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「SideWinder X8」レビュー掲載。BlueTrack&ワイヤレスの新型がもたらすインパクトを探る
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印刷2009/03/12 10:30

レビュー

BlueTrack&ワイヤレス仕様の新型がもたらすインパクトの大きさは?

SideWinder X8 Mouse

Text by fumio

»  2009年3月13日に国内発売を迎える,Microsoftのゲーマー向けマウス最新作,「SideWinder X8」。BlueTrack採用のワイヤレス仕様という,非常に個性的なゲーマー向けマウスを,fumio氏が検証する。発表から約半年,待たされただけのことはあっただろうか?


SideWinder X8 Mouse
メーカー:Microsoft
問い合わせ先:マイクロソフト インフォメーション センター TEL:0120-41-6755
予想実売価格:1万円前後(2009年3月12日現在)
画像集#002のサムネイル/「SideWinder X8」レビュー掲載。BlueTrack&ワイヤレスの新型がもたらすインパクトを探る
 2008年9月に発表された,Microsoft独自の新世代マウストラッキング方式「BlueTrack Technology」(以下,BlueTrack)。同技術を採用する初のゲーマー向けマウスとして,2009年3月13日に発売されるのが,「SideWinder X8 Mouse」(以下,SideWinder X8)である。

 BlueTrack自体は一般PCユーザー向けのワイヤレスマウス「Microsoft Explorer Mouse」「Microsoft Explorer Mini Mouse」で先行して投入されている。先に筆者は後者を検証し,「ある程度はゲーム用途に堪えられる性能を持つ」というインプレッションをお届けしているが,あれよりもはるかに高いスペックのワイヤレスマウスが,いよいよ店頭に並ぶわけだ。

 初代「SideWinder Mouse」(以下,初代SideWinder)や,その廉価版となる「SideWinder X5 Mouse」(以下,SideWinder X5)で,ゲーマーから寄せられたフィードバックを参考に改良を重ね,さらに最新のトラッキング技術とワイヤレス化を果たしたSideWinder X8。果たして期待どおりの製品に仕上がっているのかを,今回は掘り下げて確認していきたい。
 なお,SideWinder X8の基本的な仕様に関しては,すでに国内発売時の第一報やファーストインプレッション記事でお伝えしているので,ぜひ併せてチェックしてほしいと思う。


丸みを帯びて握りやすくなったデザイン

約143gという“超重量”がやや難か


SideWinder X5(左)および初代SideWinder(右)との比較。一見,大きな変化はない雰囲気だが,よく見るとやや丸みを帯びている
画像集#003のサムネイル/「SideWinder X8」レビュー掲載。BlueTrack&ワイヤレスの新型がもたらすインパクトを探る
 さて,SideWinder X8では,初代SideWinderやSideWinder X5でゲーマーの注目を集めた特徴的なデザインをおおむね踏襲している。つまり,膨らみの大きなマウス後部(=手首側)が手のひらに当たりやすく,いわゆる「かぶせ持ち」をしたとき,最も高いフィット感を得られるという基本線はそのままだ。
 従来製品と並べてみても,「若干丸みを帯びたかな?」といった程度なのだが,実際に握ってみると,フィーリングにはかなりの違いが生じていることが分かる。
 具体的な変更点と,それがもたらした結果は下記のとおり。

1.本体左サイド,親指が当たる部分の窪みが,曲線的なものから逆「く」の字形といえる直線的なものになった
逆「く」の字形,あるいは「八」の字を右回りに90度倒した状態に窪んだ左サイド
画像集#005のサムネイル/「SideWinder X8」レビュー掲載。BlueTrack&ワイヤレスの新型がもたらすインパクトを探る 画像集#004のサムネイル/「SideWinder X8」レビュー掲載。BlueTrack&ワイヤレスの新型がもたらすインパクトを探る

親指第一関節で押さえたときの感触に変化

2.左サイド手前の角が丸みを帯びた
写真左はSideWinder X5,同右は初代SideWinderと,それぞれ本体手前側から比較したところ。従来製品であった左サイドの角張った印象が和らいで丸みを帯びている
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親指“付け根”でのホールドは難しくなったが,一方でフィット感は向上

3.右サイド奥のくびれと返しが緩やかになった
SideWinder X8(左)と初代SideWinder(右)で右サイドのくびれを比べてみると,前者のほうが小さくなり,返し(≒指が引っかかる膨らみ)も小さくなっている
画像集#008のサムネイル/「SideWinder X8」レビュー掲載。BlueTrack&ワイヤレスの新型がもたらすインパクトを探る 画像集#009のサムネイル/「SideWinder X8」レビュー掲載。BlueTrack&ワイヤレスの新型がもたらすインパクトを探る

