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紛争地帯で冷酷な戦いに身を投じる傭兵の姿を描く,「Far Cry 2」のレビューを掲載
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印刷2008/12/04 19:03

レビュー

人気FPS「Far Cry」の続編は,場所も中身もすっかり一新

Far Cry2

Text by 松本隆一

»  2008年の掉尾を飾る期待作として登場したUbisoft Entertainmentの「Far Cry2」。オープンエンドの広大なマップを舞台に,謎の武器商人“Jackal”を追って戦い続けるというFPSだが,前作と比べてはるかに複雑なゲームシステムと物語性を持った作品に仕上がっているようだ。そんな本作を,「アフリカ」と聞いて「ライオン」以外ほとんど想像できない松本に挑ませてみた。


 アフリカ――灼熱の大地。広大なサバンナ。鬱蒼としたジャングル。そして人間を峻拒する砂漠地帯。そんな,むきだしの大自然が迫る悠久の土地を舞台にしたFPSが,Ubisoft Entertainmentの「Far Cry2」だ。プレイヤーはアフリカの紛争地帯で暗躍する悪名高い武器商人,“Jackal”暗殺の仕事を請け負った一人の傭兵として,一癖も二癖もありそうな人物達が跋扈する危険な土地を駆け抜けるのである。

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 Far Cry2を制作したのは,Ubisoftの中心的な開発拠点であるモントリオールスタジオで,前作「Far Cry」(2004年)を開発したドイツのデベロッパ,Crytekは関わっていない。これは,CrytekがFar Cryのリリース後に,パブリッシャをUbisoftからElectronic Artsに変更したためで,タイトルの使用権だけが残ったUbisoftがインハウスでの開発を行ったのが本作だ。舞台となる場所は亜熱帯の島からアフリカにがらりと変わり,主人公やストーリーにも前作とのつながりはない。

 北米ではすでに発売されているFar Cry2だが,日本ではPC版が12月12日,イーフロンティアから「Far Cry2 日本語マニュアル付英語版」として発売される予定だ。また,ユービーアイソフトは11月27日にXbox 360版をリリースしており,12月25日にはPLAYSTATION 3版を発売する予定になっている。もちろん,いずれもちゃんと日本語にローカライズされているので,英語版のように,アフリカ訛りというかフランス訛りというか,アフリカーンスのちょっと変わった英語のヒアリングに悩む必要はないだろう。いや,それも味があっていいのですけど(←強がり)。

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 5月30日に掲載した記事でもお伝えしたとおり,マップやシナリオの自動生成技術,広大なフィールドデータを起動時に一気に読み込む「Open World」技術,時間の経過に応じて状況が刻々と変化する「24h Cycle」技術など,Far Cry2に使用されている「DUNIA Engine」は,本家Crytekの「CryENGINE 2」にも負けないテクノロジーが次々と投入された野心的なものであり,そうした方面から本作を楽しみにしていた人も多いかもしれない。

動乱渦巻くアフリカで,謎の武器商人を追え!


 アフリカ某国で対立するのは二つの勢力,すなわち,APR(Alliance for Popular Resistance)とUFLL(United Front for Liberation and Laboratory)である。いずれもなんとなくそれっぽい雰囲気の名称だが,モデルとなった国は存在しない。

