業界動向
Access Accepted第507回:リオ五輪開催記念。ゲームとアスリート達
4年に1度のスポーツの祭典,リオデジャネイロオリンピックがついに始まった。強盗や汚染問題など,いささか怖いニュースもリオからは聞こえてくるが,選び抜かれた世界中のアスリート達が全力で競う姿は美しい。今回は,ちょっと無理があることは承知しつつも,そんなリオオリンピック開幕を記念して,アスリートとゲームにまつわる最近のニュースをいくつか紹介したい。
オリンピック級の選手だってゲームで遊びたい!
日本時間の2016年8月6日から22日までの17日間,4年に1度のスポーツの祭典,第31回オリンピック競技大会がブラジルのリオデジャネイロを中心とした各地域で開催されている。実際には,オープニングセレモニー数日前から,サッカーなどの一部競技はすでに始まっているのだが,それを見て,各社のプレスカンファレンスで本番前から大忙しのE3を思い起こしてしまうのは,筆者の職業病だろうか。
アスリート達がその持てる能力の限りを尽くすスポーツの「ゲーム」と,我々ゲーマーが趣味として楽しむ「ゲーム」は,同じゲームでもかなり異なる印象を受ける。しかし,当のアスリート達も休憩中や余暇にはゲームで遊ぶらしい。アメリカでは,試合中に「Pokémon GO」をプレイしてオニスズメをゲットしたプロバスケットボール選手もいるほどなのだ(関連記事)。
また,「Pokémon GO」については,金メダルが期待される男子鉄棒界のキング,内村航平さんがブラジルで練習の合間に「Pokémon GO」をプレイしようとダウンロードしたところ,通信会社から約50万円の通信料金を請求されたというニュースも話題になった(その後,救済措置で,払わなくてもよくなったという)。
もっとも,ブラジルで「Pokémon GO」は正式ローンチされておらず,内村さんが自分でVPNを書き換えて日本のサーバーにアクセスするほどのギークなのか,あるいは何も映らない画面と睨めっこしながらリオの街を散策していたのかまでは分からない。
さて,オリンピックとは直接関係ないものの,最近,アスリートとゲームにまつわるニュースがいくつか飛び込んでくる。というわけで,今週はオリンピック開催を記念して,そんな海外情報を3つほどピックアップしてお届けしよう。
ブラジル発
プロサッカー選手がプロゲーマーに転向
サッカーの強豪国ブラジルのプロチーム,ゴイアネシアを中心にプレイし,U-20ブラジル代表に選ばれた経験も持つのが,現在27歳のウェンデル・リラ(Wendell Lira)さんだ。年齢的にアスリートとしての全盛期を迎えているはずの彼が,なんと7月末に突然の引退宣言を行い,Electronic Artsの「FIFA」シリーズなどをカバーするプロゲーマーに転職した。今後は活躍の場をピッチからYouTubeに移し,今までとは異なる形でサッカーに関わっていくという。
リラさんは,2015年11月の試合で華麗なボレーシュートを決め,最も優れたゴールをした選手を対象にしたFIFAプスカシュ賞を,メッシやテべスを抑えて受賞したほどの実力派選手だった。しかし,ゴイアネシアはブラジルでは4部リーグに相当し,しかも負傷も重なって出場機会が減ったことから,結局,新しい道を選ぶことになったのだろう。もしそうなら,本人にとっては苦渋の決断だったと思うが,ぜひ「世界初のプスカシュ賞を受賞したプロゲーマー」として成功してほしい。
チリ発
ゲーム動画撮影中に起きた悲劇
次は悲しいニュースだ。フリースタイルのスキーヤーで,健康雑誌のモデルや映画のスキースタントなど,幅広く活躍していたスウェーデンのマチルダ・ラパポルト(Matilda Rapaport)さんが,アンデス山脈を滑走中に雪崩に巻き込まれて死亡した。ラパポルトさんが所属していたRed Bullによると,死因は酸欠による脳損傷とのこと。享年30歳だった。
2013年の「Freeride World Tour 2013 Xtreme Verbier」の総合チャンピオンでもあったラパポルトさんは,2014年にアラスカで雪崩に巻き込まれながらも生還するなど,これまで何度も危険に遭遇し,それを切り抜けてきた。報道によると,ラパポルトさんはUbisoft Entertainmentのエクストリームスポーツゲーム「Steep」のプロモ動画を撮影中とのこと。同社も追悼のコメントを発表している。
アメリカ発
ゲーム業界に挑んだメジャーリーガーの裁判の行方
しかし,7月29日にロードアイランド州は,「悪い投資だったからといって,それをすべて犯罪として処罰できるわけではない」として,告訴を取り下げる意向を明らかにした。シリングさんは,自身のTwitterで「それを5年前に発表していれば,無駄な税金を使う必要もなかっただろう」と怒りをあらわにしている。
野球殿堂入りの可能性もあり,またコーチや監督になってもおかしくはない人材だけに,訴訟を終えたシリングさんの新たな活躍に期待したい。もっとも,シリングさんは2014年に口腔がんを告白しており,ゲームに再挑戦する可能性は低いと見られる。
著者紹介:奥谷海人
4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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