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Access Accepted第355回:Gamescom 2012つれづれ。見えてきた欧州ゲーム業界のトレンド
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印刷2012/08/20 12:00

業界動向

Access Accepted第355回:Gamescom 2012つれづれ。見えてきた欧州ゲーム業界のトレンド

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 2012年8月15日から19日の5日間(併催されるゲーム開発者会議,GDC Europeや各メーカーのプレスカンファレンスが行われる13日から数えると,ちょうど1週間)という長丁場のゲームイベント「Gamescom 2012」がドイツのケルン市で開催された。メディアや業界関係者を含めて25万人を超える来場者数を誇る,世界的にも最大規模のイベントだが,そんな1週間のゲームの祭典を通じて,ヨーロッパ市場のどんなトレンドが見えてきたのだろうか。


プラットフォームホルダー2社が不在だった,
欧州最大のゲームイベント


 ドイツのゲームイベント,Gamescom 2012が8月19日に終了した。実は,この原稿を執筆している18日の時点では,まだ開催中なのだが,ビジネスを目的としてGamescomにやってくる関係者が集うビジネスエリアは金曜日でクローズされており,ゲームトーナメントやコスプレ大会などを除き,注目すべきことはそれほど残っていない。

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「Gamescom 2012」4Gamer内記事一覧


 主催者からの正式な数字は出ていないのだが,体感的に今年の来場者数は,昨年の約27万5000人よりも少ないように感じた。いつもなら,週末の会場はすし詰め状態ではあるが,今年は通行スペースの間取りも広く取られており,他人と肩をぶつけるということも少なくなった。これは,週末の当日券を販売せず,前売り券の購入者のみ入場できるという新たなシステムになったことが,その理由だと思われる。

 今年はMicrosoftと任天堂がGamescomへの参加を見合わせており,これはドイツや近隣諸国のゲーマーにとっては残念なニュースだったはずだ。両社ともプラットフォームホルダーとして,毎年それなりのプレゼンスを示していたし,規模は大きくないにせよ,Microsoftも毎年プレス向けの試遊会を開催して,ヨーロッパ向けの新作をいくつか発表してきたからだ。
 ゲームイベントの参加を取り止めるというマーケティング戦略や,台所事情について,とやかく言う立場にはないが,やはり新作の紹介をサードパーティだけに任せてしまうのは残念なことだ。毎年のGamescomを楽しみにしているファンが多いのは,「Assassin's Creed III」のプレイアブルデモに300分待ちの行列を作る熱狂的な人々の存在からも明らかだろう。

ライン川をはさんで,ケルン大聖堂の対岸に位置するケルンメッセで開催されたGamescom 2012。関連イベントが開催されたり,新作タイトルの大きなポスターが街中いたるところに貼られたりなど,まさに街をあげて盛り上がっていた
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 まだ開催中ということもあって,Gamescom 2012を通して現在のヨーロッパ市場のトレンドを考察することは難しいが,プラットフォームホルダー不在の穴を埋めるように存在感を発揮していたのが,Free-to-Play(以下,F2P)というビジネスモデルを押し出して攻勢をかけてきた,オンラインゲームやモバイルゲームのパブリッシャ達だ。
 ドイツは,もともとPCゲーム市場が根強く大きいお国柄ということもあってか,F2Pへの移行はアメリカ以上にスムーズであり,グリーが初めてGamescomに参加したほか,NEXONも大きなブースを構えるなど,F2Pの看板を掲げたメーカーがショーフロアで目立っていた。

Microsoftと任天堂が不在な中,ファンに親しまれていたのがSony Computer Entertainmentだ。「Puppeteer」と「Rain」「Until Dawn」という3つの新作発表に加え,「God of War: Ascension」 や「LittleBigPlanet PS Vita」などの展示でプレゼンスを示していた
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F2P型オンラインゲームの旗手として,すごい数のファンを集めていたのが,ゲームトーナメントやコスプレ大会などを独自開催していた「League of Legends」のRiot Gamesと,「World of Warplanes」をプレイアブル展示していたWargaming.netの2社
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F2Pへと向かう,欧州ゲーム市場の流れ


