連載
インディーズゲームの小部屋:Room#478「Everything」
近頃はバレンシア大陸での戦乱に巻き込まれつつ,離れ離れになってしまった幼なじみの身を案じている筆者がお届けする「インディーズゲームの小部屋」の第478回は,デイビッド・オライリー氏が開発した「Everything」を紹介する。本作は,生物から無生物まで,原子の1つから宇宙そのものまで,あらゆるものに乗り移りながら世界の有様を眺めるという,何だかよく分からないが壮大な作品だ。腹黒可愛いエフィちゃん,最高です。
オライリー氏といえば,空にぽっかりと浮かんだ山を眺めるだけのゲーム(?),「Mountain」の作者として知られる人物。そんな氏の最新作となる本作も,なんとも形容しがたい奇妙な作品に仕上がっている。
本作の内容については,おおむね2016年12月に米国で開催されたPlayStation Experience 2016でのプレイレポートにあるとおりだが,このたびPC版が発売されたので,あらためて紹介してみたい。
プレイヤーは無限の宇宙を旅する1つの小さな光だ。その光はやがて,1頭の動物に入り込む。本作では,動物や植物,木や岩,トイレットペーパーや蓄音機,ビルや車,惑星や銀河系,微生物や原子に至るまで,出自や大小を問わず,さまざまなものに入り込み,それを操作して周囲を探索することになるのだ。
光が入り込んだものは,それが生物だろうと無生物だろうと操作可能で,移動したり,同種の仲間を見つけて群れを作ったり,繁殖して子供を増やしたりできるようになる。もちろん,周囲にあるほかの何かに乗り移ることもでき,新たに乗り移ったものはライブラリに登録されていく。
乗り移れるものは,ある程度大きさの近いもの同士に限られ,小さなものから大きなものへと乗り移るには群れを作る必要がある。そして,例えば動物からスタートし,次に木に乗り移り……といった具合に,どんどん大きなものに乗り移っていくと,大陸になり,惑星になり,銀河系になり,宇宙に浮かぶ何かになる。
逆にどんどん小さなものに乗り移っていくと,微生物などを経てやがて原子や素粒子のレベルまで小さくなり,それに飛び込むと,その中にはまた新たな別の宇宙があり,銀河系があり,惑星があり……と,このループがどこまでも続いていく。ちょっと気の遠くなるようなスケールだが,こうして世界が次々と生み出されていくのが本作の大きな特徴だ。
もちろん,途中の段階で乗り移るのをやめ,ある大陸から別の大陸に移ったり,ある惑星から別の惑星に移ったりしてもいい。そこには新しい世界があり,未知の動物や植物や,何か別のものが待っている。本作における目標らしい目標はライブラリをすべて埋めることくらいで,それさえ強制されるものではなく,こんな風にして,あらゆるものの視点から世界の姿を観察するのが大きな目的となっている。
また,もう1つの特徴として,特定のシンボルが付いたオブジェクトを調べると,イギリス人哲学者のアラン・ワッツ氏による,何やらありがたいナレーションが聞けることが挙げられる。こちらは,英語の音声であることもあって筆者にはさっぱり理解できないが,全体として,世界や自分,そして生命とは何かについての思索を語る内容になっているようだ。
ちなみに本作にはオートプレイ機能も用意されており,しばらく操作の手を止めていると,勝手にゲームが進行していく。プレイヤーが操作を再開すると,自動的にオートプレイが切れるので,遊び方がよく分からないときや,なりゆきに任せて世界の様子を眺めたいときは活用するといいだろう。
何とも奇妙で説明しがたいが,途方もないスケールで不思議な感動を味わえる作品なので,興味を持った人はぜひどうぞ。そんな本作は,Steamにて1480円で発売中だ。
■「Everything」公式サイト
http://www.everything-game.com/- 関連タイトル:
Everything(エブリシング)
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Everything(エブリシング)
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(C) David OReilly. Licensed to and published by Active Gaming Media, Inc.
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