画像集#003のサムネイル/紛争地帯で冷酷な戦いに身を投じる傭兵の姿を描く,「Far Cry 2」のレビューを掲載

 日本の80倍以上の面積(約3030万平方km)を持つアフリカ大陸は,我々がアフリカという言葉から連想する熱帯雨林やサバンナだけでなく,一木一草もない砂漠から,爽やかな高原地帯まで多種多様な表情を持ち,そういったさまざまな地勢や植生をなるべくゲームで再現したいという理由から,これといってどことは特定しない「アフリカの国」を作り上げたとのこと。
 マップは広大で,チュートリアルが終わった段階からそこを自由に移動できる。ただ,国は大きく二つのエリア,つまり北の「Leboa-Seko」と南の「Bowa-Seko」に分けられており,最初は北の地域を出られない。それぞれのエリアは50km四方という広さを誇り,そこには山あり谷あり砂漠あり。徒歩だけではとても移動しきれないので,勢い,車やボートに頼ることになる。飛行場はあるが,動力のついた航空機の類はない。
 出てくる車は数種類あるが,重宝するのは「Big Truck」と呼ばれる機銃を搭載した大型ジープだ。ちなみに,ソマリアで現地の民兵が改造した機銃搭載ジープのことを,アメリカ兵が「テクニカル」と呼んでいたので,本稿でもそう呼びたい。いや,べつに意味はないですけど,なんとなく。
 ゲーム前半,テクニカルに積まれているのは機関銃だが,やがて徹甲弾を撃ちまくったり,グレネードランチャーを搭載したものが出現する。徹甲弾は強力で便利だが,グレネードランチャーは至近距離で敵に当てると,爆発に巻き込まれて自分もやられちゃう場合も(しばしば)あるので注意が必要だ。

ターゲットである武器商人“Jackal”(左下の写真)をはじめ,ジャーナリスト,APR/UFLLの指導者達,そして傭兵仲間(Buddy)など,それぞれの思惑を秘めた多彩な人物が暗躍する
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 ともあれ,プレイヤーは用意された9人のキャラクターから一人を選び,「Pala」の町にあるAPRもしくは,UFLLの本部を訪ね,彼らがオファーするミッションを請け負う。Palaは中立の都市(都市といっても廃屋寸前の建物が並ぶばかりだが)で,対立する二大勢力が事務所を置く場所だ。ただ,そのへんをうろついている民兵が,町の外のように無差別に発砲してこないといっても,街中で意味なく銃を撃つととたちまち彼らに追われることになる。また,中立都市であるとはいえ,その安定はもろく,お互いに隙あらば攻撃しようと構えているため,常にピリピリとした緊張感をはらんでいる。

紛争地帯には,傭兵のお仕事が一杯


 このメインミッションのほか,知り合いになった傭兵仲間(Buddy)からもらう「Buddy Mission」や,あちこちに立っている電波塔にアクセスして引き受ける暗殺ミッション,そして銃砲店から請け負うミッションなど,争乱に明け暮れるこの国には,傭兵のためのさまざまな仕事が用意されている。
 ミッションがオファーされる場所はマップのアイコンに感嘆符(!)がついているので,単にそこに出向けばいいわけだが,実はこれがなかなか簡単ではない。
 なにしろここは広大な土地。車を使っても時間がかかるし,途中にはAPRだかUFLLだか知らないが,民兵がロードブロックしている地点がいくつもあり,彼らはこちらの姿を見つけると見境なく発砲してくる。なんとかそいつらを撃退して,やっと目的地にたどり着くと,今度はそれこそマップの反対側にある敵施設の破壊だの暗殺だのといった仕事が待っているのだ。で,再び道を引き返すと,先ほどのロードブロックの敵はリスポーンしており,またしても戦闘に巻き込まれる。

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 かくして,ミッションの大半はひたすら移動に費やされることになり,この点に関する不満がフォーラムなどでしばしば見受けられる。とくに,コンシューマ機版の場合,ゲームのセーブはセーフハウスやガンショップなど,あらかじめ決められたポイントで行わなければならず,仕事はうまくいったものの,帰り道にうっかりやられてしまったりしたら,再びセーブポイントからのやり直しになる。
 PC版ではセーブが随時可能であるため,そうした問題はないものの,こちらはゲームシステムに軽い破綻をきたしている。セーブポイントは安全なセーフハウス(隠れ家)を手に入れることで増やせる仕組みで,セーフハウスの前にたむろしている数人の民兵を倒すことでアンロックされる。こうして,セーフハウスを増やすことでミッションをより安全に進められるわけなのだが,クイックセーブが許されるPC版では,隠れ家を増やすことへのモチベーションがあまりない。
 また,ミッションの成功を助けるシステムとして「Buddyによる救助」が用意されているのだが,こちらも同様の理由であまり機能していない印象。Buddyによる救助とは,あらかじめセーフハウスで傭兵仲間と契約を結んでおくことで,ピンチに陥ったとき一回だけ助けに来てくれるというもの。何発も銃弾を撃ち込まれ,朦朧とした意識の中でBuddyの見慣れた顔が不意に出現するのは,ある意味感動的なのだが,べつに直前でセーブしたデータをロードしたっていいんじゃないかというわけだ。

