インタビュー
“コンセプト通りの正常進化”。開発者が語る,基本プレイ料金が無料化された「プロ野球チームをつくろう!ONLINE 2」
今回は,プロデューサーのセガ スポーツデザイン研究開発部 部長 瀬川隆哉氏と,企画セクション ディレクターの三木洋之介氏に,これまでの運営状況や「2」についての話を聞いた。
より多くの人を楽しませるための「基本無料」への移行
4Gamer:
本日はよろしくお願いいたします。さっそくですが,今回のアップデートにより基本プレイ料金が無料化され,野球つくONLINEが「2」として生まれ変わりました。なぜ,ビジネスモデルの根本を変更したのでしょうか。
スポーツデザイン研究開発部 部長 瀬川隆哉氏 |
もっと多くの方々に,野球つくONLINEを楽しんでいただきたかったというのが一番の理由です。さらに多くの方々に楽しんでいただくためには? と考えた答えが,基本プレイ料金の無料化です。無料でプレイできるようになれば敷居が一気に下がり,これまで月額だからと敬遠していた方もプレイしやすくなりますからね。
4Gamer:
移行のタイミングはいかがでしょう。
瀬川隆哉氏(以下,瀬川氏):
正直にいうと,もうちょっと早いほうがよかったと思っています。本当はプロ野球の開幕に合わせたかったのですが,いろいろと調整に時間がかかってしまいました。
4Gamer:
ビジネスモデルの変更により,ゲームコンセプトなどに変化はありましたか。
企画セクション ディレクター三木洋之介氏 |
野球つくONLINE 2は,野球は好きだけどゲームはあまりプレイしない,という方にも楽しんでいただきたいゲームなんです。実際に選手カードを買って,オーダーを組んで試合してもらえれば,その楽しさはすぐに分かっていただけると思います。そのためにも,ゲームを始めるハードルはできるだけ低いほうがいいですから,「2」になって,野球つくONLINEのコンセプトをさらに推し進められたのではないかと思っています。
プレイヤーの選択の幅を広げる二つの会員区分
今回のアップデートで,無料会員とプラチナ会員という二つの区分ができたわけですが,最初は無料会員で始めてもらい,いずれはプラチナ会員になってもらう……,という流れを想定しているのでしょうか。
瀬川氏:
そんなことはありません。プラチナ会員ですと,たとえばポイントの入り方が多いといったことがあるので,勝ち負けについては無料会員より有利な面はあります。ですが,無料会員でオプションサービスをまったく使わずに優勝を目指すプレイスタイルもありだと思います。また,トレードをしたい,高レベルのスキルを合成したいなど,必要に応じてオプションサービスだけを利用するプレイスタイルもあると思います。
4Gamer:
無料会員でも,オプションサービスは利用できるんですね。てっきり,無料会員はあくまでもお試し会員的な位置づけで,本格的に遊びたい人はプラチナ会員にならなければならないと思っていました。
そういうわけではありません。そもそもプラチナ会員の特典は,ほとんど野球つくコイン(以下,YC)で個別に購入できます。一時は,一律「基本無料,オプションサービスは全部YCで購入」というスタイルにすることも考えたのですが,これまで遊んできてくれた方々のことを考えると,そうはしたくなかったのです。
これまで野球つくONLINEを支えてくれていたプレイヤーは,ずっと月額課金で遊んでいただいたわけですから,そういった方々には今後も以前と同じ,もしくはそれ以上のサービスを提供していきたいという思いがあります。
4Gamer:
いろいろやりたいならプラチナになったほうがお得,という値段設定になっているんですね。
瀬川氏:
無料で楽しんでほしい,というのは最大のコンセプトですが,やっぱりポイントがあると楽しみ方の幅が広がります。いろいろなことをやってみたいのであれば,プラチナ会員のほうがお得になるようには考えています。
4Gamer:
基本的には無料会員としてプレイしながら,「トレードだけしたい」といった要望にも応えられるのですね。プレイヤーの立場からすると,選択の幅が広がるのは嬉しいです。
各種オプションサービスへのプレイヤーの反応
YCによるオプションサービスが開始されたのは2007年のWinter Updateからですが,こちらについてプレイヤーからの反響はいかがでしたか。
瀬川氏:
おおむね好評です。もちろんオプションなので,使わなくてもよいのですが。
三木洋之介氏(以下,三木氏):
