インタビュー
なんでサービスをやめないんですか?――「ダメ運営」をキチンと払拭したい。生まれ変わりを公言する運営チームが語る,「R2」の変更点と将来
「R2 -Reign of Revolution」,プレイヤーの意見を元に大幅改善。タイトルを「R2 - Reunion-」に変更して新たなスタートを切る
それをそのまま運営チームに伝え,メールインタビューの許諾および返答をもらったのが前回の記事だったわけだが,そのときに公約をもらった「インタビュー」についても,無事に行うことができた。
BOTと課金アイテムの金額はなんとかします―「R2」運営チームがみなさんの質問にお答えします。第一弾はメールインタビュー
以下に続くやりとりが,そのときのほぼ全貌となる。前回の記事でプレイヤーのみなさんに送ってもらった要望も,なんらかの形でインタビュー中に混ぜ込むようにしたつもりだ。すでに"生まれ変わり"の日は明日に迫ってしまっているが,「どんな質問にもお答えします」という言葉に恥じない,ある種あからさまなやり取りを通じ,運営チームの気迫をお伝えしよう。
R2運営チーム プロデューサー 松本竜也氏 |
R2運営チーム ディレクター 蛯子 歩氏 |
R2運営チーム 品質管理担当 鈴木 章氏 |
R2運営チーム ディレクター 篠田 健史氏 |
4Gamer:
しかし,今日は松本さんだけかと思ったら,なんでこんなに大勢。
R2運営チーム プロデューサー 松本竜也氏(以下,松本氏):
どんな細かいところにもお答えできるよう,それぞれの部署のリーダーを連れてきました。
4Gamer:
なるほど。
本日は,お言葉に甘えてR2運営チームのやる気を聞きにきました。先日の記事にも書きましたが,基本的に「そんなこと今ごろ言われても」というのが私の本音ですし,おそらくはR2を辞めていった人達の中にも,同じような思いの人が少なからずいると思っています。
松本氏:
はい。すべて受け止めて,それでも前向きに進める覚悟です。今日は,隠すことなくなんでもお話するつもりです。
4Gamer:
さて最初は,ごく普通の質問からさせてください。今まで対応してこなかったのに,なぜここになって急に?
松本氏:
4Gamerさんにあの記事が掲載されてから,公式サイト経由のお問い合わせで,我々も同じようなご意見をたくさんいただきました。
本当のところ,今年の4月の段階から問題は認識しておりました。しかしそれらの問題が本当に根深い問題で,どれも対策に時間がかかってしまったというのが正直なお答えです。
4Gamer:
時間が,とおっしゃいますが,4月に認識していて今12月ですよ。もちろん1週間や1か月程度でどうにかなる問題だとは思っていませんが,さすがに時間かかりすぎじゃないでしょうか。
それでその「対策に時間がかかった問題」というのは,「対策」と言っている以上,BOTと有料アイテムの値段が主ですか?
松本氏:
まずBOT対策の携帯認証に関してですが,やはりシステムの再構築に時間がかかってしまいました。あとアイテムの値段が高いという部分に関してですが,こちらは,お客様が購入されるアイテムに関して,事実上必須であろうと考えられるもののみ,期間限定でキャンペーンで値下げなどは行わせていただいていました。
しかしこの問題は我々だけで決められる問題でもありません。当たり前ですが,アイテムの値段を下げるということは,そのまま売り上げが下がることに直結しますから。
4Gamer:
まったくそのとおりですね。
松本氏:
ですので,そこはすごく協議を重ねました。最終的には開発会社にも理解してもらえたので,時間がかかりすぎてしまったのは申し訳なかったのですが,今回のタイミングで値段を変更できることになりました。
4Gamer:
うーん……もし本当に4月から問題を認識していたのなら,なにがしかの形でアピールしてもよかったんじゃないでしょうか。何も発表がない=何も動いていない,と同義ですよ,プレイヤーからすれば。
松本氏:
はい。我々自身の運営が不慣れだったという部分は否定できません。
例えばBOTに関してですが,クリーンシステムの段階的導入,などがあります。最初は「正しい数字を入力しないとアカウントを凍結します」という形で実装しましたが,それでは海外の不正接続者が防げません。なので次には日本語の入力を求めるようにしたりと,システムのアップデートは繰り返していたのですが,それそのものが大きな対策になったとは言えなかったのが実情です。
4Gamer:
行動で示そうと思ったけれど,結果に結びついてはいなかった,と。
松本氏:
はい。そこが大きな反省点です。
やはり,しっかりとした対策をお客様に見せなくてはという気持ちがある一方,今できることを早くやらなくては,という考えもあって,中途半端になってしまっていたのです。
4Gamer:
日本のパブリッシャさんはみなさんそうですよね。「ちゃんとしたことやらなきゃ。だからまだ言えない」って。でも言わなきゃ,何を認識していて,何を問題視していて,何をやろうとしているのかさえ伝わらないと思うんですが。
消極的手法ながらも根本的な解決を目指すBOT対策――そのSIMに紐付いたすべてのアカウントを凍結させます
4Gamer:
先日の記事でのアンケート結果を見る限り,R2を辞めてしまった理由の34%がBOTでした。次いで,15.8%の人が有料アイテムの価格,14.6%がクラスバランスの悪さ――これが3位なのはちょっと意外でした――10.9%の人がレベルアップのだるさ。
というわけで,新しくサーバーも立つことですし,最も重要なBOTへの対策について,詳細をお聞かせください。携帯認証ってことは当然携帯がないと遊べないわけですが,「携帯」というのはどこからどこまでが含まれるんですか?
松本氏:
弊社が運営しているモバイルサイト「ハンゲ.jp」のサービスを利用しようと思っているので,ハンゲ.jpに対応している携帯が「対応」になります。
つまり,主要携帯3キャリアとなります。
4Gamer:
なるほど。イー・モバイルやウィルコムは無理そうですね。主要3キャリアの中でも,Android携帯やiPhone,Windows Mobile……もやっぱり無理ですよね。
蛯子氏:
来年以降対応していきたいと思っていますが……現状ではまだ「未定」です。
4Gamer:
全然中身が違いますしね。ところで携帯認証ってよく分かってなくて申し訳ないんですが,あれは何を見るんですか? SIM? それとも本体?
