連載
男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第249回「成り上がり」
ゲイムの何が面白いって,ほとんどのゲイムに含まれている,“成り上がり”感だと思うわけ。
最近,私は表現者の端くれとして考えるのよ。エンターテイメントにおいて,消費者はお金を払う対価として,何を得られると喜ぶのかを。まあ,平たく言うとエンターテイメントに接したときに何を面白いと感じるのか,その共通点を探してるってことね。そこで私の中で出てきたのが“成り上がり感を感じることができるものは面白い”という仮説なのね。
例えばスポーツでいうと,リーグ戦で優勝するっていうのは,成り上がりなわけですよ。何も手にしていなかったチームが栄冠を手にするわけだから。強いチームでもそうなのに,弱いチームが優勝争いをしているときに応援している人が味わう高揚感といったら,それはもう。
基本的には,スポーツというか勝敗のつくものはこの“成り上がり”って要素が,一つのエンターテイメント性を生み出していると思うの。“強い選手になりたい”“上を目指したい”気持ちそのものが,“成り上がり感”を演出するわけだから。
もちろん,勝敗のあるものだけが“成り上がり感”を演出するかといえば,そうでもないわ。アイドルを応援する気持ちも,ある種そういうものでしょう。より有名になろうとするのを応援するという,成り上がり感。大手アイドルの中にもある,内部のポジション争い。芸人さんや役者さんもそう。売れない時代から急に売れていく疾走感。
“成り上が”ろうと一生懸命もがいている様は,見ていてテンションが上がるのよね。人間を描いたエンターテイメントは,たいがい面白いっていうのが私の持論なんだけど,“成り上がり”っていうのは人間を描くにあたって,一番高揚する要素なんだということに最近気付いたわ。
そもそも人生自体が“成り上がり”なわけだから。何でもない赤ん坊が何者かになっていく。それを描けるかどうか。だから,私はゲイムが好きなんだと思う。
……ゲイムと“成り上がり”,関係なくね? って思ったでしょ。あるんですよ。ほら,ゲイムって誰かが設定してプログラミングされた世界の中で,ある目標に向けて頑張るっていうシステムで成り立っているじゃない。それはもう成り上がりなんですよ。
目標を設定してそれに向けて頑張ること,そしてそれを楽しむことが“成り上がり感”なわけだから。もっと細かく言えば,例えばレベルを上げる作業っていうのも,すでに成り上がりのための作業なわけで。さらに強引に言えば,レベル上げ自体が成り上がりと言えなくもないわけで。ハイスコアを叩き出すのも“成り上がり”,モノを集めるのも“成り上がり”。ゲイムには“成り上がり”が詰まっている。そういうことなのです。
MH4は言わずと知れた国民的タイトル。発売からわずか4日で200万本を出荷したのよね。で,9月中に約250万本を売り切ったと。だから本来は,私がこの連載で取り上げなくても十分その面白さは認知されているわけさ。しかし! それでもまだ,私はMH4の面白さが世の中には伝わりきってないと思っていて。
だってニンテンドー3DS本体が国内で1200万台ほど売れていることを考えると,MH4は3DSを持っている人のうちの,およそ4分の3の人がまだプレイしていないという計算になるわけ。だから,「ゲイレスラーに紹介されたからって何ぼのもんじゃい!」という意見はさておいといて,臆せずMH4の面白さについて述べようと思う次第であります。
で,成り上がりとMH4がどうつながるかというとですね。単純に成り上がるのが楽しいのですよ。ハンターランクが上がるのが嬉しい。
私,友達がいないから,この間までは一人で遊んでいたわけ。もちろんそれでも面白いんだけど,やっぱり限界があってね。もうぶっちゃけて言ってしまうと,MH4って他人の目を意識するゲイムだと思うのよ。とくに今作は。マルチプレイありきというか。
もし,MH4を一人でプレイするのが好きだと思い込んでる人がいるならば! それは勘違いです。一度マルチでプレイしてみてくださいな。世界が一気に変わります。最終的に,一人でプレイするのが好きだという結論にたどり着くならば,それはそれでいいでしょう。でも,一度もマルチでプレイしないうちは,一人の殻に閉じこもってちゃいけません。
