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マルチGPU構成でパフォーマンスがバラつく理由とは? AMD担当者に聞くCrossFireXの現状と今後
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印刷2008/04/03 20:07

インタビュー

マルチGPU構成でパフォーマンスがバラつく理由とは? AMD担当者に聞くCrossFireXの現状と今後

 大規模なアップデートとして登場した,AMDのドライバスイート「ATI Catalyst 8.3」(以下,Catalyst 8.3)。その目玉の一つが,2〜4基のGPUによる「ATI CrossFire」(以下,CrossFire)である「CrossFireX」だが,4Gamerのテストレポートでも明らかなように,そのパフォーマンスは,100%の信頼を与えられるものになっていない。

Ian McNaughton氏(Head of Product and Platform Marketing, EMEAI,AMD)
画像集#002のサムネイル/マルチGPU構成でパフォーマンスがバラつく理由とは? AMD担当者に聞くCrossFireXの現状と今後
 この点について,AMDでヨーロッパ地域のプラットフォームマーケティングを統括するIan McNaughton(イアン・マクノートン)氏は,CrossFireXの最適化がまだまだ初期段階にあるという認識を示す。「Catalyst 8.3において,DirectX 9世代のタイトルではGPUが増えるごとにパフォーマンスを向上できている。しかし,DirectX 10タイトルの最適化には,もう少し時間が必要だ」(同氏)。


ドライバで“使うGPUの数”を制御するCrossFireX

DirectX 10世代のマルチGPU最適化が今後の課題


AMDの示した,DirectX 9環境におけるCrossFireXのパフォーマンス向上度合い
画像集#003のサムネイル/マルチGPU構成でパフォーマンスがバラつく理由とは? AMD担当者に聞くCrossFireXの現状と今後
 CrossFireXでは,ゲームの各フレームを4基のGPUで順番に描画するAFR(Alternate Frame Rendering)を採用している。AFRはその仕様上,フレームレートが上がれば上がるほど,描画するGPUを切り替える頻度も高くなるが,「4枚構成のCrossFireXでは,カード間のデータのやりとりにおけるレイテンシ(※遅延時間)がボトルネックとなって,パフォーマンスが伸びないケースもある」とMcNaughton氏。実際,Catalyst 8.3では3-wayまでしかサポートされないゲームタイトルも存在していると説明した氏は,「DirectX 10タイトルは2007年末に市場投入されたばかり」(※必ずしも正しくないが,ある程度出揃ったのが2007年末という意味なのだろう)と述べ,今後のドライバアップデートによってDirectX 10タイトルへの最適化を進めていく方針を示した。

こちらはDirectX 10環境におけるCrossFireXのパフォーマンス向上度合い。Crysis(など)では現状,3GPUまでの対応となる
画像集#004のサムネイル/マルチGPU構成でパフォーマンスがバラつく理由とは? AMD担当者に聞くCrossFireXの現状と今後
 McNaughton氏の説明を聞いて気になるのは,「ATI Radeon HD 3870 X2」(以下,HD 3870 X2)の2枚差しによる4-way CrossFireX環境を構築した場合についてである。
 ご存じのとおり,HD 3870 X2は2基のGPUを1枚のカードに搭載した製品だ。そのため,HD 3870 X2カードの2枚構成で4-way CrossFireX環境とした場合,DirectX 10タイトルをプレイしたときにCrossFireXが機能しなかったり,四つめのGPUがボトルネックの要因となったりするのではないかと心配になるが,McNaughton氏は「HD 3870 X2によるCrossFireXでは,ドライバによって『何基のGPUを動作させるのが最も効率的か』が判断される。例えば『Crysis』などでは,自動的に3GPU構成で動作することになる」と説明する。(Catalyst 8.3でAMDの意図どおり機能しているかどうかはさておき)CrossFireXで利用するGPU数は,ドライバ側で自動制御されるのだ。

 ところでマルチGPU構成,とくに3〜4-wayでは,CrossFireXのアーキテクチャもパフォーマンス(のスケーラビリティ)に大きく影響してくる。CrossFireXでは,カードをブリッジケーブルで順番に接続することで各GPUのデータ伝送が行われるが,4-way CrossFireXの場合,下に示した写真のような接続形態になる。

4-way CrossFireX構成時のブリッジケーブル接続例
画像集#005のサムネイル/マルチGPU構成でパフォーマンスがバラつく理由とは? AMD担当者に聞くCrossFireXの現状と今後

 簡単にまとめるなら

GPU0←→GPU1←→GPU2←→GPU3

といった格好だ。このとき,GPU3からGPU0へデータを転送するためには,間に2枚のカードを介在させるか,あるいはPCI Expressインタフェースを使って

GPU3→ノースブリッジ→CPU→ノースブリッジ→GPU0

という経路をとる必要が生じる。そのため,ドライバレベルの最適化が進まないと,この経路分のレイテンシがボトルネックになってしまうというわけだ。チップセット性能において,AMDがPCI Expressインタフェースのパフォーマンスやレイテンシにこだわるのも,CrossFireのアーキテクチャ上,PCI Expressのパフォーマンスに影響を受けやすいからともいえるだろう。

