レビュー
DHARMAPOINT初のエントリー向けマウスは“オーバークロック”で化ける!
DHARMA OPTICAL GAMING MOUSE(DRM26)
※お詫びと訂正(2010年2月18日)
DHARMA OPTICAL GAMING MOUSE(DRM26)のセンサー性能テストに当たって,ゲーム側の設定に重大なミスがありました。ミスを修正し,あらためて検証を行っているので,センサー周りの言及に関しては,新規に掲載したテストレポート記事を参照してください。なお,本レビュー記事は,ミスした状態でテストした結果をそのまま残してあります。
DHARMA OPTICAL GAMING MOUSE(DRM26)
センサー性能再テスト
そんなDHARMAPOINTは,短いスパンでさまざまな製品をリリースし続けてきたものの,ことマウスに関しては,2008年秋の「DHARMA TACTICAL MOUSE(DRTCM03)」を最後に,音沙汰のない状態が続いていた。それを打ち破ることになったのが,今回取り上げる,光学センサー搭載ワイヤードマウス,「DHARMA OPTICAL GAMING MOUSE(DRM26)」(以下,DRM26)である。
とはいえ,この価格帯には,「Microsoft WheelMouse Optical」(以下,WMO)や,「SteelSeries Kinzu Optical」(以下,Kinzu)など,数多くのライバルが存在する。後発である以上,競合製品を上回る使い勝手を期待したくなるのは当然だが,今回はそのあたりをじっくり検証してみたい。
小型軽量でクセの少ない持ち心地
とくに「つまみ持ち」時のホールド感が良好
ちなみに,DHARMA TACTICAL MOUSEシリーズのなかで,DRM26と同じく光学センサーを搭載したモデル「DRTCM02」の重量はケーブル込みで実測114g,ケーブルをどかした参考値で93〜95gだったから,DRM26では,20g程度軽くなった計算だ。
小型で細身ということもあって,「つまみ持ち」に向いたマウスという印象を持つ人は多いだろう。筆者もそう思っていたが,結論から先に述べると,まさに見たままの感触だった。
「つまみ持ち」をしてみると,まず,本体両サイドに貼られたラバーグリップのおかげで指がズレにくいのが好印象。また,指の曲げ具合にもよるが,ラバーグリップのマウス前方よりの部分をつまんだとき,手のひらに本体がほとんどぶつからないのも,「つまみ持ち」のプレイヤーには重要なポイントといえる。力の込め方がわずかに変わっても,マウス側がそれに対応してくれる感じで,操作感は相当に快適だ。
DHARMAPOINTは,DRM26を「『つかみ』『かぶせ』どちらにも柔軟に適応する」としているが,手のひらでマウスをすっぽり覆う「かぶせ持ち」しかするつもりがないなら,別の,もう少し大型のマウスを選ぶほうが幸せになれそうだ。
サイドボタン搭載で競合製品を上回るボタン数を実現
押し心地は及第点だがホイール回転には若干の違和感も
ここまでに掲載した写真で気づいた人も多いだろうが,DRM26は,左右メイン,センタークリック機能付きスクロールホイール,左サイド×2の5ボタン仕様となっている。WMOやKinzu,あるいは「Razer Abyssus」といったエントリー向けのマウスだと,サイドボタンを持たないので,DRM26における2連サイドボタンの存在は,アドバンテージとなるだろう。
もっとも,ホイールよりも手前(≒手首)側を押そうとすると,とっさのときにクリックが入らなくなるほど硬い印象になる。さらに,強めにクリックしたときはボタンがへこむように歪んでしまうため,極端に指を立てるタイプの「つまみ持ち」プレイヤーは気を付けておく必要があるかもしれない。
ホイールも無難な作りといえる。ノッチは刻みの一つ一つがはっきりしていて,回したときの感触は平均よりやや重め。回転途中で止まるようなことはまずない。
