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印刷2014/08/04 12:00

業界動向

Access Accepted第431回:「シヴィライゼーション」シリーズを生み出すFiraxisのカルチャーとは

画像集#001のサムネイル/Access Accepted第431回:「シヴィライゼーション」シリーズを生み出すFiraxisのカルチャーとは

 会社には,創業者や経営者の個性,さらに歩んできた歴史やその土地柄などによって育まれる「カルチャー」が存在する。とくにクリエイティブな分野であるゲーム開発会社には,例えば独特な組織形態を持っていたり,オフィスが個性的な空間であったりなど,ある種のカルチャーが共有されていると感じられるところが多い。今週は,「シヴィライゼーション」シリーズの開発元であるFiraxis Gamesを訪れたときに筆者が感じた,彼らのカルチャーについて考えてみたい。


Firaxisに行ってきた! シド・マイヤー氏に会ってきた!


イベントでは何度も見かけるシド・マイヤー氏だが,こうして近くで見るのは筆者にとっては久々のこと。2013年に「Sid Meier's Ace Patrol」というモバイル向けゲームを開発しており,シヴィライゼーションシリーズではエグゼクティブディレクターを務めている
画像集#002のサムネイル/Access Accepted第431回:「シヴィライゼーション」シリーズを生み出すFiraxisのカルチャーとは
 2014年7月中旬,筆者は取材のため,ヨーロッパから来たメディアの一団にまじって,アメリカの首都ワシントンDCにいた。最近はこうしたスタジオツアーに参加するたびに,自分が年長組にあることをかなり意識するようになったが,今回は割と自然に振る舞えた。フランスとドイツのメディアは若かったが,イギリス,ポーランド,そしてロシアのジャーナリスト達は,だいたい筆者と同年代だったのだ。
 それもそのはず,ツアーの行き先は,プレイヤーの年齢層が高いとされるストラテジーゲーム分野では知らぬ人のいないであろう「シヴィライゼーション」シリーズを生み出したFiraxis Gamesだったのだ。
 この訪問の成果については,7月23日に「Sid Meier's Civilization: Beyond Earth」プレビューを,また7月24日にインタビュー記事を掲載しているので,ぜひ参照してほしい。

 Firaxis GamesはワシントンDCの北,メリーランド州のボルチモアから,さらに30kmほど北に向かったスパークスにある。スパークスは行政区分上の「町」ではなく,アメリカやカナダに見られる「非法人地域」で,独自の自治体を持っていない地域だ。ただし,調味料で有名なマコーミックや,シューズブランドのFILAが同地に本社を置いており,とんでもなく田舎というわけではない。

2K Gamesが用意したマイクロバスで,ほかのジャーナリスト達と移動したため,ワシントンDCからFiraxis Gamesまで,どういうルートでやってきたのかあまり覚えていない。森の中の古い家と新興住宅地が同居したような田舎町を通り過ぎて,オフィスに到着。こんな場所で,超未来的な新作が開発されているのだ
画像集#004のサムネイル/Access Accepted第431回:「シヴィライゼーション」シリーズを生み出すFiraxisのカルチャーとは

 メリーランド州のゲームメーカーとしては,州南部のBethesda Softworksが群を抜いて有名で,あとは「F.E.A.R. 3」の開発元で,現在はWargaming.netの傘下に入ったDay 1 Studiosがある。かつては「Rise of Nations」「Kingdom of Amalur: Reckoning」などを生み出したBig Huge Gamesや,「Dark Age of Camelot」のMythic Entertainmentがあったが,いずれも現在は存在していない。
 Game Developers Conferenceなどに行くと,必ずといっていいほどメリーランド州政府がブースを出してIT産業を誘致しているので,助成金などは用意されているようだが,ゲーム開発者にとっては,同業者とのネットワークが希薄な場所かもしれない。