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9人の傭兵キャラクターの中から一人を選んでゲームを開始する。選んだ人物によって,ストーリーに関係する人物が変わったり,ミッションの内容が微妙に変化するシステムだ
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移動には車のほか,ボートが使える。ハンググライダーは滑空するだけなので,長距離の移動はできず,もっぱら,地上からは行けないポイントに到達するための手段
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セーフハウスに陣取る数名の敵を排除すれば,そのセーフハウスはプレイヤーのものになる。ゲームが進むにつれて,セーフハウスの設備も整ってくるから便利
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二大勢力+地下組織が事務所を置くPalaの町。序盤はもっぱらここでミッションを請け負うことになる。普段は平和だが,ときどき激しい戦闘が発生することも
プレイヤーは探知機を持っており,それを使ってマップのあちこちに隠されたダイヤモンドの原石を集められる。これを使って武器/装備を購入するわけだが,ちまちま集めるより,ミッションの報酬のほうがはるかに高価なので,別に苦労する必要はなさそうだ。また,探知機には「Jackalに行ったインタビューのテープ」も反応する(写真右)。こちらはミッションの一つになっている
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 もっとも,ミッションをこなすにつれてプレイヤーの「Reputation」(世間の評価)が上がり,セーフハウスがアップデートされる。最初はベッドがあるだけの小屋だったが,やがてその前にテクニカルが登場し,弾丸ケースが置かれ,救急パックが設置されるという具合で,サプライセンターとしての価値は十分にあるので,見つけ次第アンロックしておいても損にはならない。

さまざまな武器を使ってミッションクリア
ただし,戦闘はいささかやっかい


 発売前,Far Cry2の特徴の一つとしてアナウンスされていたのが,「シナリオの自動生成」機能だ。これは,プレイヤーの選んだキャラクターによって,登場人物やミッションの内容が変化していくというもので,プレイするたびに出会うBuddyや,APR/UFLLのメンバーなどが違うキャラクターになり,それゆえミッションの内容も微妙に変化する。また,ゲームのほぼ最初から好きな場所に行って好きなミッションを受けられるため,プレイヤーがどんな行動を取っても首尾一貫したストーリーラインを維持するための機能もあるとされている。

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 とはいえ,これらは実際のところよく分からない。要するに,二度目をやらなければ違いがはっきりしないわけで,簡単に終わるゲームならともかく,「50時間以上かかる」という非公式な情報もあるだけに,事は簡単ではない。冒頭部分を何度かやり直してみたが,Buddyや両勢力の下級指揮官などに違いが見られたのは間違いないものの,ミッションの変化についてはなんともいえない。基本的に,Reputationが上がるにつれてミッションがアンロックされていくようであり,そうやってストーリーの整合性を取っているという点では,ほかのオープンエンドのタイトルと変わらない印象。
 また,ジャーナリストのReuben Oluwagembiや,APRの指導者であるOliver Tambossa将軍,UFLLのリーダーであるAddi Mbantuwe,そしてもちろんJackalといったキーパーソンが変わることはない。

