連載
男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第194回「ドラクエXに学ぶファイティングポーズ」
武道館のリングから客席を見たときの景色はね,それはもう絶景。もの凄い数の人が私を見ているのが伝わってくるわけ。人間って基本的に「そこに存在している」ってことを誇示したがる生き物だと思うんだけど,それが自覚できた瞬間なんでしょうね。
もちろん,それが人間としての優劣を示すものでは断じてないわ。とはいえ,リングの上から眺めた客席は風景として悪いものではなかったわね。マイ日本百景の一つに数えてもいいと思ってる。
ちなみにほかのマイ百景には,日本三景の一つとしても名高い安芸の宮島で,友達が草食動物だと油断していたら鹿に喰われかけた光景と,大阪の通天閣でカップル同志のケンカが殴り合いに発展,おそらくラッキーパンチがカウンター気味に男性の顎に炸裂したのか男性が失神して女性が殴り勝ってしまったという珍しい光景なんかがノミネートされているわ。
とにかく,武道館で見られる側に立つというのは一生に一度あるかないかの経験。今にして思えば楽しかったんでしょうね。今にして思えばというのは,当日はそれどころじゃなかったからなんだけど。
で,内容はどうだったかというと,個人としてはまだ納得できていないというのが本音ね。ここで何度も書いたとおり,私の対戦相手は透明人間だったの。たぶん見る側からしてみると「どうなるんだろう」っていうのが見る際のポイントだったはずよね。それに対して「こういう戦いだ」っていう答えを提示することはできた。
余談だけど,プロレス専門誌は「それなりに成立させた」という褒められてるんだかそうでもないんだか,イマイチ分かんない評価だったわ。
まぁ,良かったという人もいるでしょうし,悪かったという人もいるでしょう。それについて私から何も言うことはないわ。プロレスに関しては,こちらはあくまで提供する側だから,受け取った側がどう思うかについては,提供者は受け止めるしかない。
ただ,私としてはまだまだできると思っている。足りてない部分もあったし,もちろん提供する側から見ての収穫もあった。次に生かせる。日本武道館でヤることも透明人間とヤることも,もう二度とないかもしれないけど,次はこうすればいいってことが分かった。まだまだ終わらないわよ!
確かにね,面白いのよドラクエX。オンラインでもちゃんとドラクエっぽい。でも,プレイしていれば分かるんだけど,明らかにいつものドラクエではないの。そりゃそうよ。オンラインゲイムだもん。ほかのプレイヤーと同じ世界にいるんだもん。自分のペースに合わせて世界が展開していく今までのドラクエとは,いろいろと違うに決まってる。これはこれで面白いし,実際にヤってみりゃ「これもまたドラクエだよね」って思えるものなの。
でも,現実の世界には色んな人がいるわけだから,今回もドラクエとして楽しんでいる人もいれば,そうでない人もいるんだろうな……というのは,正直に思っちゃったところ。こればっかりはしょうがないのよ。
そういったことを踏まえたうえで言いたいんだけど,今回,ドラクエXが行ったチャレンジは,もっともっと評価されてしかるべきだと私個人は思っているわ。
モノを作る側,提供する側の端くれから見た場合,ドラクエXは驚異的なことに挑戦しているのよ。あ,技術的なことは分からないわよ。私,ゲイマーであって開発者じゃないから。そんなことじゃなくて,姿勢の話。
だって考えてみて。ドラクエって,言わずと知れた国民的ゲイムじゃない。誇張でも何でもなく,ゲイムに詳しくない人も名前を知っているレベルよね。で,普通に考えたら,もうギャンブルする必要なんてないわけよ。いつものように作って,いつものように安定感のある起承転結のストーリーにすれば,もうそれはドラクエとして恥じない役割を果たせるはずなの。イヤな言い方をすれば,ブランド力だけでゲイムが成立してしまうくらい,ドラクエはドラクエなのね。
だけど,ドラクエはそれを良しとしなかった。ニンテンドーDSで出た「ドラゴンクエストIX 星空の守り人」のときも思ったんだけど,今回確信したわ。ドラクエは,攻める。