 F2Pタイトルを世界規模で牽引しているのが,Riot Games「League of Legends」と,Wargaming.net「World of Tanks」だ。Wargaming.netのCEO,Victor Kislyi氏によると,上記の2つのサービスが開始された2年前,欧米ではF2Pタイトルに対して「アジアで流行っている安物ゲーム」といった偏見があったという。それが今では,パッケージの大作ソフトと一緒にゲーム雑誌の表紙を飾ることもあるし,世界各地でトーナメントが開催されるまでになっている。Gamescom 2012でも,ブースに集まる来場者の数はピカイチだった。

会場で割と人気になっていたのが,血だらけのゾンビ娘やゾンビ男。彼らはUbisoft Entertainmentの「Zombie U」のプロモーションのために雇われたゾンビだが,会場のどこかにゾンビ風のフェイスペイントを行ってくれるサービスもあったようだ
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 また,今年のGamescomでF2P戦略を明確に打ち出してきたのが,フランスに本社を置く大手,Ubisoft Entertainmentだ。E3 2012では,次世代コンシューマ機への積極的な参入でプラットフォームホルダーを上回る注目を集めていたが,Gamescom 2012ではF2Pタイプのオンラインゲームの新作を多数発表して存在感を発揮した。「Anno Online」「Silent Hunter Online」,そして「Might & Magic Heroes Online」など,自社ブランドを次々にF2P化したほか,長らくβテストが続けられていたPC版「Tom Clancy's Ghost Recon Online」も,正式にサービスインさせたのだ。

 最先端のグラフィックス技術でゲーマーを魅了しているドイツのデベロッパCrytekも,「GFace」というF2Pタイトル専用のポータルサイトをスタートさせた。東欧/ロシアではすでにサービスを開始しているオンラインFPS「Warface」を中心に,こちらもGamescom 2012のショーフロアで大々的に宣伝を行っていた。地元ドイツのゲーム市場のトレンドを敏感に察知しているのか,2012年6月には同社のCEOであるCevat Yerli氏が海外メディアのインタビューに答えて,「Crysis 3より後のCrytekのゲームは,すべてF2Pになる」と答えているほどだ。

人で一杯のケルンメッセ。消防法などにひっかかりそうなのか,土曜日は前売りチケットの購入者のみが入場できたうえ,定期的にエスカレーターを止め,ホールの人員調整を行っていたようだ
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 F2Pタイプのオンラインゲームは,クライアントをダウンロードするだけで,誰でもすぐにゲームが遊べる。Ubisoftの場合,ハイレベルな3Dグラフィックスも実現した「Flash 11」をベースにすることで,ダウンロードさえ必要とせず,専用サイトにアクセスするだけで,どこからでも,どんなスペックのPCでもゲームをプレイできる。
 従来のパッケージソフトと違い,F2Pモデルは「誰でも遊べる」ことでプレイヤー数を増やし,その中からゲームにお金を使いたい人に使ってもらうわけだが,使う人の多くは,通常のパッケージソフト代や,月額課金を大きく上回る金額を定期的に使ってくれることになる。まさに,ブロードバンド時代のビジネスモデルであるわけだが,このトレンドに乗るのか,既存のパッケージビジネスにこだわるのかは各社の判断だ。
 Gamescom 2012を見る限り,ヨーロッパのゲーム市場におけるF2Pへの流れは確実に加速しており,そういう意味から,F2Pを進めつつ,パッケージの大作ソフトも合わせて展示していたUbisoftの戦略のうまさが印象的だった。来年のGamescomでヨーロッパ市場のF2P化がさらに一般化するのか,それとも一過性のもので終わっているのか,今から興味深いところだ。

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著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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