松本氏:
SIMです。
4Gamer:
ということは,SIMが複数あったら複数登録可能ですね。まぁそんなに複数持ちが大量にいるとも思えませんが。
松本氏:
でも,基本的にハンゲ.jpって一つの携帯電話でいくつでも紐付けができるんです。なので,1台の携帯と1枚のSIMがあれば,100人でも200人でもできることはできます。
4Gamer:
ということは,その状況下で不正対策に使おうという以上は……。
松本氏:
そうです。利用規約を変更させていただいて、SIMを「個人」とみなして,それに紐づいたどこかのアカウント一つで不正を行った場合,そのSIMに紐付いたすべてのアカウントを凍結させます。
4Gamer:
ええと,一応確認しておきますけどR2に関して「すべて」ですよね。
松本氏:
はい,それはさすがに。
4Gamer:
「そもそも不正行為をできなくする」という真正面の対応というより,不正をしたときのダメージを大きくしているという,ちょっと消極的対応ですね。消極的とはいえ全凍結ですけど……。
でもマジメな話,携帯認証だけでどうにかなるものなんですか?
松本氏:
今までは,ハンゲームのアカウントを取得してそのままR2のサーバーにつないでいたわけで,一回対応しても,すぐまた別のハンゲームアカウントを使って入ってこれたわけです。
4Gamer:
ハンゲームのアカウントそのものは容易に取れますからね。
松本氏:
はい。それがいいところでもあるので痛し痒しですが。
それで今回,R2に関しては携帯認証を入れたので,なんというか「ハンゲームのアカウントが凍結」されるのではなく,「携帯電話のSIMという個人」が凍結されるのです。ハンゲームのアカウントがゲームにつなぐキーになっているわけではないので,次につなごうと思ったら,新しいSIMカードを入手しなくてはいけません。確かに消極的解決かもしれませんが,「凍結しても凍結しても何度もやってくる」という部分に関しては,相当ハードルを高くできたのではないかと思っています。
4Gamer:
しかし当たり前ですが「凍結」するのは人間ですよね。
松本氏:
はい。そればかりはプログラムでは無理です。なので,R2のGMの数は5倍にしました。もうこれは,手作業でひたすら頑張るしかないのです。
4Gamer:
例えばR2のゲーム内で不正を働いたキャラクターがいたとして、それをまず認知して判断して処理するのが人間ですよね。で,それを受けてそのアカウントを停止するという処分が,また人間。
人間がやらざるを得ない処理なのは当たり前だし理解できているんですが,処理漏れの可能性や,初動の遅さの懸念がぬぐえない気がするんですが,システム上のラインに乗せられないものなんでしょうか。
松本氏:
4Gamer:
パッとは手法を思いつきません。しかし人間の手による部分が2か所あって,そのうち片方がR2の部署じゃないであろう部分が気になっているのです。
松本氏:
あ,理解しました。そこは大丈夫です。アカウントの停止――というよりSIMの停止ですかね――まで含めて,R2運営チームのほうですべて対応できるようになっています。
4Gamer:
なるほど。それでしたら,だいぶ風通しがいい感じになりますね。
松本氏:
ええ。さらにこのシステムは割と良くできていて,アカウントを入力してワンボタンで凍結できるんです。さらに,SIMで紐づいているアカウントも一覧で出せるようになっていて,それをも含めて一括凍結できる仕組みになっています。
4Gamer:
ところで「不正行為」というのは,どういうプロセスで認定されるんですか?
松本氏:
プレイヤーさんから報告があった場合,こちらで調査してGMが判断します。
4Gamer:
その「判断」の部分は,個々のGMの権限ですか? それとも上に会議体があったりするんですか?
松本氏:
どちらも,です。例えば報告もしくは確認できた事項が,通常は絶対にできない行為ですとか,R2でチートに当たる行為ですとか,そういったものは調査するまでもなく目視で確認できるものなので,ログを残したうえで,不正として対応します。
4Gamer:
反応時間のコミットはしてくれないのですか。
松本氏:
といいますと?
4Gamer:
例えばユーザーさんからの報告から,何分で対処します,とか。
松本氏:
そこは報告件数によります,としか言えません。
4Gamer:
でも以前の5倍いるんですよね?
松本氏:
確かにそうです。しかし,それを確認するまでの時間というのはコミットできるかと思うんですけど,処理とまでなると正直コミットするのは難しいです。
例えが変ですが,R2は空を飛べないゲームですので、キャラクターが空を飛んでいるという報告があった場合は,即時不正として対処できるのですが,実際には即時判断の難しい微妙なものも多いので,そこは時間がかかってしまいます。
4Gamer:
分かりました。
24時間の巡回作業でチートにも徹底抗戦――R2のプログラムは相当なレベルまで解析されてしまっていたのです
4Gamer:
ところでBOTばかりに気を取られていましたが,肝心のチート対策は何か手を打ちますか?
松本氏:
こちらでも4月の時点でまずい状況を重々把握していて,実は韓国や中国のチートツールを集めて,動作検証に入ってみたんです。同時に,弊社のセキュリティチームに解析してもらったところ,R2のプログラムのかなり深い部分まで呼び出していることが分かりました。つまり,R2のプログラムは相当なレベルまで解析されてしまっていたのです。
4Gamer:
4月の時点ですでに他国でローンチ済みのタイトルですから,ある程度予想はできたと思うのですが。
松本氏:
我々もそれで「はいお手上げ」というわけではありませんし,開発と協議しつつ根本の部分の対策を進めていったのですが……。
4Gamer:
ですが?
松本氏:
解析を進めていくにつれ,不正者側が,R2の手の内を知り尽くしていて,深い部分まで分かっているということが理解できました。なので今回は,意図的に外側からの対応に切り替えたのです。
本質的には,不正ツールが絶対使えないクライアントを作ればいいのですが,それは想像よりは難しい作業でかつ時間がかかりますし,仮にそれが完成したところで「100%大丈夫」という保証はありませんし,イタチゴッコになってしまうのは目に見えてます。
なので今回は,時間もお金も違う方向に使って,新しいシステムの対応という形で根本の対策をしようと考えています。
蛯子氏:
一部の不正/チート行為に関しては,開発会社に協力してもらって検知ツールを作ってもらいました。
4Gamer:
検知,というのはGMツール上で,ですか?