薬指と小指で押さえる場合に,スペースの余裕を感じるようになった一方,右サイドを小指のみで押さえようとすると指を引っかけづらくなっている

4.後部の盛り上がりが若干なだらかになった

写真左は初代SideWinder,同右SideWinder X5と,本体左側面から比較したところ。初代SideWinder,SideWinder X5,SideWinder X8と,代を経るごとに,本体後部(※写真では右側)の斜面にあるカーブが緩くなっている
画像集#010のサムネイル/「SideWinder X8」レビュー掲載。BlueTrack&ワイヤレスの新型がもたらすインパクトを探る 画像集#011のサムネイル/「SideWinder X8」レビュー掲載。BlueTrack&ワイヤレスの新型がもたらすインパクトを探る

手のひらでがっちりホールドしない持ち方では,より邪魔になりづらくなった。初代SideWinderやSideWinder X5を「しっかりホールドできる」と認識していた人にとっては安定感が減少している


 いずれも小さい変更点,と言ってしまえばそれまでだが,全体としては,どう持つか,そして,従来製品を使ってきたかで評価が分かれるような印象だ。

恒例,4Gamerの比較用リファレンスである,「Logicool MX510 Performance Optical Mouse」(右,以下 MX510)との比較
画像集#012のサムネイル/「SideWinder X8」レビュー掲載。BlueTrack&ワイヤレスの新型がもたらすインパクトを探る
 例えば,筆者のように,マウスの両サイドを親指と小指のみで挟み,手のひらを含めた3点で支える持ち方を好む,あるいは,初代SideWinderやSideWinder X5に慣れてそういう持ち方になってきた人だと,上記の変更により,やや扱いづらくなった印象を受けるだろう。逆に,深めの「かぶせ持ち」を好み,左サイドに親指,右サイド奥のくびれに薬指と小指をあてて挟む持ち方をする人にとって,SideWinder X8は従来製品よりもフィット感が向上し,使いやすくなっている。
 初代SideWinderやSideWinder X5が手に合わなかった人こそ,試す価値のある形状といえるかもしれない。

MX510と正面,側面から見比べた写真。SideWinder X5や初代SideWinderと比べると丸みを帯びた印象のSideWinder X8だが,他社製品と比べるとまだ十二分に角張っているといえる
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底面の裏蓋を外すと,電池のスロットが姿を見せる。後述するとおり,センサーはいわゆるAlways-On仕様なので,節電したい場合は底面の電源スイッチからオフにする必要あり
画像集#015のサムネイル/「SideWinder X8」レビュー掲載。BlueTrack&ワイヤレスの新型がもたらすインパクトを探る
 ファーストインプレッション記事でもお伝えしているとおり,SideWinder X8の重量は,付属の単三型充電池込みで約143g。大型の重量級マウスが珍しくないゲーマー向けマウス市場にあっても,とくに重い部類に入る。ケーブルを重量計からどかした状態の参考値ながら,SideWinder X5は約102g,初代SideWinderでも約126gだったので,143gというのは,看過しがたい重さだ。
 ワイヤレスマウスとバッテリーユニットは切っても切り離せない関係にある以上,ワイヤードマウスと比べて重くなるのは仕方のないことなのだが,いま使っているマウスから乗り換えたときに,持ち方によらず,それまでよりも腕が疲れやすいことは認識しておく必要がある。

付属するUSB接続のレシーバユニット。レシーバユニットの上下中央部には溝が掘られ,そこにPlay & Charge Cableが巻かれている。使うときは引っ張り出してSideWinder X8と接続するわけだ
画像集#016のサムネイル/「SideWinder X8」レビュー掲載。BlueTrack&ワイヤレスの新型がもたらすインパクトを探る
 SideWinder X8の充電は,USB接続のレシーバユニットから伸びる専用のケーブル「Play & Charge Cable」(プレイ&チャージケーブル)から行う。小型の磁石でマウス本体へ吸い付くように固定され,給電のみを行うこのケーブルさえつながっていれば,充電池を抜いた状態でも利用自体は可能だ(※ファーストインプレッションでも指摘されているとおり,警告のLEDが激しく明滅するが)。
 電池と裏蓋の両方を外すと重量は約108g。これなら通常のワイヤードマウス並みの重さになる。ただ,現実問題として,磁力で固定されるだけの給電ケーブルは,ふとした弾みで外れがち。ゲーム中に激しい動きをすると,突然操作不能になる恐れもあって,「電池を外した状態で使う」のに勇気がいる印象だ。