一点だけ気になったのは,手前方向と奥方向のどちらに回転させるかで,感触が違うこと。具体的に説明すると,ウインドウの縦スクロールだと下回転になる手前方向だと低い音,上回転になる奥方向だと,カタカタした安っぽい音が鳴るのだ。操作性に直接影響するものではないが,上下で回し心地が違うというのは妙な気分になった。
一方「かぶせ持ち」の場合,対象が本体奥側のボタンに限られるものの,左サイドをホールドしている親指を時計回りに軽くひねるようにするだけで,指をほとんど動かすことなくクリックできるのはいい。
つなげただけの状態では1600CPI時に不安あり
高CPI設定時は“オーバークロック”が必須か
ソールに囲まれる形で,中央よりやや後ろよりに置かれたセンサーユニットは,トラッキング速度130IPS,最大加速度30G,トラッキング解像度800CPIと
いうスペック。基本的にはマウスを大きく動かすローセンシプレイヤー向けと断言していいのではなかろうか。USBクラスドライバで動作する,いわゆる“ドライバレス”仕様で,DHARMA TACTICAL MOUSEで用意されるような設定用ソフトウェアも付属していない。
性能面で「光学センサー>(越えられない壁)>レーザーセンサー」だったのも今は昔。2010年1月時点において,ハイエンドの価格帯では「レーザーセンサー>光学センサー」といえる状況になってきているので,DRM26が光学センサーを採用しているのは,コストと性能の兼ね合いと考えて間違いないだろう。
では実際のところ,DRM26のセンサーはどこまでゲーム用途に堪えるものなのか。表1に示したテスト環境で検証したいと思う。
テストに当たっての基本設定は下に箇条書きで示したとおりだ。
●DRM26の基本設定
- ドライバ:Windows標準(※USBクラスドライバ)
- トラッキング解像度:800/1600CPI
- ポーリングレート:125Hz(※Windows標準)
- Windows側設定「マウスのプロパティ」内「速度」スライダー:中央
- Windows側設定:「ポインタの精度を高める」:オフ
●テスト方法
- ゲームを起動し,アイテムや壁の端など,目印となる点に照準を合わせる
- マウスパッドの左端にマウスを置く
- 右方向へ30cmほど,思いっきり腕を振って動かす「高速動作」,軽く一振りする感じである程度速く動かす「中速動作」,2秒程度かけてゆっくり動かす「低速動作」の3パターンでマウスを振る
- 振り切ったら,なるべくゆっくり,2.の位置に戻るようマウスを動かす
- 照準が1.の位置に戻れば正常と判断可能。一方,左にズレたらネガティブアクセル,右にズレたら加速が発生すると判定できる
テストに用いたゲームタイトルは「Warsow 0.5」。本テストにおいて,ゲーム内の「Sensitivity」設定は,「180度ターンするのに,マウスを約30cm移動させる必要がある」1.125(800CPI)または0.5625(1600CPI)の2種類を用い,読み取り異常の発生を分かりやすくさせることにしている。
その結果をまとめたのが表2,3となる。
800CPIはほぼ問題なし。ただ,高速動作時は,テストしたどのマウスパッドと組み合わせたときも,180度振り向いたあと,高速動作で元の位置に戻そうとすると,視点の移動量が15度ほどズレた。
それ以上に気になったのが1600CPI設定時で,端的に述べて,使うのがためらわれるほどの激しいネガティブアクセルが見られる。180度振り向いたあと,高速動作で元に戻そうとすると,視点の移動量が90度も少なくなってしまう。また,高速動作時ほどではないにせよ,中速動作でも15〜30度ほどのズレが生じており,こちらも,やや厳しいレベルだと言わざるを得ない。
この挙動は何が原因なのか。筆者はまず,125Hzというレポートレート(ポーリングレート)の違いがこの問題を引き起こしている可能性を疑った。G500は,500Hzで動作するよう,専用のドライバソフト「SetPoint」から指定しているので,この差が操作感の違いを生んでいる可能性は十分に考えられる。また,DRM26ではUSB 1.1 Full Speedへの対応が謳われていないため,125Hzというレポートレートでは,データ送出速度が足りずにネガティブアクセルが生じた可能性も考えられるからだ。