蛯子氏:
はい。詳しい内容は言えませんが,一部の不正/チートについては,GMが巡回中にGMツール中で分かりやすく表示されるようになっています。
4Gamer:
いましれっと「巡回」と言いましたが,巡回してるんですね。
松本氏:
はい。24時間してます。
蛯子氏:
サービス開始当初から,「非常に対応が悪い」「GM巡回してんのか?」と言われてましたが,対応させていただいています。
4Gamer:
しかしチートがそこまで根深いところにいるんだったら,根本的な手を打つのは,あまり現実的じゃないですね,確かに。
蛯子氏:
4Gamer:
しかしサービスがどんなに長くても,そこまでチートが蔓延してない作品はいっぱいありますよ。絶対にできないこと,ではないはずです。
松本氏:
できるかもしれませんが,この状況から時間とお金をかける割には効果が疑問であるというのがお答えです。今の我々の一番の目的は「チートを根本から撲滅すること」ではなくて「お客様にクリーンな状況で遊んでいただくこと」なので,今回のような対応を採用しました。
4Gamer:
なるほど,おっしゃることはよく分かりますし,効果も高そうに思います。
どちらに転んでも難しい旧サーバーについて――申し訳ありません,としか言えません
ところで携帯認証って,新しいサーバーに入るんでしたっけ。古いほうには入らない。
松本氏:
はい。
4Gamer:
うーん……やりたいことの意図はすごくよく理解できるんですが,やっぱり違和感が残るのは否めません。だってキャラ移動ができないわけじゃないですよね。
松本氏:
そうですね。サーバー統合のときにキャラクターの移動をしたので,できるかできないかであれば「おそらくできる」と思います。大きな理由は,新サーバーの立ち上げ直後に,高レベルキャラクターが城を独占してしまうことを避けた感じです。
4Gamer:
ええ,その意図は大変よく理解できますし,間違えているわけでもないと思います。ただ,今まで遊んでくれたプレイヤーをあっさりと裏切っているところに違和感があるだけなんです。「じゃあどうすればいいんだよ」と聞かれると私もちょっと困るんですが。
松本氏:
確かにその件も公式サイト経由で言われましたし,そもそも我々もずいぶん悩みました。
しかし,やはり両方に携帯認証を入れてしまうと,どれくらいの実数かは分かりませんが,遊べない方がでてしまいますし,キャラクターを移動させてしまうと,移動したキャラクターばかりが異様に強く,サーバー内のバランスとしてどうだろう,という懸念があります。
我々も,悩んだ末の結論です。「なんでキャラ移動しないんだ」と言われると,申し訳ありません,としか言えません。
4Gamer:
膨大な時間と,もしかしたら膨大なお金をつぎ込んだキャラクターがいるサーバーは,GMこそ巡回していますが,表口はスカスカなままですよね。そのあたりも含め,ちょっと微妙だなと思ってます。
とはいえ,いきなり新サーバーに強力なキャラクターがわんさかいるという状況があまり好ましくないのも理解はできます。新サーバーがある程度育ってきたあとでのキャラ移動の可能性は?
松本氏:
現時点では明言できません。
4Gamer:
例えば,既存のR2プレイヤーが,時間もお金も遣ったし,キャラに愛着もあるから,運営チームが頑張ってくれるならあそこであのままやろうかな,となるじゃないですか。
でも結局のところ人数は変わらないですよね。言い方が悪いんですが,旧サーバーにわざわざ行くとは思えません。人数が増えないんであれば,新体制後の旧サーバーの意味って一体なんなんですか?
松本氏:
レベル上げの大変さの緩和や,有料アイテムの価格見直しなどは両サーバーで対応しますし,集客に関しても引き続き頑張ってやっていきますよ。
4Gamer:
いえ,そうではなく。そもそも旧サーバーにいくメリットはどこにあるんですか,という話です。
松本氏:
旧サーバーは,携帯電話で認証できない方のために残しておきます。メリット……と問われると,正直明確にはできません。
4Gamer:
携帯認証がないというのはメリットにはなりえますが,逆に言えばセキュリティが怪しいわけで。旧サーバーに行くメリットが何もないじゃないですか。結局新しい人は新サーバーに行って,旧サーバーはいままでどおりの人の数で,少なくとも旧サーバーにとっては,対人ゲームとして良くない状況が生まれるだけじゃないでしょうか。
松本氏:
旧サーバーで遊ぶプレイヤーを見捨てていると?
4Gamer:
見捨てている,とまでは思っていません。繰り返しになりますが,サーバーバランスを考えれば,運営チームがおっしゃることはとてもよく理解できますし。
しかし,何かしら統合の可能性を示唆するとか,もしくは携帯認証が入った新しいサーバーに旧サーバーを全部移動させるとか,以前のプレイヤーにもあまり負担ではない手は打てると思うんですが。
松本氏:
なるほど。今後絶対にキャラ移動をしない,ということではありません。お客様から要望があればという限定付きではありますが,将来的に検討する可能性があるというのがお答えです。公式サークルにきているお問い合わせに関しても,そういう形で返答しています。
4Gamer:
ゼロではない,と。
松本氏:
ええ。ただ我々が見えていない部分というのももちろんありまして,例えば携帯認証を入れたサーバーにまったく人が来なかった,とか。このあと,お客様がどういう動きをするのか分からないのが不安要素ではあるので,今の段階で「キャラ移動が自由にできますよ」とか「3か月待っていただければいつでも移動できますよ」とは言えないんです。
4Gamer:
オフィシャルな発言としては言えませんが,可能性は十分残っているということですね。
松本氏:
そうです。
何回かのチャンスを与えられるクリーンシステム――BOTであると判断されて凍結したアカウントは基本的には解除しません
4Gamer:
松本氏:
基本的にクリーンシステムが発動する対象は,不正者ないしはそれに近しいとみなされた人です。それが発動した場合,決められた文字を入れられないと不正者とみなします。そのクリーンシステムを発動するのは,GMが手動で行っているんですが……。
4Gamer:
ええ。
松本氏:
基本的には,お客様がそこにいる状態でクリーンシステムを出して,入力ができない場合は不正者とみなします。「解除してもらえない」という要望はよくきますが,「クリーンパットに文字を入力できなかった」という状況は,普通のプレイをしている状態では発生しないものと認識しています。
蛯子氏:
誤解なきようにお伝えしておきたいんですが,1回失敗したから即停止,というわけではありません。ちゃんと回数が設定されています。
4Gamer:
確かに,キツい戦闘中とかだと難しいですしね。
蛯子氏:
上限回数を設け,定期的にそのお客様に対して発生させて,それでも規定の回数答えられなかった場合に「BOTである」と判断します。そしてBOTであると判断されて凍結したアカウントは,基本的には解除しません。
4Gamer:
しかし人間がやることに「絶対」はないですよね。万が一えん罪になったときに,一切の弁明余地がないんですか?
