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[TGS 2006#11]Cykan EntertainmentのKim会長インタビュー。Gravity,ソフトバンク,そして今後のCykan
とはいえ,やはり一番気になるのは,Gravityとの関係だろう。韓国ゲーム事情で何度かお伝えしてきているが,GravityとKim会長との関係は良好であるとは思えない。両者の間には,どんな問題が横たわっているのか。無理矢理もらった時間を強引に引き延ばして,率直に聞いてみた。
■夢を叶えるために,ゲーム業界に舞い戻った
4Gamer:
日本でも韓国でも,Kim会長に関するさまざまな噂が流れています。そういったことも含め,いろいろと話していただきたいのですが,OKですか?
Kim, Jung Ryool会長(以下,Kim会長):
ええ,もちろん大丈夫ですよ。何でも聞いてください。
4Gamer:
分かりました。では,よろしくお願いします。
Kim会長:
こちらこそ,よろしくお願いします。
4Gamer:
Kim会長は,Gravityを売却後,しばらくゲーム業界の表舞台から遠ざかっていました。いつかは戻ってくるんじゃないかな? とは思っていたのですが,わずか1年で戻ってきたことに驚いています。この1年で,オンラインゲーム業界は変化したと思いますか?
Kim会長:
ゲームの数が増え,競争が激しくなりましたね。ゲーム自体を知らせるためのプロモーション費用も,倍ぐらいになっています。また,以前の課金方式は定額制がメインでしたが,最近ではアイテム課金制が多く,収益構造が劇的に変わってきていると思います。
4Gamer:
確かに。日本でも,まさにそういう状況にあります。
それでは,そんなゲーム業界に復帰したいきさつを教えていただけますか?
Kim会長:
私は20代の頃から今まで,30年間をゲーム業界だけで歩んできたんです。昨年,600名のスタッフを抱えていたGravityを売却し,正直な話お金は儲かりました。ですが,夢は叶っていないんです。その夢を叶えるために,復帰した次第です。
4Gamer:
お金も存分にあって,ゆっくりする時間もあって……なんて,私から見ると,それこそが夢のような生活ではないかと思ってしまうのですが……。
Kim会長:
韓国では,政治家になるんじゃないか? とか,移民をするんじゃないか? とか,そんな噂もあったんですけどね(笑)。友人や親しい記者達も,「一年で戻ってくるとは思わなかった」って言うんですよ。私のことを,分かってないんですよね……。私は,一生ゲーム業界に身を置きたいんです。
4Gamer:
なるほど,でもゲーム業界に身を置き続けることが夢というわけではないですよね。
Kim会長:
もちろん,違いますよ。お金も時間も体力も消費しますが,私には夢があるので,そんなことは気になりません。
4Gamer:
というと……?
私には,ゲームというワンソースを,マーチャンダイジング,音楽,出版といったマルチユースに展開していきたいという夢があるんです。そしてこれを,グローバルに実現したい,このビジネスをゲームのように楽しみながらやっていきたいという信念があるんです。
4Gamer:
つまり,ワンソースマルチユース展開を,Gravityでは実現できなかったというわけですか? でも,「Ragnarok Online」(邦題 ラグナロクオンライン。以下,RO)は「RAGNAROK THE ANIMATION」という形でアニメ化もされていましたよね。
Kim会長:
ええ,でも全26話と短かったですよね。日本でも韓国でもあれだけ大ヒットしたのに,それだけです。もっと長く,大きく育てられたと思うんですよ。
4Gamer:
もっとうまく活用できたはずなのに,それができなかったというわけですか。
Kim会長:
ええ。ROに関しては,60以上の国と地域でサービスされています。でも,韓国以外の国に持って行った時点で,終わってしまったんですね。持って行って,ゲーム以外の展開も含め,さらに大きく育てるということができなかった。
4Gamer:
ゲームというコンテンツを中心に,そこから派生するさまざまなコンテンツを,韓国や日本だけでなくグローバルに展開したいということですね。Kim会長は,2005年2月にGravityを米NASDAQに上場させていますよね。これも,グローバルな展開というものを視野に入れてのことだったのですか?
Kim会長:
そうですね。米NASDAQに上場し,アメリカでマーケティングや広報活動を行うと,世界中に報じられるんです。すると自然とブランド力が高まるわけです。韓国は,市場規模が小さいですから,韓国だけで上場しても企業の価値は上がりません。
4Gamer:
では逆に,そのようにKim会長が小さいと思われている韓国市場で,Cykanはどのように活動していくのですか?
Kim会長:
韓国という国自体は確かに小さいですが,Cykanのゲームは世界中で遊べるようになります。世界中の人がCykanのゲームで遊べば,韓国よりも,それこそ中国よりも大きな市場が生まれるわけです。Cykanのゲームで世界中の人々がつながっている状態は,地球規模の国のようなものであると言ってもいいかもしれません。
4Gamer:
大きな構想ですね。それは,ゲームを通じてCykanの存在をグローバル化していくということですか?
Kim会長:
そのとおりです。
もう一つ言うならば,Cykanは韓国で生まれた会社ですが,これからは日本をベースにしてやっていきたいと考えています。日本の会社「(株)サイカン」も設立しました。日本から世界に向けて,グローバルなビジネスを展開していきたいですね。今回の東京ゲームショウ2006でも,ビジネスパートナーを探しています。
■Gravityとは和解済み。お互いに発展していけばいい
4Gamer:
さて,少し聞きにくいのですが,Gravityを含めたソフトバンクグループとのトラブルは,まだ続いているのですか?
Kim会長:
いえ,もう全部終わったことです。
4Gamer:
でも,先月の記者懇親会では,いろいろとおっしゃっていましたよね?
