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Access Accepted第862回:音楽ゲームが再び過熱。海外インディーシーンに見られるジャンルの多様化
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印刷2026/05/25 07:00

業界動向

Access Accepted第862回:音楽ゲームが再び過熱。海外インディーシーンに見られるジャンルの多様化

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 2026年になって,「音楽」をテーマにしたインディーゲームが次々とリリースされている。流れてくるシンボルに合わせてタイミング良くボタンを押す,スコアアタックを目的とした従来のリズムアクションの枠組みから脱却した,新しい作風のタイトルが続出しているのだ。「リズム天国 ミラクルスターズ」という本命の登場を前に,今回は過熱し始めた海外産の音楽ゲームをまとめていこう。


新たな音楽ゲームのトレンドがインディーから発信


 「音楽ゲーム」の歴史を辿ると,ジャンルを確立した最初の商業的ヒット作として挙げられるのは,ちょうど30年前の1996年に初代PlayStation向けに発売された家庭用ゲーム「パラッパラッパー」だろう。ラップのビートに合わせてボタンを押すゲームだ。
 翌1997年には,KONAMIが「beatmania」を市場に投入。“BEMANI”シリーズとして,さらにダンスで新機軸を作った「Dance Dance Revolution」シリーズをはじめ,DJ,ギター,ドラムなど実機さながらの演奏体験を提供するアーケードの巨大トレンドを築き上げた。

 2000年代に入ると,日本国内ではナムコ(現バンダイナムコアミューズメント)の「太鼓の達人」が国民的ヒットとなり,北米ではActivisionとHarmonixの周辺機器一体型ゲーム「Guitar Hero」が社会現象を巻き起こした。
 2010年代になると,本物の楽器を使用する本格派「Rocksmith」をUbisoft Entertainmentがリリースするなど,ライブサービス型の時代へシフトする。
 2020年にサービスが開始されたセガの「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」といったモバイルゲームのヒットも,記憶に新しいところだ。

 そんなトレンドも落ち着きを見せたかと思いきや,2026年になって,海外のインディーシーンでは次々と音楽ゲームがリリースされている。
 Annapurna Interactiveは4月7日にIridium Studios開発の「People of Note」をリリースし,今月にはBeethoven & Dinosaurによる「Mixtape」の配信も開始した。さらに,Brain Jar Gamesは「Dead as Disco」のアーリーアクセス版をリリースし,どれもゲーマーから高い評価を受けている。

 「People of Note」の最も優れたイノベーションは,戦闘システムそのものを「インタラクティブな音楽パフォーマンス」へと再構築した点にある。
 プレイヤーが編成した個性豊かなミュージシャンたちの担当ジャンルが,そのままバトルの音楽性を変化させ,それらをブレンドすることで「マッシュアップ攻撃」を繰り出す。何より,キャラクターたちがときおり歌い始める“ミュージカル”をエッセンスにした目新しい作風で,システムとテーマをうまくシンクロさせた。

“ミュージカル”という機軸で音楽ゲームに新風を巻き起こした「People of Note」は,「ファイナルファンタジーIX」にインスパイアされたシステムを搭載したJRPG要素も光る
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 また,その1か月後に公開された「Mixtape」は,実在の名曲を収録したカセットテープを軸に,音楽を聴いた瞬間に呼び覚まされる思春期の記憶や感情の揺らぎそのものを,どこか映画的に体験させてくれる。

「Mixtape」を手掛けたオーストラリアのBeethoven & Dinosaurと言えば,2021年にも音楽性の強い「The Artful Escape」をリリースした
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 同時期に登場した「Dead as Disco」は,ジャンルとしては伝統的なベルトスクロールアクション(Beat 'Em Up)の系譜に属するが,パンチ,キック,回避,そしてド派手なテイクダウンに至るすべての挙動が,ステージ曲のビートと完全に同期。画面全体のビジュアル効果がBGMと一体化していくという,音楽性の強い圧倒的なトランス感を生み出すことに成功した作品と言えるだろう。

Brain Jar Gamesの「Dead as Disco」は,一日限りの死からの復活というチャンスを得た主人公が,音楽の方向性が異なる元バンドメンバーたちを追い詰めていく
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インディーから王道作品まで多様化する音楽ゲームのジャンル


 前述したタイトルが証明しているのは,音楽ゲームというジャンルが「難度を競うもの」から「音楽体験そのものを拡張するもの」へと進化しているということではないだろうか。
 かつてのリズムアクションは,より複雑で高速に流れていく譜面を,いかに正確にミスなく捌ききるかという「競技」としての側面が強かった。高難度化するほどカタルシスは増すものの,それは同時に,プレイスキルの壁を生み出す要因になっていたかもしれない。