蛯子氏:
いえ,お客様からお問い合わせが来た場合のために,担当したGM以外にもログを取っていますので,再度確認をして,不正行為と思われるような行動をしていないと判断された場合,凍結解除もありえます。
4Gamer:
あぁ,一切認められないわけではないんですね。
松本氏:
はい。
4Gamer:
本当に潔白ならば伝えてくれ,ということですね。
より気軽に参加できる攻城戦を目指して――強い武器を落とした時点で引退してしまう人の数が,無視できなかったんです
さて続いて,攻城戦の仕様など,です。
アイテムドロップをしないというのは大変分かりやすく,多くの人に対してメリットたりうるものになると思います。どちらがいいとか悪いとかではないのですが,戦争時にアイテムドロップのペナルティがないというのは,すなわち強い武器をなくさないということですよね。
一人のプレイヤーとしての観点から見れば良いことなんですが,裏を返せばアイテムの価値そのものの下落を招きますし,面白半分のPKもいっぱい招くと思うんですね。そのあたりはどのようにお考えでしょうか。
松本氏:
もちろんおっしゃるようなことは理解しています。お客様からの要望を取り入れたうえで,長い間検討を重ねた結果,こういうシステムにしました。
実は一番大変だったのが,韓国の開発者と我々の認識がなかなかすり合わせられなかったことです。彼らは「武器を落として恨み合いになったほうが楽しいじゃないか。それがR2のいいところだ」と。
4Gamer:
とても韓国らしい発言ですね。理解できますし,実際に向こうはそのとおりなわけですし。
松本氏:
はい。しかし我々が,アイテムを落とした方のその後の行動を調べてみると,強い武器を落とした時点で引退してしまう人の数が,無視できないレベルだったんです。別に根性なしとかそういう話じゃなくて,そういうプレイスタイルなんですよね,韓国のプレイヤーと違って。
4Gamer:
気持ちはちょっと分かりますけどね。
松本氏:
そんなわけで,R2の訴求ポイントは「刺激」だったんですが,辞めてしまったり,攻城戦に強い武器を持っていかないで地味な戦いをされるのであれば,思い切って攻城戦に関しては武器を一切落とさない仕組みにすることにしました。
4Gamer:
先のメールインタビューでも,レベルアップの高速化のところでも,アイテムドロップを増やして武器を流出させて……って言ってますよね。つまりはもう,R2の当初の訴求ポイントは,根本から覆っているということですか?
松本氏:
はい,おっしゃるとおりです。
もともと考えていた,刺激がすごいとかプレイヤー同士の戦いで盛り上がるとか,そういうものが多くのプレイヤーの方に受け入れられなかったということを認識しましたので,素直に考えを改めて,いっそがらりと変えて再度提供させていただくことにしました。
4Gamer:
まぁUOでさえ家が腐らなくなりましたしね……。
蛯子氏:
R2の場合,武器や防具のアイテムの性能が,ゲームの中で非常に重要なポジションを占めているんですが,これも改造や強化を重ねないと強くならない仕様です。そんなに簡単にぽんぽんと「最強の武器」が生まれるものではありません。
ほかのMMOに比べても,かなり渋いと思うんですよね。別に数字をいじっているわけではないんですが。
4Gamer:
でもそれは,単に渋くしなきゃいいだけでは?
蛯子氏:
この確率をいじるつもりはないですし,むろんいま以上に渋くしようというつもりもありません。
お客様の中で,このアイテムはこのレベル以上じゃないと使い物にならない,というなんとなくのラインがあるんですけど,そのハードルは非常に高いんです。常に強化失敗の可能性を秘めてますし。
それを乗り越えられるか否かは割とシビアな問題でしょうし,強い武器が大量にずっと残り続けるということに対して,ある程度は歯止めの部分があるのではと思っています。あと,Mobに倒された場合のアイテムドロップは以前のとおりですし。
4Gamer:
なんでPKでは落とさずMobで落とすんですか。
松本氏:
緊張感を持ってもらおうかと。
4Gamer:
一部を除いて,Mob戦に緊張感なんてないでしょう。僕だったら強いMobのところに張り付いて誰かが死ぬのを待ったり……しようと思ったけど,ちょっとつまんなそうですね。
松本氏:
Mob狩りって,集中力が欠けると死ぬじゃないですか。だからそのシステムに問題はないですし,もしずっと待つのであれば,それはそれでアリなスタイルではないかと。
4Gamer:
MPKは?
松本氏:
このゲームでは難しいと思います。
4Gamer:
なるほど。うーん,しかしやっぱりちょっとよく分かりません。なぜ逆のアプローチではないんでしょうか。
松本氏:
といいますと?
4Gamer:
オーバーエンチャントしやすくすればいいと。
松本氏:
どんどん+8とか+9が手に入りやすくなればよい,と。
4Gamer:
ドロップ率も300%らしいですし。
松本氏:
確かにその議論はあったんですが,それだとアイテムへの愛着がなくなるのではと。
4Gamer:
300%ブーストで,しかもほぼなくさないようなもので愛着沸きますかねえ。
松本氏:
このゲームは,レベルよりもアイテムに依存しているので,「+8を持っている俺のキャラクター」というのが嬉しい部分だと思うんです。その部分を取っ払って,すぐ強くなる,すぐ手に入る,という形で,みんなが最上位の力を手に入れてしまうというのは面白くないと思うんです。
4Gamer:
まぁ確かにオーバーエンチャントは,どのゲームでもイヤになってきますね。
松本氏:
先ほど蛯子からも申し上げましたが,OEの確率に関していじるつもりはないです。武器を手に入れたあとの+の安全圏っていうのがあるんですけど,安全圏を越えた後はすべてリスクなわけです。300%にドロップ率を上げても,やはり+9を手に入れるのは厳しい作業ですので,すべての人が持てるような設定にはなってません。
4Gamer:
なるほど。ともあれ,趣旨は理解しました。
ところでオーバーエンチャントって,無課金でレベルMaxまでできます?
松本氏:
できます。
4Gamer:
ある意味平等を追求してますね。そこくらい課金にしてもいいのでは,むしろ。
極端な方向に振ったPKシステム――当初の予想を遙かに超えてPKシステムが受け入れられなかったので修正します
しかし,逆にPKのモチベーションをどこに設定してるんですか?