ファーストインプレッション記事より再掲。Play & Charge Cableの先端には磁石が埋め込まれており,同じく磁石の埋め込まれた本体底面先端部とくっついて給電が始まる。「接続時はケーブル経由でデータをやり取りする」なんてことはなく,あくまで給電のみを行う仕様である
画像集#017のサムネイル/「SideWinder X8」レビュー掲載。BlueTrack&ワイヤレスの新型がもたらすインパクトを探る 画像集#018のサムネイル/「SideWinder X8」レビュー掲載。BlueTrack&ワイヤレスの新型がもたらすインパクトを探る


進化したサイドボタンは素晴らしいデキ

チルト対応スクロールホイールも使用感はまずまず


 SideWinder X8のボタンで,ゲームやOSの操作に直接利用できるのは左右メインボタンと,2個の左サイドボタン,センタークリック機能付きスクロールホイールの計7個だ。

 メインボタンの感触は初代SideWinderやSideWinder X5とほとんど同じなので,従来同様のタクトスイッチが採用されているものと思われる。クリック感はしっかりしていて良好なものの,本体カバーと一体になっていることもあって,手前側を押したときに重さを感じるのも従来どおり。
 ただ,だからといってメインボタンの奥(先端)側をクリックすると,底面がガタつくことがある。手のひらで本体の手前をしっかりグリップできていれば問題ないのだが,押さえる力が弱いと,マウスボタン側が沈み込むような格好になってしまうのだ。ソールを外した状態では同じことをしてもガタつかないので,ソールの設計に問題がある可能性は否定できない。

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SideWinder X8のサイドボタンは,上下中央に向かって窪んでいく配置になっている。親指を乗せたままの状態で上下を押し分けられるため,操作に悪影響を及ぼしづらいのが好印象
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こちらはチルトホイール。初代SideWinderの左右を切り取って,細くしたような形状だ。センタークリックボタンのクリック感はやや固く,スクロール操作時のノッチは緩め。チルトホイールにも対応しつつ,「対応したことでホイールがぐらつく」ようなことにもなっていないため,ここは純粋に,従来製品よりもより多くの操作を行えるようになったという理解でいい
 一方,縦に2個並ぶ特殊なレイアウトはそのままに,従来の丸ボタンから平らなボタンに切り替わったサイドボタンだが,これは実に素晴らしい。手首側から見て逆「く」の字形のデザインを採用することで,親指の位置を固定したまま,容易に押し分けられるようになった。
 また,クリック感がわずかに硬くなったことで,サイドボタンに指をかけたまま操作したときに,うっかりサイドボタンを押してしまう,俗にいう「誤爆」が起こりづらくなっている。従来製品,とくにSideWinder X5では誤爆が比較的起こりやすかったので,これはありがたい変更だ。
 もともと,SideWinderシリーズのサイドボタンが持つ使いやすさはトップクラスだと感じていたが,SideWinder X8では,さらなる高みへと上ったように思う。

 SideWinder X8で追加されたチルトホイールも,これといって使いづらい印象はない。武器の持ち替えなどを左右チルトに割り当てて使ってみた限り,違和感なく操作できる。ノッチ(=刻み)の感触はやや緩いが,あくまでもそれはSideWinder X5と比べたときの話。初代SideWinderよりは硬く,ゲームプレイに支障はないレベルである。


一部の布製マウスパッドと相性はあるも

センサー性能の高さは光学式と同等以上か


光学センサーをベースとしつつ,性能を強化したBlueTrack。技術的な詳細は2008年9月10日の記事を参考にしてほしい
画像集#021のサムネイル/「SideWinder X8」レビュー掲載。BlueTrack&ワイヤレスの新型がもたらすインパクトを探る
 握った印象がこれまでとずいぶん違っていたこともあって前置きが長くなったが,そろそろ,センサー性能の検証に入ろう。
 トラッキング解像度4000dpi,フレームレート13000fpsという高いスペックを見て,期待が高まった人もいるだろうし,「どうせスペックシート上だけでしょ?」と,疑いの眼差しを向けた人もいるだろうが,結論からいうと,SideWinder X8が搭載する“BlueTrackセンサー”の性能は,最新世代のレーザーセンサーより明らかに上だ。光学センサーをベースとする以上,当たり前といえば当たり前だが,光学センサー搭載のゲーマー向けマウスと比べても,同等,もしくはそれ以上の実力を持っているといえる。