これまたイヤな言い方をするならば,過去の作品の上にあぐらかいてたって,誰も怒りゃしないのよ。でも,ドラクエはそれを選ばない。IXですれちがい通信に対応し,Xでオンラインに対応した。ハードがニンテンドーDSである必要があるし,Wiiである必要がある。逆かもしれないわ。ニンテンドーDSで作るからこそ,すれちがい通信を利用して,Wiiで作るからこそオンラインにしたのかもしれない。いずれにせよ,そのハードの特性を活かしている。もっと言うと,そのハードで新作を出す意味がある。これってすごいことよ。ま,これもまた消費者には関係ないことなんだけど。
ただ,オンラインになったドラクエXについていけない人は数多くいるでしょう。そして,今までのドラクエを期待していた人の中には,どこか裏切られた気分の人もいるかもしれない。そこは否定できない。変えた以上はそれなりの意見が生まれるし,それに対して作り手は受け止めるしかない。
それでも! これは本当に一人のファンとして声を大にして言いたいの。ドラクエXは今までのドラクエではないかもしれないけど,今までのものとは違う楽しさを間違いなく生み出している。そこに目を向けないで否定だけするのは,本当にもったいない。ヤってみて合わないならそれはもう仕方がないけど,ヤらずに否定だけするのは人生的に損してる気がするわ。
仮に合わないなら合わないでそれだけの話じゃない。人生でそこまで大きな問題じゃない。否定することで見出す楽しさや快楽より,飛び込んでみて得る楽しさのほうが大きいだろうし,何より前向き。
平たく言えばとりあえずヤってみろ,と。そしてオンラインの楽しさを堪能しろ,と。他人を助けて他人に助けられて……を楽しめ,と。そして私のフレンドになれ,と。そして助けてくれ,と。いろいろな装備品や素材を恵んでくれ,と。今んとこ1人しかフレンドがいないから,どうにも先に進めなくてもっと仲間が増えてほしいなぁって話でした。イヤ,ほんと面白いんですってばドラクエX。
そんな感じで今週は,ドラクエXしかヤっていないこともあって,ドラクエXの取った姿勢について色々と考えさせられた一週間でございました。
それにしても,ホント作った人はどれくらいの満足度を感じているのかしら。オンラインだとアップデートって方法もあるから一概には言えないけど,姿勢として100%の満足度ってことはないと思うの。
ただ,ドラクエはきっと次もあるだろうから,ドラクエXを踏まえて,来るべき次に何を見据えているのか,どこに手応えを感じているのか。エンターテイメントを提供する側の一人として,そんな部分は知りたいのよね。
そして,ひとまず私がドラクエXから学ぶべきは,ファイティングポーズの取り方ね。作り手のエゴや意思とは別に存在する顧客に対して,挑戦を続けたい作り手は,ファイティングポーズを取らなきゃいけない。ドラクエチームの一番優れている部分は,実はそういう戦い続けようという姿勢なんじゃないかと,ひそかに思ってたりするわ。
優勢だろうと劣勢だろうと,取らなきゃいけないファイティングポーズ。その見せ方によって,相手が抱く印象もまた変わる。ウン,勉強になるわねえ。また来週!
今週のハマりゲイム
(文字通りゲイムスロットにハマっているゲイム)
PlayStation 3:「ワールドサッカー ウイニングイレブン 2012」
PlayStation Vita:「実況パワフルプロ野球2012」
PSP:「スーパーダンガンロンパ2 さよなら絶望学園」
Wii:「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン」
ニンテンドー3DS:「タイムトラベラーズ」
Xbox 360:「トロピコ4 日本語版」
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- 関連タイトル:
ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン
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