松本氏:
まずPKですが,サーバーの記録を見る限り,日本は韓国と比べるとPK数そのものが10分の1以下でした。韓国の方は大好きで日本の方はあまり好きじゃない,というのはもともと分かってはいたんですが,ここまでとは。
当初は,刺激的なゲームを訴求するうえで,R2ではアイテムのドロップがあるという形でPKを入れたんですけど,日本では,落としてしまう恐怖心のほうが強かったんですよね。やられたら落としてしまう。
一方でPKする側としては,こいつを倒したら強い武器が手に入るかもしれない,というメリットがあるわけです。我々は当時その部分に肩入れしていたので,韓国の設定をそのまま持ってきました。ところがフタを開けてみたら,実際には「怖がる人」のほうが圧倒的に多かったんです。
4Gamer:
当初の予想を遙かに超えてPKシステムが受け入れられなかったわけですね。
松本氏:
はい。なので,今回はこういう変更を入れました。おっしゃるとおりPKの刺激は減ると思います。「村から出たら,殺されて何かなくすかもしれない」という恐怖を取り払う側に,今回は回ったわけです。
4Gamer:
街から出られなかった昔のUOを思い出しますね。サービス当時の混沌としたLineageIIと言い換えてもいいですが。
当初は,PKする/されるというのが面白いと思っていたけど,実は全然違ったので仕様変更しました。ということですね。強引なまとめですが。
松本氏:
はい。さらに付け加えて言うと,我々はそのPKシステムを強く訴えかけたんですが,それがまったく外れたので,素直にお詫びして修正させていただきます。
4Gamer:
しかし考えたら,経験値の入りが300%になってるんだったら,デスペナを増やす方向性とかもありじゃないですか? PKされたときの経験値の減りは,Mobに倒されたときよりも多く減る,とか。逆に言うと,PKすれば,Mobより多く経験値が入るわけです。せっかくPKというシステムそのものを残すのであれば,メリット/デメリットのメリハリを付けるべきだと思うんですよ。
大事なアイテムをロストするのが忍びない気持ちは分かるので,せめて復帰のたやすい経験値などでペナルティを付ける方向とかどうなんでしょう。
松本氏:
実は我々もそこは検討しています。
ただ,今回はPKに関するハードルは一気に下げました。日本の方に受け入れられたあと,お客様の要望があれば,徐々に戻していくことも検討します。
4Gamer:
まぁでもアンケートでも,戦争特化にしてPKをやめてほしいという方がちらほらいましたしね。
松本氏:
R2でNon-PKサーバーを作ってほしいという要望もきます。
4Gamer:
でもPKが楽しい人――って言葉にするとなんか語弊がありますね――は寂しいんじゃないかなぁ。
松本氏:
PKできなくなるわけではないですし。R2の特徴というのも変ですが。
4Gamer:
でもいまの状態だと,PKは単なる嫌がらせにしかなりませんよね。
……例えば私が松本さんを10回連続でPKするっていうのは,この「PKにメリットなし」のルールにおいては,単なる嫌がらせが怨嗟ですよね。そういうのってハラスメントで報告されたりするんでしょうか。
松本氏:
例えば村の入り口で500回PKされた,とかであれば取り扱うかもしれませんが,1回や2回殺されても,基本的には対応しないと思います。
4Gamer:
そりゃそうですよね。それを聞いて逆に安心しましたが。
まぁでもそういう人も多いでしょうし,そのボーダーラインはちょっと難しいかな,と思って。例えば同じ場所で3回殺されました,とか。
松本氏:
3回では取り締まらないです。
蛯子氏:
2回3回ではちょっと……。粘着とまではいかないにしても,恨みつらみなどはひんぱんにあることですし。殺された側としては,介入してほしいというのはあるでしょうけど。
4Gamer:
聞き取り調査などはします? 3回だと介入しないけどじゃあ4回は? とか考えていくと,なかなか線引きが難しそうですが。
蛯子氏:
今回のルール変更の根底には,その部分がありました。初心者保護という形で,レベル19以下はPKができません。でもそれを利用して,レベル19以下のキャラクターからの嫌がらせがあっても困るので,それも防がせていただきます。
松本氏:
ずっと昔は,「MMOにはPKがなければ面白くない」と言われてましたね。
4Gamer:
それはまたずいぶん昔の話ですね。いまどきのプレイヤーは――自分も今ではそうかもしれませんが――嫌な思いをしてまでゲームをしたくないでしょうし。そもそも,ほかにプレイするゲームが山ほどあるんだから,ちょっとでも嫌なら次に行っちゃえばいいんですし。
レベルアップを,速くするだけでなく少しでもワクワクするものに――1レベルごとに全然違うアイテムがもらえます
4Gamer:
さてレベルアップの高速化です。300%。
松本氏:
はい,300%です。
4Gamer:
もはや経験値アップのアイテムなんかいらないのでは。
松本氏:
買わない,という選択肢があってよいんじゃないでしょうか。
4Gamer:
アイテムで上がるのは最大100%ですか?
松本氏:
そうです。既存のシステムと合わせて400%上がるわけです。ただし,300%を基準で考えるべきかと思いますので,それですと30%強の経験値アップとなります。
4Gamer:
ところで「300」という数値はずいぶんとダイナミックな変更ですが,どうやって決めたんでしょうか。
松本氏:
とにかく「変えなきゃ」という気持ちがまずありました。レベル10ごとにスキルがあるので,レベル50のスキルまで到達するのが,まず一つの目標ですよね。その楽しい思いができるまでの時間を,3分の1にしてしまうことまずやってみることにしたんです。
4Gamer:
例えば,完全に新規の人がレベル1のキャラクターを作って……んー,そうですね。社会人プレイヤーとして,1日2〜3時間のプレイとしましょう,そんな状況で例えばレベル40まで育てるのに,どれくらいの期間を想定してますか?
松本氏:
そうですね……今までは大体3〜4か月くらいかかっていました。その時間を3分の1に縮められるので,大体1か月くらいでしょうか。
4Gamer:
1か月でR2の攻城戦が楽しめるようになる,という想定なんですね。
松本氏:
はい,そのとおりです。
4Gamer:
しかし,3分の1にしてもゲームが破綻しないということは,そもそもその途中はあまり意味のないコンテンツということですよね。逆に,そのレベル上げのプロセスに何か意味があるんですか。
松本氏:
おっしゃるとおり攻城戦をいきなり体験させるということも検討したのですが,やはり自分のキャラに愛着をもってもらうという意味で,その1か月すらなくすことはやめようと思いました。
4Gamer:
まぁ1か月になったらなったで,その1か月がつらいだけなんですけどね。多分。
蛯子氏:
でもそのつらい期間を,単にツラいというだけでは終わらないように,楽しめる仕掛けとして,レベルが上がるごとに「幸運の贈り物」というアイテムボックスが配布されるようになりました。
4Gamer:
他社作品でもよく見る手法ですね。中には何が?
