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「アニス&フリッキー」のデベロッパ Actoz Softに聞く,“X-RPG”アニフリとこれまでのMMORPGの違いとは?
アニフリは,仮想世界“キューブワールド”を舞台に,アニスとフリッキーという二人のキャラクターの活躍を描くSF MMORPGだ。
とはいっても,これまでのMMORPGとは路線が大きく異なることが強調されており,「X-RPG」という新たなジャンル名まで打ち出されているほど。Xはエクストリーム(eXtreme)から取られた文字で,アクションゲームさながらの感覚でプレイできるRPGであることを意味しているという。
今までに公開されたイメージアートやスクリーンショットは,確かにファンタジーRPGを見慣れた目には新鮮に映るだろうし,アニフリからユニークさを感じ取っている読者も多いだろう。だが実際のところ,これまでのMMORPGとどんな部分が違うのか,具体的にイメージできている人は少ないのではないだろうか。
今回,アニフリのプレスカンファレンスに出席するために来日した,開発元Actoz SoftでStudio Stoneのマネージャーを務めるイ・セミン氏,同じくActoz Softのキム・サンユン氏,韓国Netclueのカン・ボンソク氏,キム・ソンウク氏にインタビューする機会を得たので,アニフリのどんな点が,ほかのMMORPGと違うのかについて聞いてみた。
■“いかにのめり込めるゲームか”を追求したゲーム作り
本日はインタビューの機会を作ってもらい,ありがとうございます。アニフリについていろいろと聞かせてください。
先ほどの発表会でアニフリが動作する様子を見るまでは,比較的カジュアルな内容で,のんびり遊べるゲームなのかと思っていました。ところが意外にも,移動するブロックに飛び乗ったり,タイミングを見計らってトラップを通過したりするなど,なかなか難度の高そうなアクションが満載だったので驚きました。
イ・セミン氏:
そうですね。アクションの要素がふんだんに盛り込まれている点はアニフリ最大の特徴ですし,X-RPGのX-RPGたるゆえんです。
4Gamer:
自分でも操作してみましたが,まだ慣れていないこともあって,なかなか思い通りにコントロールできませんでした。
Actoz Softとしては,どのような層のプレイヤーを本作のターゲットとしていますか? ややハードコアなゲーマーがターゲットなのかと感じました。
イ・セミン氏:
いえいえ,とくにそのような層に限定するつもりはありません。カジュアルなゲーマーからハードコアなゲーマーまで,幅広い層の人々にプレイしてもらいたいと思っています。あえて言えば,“新しい物好き”のゲームファンに受け入れられたらいいと思います。
そんなに難しく感じましたか。それはおそらく,いきなりレベルの高いキャラクターでゲームを始めたからでしょう。初心者向けのチュートリアルを用意していますので,それを一通りプレイすれば,すぐに慣れてスムースに操作できるようになると思いますよ。
4Gamer:
ゲームに不慣れな層を取り込むうえで,チュートリアルの存在は重要ですね。
その観点でいうと,ゲームパッドに対応しているかどうかが気になるところです。日本では,コンシューマ機でゲームをプレイするのは一般的ですし,これだけアクション性が高いと,マウスとキーボードでプレイするよりも,ゲームパッドを使いたいと考える人は多いのではないでしょうか。
イ・セミン氏:
ゲームパッドは,今のところサポートしていません。自分の好みに合わせてキーの割り当てを変更できますので,操作しやすい設定にするとよいでしょう。ゲームパッドへの対応については,前向きに考えていきたいと思います。
4Gamer:
その言葉を聞いて安心しました。カジュアルな層のプレイヤーにとって,ゲームをプレイしたときの第一印象は重要だと思います。ちょっとプレイしてみて,思いのほか難しそうだったり,想像とかけ離れていたりすると,次の一歩を踏み出しづらいのではないでしょうか。それに,慣れていない人にとって,キーの割り当てを変更するといった操作は容易ではないですしね。
それでは,操作性も含め,韓国でのアニフリの評判はどうですか?
