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[GDC 2009#13]「ワンダと巨像」の上田氏,「Fallout 3」のPagliarulo氏,「NO MORE HEROES」の須田氏が揃った豪華セッション
Pagliarulo氏は,Bethesda Game Studiosに所属しており,「Fallout 3」のリードデザイナ兼シナリオライターである。紹介した須田氏はFallout 3の日本語版を遊んでおり,「自分はPagliarulo氏のゲームの住人」と語った。そのほかにもThe Elder Scrollsシリーズ,Thiefシリーズに携わっていたという過去や,Pagliarulo氏がジャーナリストの経験があるといった細かい情報まで知っていたので,かなりのファンであるようだ。
上田氏は,ソニー・コンピュータエンタテインメントで「ICO」や「ワンダと巨像」のディレクターとしてゲームデザインを担当。ICOがアメリカで発売された日にPagliarulo氏は速攻で買ってきて,職場の仲間同士で集まって遊んだという。遊び始めてたったの2分でのめり込み,ICOがとんでもないタイトルであることに気が付いたそうだ。
最初にモデレーターから出された質問は,ゲーム開発のプロセスについて。始めに何を行い,どのようにゲームを作り上げていくのかという質問だ。
Pagliarulo氏は最初にゲームのアウトラインを書き出し,それをもとに作り込んでいくという。自分自身がハードコアなゲーマーであるため,ゲームの中でどんな体験ができるのかが一番気になるので,そこからすべてをスタートさせるそうだ。また,それまでに見たことのないもの,体験したことのないものを盛り込むように準備し,それを具体的に落とし込んでいくのだという。
上田氏は,何はともあれ映像作りからスタートするそうだ。そのための絵コンテを書き上げ,それをもとにどうやってゲームとして表現するのかを考えていくという。
須田氏は,市場にないものを作るという命題を掲げて企画を考え始める。映画や本,漫画などが大好きで,そういったものから得たインスピレーションをゲーム作りに生かすこともあるという。ちなみに,企画の大もとのネタはトイレで気張っているときに出てくると語り,会場の笑いをとっていた。
続いてモデレーターから出されたのは,具体的にどのように企画をゲームに落とし込むのか,そしてその過程で企画の変更はあるのかという質問だ。
これに対しPagliarulo氏は,ゲームを実際に作り始めると,考えるのはプレイヤーのことであり,実際に遊んだ人が何をどのように感じるかを大切にして進めていくと答えた。そして,多くのプレイヤーがちゃんと遊べるかどうかを考えて調整し,プレイヤーがゲームのどこに面白さを感じるかということも考えるという。そのためにオリジナルのプランを変更することは無駄ではないとし,プレイヤーを第一に考えることを強調した。
須田氏も上田氏と同じように変更は多く,最初の企画どおりに進むことはまずないと返答。すでに開発がスタートしている場合は,現場に混乱が起きない程度にさまざまな変更を加えていくそうだ。
全員が開発を進めていくうえで当初の企画に変更を加えると返答したことを受け,モデレーターからは「どの段階で修正する判断を下すのか」という質問が投げかけられた。
Pagliarulo氏は,プレイヤーとチームメンバー両方の意見を参考にすると説明し,とくにメンバー同士では意見の衝突が少なくないという。ただし最終的には自分の本能に耳を傾けて決断するそうだ。非常にあいまいな答えといえばそれまでだが,須田氏もこれに賛同。たとえスケジュールが厳しくても,本能が「このままではダメだ」といえば,それに従って変更を加えるのだという。
上田氏の場合は前述したように映像からゲーム作りに入り,それをゲームに落とし込んでいくために,どうしても表現できない部分などは変更を余儀なくされる。言葉は悪いが企画の段階からは劣化していくことになるのだが,稀に“化学反応”が起こり,企画よりもよいものが出来上がることもあるという。ちなみに,上田氏がゲーム作りにおいて一番幸せを感じるのが,この化学反応が起きたときなのだそうだ。
これに対して須田氏は,Killer 7での例を挙げて説明。Killer 7はモチーフとなるようなゲームがない,まったく新しい発想のゲームであるために,なかなかメンバーにイメージが伝わらなかったという。そして,須田氏が本当にやりたいことに対しての反応もあまりよくなかったそうだ。そうなってくると須田氏自身も不安を感じるため,最終的にはプロデューサーの意見を求めたという。須田氏にとってのプロデューサーとは,ゲーム制作だけでなくプロモーションなども統括しているポジションのため,より客観的な意見を出してもらえる存在。本当に迷ったときはプロデューサーの意見を参考にしていることが多いそうだ。
上田氏は,ICOやワンダと巨像の開発を進める間に,チームメンバーと意見が衝突するといったことはほとんどなかったという。それはどちらも気心の知れたメンバーと一緒に作っていたからではないかと分析していた。
また上田氏はゲームを作っている過程で感覚が麻痺してしまい,なにが面白いのかまったく判断がつかなくなる経験が多いと説明し,これにほかの二人も同意。上田氏はそんな状況を打破するために,一般の人を使ってテストを行うときに,テスターのプレイを見ながら,初めてそのゲームに触れる人の気持ちになって判断するのだという。本来はテスターの意見をもらうのが主旨のテストであっても,その意見を反映することはあまりなく,あくまでも上田氏の目の代わりになってもらうことが目的なのだそうだ。
上田氏はゲームの世界観を構築するにあたって求めているのがリアリティであり,どうしてもキャラクター同士の会話を多くすると繰り返しの台詞が増え,現実とかけ離れてしまうことを不満に感じていた。ゲームである以上,プレイヤーが忘れないように重要な話を何度もするということは必要だが,それでは雰囲気が台無しになる。そんな状況になるぐらいなら,最初から会話をなくした状態で,ゲームのストーリーを伝えようと思い,ICOやワンダと巨像を開発したのだという。AIが進歩して繰り返しの台詞がなくなれば,会話を多用したスタイルのゲームを作る可能性はあるようだ。
それぞれ今までに作り上げてきた作品はまったく異っており,細かい部分では違うことを考えているものの,大きな方向性としてはほぼ同じだったというのが興味深い。世界的に売れるゲームを作れるクリエイターが求められる時代なだけに,国は違っても同じような資質を持った人が生き残っているということかもしれない。
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Fallout 3
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