 さて,今回のテスト環境は表1のとおり。テスト時の設定とテスト方法はその下に示したとおりだ。

画像集#022のサムネイル/「SideWinder X8」レビュー掲載。BlueTrack&ワイヤレスの新型がもたらすインパクトを探る

●Sidewinder X8の設定
  • ドライババージョン:IntelliPoint 6.3
  • トラッキング解像度:4000dpi(※ハードウェア設定の最大値)
  • Windows側設定「マウスのプロパティ」内「速度」スライドバーを中央に。「ポインタの精度を高める」はチェックを外す
  • ソール:専用白色タイプ(※最もテフロン含有率の高いもの)

●テスト方法
  1. ゲームを起動し,アイテムや壁の端など,目印となる点に照準を合わせる
  2. マウスパッドの左端にマウスを置く
  3. 右方向へ30cmほど,マウス本体がマウスパッドから浮いたりしない条件で可能な限り全力でマウスを振る
  4. なるべくゆっくり,2.の位置に戻るようマウスを動かす

 テストに用いたゲームタイトルは「Warsow」。現在,筆者はWarsowをプレイするに当たって,ゲーム内の「Sensitivity」設定を,「180度旋回するのに,マウスを約2cm動かす必要のある状態」にしており,SideWinder X8の場合,設定値は2.5になる。だが,今回のテストに当たっては,「30cmの移動で180度旋回する」値である0.2にあえて設定し,読み取り異常の発生を分かりやすくさせている。
 つまり,この状態でテストを行い,照準が1.の位置に戻れば正常,左にズレたらネガティブアクセル,右にズレたら加速がそれぞれあると判定可能というわけだ。
 これら読み取り異常は,マウスを高速に動かしたときほど発生しやすい。異常を確認できたら,3.における動かす速度を段階的に落としながら繰り返し,「どこで読み取り異常が発生するか」を確認することにして,その結果をまとめたのが表2となる。

※「相性の程度」は,上のテスト方法において,問題がなかったか,生じたとすれば,どの程度の速度で動かしたときに生じたかをまとめたもの。問題の程度は低速で発生したときが最も重大で,以下中速,高速,問題なし,といった区分になる。リフトオフディスタンスは,マウスの底に1円玉を重ねていき,センサーが応答しなくなる高さを示したものだ
画像集#023のサムネイル/「SideWinder X8」レビュー掲載。BlueTrack&ワイヤレスの新型がもたらすインパクトを探る

 ご覧のとおり,ほぼすべてのマウスパッドで問題なく動作した。布製パッドの一部において,相性が多少出たのは残念だが,リフトオフディスタンスの安定した短さも含め,最低でも,最新世代の光学センサー搭載ゲーマー向けマウス並みの性能は持っていると判断して差し支えない。


無線の違和感はあるが,体感上の遅延はなし

完成度が高いからこそ気になる欠点も


 ところで筆者は,SideWinder X8の評価版を受け取ってから,10日ほど,WarsowでBOT相手にプレイしたり,「Alliance of Valiant Arms」(以下,AVA)でオンラインプレイを行ったりしてきた。その立場から述べると,SideWinder X8には,メリットもデメリットも多く,どこから触れるべきか悩ましいのだが,まずはいいところから述べていきたい。

画像集#024のサムネイル/「SideWinder X8」レビュー掲載。BlueTrack&ワイヤレスの新型がもたらすインパクトを探る
 ワイヤレスマウスということで,やはり最も心配されたのは,プレイヤーの操作が反映されるまでの遅延だ。世間一般ではワイヤレスマウスが花盛りになっても,遅延を恐れてワイヤードマウスしか使ってこなかった,(筆者を含む)多くのゲーマーにとって,ワイヤレスというのはそれだけで忌避の対象となり得るわけだが,しかし,SideWinder X8で,ゲーム中に体感できるような,極度の遅延を感じることは一度もなかった。
 Microsoftは,SideWinder X8の発表時に,「遅延は30ms以下。ワイヤードマウスの同6〜9msに劣るのは事実だが,30msという遅延は,人間にとって知覚できない遅れである」と主張していたが,これには納得できるものがある。マウスの動かし始めに,ほんのわずかな遅れを感じはするものの,それによってゲームプレイにマイナスの影響は出たりはしない印象だ。