カン・ボンソク氏:
おおむね良好です。操作については,確かにやや難しいとの意見もありますし,実は私達自身,難しめであることを認識しています。そこで,よりカジュアルなゲーマーにもアニフリを楽しんでもらえるよう,コンシューマ機のゲームに見られるようなヘルプシステムを取り入れることを検討中です。これは,プレイヤーが次に何をすればよいかを,一つ一つガイドする機能です。
4Gamer:
ゲーム自体の難度は比較的高めに設定しつつ,カジュアルなプレイヤーをいかにスムースにゲームの世界に引き込むか,ということを重視しているわけですね。
イ・セミン氏:
もちろんプレイヤーの中には,アクションの得意な人もいれば,苦手な人もいます。「死の道」というクエストは非常に難度が高く,上級者に対する私達からの挑戦状といってもいいでしょう。その一方で,ビギナーにも気軽に取り組めるクエストを用意しています。
4Gamer:
プレイヤーのレベルに応じて,難度の異なるクエストが用意されているわけですね。
イ・セミン氏:
そのとおりです。ただ私達としては,プレイヤーにはより難度の高いクエストに“チャレンジ”してもらいたいと思います。
私達が最も重要だと考えているのは,“楽しみをどこで得るか”という点です。少しくらい難しい部分がないと,ゲームとしての持続的な楽しみは得られないと考えつつ,開発を行っています。
4Gamer:
あえて難度を高めにしている根底には,そのような考え方があるわけですね。
イ・セミン氏:
これは一つのたとえ話ですが,タバコを吸いながらMMORPGをプレイする人がいますよね。つまり右手でマウスを操作しつつ,左手でタバコを持った状態です。そのことを否定するわけではありませんが,私としては,それはゲームの本質ではない気がします。いかにゲームに夢中になれるか,のめり込めるかということが大切なポイントだと考えます。
4Gamer:
なるほど。アニフリを開発するにあたっての,Actoz Softの基本的な姿勢が理解できた気がします。
■日本からの要望に応じてキャラクターのデザインを修正
4Gamer:
それでは,アニフリとこれまでのMMORPGとの違いはどのような部分かを,具体的に教えてください。
イ・セミン氏:
第一に,キャラクター設定のコンセプトが斬新だということです。アニフリのプレイヤーキャラクターであるアニスとフリッキーは,英雄のような存在でも,セクシーさを備えたキャラクターでもありません。ゲームファン達は,MMORPGだからといって,そのような“特別な存在”ばかりを求めているわけではないと考えています。プレイヤーにとっての選択肢を増やしたいという思いから,アニスとフリッキーのキャラクターデザインを行いました。
本作の開発にあたり,最も慎重さが要求された部分であり,苦労した点でもあります。
キム・サンユン氏:
日本のゲーマーは,古くからコンシューマ機用のゲームを数多く遊んできましたよね。ですから,英雄のような特別なキャラクターには食傷気味なのではないでしょうか。そういう意味でも,アニスやフリッキーは,新鮮に感じられると思います。
4Gamer:
アニスとフリッキーのグラフィックスは,現在ポスターなどに描かれている,あの絵柄になるのでしょうか。それとも,日本市場に合わせてデザインを変更するのですか?
カン・ボンソク氏:
このポスターのイラストは,韓国でも公開されていない日本独自のイラストです。もともとは韓国のイラストレータが描いたものですが,日本側からの要望に応じて,日本のゲーマーの好みに合うように修正が行われています。
アニフリではキャラクターを作成するとき,髪型やコスチュームなどを自分の好みに合わせて選択できるのですが,それらについても,今後日本人の嗜好に合わせて作成し直すことにしています。
4Gamer:
キャラクター以外で,アニフリのユニークな点はどんなところですか。
キム・サンユン氏:
キューブスペースの中を移動することそのものが,一つの楽しみになっている点です。従来のMMORPGでは,広いフィールドをクリックしながら移動する作業は,ややもすると単調になりがちだと思います。アニフリでは,別の場所への移動そのものがアクションゲーム感覚で楽しめるわけです。
4Gamer:
動くブロックなどに飛び移って先に進めると,かなりの達成感がありますね。ただ戦闘シーンについては,既存のMMORPGに似ている印象を持ちました。よりアクションゲーム的な感覚で戦えるのかと思っていたのですが。
イ・セミン氏:
それは意図してそうしているんですよ。ゲーム全体をまったく新しいものにしてしまうと,とっつきづらいゲームになるのではないかと考えたのです。アクション要素も楽しめ,また戦闘シーンでは,既存のMMORPGと同様の馴染みのある操作で戦えるようにデザインしました。
4Gamer:
なるほど。MMORPGらしい部分もあえて残しているわけですね。そのほかにアニフリならではの要素はありますか?