受け入れていただいている,という雰囲気はありますね。
4Gamer:
では,オプションサービスの中で想定していた以上に使われているもの,また想定したほどは使われていないものはありますか。
瀬川氏:
ユニフォームの変更は,それほど使われていないですね(笑)。
4Gamer:
確かに長く同じチームでやっていると,変えたいと思うこともありますが,後回しになりますね。
瀬川氏:
安定して使われているのは,試合後に獲得できるポイントが1.2倍,1.5倍になるものです。
なるほど。やはりチームの強化に直結するようなものに人気が集まるようですね。では,レジェンド選手はどうでしょう。お金を追加で払ってまでもチームに組み込んでいる人は多いですか。
瀬川氏:
導入前は,そこまで使っていただけないと思っていたんですよ。でも実際には,想像よりも多くの方に使っていただいているという印象があります。また,阪神ファンだったらバースを,巨人ファンだったらクロマティを,というふうに使われると思っていたのですが,そうではなくて,いろんな選手をオーダーに組み込んでいる方が多いです。
4Gamer:
懐かしい選手への思い入れもあるでしょうが,やっぱりチームを強くしたい,という気持ちのほうが先にあるようですね。
瀬川氏:
まあ,チームバランスもありますからレジェンド選手を組み込んだからといって劇的に強くなる,というわけではないんですけどね。オプションサービスを使わないでプレイしているチームが優勝することもありますので,遊び方次第だとは思います。
4Gamer:
現在,レジェンド選手は何人いるのでしょうか。
瀬川氏:
外国人選手が16人です。国内のレジェンド選手カードは今のところ真弓選手と中畑選手だけですが,今後もいろんな選手が登場しますので,期待してください。
4Gamer:
レジェンド選手の選定はどのようにされているのでしょうか。
三木氏:
以前,プレイヤーアンケートで要望を受け付けたのですが,それを基準にしています。
瀬川氏:
いろいろな制限があって完全ではないのですが,ある程度はプレイヤーの希望を叶えられていると思っています。
ともに定着する2タイプのプレイヤー
サービスが開始してから9か月ほど経ちましたが,会員数の推移に特徴はありますか。
瀬川氏:
面白いことに,プロ野球のシーズンと関係しているんですよ。シーズン中は増えていって,閉幕すると徐々に下がってくるという具合です。増えもせず減りもせずという状態で,今年のペナントレースが開幕するまでは伸びなくなりました。
4Gamer:
ストーブリーグが盛り上がるシーズンオフのほうが増えると思っていたのですが,そういうわけでもないのですね。
スポーツ新聞のニュースサイトを中心にバナー広告を出しているので,プロ野球のシーズン中のほうが露出が多かったというのも,理由として考えられます。あと面白かったのは,去年中日ドラゴンズが日本一になったら,愛知を本拠地に設定したプレイヤーがどっと増えましたね(笑)。
三木氏:
もちろんファン球団も中日で。
瀬川氏:
日本一になったその週に,一気に増えました(笑)。そういう形で,実際のプロ野球の盛り上がりと連動しているようです。
4Gamer:
野球つくONLINEは,実在する球団を運営するわけではないのに,そんな現象が起きるのですね。そうすると,実際に遊んでいる人達は,頻繁に入れ替わっているのでしょうか。
瀬川氏:
多少の変化はありますが,基本的にはずっと遊んでくれているプレイヤーが多いようです。
三木氏:
時間をあまりかけなくていい分,日常生活の一部になっているというプレイヤーが多いみたいです。ですから,多少の増減はありますが,一定数以上の方々に長い期間楽しんでいただいている,という感触はあります。
4Gamer:
実際に遊んでいると,毎回優勝に絡んでくるすごく強いチームを見かけるのですが,かなりやり込んでいるプレイヤーも結構いるようですね。
瀬川氏:
強いプレイヤーの方は本当に強いです。何度もオーダーを組み替えて,練習試合でシミュレートして……という具合に,一日10分や15分どころじゃなく,相当時間をかけているようです。
三木氏:
野球つくONLINEには,表面に出ていないパラメータもいくつもあるんのですが,そういうものを感覚的にかなり把握しているんじゃないか,と思えるほどやり込んでいる方もいますね。
瀬川氏:
1回のプレイ時間が長く,かなりやり込むプレイヤーと,カードを引いてオーダーを調整するだけという,1日10分〜15分くらい遊ぶプレイヤーの2種類に大きく分かれています。
