業界動向
[GC 2007#004]業界のトップが考える,「売れるゲーム」の作り方はこれだ!
パネラーは,「The Lord of the Rings: The Two Towers」やEA Sportsの作品を多く手がけてきたベテランゲームデザイナーのDon L. Daglow氏,Epic Gamesの社長であるDr. Michael Capps氏,「Star Wars: Rogue Squadron」など,ゲーム機のベストセラータイトルを多く持つFactar 5の社長で,GCDC 2007の基調講演でESRBに異を唱えたJulian Eggebrecht氏。Peter Molyneux氏の参加も予定されていたのだが,なんでも飛行機が遅れたということで欠席となっていた。さすがはカリスマゲームクリエイターである(意味不明)。
……ということで,代役として同じLionhead StudiosのGeorge Backer氏が急遽出席し,計4名でのディスカッションとなった(司会はGameSpotのJustin Calvert氏)。
もちろん,聞いている我々だって,これさえ聞けば明日から売れるゲームをガンガン作れるはずという甘い観測は持っていないわけで(筆者は少し期待していたが),会場を満たした聴衆は,その絶妙なディスカッションのタイトルにちょっと引っかけられた格好だ。
■「良いゲームを作ればいい」では終わらない
■生々しい欧米ゲーム開発者の本音
さて本題。ディスカッションは「売れるゲームのアイデアはどんなところから得るのか?」と司会のCalvert氏が水を向けるところから始まった。Daglow氏によれば,アイデアは泡のようなもので,さまざまなメンバーの小さな泡が集まって大きな泡になっていくのだそうだ。こうしてアイデアが形作られてきて初めて,キャラクターデザイナーとそれを練り上げていくことになる。
Capps氏は経営者ということもあり,氏にとってのゲーム開発の始まりは「正しい位置に正しい人員を配置し正しいビジョンを与えること」とごくシンプルなもの。結局のところ,4人のパネラーに共通していたのは,売れるにせよ売れないにせよ,ゲームのアイデアがそのまま転がっている状態ではたぶんダメで,核となるものをいかに切磋琢磨して磨き上げていくかが重要だということである。
「オレはメディアを愛しているよ」と言うDaglow氏に会場がどっと沸くが,それは同時に“本当はそうじゃないんだろうな”という会場の意見の表れでもある。発売されたゲームをすべて扱うスタンスを取る欧米(とくにアメリカ)のメディアでは,Web媒体,雑誌を問わず,ときとして容赦ない記事を書く。時間と予算をかけて作ったタイトルがボロクソに書かれるのは,開発側にとって嬉しい話であるはずがない。
一方,Epic Gamesとはちょっと立場が異なり,カジュアルなプレイヤーが多くて声高なプレイヤーが少ないFactor 5のEggebrecht氏も,メディアのプレビュー/レビューには耳を傾ける必要があり,「メディアは敵ではない」と断言する。
もっとも,4人ともやはりメディアに対して必ずしも好感情ばかりを抱いているわけではないようで,「まあ,いろいろあるけどね」というニュアンスの発言もいくつかあったが,それはまあ当然のことだと思われる。
「Gears of War」のPRには莫大な予算を投入したと語るのはEpic GamesのCapps氏で,潜在的ユーザーの中には,自分でゲームを買えない年齢の人も多く,マーケティングによっておじいちゃんやおばあちゃんにもタイトル名を知ってもらい,ショッピングシーズンに孫へのプレゼントとして購入してもらえるようにすることも重要だと続ける。「Gears of Warを?」という気もするが。
「良いゲームを作れば売れるのです」といった感じの優等生的解答を予想していた筆者は,意外なほど生々しい彼らの意見にちょっと驚くわけだが,そういう率直さもまた欧米のビジネス感覚だろう。
このように,純然たるゲーマーにとってはちょっと距離のある内容だったり,穿った意見で観衆を楽しませてくれるMolyneux氏が欠席だったりして,「面白さ」という点ではやや不満が残ったパネルディスカッションであったのも事実。とはいえ,莫大な資金を投じて大作を次々に作っていく北米ゲーム制作会社のリーダー達が,何を考えているかということを垣間見させてくれたという点で,興味深いものがあった。
「売れるゲームの定義は?」という質問に「売り切れになること」「ドル札を満たした風呂に入れるほど売れること」などという解答をするクリエイターの存在は,やはりアメリカならではだろう。(松本隆一)
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