 Firaxis Gamesを率いるシド・マイヤー(Sid Meier)氏は,そんなハントバレーに根を下ろして,すでに30年以上もゲームを作り続けている。マイヤー氏がFiraxis Gamesの前身となるMicroProseをこの地に設立したのは1982年のことで,それ以来,ずっとここで活動しているのだ。
 1954年にカナダ生まれたマイヤー氏は,アメリカに渡ってミシガン大学を卒業し,ハントバレーにあるゲームとは関係ない会社に就職した。そこでMicroProseの共同設立者となるビル・スティーリー(Bill Stealey)氏と出会い,当時,産声をあげたばかりのゲーム産業に身を投じることになった。

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シド・マイヤー氏の業績について,軽くおさらい


 MicroProse時代,「F-15 Strike Eagle」(1987年)に代表されるさまざまなミリタリーシミュレーションゲームを開発し,メディアなどに“シミュレーションゲームの父”と呼ばれることもあるマイヤー氏。同じ1987年に「Sid Meier's Pirates!」が大ヒットしたことで一気に知名度を上げ,1990年代になると「Sid Meier's Railroad Tycoon」(1990年)や「Sid Meier's Civilization」(1991年)など,のちにシリーズ化されるタイトルを生み出した。

筆者は,今もオリジナル版「Sid Meier's Civilization」(英語版)の箱を持っている。仕事柄,特定のゲームの「熱烈なファンなんです」とは言いいにくいが,このシリーズだけは別だ。筆者の「Sid Meier's Civilization V」のプレイ時間は,Steamによれば2000時間を超えている
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 だが,1993年にMicroProseを買収したイギリスのゲームメーカー,Spectrum Holobyteとはそりが合わず,従業員の多くが解雇されたことに対抗して1996年,マイヤー氏を経営面で支えてきたジェフ・ブリッグス(Jeff Briggs)氏と,ゲーム開発で右腕として活躍していたブライアン・レイノルズ(Brian Raynolds)氏と共にMicroProseを退社し,新たにFiraxis Gamesを設立した。

 独立したマイヤー氏は,「多くの人にアピールするテーマだとは思わなかったが,どうしても作りたかった」と語るアメリカ南北戦争を描いた作品「Sid Meier's Gettysburg!」(1997年)と「Sid Meier's Antietam!」(1998年)を続けて発表。さらに,レイノルズ氏の指揮によって,名作「Sid Meier's Alpha Centauri」(1999年)が生み出された。

 マイヤー氏らの抜けたMicroProseは2001年に倒産し,その資産はフランスのInfogramesに売却された。「Sid Meier's Civilization III」(2001年)は,そのInfogramesからリリースされたが,やがて同社も経営状態が悪化し,「シヴィライゼーション」シリーズを含むいくつかのIPを手放すことになった。
 2004年にそれらを2240万ドルで買い取ったのが2K Gamesで,これを好機と捉えた2K Gamesは,「Sid Meier's Civilization IV」(2005年)が発売される直前に,Firaxis Gamesそのものを2670万ドルで買収。2010年には2K Gamesをパブリッシャとして,「Sid Meier's Civilization V」がリリースされている。シリーズ累積の販売総計は,現在までに約2100万本に達しているという。
 この数字は(販売期間やシリーズ作品の本数はかなり異なるものの)「Gears of War」シリーズの販売総数とほぼ同じ規模になり,うるさ型の多いPC向けのストラテジーゲームであることを考えれば,その人気はきわめて高いといえる。熱狂的なファンや,新作が出たら必ず買うという固定客の多いゲームの1つになっているのだ。

 今年60歳になるマイヤー氏だが,彼のゲーム開発に関する考え方は昔からほどんど変わっていない。「ゲームとは,興味深い選択の連続だ」「最初の15分でプレイヤーの心をつかむことが重要」といったマイヤー氏の言葉は,メディアにもよく引用され,当然ながら,Firaxis Gamesでも全員に共有されている開発思想だ。それは彼らが作り上げた「Sid Meier's Railroads!」(2006年)や「XCOM: Enemy Unknown」(2013年)にもしっかりと受け継がれていると思う。こうしてみると,やはりFiraxis Gamesの中核となっているのはシド・マイヤー氏その人だろう。