 ミッションを受けると,毎回ではないが携帯電話でBuddyが連絡してくる。話の内容は,「もっといい手がある」というものだ。例えば,「APRがUFLL要人の誘拐を企んでいるから阻止せよ」というミッションの場合,Buddyが教えてくれた情報屋を脅してAPRに偽情報を流し,Mokubaの町におびき出して殲滅すればいいと提案するわけだ。
 これを了承することで,メインミッションとBuddyミッションの両方を受けたことになり,うまくいけば一気に二ミッションクリアとなるので,お得感がある。もっとも,情報屋がいる別荘でも戦闘になり,さらにMokubaの町でも戦闘になるので,ミッションそのものはしんどくなり,損した気もしてくる。
 おいしいのは,例えば「橋の下のはしけに武器商人がいるので殲滅せよ」というミッションに対し,Buddyが橋の爆発を提案してきた場合などだ。これは,爆発に必要な信管を手に入れるときに戦闘が発生するだけで,あとはオートマチックに進むのでいくらか楽になる。
 「おまえはAの仕事をやれ,オレはBの仕事をやってやる」とBuddyが言ってきたときは,ちょっと眉にツバをつけたほうがいいかもしれない。彼(もしくは彼女)は,仕事自体はうまくやってくれるものの,たいてい敵に囲まれて救援を要請してくるからだ。そのときは,とるものもとりあえず駆けつけないと,Buddyが命を落とすこともある。
 Buddyが死んでしまえば,ゲーム中,二度と会うことはなく,Buddyによる救助もミッションに関する提案/情報も期待できなくなる。もっとも,ややネタバレ注意だが,「死んだと思ったら実は……」ということもあったりする。

接近戦では火炎放射器はかなり有効な武器。ゲームにゴア表現はないので,敵を燃やしたからといってスゴイことになるわけではない。ただし,周囲に引火して自分もダメージを受けることがある
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 Far Cry2の戦闘は基本的に常に一人で行うことになる。使用する銃器は,報酬でもらったり拾ったりしたダイヤモンドの原石によって購入するのだが,最初からなんでも買えるわけではなく,ガンショップの親父がくれるミッションをクリアすることで新しい武器がアンロックされていく仕組みだ。また,同じ銃器を長く使用していると耐久度が下がり,給弾不良を起こしたり,暴発したりする。耐久度は見かけで判断するしかなく,なんだか汚れているなあ,とか赤錆が浮いているなあ,という状態になると危険信号。激しい撃ち合いの真っ最中に目詰まりなんか起こされては,勝てるものも勝てない。
 ガンショップで一度銃を買えば,ショップ併設の倉庫で何度でも新品と交換可能なので,ときどき取り替えれておくのがクレバー。また,特殊なクレート(ケース)を買って,そこに銃をしまっておけば,どういう仕掛けか,どのセーフハウスにあるクレートにもしまった銃が出現する。ただし,収納できるのは一丁だけ。

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ピンチのとき,(あらかじめ契約していれば)Buddyが助けに来てくれる。クイックセーブのできるPC版ではあまり有り難みはないかもしれないが,セーブポイントの限られたコンシューマ機版では何度となくお世話になりそうだ。
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難度Normalの場合,敵はそれほど強くないが,あまり被弾すると出血多量で朦朧としてくる。この場合,安全地帯に隠れて撃ち込まれた弾丸を自分で抜き出さなくてはならない。痛い話が苦手な人にはちょっと辛いかもしれない演出だ
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救助に来たはずのBuddyがやられてしまうこともある。うーん,いいヤツだったのに。だが,重傷を負って倒れている状態ならまだ助けられる可能性があるので,戦闘中はBuddyの状況にも気をつける必要があるだろう
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武器には耐久度があり,ご覧のように赤錆の浮いた銃は,ところどころにあるガンショップで交換する。銃を新品への交換したり,武器/アイテムを購入したりするほか,セーブポイントや救急パックなどもある便利な施設だ
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悪人とはいえ,手を上げている相手を冷酷に撃ち倒さなければならないミッションもある。主人公は必ずしも正義の味方などではないのだ
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息のある限り,敵は反撃してくる。この国の厳しい戦いに「捕虜」という文字はなく,それは敵も味方もよく分かっている