二極化はしてますが,ほかのゲームとは違って,後者も多いのが野球つくONLINEの特徴でしょう。ライトプレイヤーのまま,ずっと楽しんでくれている方がたくさんいます。長い時間をかけなくても楽しめるというコンセプトが,機能しているのだと思います。
もっと長く楽しめる機能も? 今後のアップデートについて
先日実施されたSpring Updateで,選手データが2008年開幕版のものになりました。新人選手,新外国人選手もかなり増えていますが,そういった選手のデータはいつ頃から集めていたのでしょうか。
瀬川氏:
基本的にはオープン戦からですね。
三木氏:
プロ入り前から有名な選手,たとえば北海道日本ハムファイターズの中田選手,千葉ロッテマリーンズの唐川選手などは,どれだけ打つのか,どんな球を投げるのかなど,高校時代からデータを集めていました。
4Gamer:
アマチュア時代のデータも取っていたのですね。
瀬川氏:
プロ入りが有望視されている選手のデータは,先を見越して取得しています。
4Gamer:
なるほど。では,2007年はシーズン終了後に選手データが大きく変わりましたが,今後はそういうレベルのデータの更新はどれくらいの頻度で行われるのでしょうか。
シーズン中に何度も細かく変動すると,プレイヤーの方々を混乱させることになりますので,夏ぐらいに一度実施する予定です。更新が能力パラメータだけならまだしも,コストも変わるとオーダーに影響が出ますからね。
三木氏:
ペナントレースの前半が終了した夏に1回,シーズン終了時後の冬に1回とか,それくらいの区切りを目途に更新していくことになると思います。
4Gamer:
半分終了した時点で更新されるということは,前半戦に活躍した選手を集めておくというのもよさそうですね。
三木氏:
ええ,いまはコストが1や2の選手でも,実際の活躍次第で跳ね上がる可能性もありますから,そういった選手にいまから目をつけておくといいでしょう。
4Gamer:
では,システム面でのアップデートは,どんなものを考えているのでしょうか。
まだ正式に決まっていないですが,いろいろ予定はあります。まず,もっと記録部分を充実させようと考えています。現在でもチームのタイトル,個人タイトルが記録されるようにはなっていますが,まだ少ないと思っています。プレイヤーに長く遊んでいただくために,もっといろんなジャンルの記録を細かく残して,閲覧できるようにしたいです。
また,プレイヤー全員を巻き込むような大規模なゲーム内イベントを実施してみようと考えています。
三木氏:
「夏」と「野球」がヒントですね。
4Gamer:
なんだか期待できそうですね。楽しみにさせてもらいます。
瀬川氏:
あとは,ゲームの采配にもうちょっとプレイヤーが関与できるようにしようかなと。
4Gamer:
現在の試合カード以外に,ということですね。それはとくに楽しみですね(笑)。具体的にどんな要素でしょうか。
まだいろいろと試行錯誤をしている段階なので何ともいえないんですよ。ただ,ゲームのシステムを複雑にはしません。もともとのコンセプトとして,「1日10分で遊べる」というのがありますので,それは変えたくないと思っています。やらなくても支障はないけど楽しい,といったものを増やしていきます。
それ以外でも,プレイヤーの意見や要望はどんどん反映させていくので,公式サイトからお寄せください。
4Gamer:
今後のアップデートにも期待しています。本日はどうもありがとうございました。
月額制から基本無料へ,ビジネスモデルを根本から変更するという大きなアップデートが行われた。ちょっと穿った見方をしてしまいがちだが,インタビューでも語られているとおり,思うように会員が集まらなかったから無料化したわけではない。開発者側としてのコンセプトはスタート前からブレておらず,正常進化と思える。
無料会員でも有料のオプションサービスを利用でき,プレイヤーの選択肢は広がり,プレイスタイルに合わせて料金を払えるようになった。
野球つくONLINE 2は,一つのゲームであると同時に,プロ野球をより深く楽しむためのツールでもある。ハードルを下げたことで,よく多くのプレイヤー,より多くの野球好きが「野球つくONLINE 2」という場に集まるのなら,さらに盛り上がっていくだろう。新たなステージに入った本作から,ますます目が離せなくなりそうだ。
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