レビュー
ゲーマーに捧ぐ,3万円以下のデュアルコアCPU購入ガイド,2007秋版
Core 2 Duo
Pentium Dual-Core
Athlon 64 X2
Athlon X2
» 秋のCPU購入ガイド,2007年版をお届けしたい。“Core 2 Duoまつり”の様相を呈していた2006年版から約1年。デュアルコアCPUの価格はぐっと下がり,多くのゲーマーにとって現実的な選択肢となったが,では,どれを購入するのが正解だろうか。3万円以下のCPU全19モデルを,宮崎真一氏が一斉テストする。
一方,現行製品となるデュアルコアCPUは価格の下落が進んでおり,コストを絶対的に重視するゲーマーにとっては,かなり魅力的なタイミングとなっている。そこで今回は,2007年10月下旬時点での実勢価格が3万円以下のデュアルコアCPUを集め,ゲームにおける最適な選択肢を選ぶべく,一斉チェックを行ってみたいと思う。
テスト対象は全19製品
CPUに合わせてGPUにはGeForce 7900 GSを採用
また,機材調達の都合上,どうしても「Core 2 Duo E4500」「Athlon X2 BE-2400」「Pentium Dual-Core E2180」の3製品は用意できなかった。申し訳ないが,この点はあらかじめご容赦いただきたい。
さて,グラフィックスカードには今回,「GeForce 7900 GS」搭載製品を用意した。これは早い話,CPUの価格とバランスを取るためである。コストパフォーマンスを重視してゲーム用PCを組む場合,手頃なミドルハイクラスのGPUと組み合わせて意味のあるCPUは何なのか。これが,今回のテーマとなるわけだ。
また,グラフィックスドライバのバージョンは2007年10月23日時点の最新版ではないが,これはテスト開始時点の最新版が「ForceWare 162.18」だったため,その状態でテスト環境を統一した結果である。
実勢価格3万円以下では
Athlon 64 X2シリーズの奮闘が目立つ
というわけで,さっそくテスト結果を見ていこう。まずグラフ1は「3DMark06 Build 1.1.0」(以下,3DMark06)実行時のスコアをまとめたものだ。
3DMark06では,Core 2シリーズとAthlon 64 X2シリーズのそれぞれで,グラフは見事なまでに動作クロック順で並んでいる。Core 2 Duo E6750とAthlon 64 X2 6400+がほぼ同じ値。一方,下位モデルに目を移してみると,やはりPentium DC E2140とAthlon X2 BE-2350のスコアがやはりほぼ揃っているあたりは,実に興味深い。
続いて「3DMark05 Build 1.3.0」(以下,3DMark05)のテスト結果がグラフ2となる。3DMark05のスコアは一言で3DMark06と同じ傾向といえ,ここでも動作クロック順のスコアとなっている。Core 2 Duo E6750とAthlon 64 X2 6400+のスコアが近いのも同様だ。
以上を踏まえて,実際のゲームにおけるパフォーマンスに移ろう。グラフ3はFPS「S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobyl」の平均フレームレートをまとめたもの。1024×768ドットではCore 2 Duo E6550からの上のモデルで,Athlon 64 X2 5200+から上のモデルでそれぞれ数値の頭打ちが見られるが,これは,CPUの実力より先にGeForce 7900 GSの性能がボトルネックとなっているためと考えられる。このクラスのGPUだと,CPU性能ばかり高くしてもそれほどのメリットは生まれないというわけだ。
続いてもFPSから,今度は「Half-Life 2: Episode One」のテスト結果である(グラフ4)。1024×768ドットに着目すると,Core 2 Duo E4400とPentium Dual-Core E2160で,大きな差が生じている。これは,L2キャッシュ容量が前者は2MB,後者は1MBという違いが影響しているためで,AMD製CPUでも1コア当たりのL2キャッシュ容量が1MBか512KBかで,フレームレートには大きな違いが生じている。メモリコントローラをCPUに内蔵しないIntel製CPUは2MB,内蔵するAMD製では1コア当たり1MBが,Half-Life 2: Episode Oneのパフォーマンスを左右するL2キャッシュ容量の分水嶺といえよう。
なお,Core 2 Duoに話を戻すと,L2キャッシュ容量4MBと2MBで,フレームレートの差はそれほど大きくない。
続いてはTPS「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」(以下,ロストプラネット)から,CPU性能がスコアに大きく影響する「Cave」のテスト結果をグラフ5にまとめた。
ロストプラネットの傾向はHalf-Life 2: Episode Oneとよく似ており,L2キャッシュ容量がフレームレートに大きく影響しているのが分かる。4Gamerでは,動作に支障のないスコアを30fps以上としているが,GeForce 7900 GSと組み合わせる限り,Intel製CPUならPentium Dual-Core E2160以上,AMD製CPUならAthlon 64 X2 5200+以上が必要だ。