Kim会長:
確かに1年間,Gravityによって私は苦しい思い,寂しい思いをさせられました。でも,もう和解したんです。Gravityもいい会社ですから,これからは一緒にゲーム業界を盛り上げていきたいですね。
4Gamer:
なるほど。しかし先日の記者懇親会のとき「最悪の場合,隠していた“最後のカード”を公開することになる」とおっしゃっていましたよね。この最後のカードが何を指すのか,少し教えてもらえませんか?
Kim会長:
なんだか,新聞記者達がそういう表現にしてしまったみたいですね。Gravityは元々5人でスタートし,5年で600名を抱えるまでに成長した会社です。これは,私以外にはなしえなかったことであるという自負があります。
4Gamer:
並の人では不可能なことですよね。
Kim会長:
にも関わらず,現Gravity経営陣が私に対し,誹謗中傷を振りまいたり,刑事告発をしようとしたりしてきたのです。再三,それをやめてほしいと要請していたんですが,聞き入れてもらえませんでした。そこで「いつまでもそういう態度をとるのであれば,こちらだって強く出ますよ」と言ったに過ぎません。
4Gamer:
具体的な情報なり書類なりの何かを指していたわけではない,と。
Kim会長:
ええ。そもそも,こういう風に足を引っ張るようなことは,もうやめましょうという合意書を書いたことがあったんです。にも関わらず,それを反故にして,検察に話を持って行ったりした。それが一番腹立たしかったし,悲しかったんです。だから,昨日までは許してきたけれど,今度からはこちらも怒りますよ? という話をしたまでです。実際に,反撃するための材料はあるんですけどね。
4Gamer:
あるんですね。
Kim会長:
だって,私がGravityの会長だった頃は黒字だったのに,私がGravityを離れてすぐに赤字になったんですよ。資本家だって,怒ります。それを経営陣は,私のせいにして矛先をかわそうしてきたんです。私のせいではないということを,私は明らかにできますから。
4Gamer:
そういうことでしたか……。Kim会長は,Gravityという会社にまだ思い入れがあるんですね。
Kim会長:
やはりありますね。個人的なビジネスよりも,ずっと大切に思ってきましたから。だから私がGravityを離れてからも,Gravityを助ける方法やビジネスモデルを教えてあげたりしたかったんです。でも,Gravityが会ってくれないんです。孫 正義さん,孫 泰蔵さんも会ってくれないんです。孫さん達とは,個人的には今でもいい関係でいたいと思っているのですが。
Gravityに対する小額株主代表訴訟の黒幕が,Kim会長だなんて噂も流れているようです。もしかしたら,それが関係しているのでしょうか。
Kim会長:
その話は事実無根なんですけどね。だいたい,株主はたくさんいるんですよ? そんな彼らを操るのなんて不可能ですよ。ただただ,経営に失敗した幹部達が,私に責任を押しつけようとしているのかもしれませんね。「Kimは仕事ができない」って。もし本当に仕事ができない人間だとしたら,Gravityは今みたいな規模になっていませんよ。
4Gamer:
それはそうかもしれませんね。
Kim会長:
もしかしたら,孫さん達はGravityの幹部が言うことを,鵜呑みにしてしまっているのかもしれません。そうであるなら,孫さんの誤解を解きたいです。でも,会ってくれないんですよ……。
4Gamer:
携帯電話事業などで,忙しすぎるだけなのかもしれませんが。
Kim会長:
とにかく誤解を解きたいんです。そして可能なら,Gravityを救いたい。というのも,私がいた頃のGravityの社員のうち80%が退職しているんですよ。でも,Cykanで彼らを雇ってはいけないという契約を結んでいるんです。
だから,Gravityを去った彼らのことも救ってやれない。こんなに大量の社員が会社を去っていくこと自体,Gravityの状況を物語っていると思いませんか?
4Gamer:
人材の出入りが激しいのはゲーム業界の常とはいえ,そこまでいくとさすがに尋常ではないですね。
Kim会長:
でもね,全部済んだことなんです。だから,Gravityにはこれからまた,発展してほしいと思っていますよ。
4Gamer:
もちろん,Cykanも発展していきますよね?
Kim会長:
当然です。ROよりも素晴らしいゲームを2本,現在開発しています。あと半年ぐらいで発表できるでしょう。絶対日本の皆さんにも気に入っていただけるはずなんです。
4Gamer:
それは楽しみですね!
今日はありがとうございました。
Kim会長:
こちらこそ,どうもありがとう。……ああ,そうだ。サイカンには,まだ日本人のスタッフがいないんです。いい人がいたら紹介してください(笑)。
Kim会長は,Gravityとは和解済みだと語っていたが,その話題になるや語気も変わり,やはりまだ割り切れていない部分もあるように思えた。実際のところ何があったのかを詳しく語ってはくれなかったが,Gravityに対する愛情と憎しみ(こう表現してしまうと安っぽいのだが),そんな相反する感情にはとっとと折り合いを付け,過去よりも未来を見ようという姿勢は感じられた。しかし,ブラックマネーの噂をも含め,さまざまな強い影響力を持つKim会長と,日本のIT産業を牽引する孫兄弟の間が,至極穏便に平和な関係を保つとも,とうてい思えない。おそらくは,まだ何か“くすぶったもの”が残っているのかもしれない。
ところでKim会長が日本に設立したサイカンは,韓国のCykan Entertainmentの子会社というわけではなく,連結対象となるような資本関係もないそうだ。つまり,完全に別の会社なのだ。そこには当然,さまざまな思惑があるのだろうが,日本をベースに世界に打って出たいという話も,あながち日本人向けのリップサービスというわけではないのかもしれない。(Interview by Kazuhisa / Photo by kiki)
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