蛯子氏:
これがレベル1からもらえるようになっていて,レベルが上がるとその箱を開けられるようになります。それで中身なんですが,単なるポーションとかだけではなく,有料アイテムもありますし,変身アイテムもあります。
4Gamer:
おや,割と豪華仕様ですね。
蛯子氏:
また,レベル帯に合わせたクエスト素材の一部や,装備品までもが入っています。「もうちょっとだけやってみよう」という,今までのR2のレベル上げにはなかった,ちょっとしたご褒美や目標を設定した感じです。
4Gamer:
蛯子氏:
はい,1ごとです。
4Gamer:
1刻みはマメですね。
R2運営チーム ディレクター 篠田 健史氏:
しかも1刻みで内容が全部違います。次のレベルに上がったら,まったく違うものが支給されるようになっています。
戦争ゲームとしてのさらなる熟成を目指して――サーバー間での戦いができるようになるんですよ
4Gamer:
しかし,それだけ早く楽しくレベルが上がっていくようにするのであれば,アンケートフォームでも見られた「コンテンツが足りない」という問題が顕著になるだけだと思うんですが。
松本氏:
そうですね。そこはまったくおっしゃるとおりです。
ほかの国に比べてアップデートが若干遅かったので,今のところはコンテンツ不足にはならないと思っていますが,もっとMAPを広げてください,などの要望はいただくことになると思っています。
4Gamer:
レベル上げを早くするのは,そのぶんコンテンツの消費速度をも速めるということですからね。攻城戦というシステムはありますが,毎回毎回毎日毎日同じようになりがちな攻城戦だけやってはいられないですし。
松本氏:
……このインタビューで触れるかどうか迷ったんですが,将来的にもう少しサーバーを増やしたいと思っています。
4Gamer:
……はい?
松本氏:
サーバー間での戦いができるようになるんですよ。
4Gamer:
おお?
蛯子氏:
すでに韓国ではサービスされているものです。多くのお客様に来ていただければ,という但し書き付きになってしまいますが。
4Gamer:
サーバー間戦争は楽しそうですねえ。それは,いま日本のR2チームが考えているだけのジャストアイデアベースなんでしょうか。それともすでに開発側に打診して,色良い返事をもらっているんでしょうか。
松本氏:
実は,状況的にはいつでも入れられます。ただ,人数とサーバーの熟成などだけが問題です。
4Gamer:
あれ,思ったより早い。人数は確かにそうですよね。人数ばかりはいないとどうにもならないですし。
しかしいいじゃないですか,サーバー間戦争。PvP/RvRゲームには全部付けてほしい。
松本氏:
ただ攻城戦の盛り上がりなんかもそうですが,PvPなど,お客様同士で作り上げていただくコンテンツは心底難しいな,と思っています。「入れました。さあやってください」というのでは,当たり前ですが全然足りないんですよね。
その仕掛けは今後随時考えていきますが,韓国のほうでも開発陣がちょっと反省してくれていて,日本側の要望をちゃんと聞いてくれるようになったんです。それは結果的には良いことだと思っています。
4Gamer:
まぁ韓国の開発会社は,韓国で流行っているものが絶対に日本でも流行ると主張しますよね。
松本氏:
R2が今後「Reunion」として新しくなるにあたって,大きく変わった体制はそこかもしれません。今後は,日本の状況や,日本でどうすればいいのかというのを考慮に入れた上で様々なコンテンツを実装していってくれる,と。
4Gamer:
なるほど。例えばVoting(投票)で決めるのも面白そうですね。「韓国側のこのルールと,日本が考えたこのルール,どちらがよいですか?」みたいな。
松本氏:
お客様と一緒にこれからやっていくというのは,可能な限りやっていきたいと思っています。実は今回のサモナーから,すでにその仕組みがある程度は取り入れられているんです。韓国のサモナーと日本のサモナーは全然違うもので,日本オリジナル調整が入っています。
4Gamer:
おや,そうなんですね。
蛯子氏:
すでに昨年韓国ではサモナーを実装して,他国でも実装されていますが,「能力的に微妙。トリッキーで使いにくい」というのが他国のお客様の評価だったんですね。なので今回Reunionとして生まれ変わるにあたって「サモナーを日本用に調整しませんか」と提案したらやってくれる,ということになって。
韓国でもともと設定されているスキルだったり,細かいバランスだったりをいじって,社内で人を集めていろいろなテストをしてみました。ソロプレイをしてみたり,いろんなクラスとPvPをしてみたり。
日本のプレイヤーのみなさんに面白く遊んでもらえ,かつ「サモナー無双」にならないような落としどころを見つけて開発に提案し,それが今回実装されているんです。
4Gamer:
実装後にさらに調整される可能性は?
蛯子氏:
お客様から多くの要望があり,そこに「確かにこれは」という部分があれば,他職も含めて検討の一つになると思います。
4Gamer:
しかし今回は確かにやってくれましたが,韓国側は本当にそれでコミットしてくれているんでしょうか。疑うわけではないですが,「日本の意見も尊重します」といって本当に尊重した韓国の開発会社はほとんどありません。本当にしてくれるなら,地味にすごいことだな,と。
蛯子氏:
はい。今回「ほかの国ですでに実装されているパラメータを変えてもいい」「日本側の意見をちゃんと聞きたい」という話をしてもらえて,実際にこちらの提案も承諾してくれて,それはすごいことだと思っています。
今回やってみたのは,あくまでも我々運営側の手によるバランス調整ですが,次はお客様の評価です。「これはこうじゃないほうがいい」「このクラスはこうするべきだ」など,いろいろな声が集まってくると思いますので,それらもキチンとまとめて開発に提案したいと思います。
4Gamer:
本当に意見が届くのならば,今回のアピールポイントには入っていませんが,十分売りになると思いますよ。
松本氏:
いままでのアップデートは,向こうが送り込んできたパッチを1個1個オープンにして,プレイヤーのみなさんにダウンロードしてもらってただけなんですね。要するにパッチに関しては,我々は単なるゲートでしかなかったんです。でもそれは,もうやめました。
単に止めて開けるだけでなく,キチンと日本向けに調整したものだったり,ほかに何か加えたものだったり,そういうものがあったうえでのアップデートにします。その最初の実行例がサモナーになります。
4Gamer:
しかし韓国側は大変なのでは。数値管理やバージョン管理はどうしてるんでしょう。
蛯子氏:
確かに大変だろうと思います。しかしもっと問題なのは,R2がワールドワイドでサービスされていることです。今年の8月には,グローバル攻城戦という形で日中韓で対戦したんですが――来年もぜひやりたいですね――例えばすでにサモナーは日本独自のバランス設定になっていますが,これはグローバルルールとしてそのまま採用されることはないと思います。
4Gamer:
それはさすがに仕方ないですね。
蛯子氏:
攻城戦のルール改善を希望される声もありますが,先ほどの「グローバル戦」の統一ルールのことがありますので,そんなにホイホイとは変えられません。そこはなにとぞご容赦いただきたいです。
本当に考えを変えた韓国の開発側――「日本からの要望受付期間」という期間が設けられることになりました
4Gamer:
地味にオッと思ったのはHPバーでしょうか。あれがないと,レベルが上がった気がまったくしないんですよね。……でも5メモリって(笑)。何で10とかじゃなくて5なんですか。
松本氏:
それは今後お客様にご要望いただいたら変更します。取り急ぎ,いまあるものを実装しました。
蛯子氏:
4Gamer:
あぁなるほど。個人的にはあれはいいです。MobのHPまで隠すことないんじゃないの,と思ってました。
プレイヤーに当てる予定はないですよね,さすがに。
松本氏:
ないですね。
4Gamer:
見えたら見えたで違う面白さは出そうですけど。
松本氏:
確かにそうですね。でも検討事項に入ったこともないですよ。
蛯子氏:
プレイヤーのみなさんのブログなどを見ていると,プレイヤーのHPが見えないのがいい,という声も聞かれますし。
4Gamer:
いつ倒せるのか分からないスリルと駆け引きはありますね,確かに。しかしこれから新しい人を入れようというタイミングで,コンシューマ慣れした日本人にはどうだろう,とも思います。
松本氏:
韓国でR2を最初にサービスしたときには,もちろんHPバーはなかったんです。で,それによってコミュニティが盛り上がったんですよ。+3の剣があると6発で倒せるけど,+4なら5発で倒せる,とか。
そんなコミュニティが日本でもできるかな,と思って期待していたのですが,日本ではまったく話題にならなくて,むしろ逆になんだこの古臭いゲームは,HPバーすらないのかと言われまして。今回実装に踏み切りました。
4Gamer:
しかし,その裏で変わる部分(=開発に意見が通る)のほうが,今プレイしている人にとっては重要なんじゃないですかねえ。むろん,ユーザーさんの言うことを都度都度全部は聞いてはいられませんが,何を伝えても何も変わらないよりずっと良い。
松本氏:
アップデートの計画っていうのは,どの作品もそうだと思うんですけど,ちゃんと将来にわたって決められているんです。今回以降,そのプランの中に「日本からの要望受付期間」という形である程度のバッファが設けられることになりました。
読んで字のごとくこちらからの要望を反映させる期間になっていますので,むろんできないこともありますが,かなり高い確率で日本の声が反映されやすいと思います。
4Gamer:
とても良いと思います。
1週間限定の呪文書販売も――サーバーログを見る限り,強化用の呪文書はあり余っている状況です
4Gamer:
ところで先日のメールインタビューを改めて読み返すと,R2運営チームが「月8400円の有料アイテム前提」で話をしているのがすごく気になりました。
松本氏:
それについてもぜひお話させてください。
R2のお金やアイテムのドロップ率は,今までの設定ではかなり厳しいものになっていました。これも日本側が特別にいじったということではなく,韓国側で実装されていたバランスどおりなのですが,POTのことも考えると,狩りをして戻ってきて赤字になっていたという状況もあったくらいです。
4Gamer:
MMORPGで割と切ない状況ですよね,それ。
松本氏:
それを埋める形でアイテムドロップ率100%増加アイテムを販売していて,それで先日の「8400円」という数値になっていたわけです。
しかし今回に関しては,ドロップ率そのものを300%増加させたので,赤字になるという状況はかなり少なくなったと思います。「これ以上効率よくアイテムを入手したいという方以外は有料アイテムを購入しなくてもプラスになる」という普通の設定にしたといえばよいでしょうか。
4Gamer:
とはいえビジネスですし,本当に誰も買わなかったら結局行き詰まりますよね。そのへんのバランスをどこに設定してますか?
松本氏:
4Gamer:
お金を払って強くならなかったら,そっちのほうが問題ですし問題はないと思います。
松本氏:
とはいえマテリアルも,ゲーム内の個人商店やほかのプレイヤーなどからシルバーで入手できるので,課金しなくても手に入れることはできます。その上で,さらなる強さを求める方には,まず一部の武器を直接販売しようと思います。
4Gamer:
おや,武器の販売ですか。
松本氏:
むろん一番強い武器ではなく,それよりちょっとランクが落ちる武器になります。あと,あくまでもテストですし,狩りをするモチベーションが落ちるのではという心配があるんですが,最初の1週間のみ,強化する呪文書も売ろうと思っています。
4Gamer:
えーと,つまり「それなりに強い武器」が,お金をかければイージーに作れるというわけですね。
松本氏:
ええ。一番強い武器は入手できないのですが,まずは容易にオーバーエンチャントを体験できるように,1週間だけしてみようと思いまして。
4Gamer:
1週間やってみてこれはだめだとおもったら?
松本氏:
やめます。
4Gamer:
その1週間でやった者勝ちですか。ちょっと不公平感がありませんか。
松本氏:
それは見てみないと分かりません。あくまでも「一部の強さ」に関してお金で入手できるようにしますという話ですし。
4Gamer:
8日目に来た人が「より大変な目に遭う」わけで,しかも言うならば,同じことをやろうとすると「運」に左右されるわけですよね。
松本氏:
そうですね。
4Gamer:
ちなみにその1週間でテストしようと思っている部分については,最大でどれくらい強い武器になるんですか?
松本氏:
ABCDEの5ランクだと,だいたいCくらいですかね。
4Gamer:
Cか……個人的にはCならいいかな。プレイヤーさんがどう思うかは分かりませんが。
松本氏:
超レア武器,ではないですが,村の商店では買えません。
4Gamer:
アンコモンくらいですね。でもなんでそんな大胆なプランを?
松本氏:
むろん理由がありまして,韓国と日本のR2の遊ばれ方の,最も大きな違いがPKとオーバーエンチャントですね。プレイヤーのみなさんは失敗の不安感が強くて,全然オーバーエンチャントしてくれません。サーバーログを見る限り,強化用の呪文書はあり余っている状況です。
4Gamer:
割と多くの人がそうだったんですか?
松本氏:
多くの人がそうでしたね。今回そこの風通しをよくしたいんです。
4Gamer:
でもそういうことでしたら,ますます期間限定じゃないほうがいいと思うんですが。
松本氏:
そこはちょっとゲーム内バランスとの兼ね合いもありますので。ゲーム内バランスや,狩りをするモチベーションの部分において,1週間やったうえで再検討しようと思います。
4Gamer:
狩りへのモチベーション……って言いますが,アイテムドロップが狩りへのモチベーションなんですか?
松本氏:
アイテムへのモチベーションって一番分かりやすくないですか?
