テストレポート
BlueTrackはゲームに使えるのか?「Explorer Mini」から来たるべき「SideWinder X8」を占う
中でも,日をあらためて発表された3番目が,ゲーマー向けワイヤレスマウス,「Microsoft Sidewinder X8 Mouse」(以下,Sidewinder X8)であったことを憶えている読者も多いことだろう。13330fpsというフレームレートをはじめとした,最高峰ともいえるスペックの高さに,BlueTrackへの期待を高めているのは,筆者だけではないはずだ。
だが,SideWinder X8の発売予定時期は北米で2009年2月。国内に至っては未定という状況である。そこで今回は,SideWinder X8と同時――厳密には1日だけ早いが――に発表され,10月31日から販売の始まった“もう一つのBlueTrack採用マウス”から,「Microsoft Explorer Mini Mouse」(以下,Explorer Mini)を使って,「BlueTrackはゲーム用途に使える技術なのか」どうかを試してみることにした。その結果をお知らせしたい。
マウスパッドとの相性は○
「Go Anywhere」は伊達ではない!?
それは,今回のテストレポートがあくまでBlueTrackという新しいトラッキング技術の可能性についてのものであって,ゲーム用途におけるExplorer Miniの使い勝手を論ずるものではないということだ。Explorer Miniの,
- トラッキング解像度:1000dpi
- フレームレート:8000fps
- トラッキング速度:1829mm/s
というスペックは,一般PCユーザー向けとしては十分に高いものだが,それでもSideWinder X8と比べると数段落ちるため,Explorer Miniに関して述べた内容がSideWinder X8にもそのまま当てはまるわけではないことにも,注意して読み進めてもらう必要があるだろう。
さて,BlueTrackという技術の詳細については9月10日の記事を参照してもらいたいと思うが,簡単にいえば,波長の長い青色光を広く照射し,その広い範囲のコントラスト情報変化を基に,マウスの移動を認識するという仕組みのものである。青色光を照射するのに青色LEDを用いていることから想像できるように,光学センサーをベースとした技術という理解で正しい。
そんなBlueTrackのキーワードは,「Go Anywhere」。Microsoftの掲げるこの言葉は,さまざまに日本語訳できそうだが,つまるところは「従来の光学,もしくはレーザーセンサーで生じがちだった『読み取り面との組み合わせによって挙動が不安定になる問題』を解決し,より多くのサーフェスに対応した」という意味だ。
正直なところ,この謳い文句は,ボール式から光学式,光学式からレーザー式と,新しい読み取り方式が登場するたびに繰り返されてきたものでもある。過去の例を踏まえると,場合によってはマウスパッドとの相性がいっそう出やすくなっている可能性もあるが,果たして実際のところはどうだろうか……と,表に示したテスト環境で,実際に検証を行うことにした。
テストに用いたマウスパッドは下記のとおりだ。
- DHARMA TACTICAL PAD[HARD TYPE](DRTCPW40H/DRTCPW30H)
- DHARMA TACTICAL PAD[SOFT TYPE](DRTCPW40S)
- Icemat Purple 2nd Edition
- Razer Destructor
- Razer eXactMat Control
- Razer eXactMat Speed
- Razer Mantis Speed
- SteelSeries QcK mass
結論から述べると,DHARMA TACTICAL PAD[HARD TYPE]とIcemat Purple 2nd Editionで,高速移動時にポインタ飛びが生じやすかったものの,基本的には問題なし。先ほど,広義には光学センサー搭載マウスであると述べたが,相性の傾向も光学センサー搭載マウスに近い。
MicrosoftはBlueTrack採用マウスを「透明なガラスや鏡を除く,あらゆるサーフェスで利用可能」としているが,ゲーマーとしては,「光学センサーに対応したマウスパッドであればまったく問題なく利用可能」という理解をしておくのが正しそうだ。
さすがに光学センサー搭載の「ゲーマー向けマウス」であるDRTCM02と比べると全体的に見劣りするが,Explorer Miniの立ち位置を考えればやむを得ないだろう。むしろ頑張っているといえるのではなかろうか。
なお,リフトオフディスタンスはかなり短く,センサー周辺に1円玉を重ねて計測したところ,DHARMA TACTICAL PAD[HARD TYPE]では4枚,Razer Destructorで3枚,Icemat Purple 2nd Editionでは1枚,そのほかは2枚重ねた時点で反応しなくなった。DHARMAPOINT製マウスのように,ユーザー側で自由に調整できたりはしないが,相当短いほうだ。
本体サイズはかなり小ぶり。大型有線マウス並みの重量(電池込みで約110g)はワイヤレスマウスの宿命か |
サイドは左右どちら側も窪んでいて持ち上げやすくなっているが,カーブがきついので,指の太い人には窮屈かも |
一般向け製品でも相応の性能を持つBlueTrack
SideWinder X8への期待は大
今後,ワイヤード製品が登場するのかどうかは分からないが,ゲーマー向け製品のラインアップが拡充されて価格的にこなれてくると,一般的な光学センサーの時代はいよいよ終わることになるかもしれない。仮にそうならなくとも,BlueTrackが,PCゲーマーとして今後注目していくべき技術であることは間違いない。
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