そこで今回は,メーカー保証外の行為となるのを覚悟のうえで,WindowsのUSBドライバファイルを入れ替え,DRM26を無理矢理500Hz動作させてみることにした。
Windowsのバージョンによってやり方は異なるが,筆者は国内有志が運営しているWikiサイト(※あえてアドレスは書かないので,興味を持った人は各自検索してほしい)から,Windows XP+Service Pack 3環境に対応した「usb_patch_no_CRC_check.zip」というファイルをダウンロードして,
- Windows XPをセーフモードで起動
- usb_patch_no_CRC_check.zipに含まれる「patch_vol_en.exe」を実行
- C:\windows\system32\drivers\usbport.sys を指定して[Start]をクリック
- システムを再起動
することで,パッチを当てている。パッチが当たるのと同時に,driversフォルダには「usbport.sys.bak」という名でバックアップファイルが作成されているので,何か問題が生じたら,これをリネームして元に戻せば,おそらく大丈夫だ。
※注意
オーバークロック動作は,メーカーの保証外となる行為です。最悪の場合,PCや周辺機器の“寿命”を著しく縮めたり,壊してしまったりする危険がありますので,本稿の記載内容を試してみる場合には,あくまで読者自身の責任で行ってください。本稿を参考にしてオーバークロック動作を試みた結果,何か問題が発生したとしても,メーカー各社や販売代理店,販売店はもちろん,筆者,4Gamer編集部も一切の責任を負いません。また,ファイルの入手先,Windows XP以外のOSでオーバークロックする方法についての質問は受け付けていません。
そして,この状態から,あらためて1600CPI設定を行い,テストを行った結果が表4である。
先ほどとはまったく異なる,素晴らしい結果になった。オーバークロック状態だと,G500と同様の,滑らかな視点移動が可能になっているのも特筆すべきポイントといえ,レポートレートの変更だけでここまで変わるとは,正直,驚くほかない。また,標準状態でより相性問題のキツかった1600CPIでこの結果というあたりから想像がつくように,800CPI設定時の挙動も,同様の改善を見せているので,この点は付記しておきたい。
DRM26を最高の状態で使いたいのならば,自己責任でレポートレート500Hzへオーバークロックするのが必須といってよさそうだ。
オーバークロック前提なら間違いなく「買い」
無保証版のパッチ当てツールが出てくれば……
だが,「オーバークロック設定は自己責任であり,決して万人に勧められる方法ではない」という点に覚悟を決められる人にとって,DRM26はかなり魅力的なマウスであるともいえる。「つまみ持ち」に適した形状や軽さは,競合する既存の定番製品と比べても引けを取らず,追従性ではそれらを上回り,さらにサイドボタンも用意されているからだ。
小型軽量で,センサー性能が高く,サイドボタンが利用可能で,しかも実勢価格は3000円前後。ボタンやホイールにある若干の安っぽさも致命的ではないし,そもそも,この価格帯にあるマウスはどれもこんなものである。
チルトホイールやマクロといった,多機能に振ったマウスとは対極にある製品だが,必要十分な基本性能を持ちつつ安価なDRM26は,ちょっとした改造さえすれば,かなり強力な武器になるだろう。
「マウスに多機能はいらない,快適な操作性と信頼性を,安価で手に入れたい」という人に,強く勧められる製品だ。
……最後に。できることなら,無保証でかまわないから,“Windows XP/Vista/7に対応する500Hz化パッチ充てツール”のようなものを出してほしいなあとか思うのですけど,どうでしょう?>DHARMAPOINT
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