4Gamer:
確かに一番分かりやすくて効果もあるとは思いますが,仮にもゲームなんだから,違うモチベーションを作ってほしいところですが。
松本氏:
工夫がないといえばそうかもしれません。
4Gamer:
しかし1週間は,微妙だと思いますねぇ。まぁでもそう決めたんですね。
松本氏:
8か月間悩んでそうしました。
4Gamer:
仮にものすごいクレームが来たらどうするんですか。
松本氏:
もう二度とやらないと思います。やらないというのは呪文書のほうで,武器の販売は続けようと思っていますが。呪文書そのものは,結構レアなアイテムなんです。今回オーバーエンチャントを楽しんで武器を強くする楽しさを知っていただきたいという形で提供するんですが,入手経路が常にあるというのはさすがにどうなのかな,と。
4Gamer:
その1週間先行者有利だと言い切っていいんですね。
松本氏:
こちらとしてはあくまでもテストだと考えています。ただ,お金をかけるのであれば,その1週間が有利というのは間違いないと思います。
4Gamer:
それならそれで1週間のうちにやったほうが得ですね。やる気十分ならば。
松本氏:
ガチャ(黄金宝箱)からも出るので,入手経路が絶たれるわけじゃないですが,効率的な入手にはならないですね。
4Gamer:
あぁでもその呪文書ドロップも300%ですよね。
松本氏:
はい。
蛯子氏:
今まで手に入れていた「1」が「3」になるわけです。でも3で足りない場合,4つめ5つ目を,1週間限定で試してみていただくという形です。
4Gamer:
でも呪文書ってサーバー内には溜まってるんですよね。
松本氏:
そうです。
4Gamer:
まぁ気持ちはちょっと分かります。「いつでもオーバーエンチャントできる」のが魅力であって,例えば2個3個が,常に倉庫にあったりするんですよね。
蛯子氏:
あと使う対象武器をどれにしようか,とか。
4Gamer:
どうせなら一番強い武器に使いたいですしね。……よく考えたら,「この期間に登録すれば経験値100%Up」とかのキャンペーンとあまり変わらないのかな。
松本氏:
それが未来永劫販売しないというなら問題だと思いますが,問題なければ常時販売していきたいと思っているわけですし。
それでホントのところ,なんでサービスをやめないんですか?――「ダメ運営」「課金高い運営」をキチンと払拭したい
4Gamer:
そろそろ時間ですね。
では最後の質問です。こんなにひどい状況で,なぜサービスを止めずに,さらなるコストと時間と手間をR2にかけるんでしょうか。好き嫌いでやってる趣味ならまだしも,これはビジネスですから,いま一つ合点がいきません。ましてや,山ほどタイトルを抱えているNHN Japanで。
松本氏:
しかしだからといって,ここであっさり諦めてしまっては悔いが残りますし,面白さをお届けできないこと自体がもったいないことだと思っています。グラフィックスのキレイさなどもそうですが,コンテンツが良いものであることを,今度こそみなさんにお伝えしたいと思っています。
幸いにして開発陣も考えを変えて,日本のお客様に受け入れられていないということを認識してくれたので,よりよいものを望んだ形で提供できるメドがつきました。
4Gamer:
当然,NHN Japanという会社もサポートしてくれているわけですよね。
松本氏:
はい。リソースの増加もそうですが,新しいシステムも開発できました。
4Gamer:
松本さんがR2を褒めるのはいいですが,それだけでは運営は続きません。NHN Japanという会社が「R2はまだいける」と判断したわけですよね。
松本氏:
そうです。R2は初動が非常に素晴らしく,それはつまり,多くのお客様からの期待を受けていたということです。もちろん作品自体も良いものなので,もう1度トライするチャンスを与えよう,と。
4Gamer:
何をもって,そのトライが「だめだった」「うまくいった」という結論が出るんですか。
松本氏:
お客様に「サービスが変わったね」という一言をいただくのが,最初の関門だと思っています。今までの「ダメ運営」「何も聞かない運営」「課金が高い運営」というイメージをキチンと払拭したいと強く思っています。次の関門は,もちろん数字です。売り上げ,という意味ではなく「たくさんの方に遊んでいただく」という部分ですね。
4Gamer:
では最後に,4Gamer読者にひと言お願いします。
松本氏:
感情論で話す場ではないかもしれませんが,今回のリニューアルの根底にあるのは,我々R2運営チームが「本当にR2が大好きである」ということです。しかし私達運営の不手際で,プレイヤーの皆様にR2を楽しんでもらうことが出来ませんでした。なので,こんなところで終わらせられない,という思いもありますし,リニューアルして絶対に認めていただきたいと思っています。ぜひとも我々のアクションに注目していてください。頑張ります。
以上が,インタビューのほぼ全貌だ。みなさんに書いてもらったアンケートは,「無駄だからやめれば?」などの,意見になっていないものは省き,すべて運営チームにお届けしたことも,ここでお伝えしておこう。
数字を明かしてしまってよいものか分からないが,R2のCBTを4Gamerで募集したとき,その応募人数は4Gamerの枠だけで2万人を超えた。全員が全員,やる気十分だったわけでもないだろうし,仮に全員が一人2通の複数応募をしたとしても,少なくとも1万の人が,当時R2を見て「ちょっとやってみるか」と思ったわけだ。
その1万人も,いまでは数百名。松本氏が語る「初動が非常に素晴らしかった」作品は,見る影もない。
通常ならここで諦めるだろうし,利益を追求する企業である以上は,それが正しい方向だとも思う。がしかし,なぜかNHN Japanは諦めなかった。諦めないどころか,人とお金を遣い,復活の道を模索し始めたのだ。一体何が起ころうとしているのか,その真意は何か,そして,実際には何が行われているのかを探るのが,今回のインタビューとなる。
キレイごとを言う運営や,キレイごとを言う開発会社は,あまたある。擁護するつもりはないが,彼らとて最初から「キレイごと」を言おうとしているわけではない。個人の意志で動かせる部分などそう多くないので,結果的にそうなってしまっているということも多い。
そんな中,ハンゲームのR2運営チームは,自社を動かし,開発会社を動かし,スタートこそ遅かったが,着実な歩みを見せ始めている。当初「なんでもお答えします」と明言していたとおり,普通の運営チームが口にしないような割と赤裸々な回答も混じっているこのインタビューは,R2プレイヤーでなくとも非常に興味深いものになっていると思う。
インタビューを読んで判断するのはプレイヤーのみなさんであるし,運営チームがどんなに頑張っても,結果的にはプレイヤーの判断が最も「正しい」ものであることは疑いようがない。その結果がどう転ぶにせよ,「本当のどん底から這い上がろうとした」行動がどのような動きを見せ,どのような影響を与えるのか,非常に興味深い。
明日12月16日が,R2にとっての運命のアップデートとなる。その結果と,今後のR2運営チームの頑張りから目が離せないことになりそうだ。
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