 プレイヤーはマチェット(もしくはマシェット。つまり大型ナイフ。山刀)のほか,サイドアーム,メインウェポン,そしてスペシャルウェポンをそれぞれ1種類ずつ携行できる。弾丸は同種類の武器で共通で,ピストルならすべてのピストル,アサルトライフルならすべてのアサルトライフルで使用可能だ(例外あり)。弾薬はガンショップのほか,補給箱を置いたロードブロックや,敵の落とした武器から回収できるが,さすが紛争の地だけあり,弾丸不足に悩むことはあまりない。ただし,携行できる弾薬数は少なめという雰囲気。
 スペシャルウェポンの中では,火炎放射器がユニークだ。DUNIA Engineに実装されたFire Propagation技術により,Far Cry2ではさまざまなものに火を放てる。火炎放射器は敵に接近して炎を浴びせるだけでなく,草原を焼いて敵を一掃することもできるが,風向きによって自分がえらい目に遭っちゃうこともあるので要注意だ。いずれにせよ,炎のリアリティは見事で,とくに夜はとても美しい。もっとも,こんなに火がつきやすくていいのだろうかと思うこともあり,例えばバズーカ砲のバックブラストでも木立が燃え上がり,なんだかよく分からないけどダメージを受けているなあと思ったら火に囲まれていたという経験もある。

 難度Normalの場合,敵AIはそれほど手強くはない。もっともそれは,敵の場所が分かっていればの話で,ディテール豊かに描かれたリアルな掘っ建て小屋や生い茂る草や木,さらに無数のオブジェクトに容易に溶け込む彼らはなかなか見つからない。
 とくにやっかいなのは遠くから撃ってくる狙撃手で,どこからともなく飛んでくる銃弾には手こずらされる。狙撃ポイントはあらかじめ決まっているので,それを知っていれば話が早いのだが,急いでいるときなどは相手にするのも面倒になる。とはいえ,当たり所が悪いと重傷を負うので,実に困る。
 敵兵士はかなりの距離を移動し,背後に回り込んでこようとしたりもするが,狙撃手や迫撃砲手を除く一般兵士がこちらを認識する能力はあまり高くない印象。とくに,ガンショップでカモフラージュスーツを買っていると,スニークでかわすことも可能になる。撃たれるまで棒立ちになっていたり,同じパターンで攻めてくることも多いので,すばやく発見して接近戦に持ち込めば,間違いなく勝てる。練度の低い民兵ごときに,経験豊富なプロの兵士が負けるわけはないのである。

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悠久の大地を思わせるテンポで進む個性的なFPS


 どこかで,「Far Cry2は,ゆっくり燃える(Slow Burn)ゲーム」という意見を読んだのだが,私も同感だ。最初はフラストレーションが溜まる。土地は広大で移動には時間がかかり,あちらこちらにあるロードブロックや,突然襲ってくるテクニカルにもイライラさせられる。ただ単に人に会いに行くのでさえ数回の時間のかかる戦闘を覚悟しなくてはならず,ゲームのテンポは緩やかだ。セーフハウスの確保や,ダイヤモンドの回収など,「やらなくてもいいが,やっておいたほうがいい」こともたくさんあり,これらもまた面倒に思える。
 ミッションの内容はどれも似ており,基本的に何かを回収するか破壊すること。もちろん目的地には敵兵があふれており,どこでもシビアな戦いを強いられる。見えないところから撃ってくる狙撃手や迫撃砲手は,興奮するというよりひたすらわずらわしい。

画像集#051のサムネイル/紛争地帯で冷酷な戦いに身を投じる傭兵の姿を描く,「Far Cry 2」のレビューを掲載
民兵でごったがえす地上を避け,川を遡上するのもいい。だが,敵のボートに襲われることもしばしば。グラフィックスのレベルは高く,しかも天候が変わったり,時間が流れたりして景観は刻々と変わっていく。アフリカを満喫するにはそれなりのスペックのPCが必要だ