Wi‐Fiがつながれば,友達なんていなくてもマルチはプレイできます。最近だと,Wi-Fiがつながる施設や店舗もあちこちにあります。どうしても物理的にマルチプレイができないという環境は,そんなにないはず。あったらゴメン。でも! それくらいマルチプレイを見据えた作りになっとるのですよMH4は。それに気付いたら俄然楽しくなるわよ。
ゲイムって突き詰めると自己満足ではあるんだけど,他人と共有することで一人プレイで得る充足感よりも若干パブリックなものになるの。冷静に考えたら,あまり変わらないんだけど。でも,みんなで成し遂げる面白さと,自分が装備を強化したりする過程を経てどのように成長していくか,それがうまくまとまっているのがこのシリーズで,MH4はその最高峰なわけです。
というのも,私はプロレスラーだから当然プロレスをするんだけど,入場が若干ほかのレスラーとは違うのよ。入場のドサクサに乗じて好みの男性客にキスしたり触ったりするわけだけれども,一応日本は法治国家だから,入場の前にはリングアナウンサーがその諸注意をお客さんにアナウンスするわけ。気をつけろ,もし被害にあっても訴えるなってことを。
でもね,けっこう噛むんですよ。ウチの新藤リングアナは。アナウンスが仕事のくせに。先日亡くなった映画監督の巨匠,新藤兼人氏のお孫さんなんだけど。私よりも年上で,キャリアも私より長いはずで,業界の先輩ではあるんだけども,そんなことどうでもよくなるくらいに噛む。
「ただいまより入場いたします男色ディーノは,ホモでございます!」って言おうとして,「ただいまより入場いたします男色ディーノは,ホモでげす!」って。ヤンガスかよ! 「ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君」の!
そんなこんなで私,新藤リングアナには今までに6回くらい殺意を抱いたことがあったんだけど,この巡業バスで吹っ飛んだね。というのも,東京←→福島での往復の10時間くらいで,新藤リングアナが私含む3人のプロレスラーのハンターランクを1から4まで最速で駆け上がらせてくれたの。まさに成り上がり。そのときの高揚感と言ったら。素直に今までの確執は水に流そう,と。そう思えたわね。
私だけではなく,別居中のとあるレスラーからは,MH4をプレイしているうちは仲良くできているという報告もあったし,コミュニケーションツールとしてMH4は非常に優秀な気がするわ。なので,周囲にMH4をヤってる人がいる,あるいはとくに気になる人や仲良くなりたい人,仲直りしたい人がMH4をヤってるならば,迷わずプレイすることをおススメする。いやマジで。
アクションゲイムが苦手とか,そういう理由で敬遠している人はとくに。コミュニケーションツールとして考えた場合は,うまいへたはあまり関係ないのよ。むしろ,へたなほうが可愛げが出るかもしれない。ので,ぜひ一度。ただし,それぞれマナーには気をつけましょうね。そのあたりがきちんとできないことには,コミュニケーション以前の問題だから。
そんな感じでMH4で仲直りした話をお届けしましたが。新藤リングアナは我らがDDTプロレスが新宿で経営するスポーツバー「ドロップキック」で週4〜5日働いてるんで,ハンターランクを成り上がりたい人はイってみるといいわ。
彼特有のウィットに富みすぎた小粋な会話にイラっと来ることもあると思うけど,欲しい素材の前にはそれは些細なことよ。たぶんしばらくは私も新藤リングアナがいる時に入り浸るしな。さすがに店が暇じゃないと巻き込めないから,告知しといてなんだけど,店に閑古鳥が鳴いていることを強く願いつつ今週はこの辺で。来週はサカつくだよ!
今週のハマりゲイム
(文字通りゲイムスロットにハマっているゲイム)
PlayStation 3:「Farming Simulator」
PlayStation Vita:「CONCEPTION II 七星の導きとマズルの悪夢」
PSP:「サモンナイト5」
Wii U:「The Wonderful 101」
Wii:「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン」
ニンテンドー3DS:「モンスターハンター4」
Xbox 360:「Minecraft:Xbox 360 Edition」
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モンスターハンター4
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