■“戦闘ではないPvP”として,プレイヤー同士が競い合える要素を盛り込む
イ・セミン氏:
戦闘というお約束の要素以外にも,プレイヤー間の競争が用意されていることが挙げられます。アニフリにはレースイベントといって,いかに早くクリアできるかをプレイヤー同士で競い合えるシステムが用意されており,これは,一種のPvPと考えてもらえばよいでしょう。
4Gamer:
なるほど,レースイベントや○×クイズイベントですね。今後,プレイヤー達が参加して楽しむためのイベントを追加する予定はありますか?
“インスタントキューブ”といって,数名のプレイヤーがパーティを組んで挑戦する,ちょっとしたダンジョンのようなものを検討しています。
4Gamer:
ふむふむ。ほかのメンバーと共に,敵が待ち構えるダンジョンのクリアを目指すといった内容でしょうか。
キム・ソンウク氏:
そうではありません。これは,一般的なMMORPGでいうところのダンジョンとは異なり,例えばパーティメンバーが協力し合ってクイズなどに挑戦し,それを解くことで先のエリアに進めるようなコンテンツなんですよ。
4Gamer:
ダンジョンと聞いて,つい戦闘を思い浮かべてしまいましたが,クイズなんですね。
イ・セミン氏:
ほかには,マップがランダムに生成されるダンジョンも検討しています。キューブの配置や,飛び移る順序などを覚えてしまうと,楽しみが減ってしまいますよね。プレイするたびにキューブがランダムに配置されれば,いつでも新鮮な気持ちで取り組めます。
例えば,すべてのキューブが数秒間だけ表示され,その後透明になってしまうダンジョンというのも考えています。
目標となるキューブだけが点灯し,それ以外のキューブがどこにあるかは見た目に分かりませんので,プレイヤーは記憶を頼りに,目標地点を目指します。キューブが見えないだけに,かなりの緊張感が伴うはずですよ。
4Gamer:
実現されたらなかなか面白そうなアイデアが出ているのですね。それでは,今後実装予定となっている機能や要素についても,ぜひ教えてください。
カン・ボンソク氏:
先ほども触れましたが,キャラクターの髪型やコスチューム,装備品などを,日本人の好みに合わせてデザインする予定です。またオンラインゲームでは,プレイヤーのコミュニティがいかに活発なものであるかがとても重要ですよね。その観点からアニフリでは,かなり充実したチャットシステムを提供する計画です。具体的なことは話せませんが,ネットクルーと相談し,日本のゲーマーの好みにマッチしたシステムに仕上げたいと思います。
4Gamer:
今話に出た,コミュニティに関連する機能で,何か聞かせていただけることはありますか?
キム・ソンウク氏:
コミュニティの要素で最も大切なのは,“協力”と“競争”だと思います。“競争”という観点でいうと,プレイヤー達がクラブハウスを作れる,いわゆる「ハウジングシステム」の採用を検討していますよ。
そして競争の要素としては,パーティ間のPvP,クラブ(ギルド)間のPvPを用意しています。また,PvPが好きなプレイヤーを対象とする,PvP専用キューブを提供することを考えています。
4Gamer:
なるほど,このゲームで「ハウジング」の概念が出てくるとは思いませんでした。期待しています。それでは最後に,日本のゲーマーへのメッセージをお願いします。
イ・セミン氏:
アニフリには,数々の冒険がプレイヤーを待ち受けています。それらをクリアしたときの達成感を存分に味わえるゲームなので,ぜひプレイしてください。読者の皆さんに失望されないよう,努力していきます。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
“これまでのMMORPG”というものに対する批判の声は確かにあるし,新しい何かを求めるゲームファンは少なくないだろう。
今回のインタビューを通じて感じたのは,ゲームファンに新しい体験を提供したいという開発者達の意気込みだ。
彼らが提示する新しいスタイルのRPG,X-RPGが日本のゲームファンにどのように受け取られるかは,まだ分からない。しかし今後,システムや操作性などが煮詰められ,日本のゲーマーの好みにマッチした進化を遂げていけば,そんな“新しい何か”を求める人々の支持を集めるのではないだろうか。
MMORPGが市場に氾濫している今,いかに新しいスタイルのゲームを提供してくれるのか,アニフリの今後の進化に注目していきたい。(Text by 山 / Photo by 市原達也)
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