続いては,RTS「Company of Heroes」のテスト結果だが,GPUへの依存が大きいため,GeForce 7900 GSを搭載した今回のテスト環境だと,CPUの違いはスコアにほとんど影響を及ぼしていない(グラフ6)。最上位と最下位でも3fps前後である。
レースシム「GTR 2 - FIA GT Racing Game」(以下,GTR2)のスコアをまとめたのがグラフ7だ。
ここで面白いのは,L2キャッシュ容量1MB×2のAthlon 64 X2がトップグループを形成し,続いてほぼプロセッサナンバー順にIntel製CPUグループが追う展開になっていること。GTR2は,比較的CPUパフォーマンスがスコアを左右しやすいが,GTR2では,1MB程度のL2キャッシュに収まるデータと,4MBでも収まらないデータが多く,それが結果として,メモリコントローラを内蔵し,メインメモリ周りのレイテンシが低いAthlon 64 X2有利に働いていると考えられる。
一方で,L2キャッシュ容量512KB×2という仕様のAthlon 64 X2やAthlon X2は,キャッシュ容量が絶対的に不足している印象だ。
L2キャッシュ容量と動作クロックが
消費電力を大きく左右する
テストに当たっては,OS起動直後から30分間放置した時点を「アイドル時」,MP3エンコードソフトをベースとしたCPUベンチマークテスト「午後べんち」を30分間実行し続け,最も消費電力の高かった時点を「高負荷時」とした。アイドル時については,「Enhanced Intel SpeedStep Technology」(EIST)および「Cool’n’Quiet」のCPU省電力機能有効/無効のそれぞれテストし,それぞれの時点における消費電力をスコアとして集計する。ただし,Athlon 64 X2 6000+からの倍率変更で実現しているAthlon 64 X2 5200+だけは,AMDのスペックと異なる(前者はTDP 89W,後者は同65W)ため,スコアをN/Aとした。
その結果をまとめたのがグラフ8だが,ここでひときわ目を引くのがAthlon 64 X2 6400+のスコアである。今回テストしたCPUの中で,唯一TDPが100Wを超えているモデルだけに,やはり消費電力も大きくなってしまっている。
また,Core 2ファミリーに目を向けると,L2キャッシュの容量が消費電力に影響しているのがはっきりと分かる。高負荷時で比較すると,2MBと4MBでは20W近い隔たりだ。
なお,ここで注意してほしいのは,マザーボードが異なるため,Intel製CPUとAMD製CPUの間で直接の比較は行えないこと。「nForce 590 SLI」チップセットの消費電力は大きいので,両社のCPUを比較するときには,AMD製品について,幾分か差し引く必要があるだろう。
最後に,グラフ8の時点におけるCPUコア温度を,モニタリングソフトである「CoreTemp」で測定したものがグラフ9である。いずれもバラックの状態で,室温20℃の環境にシステムが置かれた状態でのスコアとなるが,やはりAthlon 64 X2 6400+のスコアが頭一つ抜けてしまっている。一方,L2キャッシュ512KB×2となるAthlon 64 X2やAthlon X2が高負荷時に示すコア温度は優秀といっていいだろう。
2万円台ならCore 2 Duo E6750かAthlon 64 X2 6000+,
1万円台ならL2キャッシュ容量重視が正解
3万円以下で絶対的に性能を重視するのであれば,Athlon 64 X2 6400+ということになるだろう。しかし,同製品の消費電力はかなり高く,バランスのいい,万人向けのCPUとはいえそうにない。
そこで注目したいのが,2007年10月23日時点の最安値が2万4000〜5000円程度のCore 2 Duo E6750とAthlon 64 X2 6000+だ。後者については「TDP 89W版の」という補足説明が必要だが,いずれもテスト結果からも明らかなように,性能は申し分ない。コストパフォーマンス重視でCPUを選ぶなら,この2製品が絶対的にオススメといえる。
1万円台はなかなか悩ましいが,あえて選ぶのであれば,L2キャッシュ容量1MB×2のAthlon 64 X2 5200+になる。2万円未満で購入できるCPUの場合,L2キャッシュ容量がゲームパフォーマンスを大きく左右してくる点は,くれぐれもお忘れなく。このクラスを購入するときは,「迷ったら,よりL2キャッシュ容量の多いモデル」が正解だ。
あるいは,オーバークロック前提ならば,2007年9月24日の記事でそのポテンシャルの高さを見せつけた“倍率制限解除版Athlon 64 X2 5000+”の「Athlon 64 X2 5000+ Black Edition」も,相応に面白い存在といえるかもしれない。ちなみに同製品の実勢価格は1万7000円前後(2007年10月23日現在)で,Athlon 64 X2 5200+とほぼ同じ。
いずれにせよ注意したいのは,CPUだけ高速化しても,GPUパワーがそこそこだと,GPUがボトルネックになること。コストを重視しながらゲームパフォーマンスの向上を図るときに,CPUだけ“背伸び”してもあまり効果はない。使っている/これから購入予定となるGPUのスペックと相談しながら,バランスよく換装していくのが近道なのである。
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