 ところが,2026年のインディーシーンが提示しているのは,音楽を単なる「乗り越えるべきハードル」とするのではなく,音楽が本来持っているインタラクティブ性や情緒を最大化するためのアプローチだ。
 キャラクターの心理描写や過去の記憶とシンクロさせたり,戦闘の戦術リソースそのものへと組み込んだり,あるいは自分の好きな楽曲を取り込んで「己のプレイスタイルを表現する場」へと変貌させたりと,その手法は多岐にわたる。
 ボタンを押すという行為は同じでも,その目的はスコアアタックではなく,プレイヤー自身の感情やクリエイティビティの増幅へとシフトしているのだ。
 ゲームというメディアだからこそ可能な手法が追求された結果とも言えるが,我々の音楽の聴き方・楽しみ方そのものを拡張し,音楽ゲームというジャンルをよりディープなものにしているのが,これら新手の作品群なのである。

 もちろんこれまでも,Brace Yourself Gamesの「Rift of the NecroDancer」や,ボリウッド風に味付けしたOuterloop Gamesの「Thirsty Suitors」,メタルサウンドに合わせて相手に銃弾を撃ち込むFPS「Metal: Hellsinger」,そしてBeethoven & Dinosaurの前作「The Artful Escape」といった,音楽をテーマにするインディーゲームは数多く出ており,さまざまな形で我々を楽しませてくれた。

 今年はさらに,リズムアクションの本丸とも言える,任天堂のシリーズ最新作「リズム天国 ミラクルスターズ」が7月2日に発売される。
 今秋には「Guitar Hero」シリーズのオリジナルクリエイターたちが多く参加するRedOctane Gamesが,バンド体験の原点回帰を謳う「Stage Tour」をローンチする予定であるなど,音楽ゲームの多様化が一気に進んでいる様子だ。

年内にリリース予定のRedOctane Gamesによる「Stage Tour」。ギブソン/クレイマー社と提携して周辺機器も発売予定であるほか,ゲームパッドやキーボードでもプレイ可能だという
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 このトレンドを強固にするのが,年内から2027年にかけて発売を控えるインディーの期待作たちである。
 9月にリリースを予定している「Nocturne」は,ディストピア的なサイバーパンクの世界を舞台にしたストーリー主導のRPGである。特筆すべきは,戦闘のすべてが高難度なリズムゲームのグリッド(譜面)上で展開する点だ。敵の激しい攻撃そのものが独自のビートとなり,プレイヤーはリズムに乗りながらそれらを回避・反撃していくという,極めてシャープな融合を果たしている。

「Nocturne」では,デジタル化された死後の世界をリズムアクションで乗り越えていく
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 そして12月には,世界的人気を誇るラン&リズムアクションのナンバリング続編「Muse Dash 2」が,中国のPeroPeroGamesにより投入される予定だ。前作の圧倒的なスピード感とポップなビジュアルを正統進化させつつ,大幅な楽曲ボリュームの強化と新モードの実装により,成熟したモバイルおよびアーケード市場へ再び楔を打ち込むことになる。

 この勢いは2027年以降も途切れる様子はない。
 例えば「Rockbeasts」は,MTV全盛期のロック黄金時代を舞台に,一癖あるミュージシャンたちをマネジメントするバンド経営RPGだ。才能の衝突や商業主義との妥協といったスターダムの「光と影」を泥臭く描くシナリオ主導の本作は,音楽業界というテーマをディープに掘り下げる異色作となるだろう。
 また,ブラジルのサンパウロで開催されたgamescom latam 2026では,ビートボックスをゲーム化したSue The Realの「ONE BEAT MIN」を紹介してもらったが,新しい切り口のゲームだけに注目されることになるはずだ。

アフロ・ブラジルなどと呼ばれる独特の文化を背景に,ビートボックスで対決していく新しい切り口が気になる「ONE BEAT MIN」。酒の席で紹介されていなければ,しっかり取材して記事にしたいゲームだった
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 こうしたゲーム表現の「多様化」は,音楽ゲームを一部のコアゲーマーのものから,誰もが独自の感性で楽しめる広大なプラットフォームへと押し上げていくことになるのかもしれない。アップデートされた王道的な作品群と,インディー開発者たちの豊かな創造力のシナジーが,このジャンルにどのような未知のグルーヴをもたらすのか。今後,その可能性から目と耳が離せなくなりそうだ。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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