「プログラムができるデザイナー」を求めるFiraxis Games


 今回のFiraxis Games訪問では,シド・マイヤー氏と会話できたのはミーティングルームでの会食時だけで,ヨーロッパメディアへの応対に忙しいようだった。マイヤー氏ほどの人物になれば,やはり聞きたいことは山ほどあるので,そこは残念だった。

 しかし,今回の訪問では一人の女性との懐かしい再開もあった。マーケティングディレクターを務めるその女性は,筆者がまだゲームジャーナリストとしてなんの実績も持っていなかった15年ほど前,マイヤー氏への取材を申し込んだときに担当してくれた人物だ。
 欧米ゲーム業界では,広報やマーケティング部門の人材は,数年で別のメーカーや業種に移っていくことが割と多い(もちろん,例外もあるが)。それだけに,15年も前にFiraxis Gamesで働いていた彼女が,現在も在籍しているのにはちょっと驚いたのだ。立ち話程度だったが,5〜6年前に一度辞めており,Firaxis Gamesが新しいオフィスに移ったあとで戻ってきたという。Firaxis Gamesの家庭的な雰囲気が垣間見えような話だ。

 考えてみれば,現在「Sid Meier's Civilization: Beyond Earth」のリードデザイナーを共同で務めるウィル・ミラー(Will Miller)氏デイヴィッド・マクドナー(David McDonough)氏のコンビも出戻り組。詳しくは上記のインタビュー記事を参照してほしいが,入社して5年も経たないうちに近所の別のゲーム会社に移籍し,そこでのプロジェクトが終了した途端に戻ってきている。そして,その2年後にはFiraxis Gamesの看板シリーズのリードデザイナーを任されてしまうという,文章で書くとなんとも虫が良すぎるような,またFiraxis Games的には人が良すぎるような話に聞こえるかもしれない。

 もっとも,それほどゲーム開発者の人材が豊富ではないメリーランド州北部においては,2人のように「プログラムができるゲームデザイナー」の数は少ない。マイヤー氏は常々「ゲームデザイナーが自分でプロトタイプを作成し,他のメンバーと共有できるべきだ」という信念を持っており,プログラマーだったミラー氏とマクダナー氏は「ゲームデザインのスキルを学んで帰ってきた」ということで,貴重な人材として迎え入れられたわけだ。
 Firaxis Gamesの家庭的な雰囲気は,ゲーム開発者の数が少ない土地柄が生んだカルチャーなのかもしれない。

 ここで思い出しておきたいのは,「シヴィライゼーション」シリーズの続編が,すべて若い才能に委ねられてきたという事実だろう。“シド・マイヤー”というブランド名はついているものの,第2作のリードデザインは「Rise of Nations」のブライアン・レイノルズ氏,第3作はジェフ・ブリッグス氏,第4作は後にElectronic Artsで「SPORE」の開発に携わるソーレン・ジョンソン(Soren Johnson)氏,そして第5作は,現在独立して「Jon Shafer's At the Gates」というストラテジーゲームを開発中のジョン・シェイファー(Jon Shafer)氏といった具体に,マイヤー氏は自分の名を冠したゲームを,まるで独り立ちするための登竜門であるかのように若手に任せ,自分はクリエイティブディレクターとしてバックアップしてきたのだ。そういえば,あの「Age of Empire」で知られるブルース・シェリー(Bruce Shelly)氏も,MicroProse時代のヒット作,「Sid Meier's Railroad Tycoon」の開発でチームを引っ張った実質的なリードデザイナーであった。

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 こうして考えると,シド・マイヤー氏の異名である“シミュレーションゲームの父”が,いかにふさわしいものであるのかに気づく。マイヤー氏が意識しているのかどうかは分からないが,彼のやっていることは,シミュレーションやストラテジーの成功を目指す若い開発者達に対して,父親のように胸を貸し,次々に巣立たせていくことに他ならない。
 この包容力こそが,30年を超えて今もなお現役であり続けるマイヤー氏と,ゲーマー達が愛してやまないFiraxis Games作品を生み出す原動力なのではないだろうか。短い取材ではあったが,そんなことを感じた筆者であった。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。

来週と再来週の週刊連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,筆者取材のためお休みします。次回の掲載は,8月25日を予定しています。
  • 関連タイトル:

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