信することで,事件を抑止していくとも述べていた。実際,今回の事件についても,チートで書類送検されたという事実は,チーターにとって大きな衝撃だったようで,神奈川県警に「どの程度なら捕まるのか慌てて問い合わせてくる」というケースもあったそうだ。神奈川県警としては,「赤信号みんなで渡れば怖くない」状態にさせないよう,今後も取り締まっていくようである。
情報交換会の後,サドンアタックの運営に関わるネクソンの坂下智久氏と加藤友秀氏にインタビューを行う機会を得た。最後にその模様をお伝えしよう。
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは,お2人がどういった形でサドンアタックに関わってきたのか,自己紹介をお願いします。
加藤友秀氏(以下,加藤氏):
私はサドンアタックの運用を担当しています。今回の事件では,警察に資料の提供を行うにあたり,動画の作成やチートの検証といった業務を行いました。
坂下智久氏(以下,坂下氏):
私は,今は別のタイトルの担当になっているのですが,事件当時はサドンアタックでマーケティングや宣伝活動,大会の実施などを担当していました。
4Gamer:
今回の事件は,そもそもの発端としては,ネクソンさんから神奈川県警に相談をして動き出したという形なんですか?
そうです。サドンアタックは非常に好評なタイトルで,ユーザー数も多く,我々も大会などに力を入れてきました。大会に向けてプレイしてくださる方も大勢いらっしゃいます。しかし,その中で不正行為があるとゲーム性自体が損なわれてしまうので,それに対しての苦情が非常に多かったんです。そこを解決したいという気持ちから動き出したというのが最初ですね。
とくに今回の事件の場合,少年Aが生配信でチートを広めて,「まだチートが使える」「このIDはBANされていない」「ネクソンは何もしていない」といった発言をしていたので,それを見たプレイヤーの皆さんから「なぜ放置しているんだ」という通報も多くいただいていました。
4Gamer:
配信されていたわけですから,プレイヤー側の気持ちとしては「ネクソンが放置している」となってしまうのも理解はできます。とはいえ,実際には当然チート対策は行っていたわけですよね?
加藤氏:
もちろんです。少年Aのアカウントについても,随時停止を行っていました。とはいえ,はっきりチートを使っているという証拠がある現行犯でないと,こちらとしても対応が難しく,停止しきれないケースもあったんです。
4Gamer:
基本的には後追いの対応になってしまっているんですね。とはいえ,グレーなアカウントにまで対処をと考えると……。
坂下氏:
ええ,誤ってアカウントを停止してしまう危険が出てきます。はっきり違反と分かるものなら永久停止の措置を取れるのですが……。今回のような配信の場合,例えば加藤がそれを見て,配信中にIDを確認できれば停止できます。しかし,こちらが見ていないときに配信者に「何もしていない」と吹聴されても,すぐには対処できなかったんですね。
4Gamer:
チーターへの対策は,基本的には目視でのアカウント停止になるんですか?
坂下氏:
ほかにも,不正監視ツールを活用してのID停止なども行っています。また,今回の件がきっかけで,外部の会社にサポートを依頼して,24時間の監視を行える体制も整えています。しかし,チートツールは常に更新されていくので,イタチごっこの面もあり,どうしても100%のチーターを取り締まれるわけではないというのが現状です。
プレイヤーの皆さんからは,よく「IPでBANすれば良いのではないか」というご意見もいただくのですが,集合住宅やネットカフェの場合,何もしていない方にまで迷惑をかけてしまいますから,IPで規制するわけにもいきません。
4Gamer:
実際,今回の少年Aは,自宅にネット環境が存在しなかったわけですしね……。
ところで,今回の事件は,罪名としては「電子計算機損壊等業務妨害」が適用されています。要するに,ネクソンさんの業務が妨害されたから書類送検に至ったということになりますが,事件の発表後,ネット上では「チートで有料のアイテムを無料で使っていたから」という反応が見られました。実際のところ,問題になったのは課金アイテム周りなのでしょうか。
坂下氏:
いえ,課金アイテムはまったく関係がありません。少年Aが課金アイテムをチートで使えるようにしていたというのは事実ですが,今回の立件はあくまで業務妨害が原因になります。ですから,「課金アイテムに手を出さなければ大丈夫」というわけではないので,そこは誤解しないでいただきたいですね。
4Gamer:
神奈川県警の話では,今後はほかの罪状が付加される可能性もあるということでした。
そうですね。次に書類送検があった場合,もっと重い罪に問われる可能性もあります。
坂下氏:
また,著作権法はともかく,業務妨害や不正競争防止法,ウイルス罪は親告罪ではありません。これはつまり,我々が訴えを起こすかどうかに関係なく,警察が立件できるということになります。実を言うと,ネクソンは今回の件で,警察から「今後は規約に違反した不正行為があった時点で相談してください」と指導を受けています。我々としては,それに従って情報の提供を行う必要がありますが,そこから先――立件されるかどうか――は,我々の判断とは関係なく進むことになるわけです。ですから,軽い気持ちでチートツールを使うのは絶対にやめてくださいと,強くお伝えしたいです。
4Gamer:
ネクソンさんも,不正を無くしたいのであって,逮捕者を出したいわけではないですからね。
坂下氏:
ええ。まだ勝手な解釈で「これなら大丈夫」と思っている方もいるかもしれませんが,今回のように,捜査令状を持った警察が突然家に来るかもしれないんです。チートなんかで人生を台無しにしてはいけません。何度も強調しますが,チート行為は本当にやめてください。
4Gamer:
ゲーム内のチート行為を減らすために,プレイヤー側から何かできることはありますか?
坂下氏:
チートを見つけたら,公式サイトの窓口から通報することですね。それを見て,スタッフが駆けつけて確認できれば,IDを停止できますから。ゲーム内にも通報機能はありますが,できればそれに加えて公式サイトの窓口でも通報をお願いします。
加藤氏:
もちろん,ゲーム内の通報機能だけでも調査はできるのですが,誤報も多いんです。なので,ゲーム内で通報していただき,詳細を書いて公式サイトの窓口に問い合わせてもらうのが,一番対処できる可能性が高いですね。
坂下氏:
手軽なのでTwitterで報告してくれる方も多いのですが,Twitterの場合,本当にプレイヤーが知らせてくれたのか確認がとれません。また,問い合わせは順番に対応しており,公式で通報してくれた人を差し置いてTwitterを優先するわけにはいかないという事情もあります。
ですから,面倒だとは思いますが,公式サイトの窓口をご利用いただけると助かります。
加藤氏:
また,チートツールを販売しているサイトや配布している人を見たら,Twitterなどで拡散せずに窓口にご報告ください。拡散されてしまうと,逆にほかの人が使ってしまう可能性がありますから。
4Gamer:
分かりました。最後に,サドンアタックプレイヤーの皆さんにメッセージをお願いします。
坂下氏:
我々としては,一番守らなくてはいけないのは正しく遊んでくださっている皆さんの利益だと思っています。チートを100%取り締まれているわけではありませんから,その点は本当に申し訳ないです。苦情を言いたくなることもあるかと思います。サドンアタックは,公式大会などのイベントが多いので,プレイヤーと触れ合う機会も多く,皆さんの熱意もすごく伝わっています。
我々もサドンアタックというゲームが大好きですから,皆さんの熱意に負けないよう,今後もチートには全力で対処していきます。これからのサドンアタックに期待してください。
4Gamer:
ありがとうございました。
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