 だが,土地に慣れ,地理を覚え,アイテムを手に入れるにつれてゲームの面白さは増してくる。序盤,あれほど手こずった拠点には裏道があり,そこを使えば目的地にまっすぐ到達できたのだ。やっと手に入れた高性能ライフルや誘導ロケットは,その価格に見あう働きをしてくれるだろう。街道に頑張る敵兵は,サバンナを迂回すればいい。あるいは夜,水路を下るのも悪くない考えだ。

 アフリカを描くグラフィックスは見事で,没入感がきわめて高い。ジャングルの木漏れ日や,不意にあたりを白い霧に包むスコールなど,刻々と状況が変化する様子は見事であり,山の端に沈む壮大な日没は,思わず車を降りて見とれてしまったほど美しい。
 ただし,どうしても作り物感がつきまとってしまうのは,やはり民間人がまったくいないせいだろう。大量のNPCを配置してマップに生活感を生み出すというアイデアも開発初期にはあったようだが,さまざまな理由から廃棄されてしまったらしい。まあ,道行く人々に対して銃によるインタラクションが可能になると,Grand Theft Autoシリーズみたいになってしまうかもしれないけど。

 プレイヤーに要求される過酷な日々はまた,アフリカの現実をカリカチュアライズさせたものだといえるのかもしれない。ミッションによっては冷酷な殺しを要求される場合もあり,悪人とはいえ,少なくとも両手を挙げている相手を撃ち倒すのは初めての経験だ。しかも,すべて金のためである。傷を負って唸っている相手にとどめの弾丸を冷静に撃ち込むのも,ミッションを成功させて報酬を得るためであり,ゲームの雰囲気はいたってドライだ。
 しかも,ターゲットであるJackalは非常にアンビバレントな存在で,単なる無慈悲な武器商人としての表情の裏に,べつの情熱を隠している。物語を進めるにつれ「正義」や「悪」といった概念は絶対ではなく,状況に応じた相対的なものに過ぎないということが,次第にはっきりしてくるのであり,そうしたストーリー展開もまたプレイヤーをつかんで離さない。むろん,ゲームなのだから難しいことを考えずに楽しむのはごく当然のことだが,その向こうにほのかに別の現実が透けてくるゲームデザインがうまい。もっとも,エンディングに関しては賛否があると思う。

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 というわけで,Slow BurnであるFar Cry2は誰でもウェルカムというゲームではなく,その雰囲気はあくまでシリアスだ。PC版に関しては,バグやスクリプトの不整合といった問題も現時点ではある。
 だが,オープンエンドなマップでプレイの自由度が高く,ハイレベルのグラフィックスがアフリカの雰囲気を高める本作は,物語を進めるに従ってテンションが高まり,次第にやめられなくなっていくのだ。ゲーム全体が時間をかけて丁寧にデザインされており,ミッション/サブミッションも豊富だ。私はいろいろな実験をしていたせいで,50時間以上かけてシングルプレイをようやく終わらせたが,ついつい違うキャラクターでプレイを再開してしまった。土地勘があるぶん,初回より順調に進んでおり,最初には見逃したさまざまな発見を繰り返している状況だ。
 2008年のFPSシーンの掉尾を飾って登場したFar Cry2は,数々の試みに挑戦した一筋縄ではいかない一本だが,ヘビーなFPSファンにはぜひプレイしてもらいたいタイトルだろう。

本文では触れられなかったが,マルチプレイも当然のように用意されている。ゲームモードとしては「Deathmatch」「Team Deathmatch」「Capture the Diamond (旗の代わりにダイヤモンドを奪い合うキャプチャー・ザ・フラッグ),というおなじみのものに加え,拠点を巡る戦いが展開する「Uprising」の4種類がある。シングルプレイ同様,大型兵器は出てこず,歩兵同士の戦いがメイン
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PC版とXbox 360版にはマルチプレイ用のマップを作成できる「Far Cry2 Map Editor」が同梱されている。「CryENGINE 2」の「Sandbox2」を思わせる多機能エディタで,ゲームの開発にも使われたのだとか。使える人には簡単らしいが,筆者にはちょっと難しい。
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    Far Cry2 日本語マニュアル付英語版

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