3-way NVIDIA SLIブリッジコネクタ
画像集#008のサムネイル/マルチGPU構成でパフォーマンスがバラつく理由とは? AMD担当者に聞くCrossFireXの現状と今後
 ちなみにNVIDIAの3-way NVIDIA SLIだと,襷掛け(たすきがけ)仕様となるブリッジコネクタによって3基のGPUがリング状に接続され,GPU0とGPU1,GPU1とGPU2,GPU2とGPU0は,それぞれ相互にデータをやりとり可能。そのため,PCI Expressインタフェース側のレイテンシに影響されにくいメリットがある。もっとも,3-way以上で各GPUを相互接続させるためにはブリッジコネクタをカードごとに二つ用意しなければならないので,この物理的な制約が,“4枚のグラフィックスカードによるQuad NVIDIA SLI”を実現するうえでのハードルとなる。Quad NVIDIA SLIが,デュアルGPUソリューション×2でしかサポートされないのは,そういった事情のためだ。

Catalyst 8.3を重要な段階(milestone)と位置づけるAMDだが,まだ山の中腹であることも認識している
画像集#009のサムネイル/マルチGPU構成でパフォーマンスがバラつく理由とは? AMD担当者に聞くCrossFireXの現状と今後
 CrossFireXに話を戻すと,DirectX 10では,統合型シェーダ(Unified Shader)アーキテクチャを採るがゆえの,最適化の難しさもあるとMcNaughton氏は述べる。
 統合型シェーダアーキテクチャでは,汎用シェーダユニット「Streaming Processor」を,グラフィックス処理の内容に応じて,頂点シェーダ(Vertex Shader)やピクセルシェーダ(Pixel Shader)ユニットとして割り当てる。そのため,処理の割り当てを制御するには高いCPU処理能力が必要となるほか,描画データの共有という意味ではシステムメモリへのアクセスも増えることになる。
 3GPUまたは4GPU構成を実現するCrossFireXの場合,「ゲームごとにグラフィックス処理の負荷を解析して,GPUのみならずCPUやメモリの割り当てなども制御しなければならない」とMcNaughton氏。ゲームごとにグラフィックス処理の特性を解析しなければ,CrossFireXのパフォーマンスを引き出せないという難しさがあるのだ。


デスクトップGPUへのPowerXpress導入も視野に


David Cummings氏(Director of Marketing, Desktop GPU, Graphics Products Group)
画像集#006のサムネイル/マルチGPU構成でパフォーマンスがバラつく理由とは? AMD担当者に聞くCrossFireXの現状と今後
 CrossFireXと並んで,Catalyst 8.3の目玉となっているのが「Hybrid Graphics」だ。グラフィックス機能統合型チップセットと単体グラフィックスカードによるCrossFire動作を実現するものだ。効果のほどは「AMD 780G」チップセットのテストレポートでお伝えしているが,AMDでデスクトップGPUのマーケティングを統括するDavid Cummings(デビッド・カミングス)氏は,「グラフィックス機能統合型チップセットを使うような一般ユーザーも,最新ゲームタイトルをプレイするときにはもっと3D性能が欲しいと思うことがある。Hybrid Graphicsは,そうしたニーズに応えられるソリューションだ」と胸を張る。

PowerXpressの概要
画像集#007のサムネイル/マルチGPU構成でパフォーマンスがバラつく理由とは? AMD担当者に聞くCrossFireXの現状と今後
 その一方,“AMD 780GのノートPC版”といえるノートPC向けの次世代チップセット「RS780M」(開発コードネーム)でサポートされる「PowerXpress」は,AMD 780Gだとサポートされていない。PowerXpressは,AC電源駆動時には単体GPU,バッテリー駆動時にはチップセット側のグラフィックス機能を用いることで,動作条件に合わせてパフォーマンスとバッテリー駆動時間をそれぞれ最大化する機能のこと。この点についてはCummings氏は「ATI Radeon HD 3000シリーズでは,グラフィックス描画負荷に応じて動作クロックを動的に制御する『ATI PowerPlay』を採用している。デスクトップPC環境でそれ以上の省電力化を図る必要があるかどうか,市場の反応を待っている段階だ」と説明する。
 もっとも同氏は「PowerXpressによる『チップセット側のグラフィックス機能とグラフィックスカードの切り替えは,PCI Expressインターフェースを介して制御される。ハードウェアレベルの変更は必要ないから,市場ニーズが高まれば,デスクトップPC環境でもドライバのアップデートで対応することは可能だ」とも述べている。市場動向次第ではあるものの,デスクトップPC環境でPowerXpressが有効化される可能性は少なくともゼロではないようである。


 最後に,今なお供給がタイトなATI Radeon HD 3800シリーズについて聞いてみると,「全世界的にかなりのバックオーダーを抱えているのは事実だが,2008年4月半ば以降には供給が安定する」という答えがCummings氏から返ってきた。
 AMDは今後,一般小売り市場向けの製品出荷を増やしていく計画を持っており,すでに供給量の安定化を先取りした価格改定が行われているが,日本国内でもより安価かつ容易にCrossFireX環境を構築できるようになる日は近そう。あとは,ドライバの最適化が長足の進歩を遂げることを願うばかりだ。
  • 関連タイトル:

    ATI Radeon HD 3800

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    AMD 7

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    AMD M7

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