Play & Charge Cableで充電中の様子。液晶パネルと本体後方のスリットが赤く光ることで,充電中と目で見て分かるようになっている
画像集#025のサムネイル/「SideWinder X8」レビュー掲載。BlueTrack&ワイヤレスの新型がもたらすインパクトを探る
 同様にワイヤレスマウスで心配になるのは,公称30時間とされるバッテリーの持続時間だが,神経質になってマメに充電を行ったりしなくても困らないほど持続するので,煩わしさは皆無だった。うっかり電源をオンのまま一晩放置した場合でも,操作不能になったりはしないため,気がついたときにでも,Play & Charge Cableをつないでしばらくそのまま使っていれば十分,といったところ。
 SideWinder X8はいわゆるAlways-On仕様を採用しており,「一定時間操作がないと,自動的にスリープモードへ移行して節電する」という,一般ユーザーにはいいかもしれないが,ゲーマー的には余計なお世話な機能がカットされている。つまり,底面の電源スイッチを切らない限り,何もしていない状態でもバッテリーを“食って”いるのだが,それでもこれほどバッテリーが持つのは,ちょっとした驚きだ。

 また,リアル系FPSであるAVAをプレイしていて強く感じたのが,サイドボタンの高い完成度である。
 筆者は最近,SideWinder X5をメインで使っており,下のサイドボタンに,「押している間,もしくは再び押すまで,ポインタの移動速度を通常時の10〜90%に低下させる」機能,「プレシジョンブースター」をIntelliPoint 6.3から割り当てている。
 これは,AVAにおいて,「リコイルコントロール時に照準の動き」を細かく修正する必要があるため。基本的にハイセンシ設定でプレイする筆者の場合,本機能をサイドボタンに割り当てておくと便利なのだが,上下サイドボタンの押し分けが容易になったSideWinder X8では,さらに本機能が使いやすくなった印象を受けた。

画像集#026のサムネイル/「SideWinder X8」レビュー掲載。BlueTrack&ワイヤレスの新型がもたらすインパクトを探る
 一方,使っていて最も気になったのは,センサーや遅延ではなく,形状や重さの変化だった。
 筆者個人はSideWinder X5の形状をかなり気に入っているのだが,SideWinder X8で生じた変更の多くが,自分の持ち方とは合わなかったようだ。前述のとおり,マウスの両サイドを親指と小指のみで挟む持ち方をしている筆者にとって,SideWinder X5から変わった両サイドの形状と,約40gという重量増は,持ちづらさを強調する要因となってしまった。
 途中で“気づいて”,親指と薬指,小指で挟むスタイルに変えたところ,むしろSideWinder X5より持ちやすくなったので,改良が進んでいるといえば進んでいるのだが,持ち方を半ば強制するデザインのため,「それまでの自分の持ち方」をしづらくなったのは単純に悲しい。また,重量が増したことにより,ゲームを長時間プレイし続けたとき,腕や手首が(疲れて)痛くなりやすいのもつらい。

従来製品と比べ,やや手首寄りに移動したセンサー。センサーの位置が変わると,手首や肘を支点とした円運動の操作をしたときに操作感が変わってくる
画像集#027のサムネイル/「SideWinder X8」レビュー掲載。BlueTrack&ワイヤレスの新型がもたらすインパクトを探る
 センサー位置が底面中央より手首側へ移動したのも,SideWinder X5に慣れた筆者にとっては違和感を覚えるポイントになった。従来のSideWinderシリーズでは,もっとメインボタン側にセンサーがあったため,“手首より先”で細かい操作を行いやすかったのだが,SideWinder X8ではそれがいくらかやりづらくなっている。

 また,ワイヤレスという観点では,遅延とは別に,ごくごくまれながら,ゲーム中,画面の動きが異常にコマ落ちし,ガクガクしたものになることがあったことについても触れておきたい。多発するわけではなく,生じたとしても1日に一度かそれ以下の頻度だったので,個人的にはあまり気にならなかったが,「ワイヤレスであることの不安がまったくない」わけではないので,こだわる人にとっては敬遠する材料となりそうだ。

SideWinder X8のソールは,初代SideWinderと同様の着脱式で,簡単に交換可能。レシーバーユニットの上ブタを開けると,交換用ソールにアクセスできる。ソールは丸みを帯びた台形×4という仕様になり,初代SideWinderのソールとは互換性がない。なお,ソールの色はテフロン含有率を示しており,白,灰,黒の順に滑りがいい
画像集#028のサムネイル/「SideWinder X8」レビュー掲載。BlueTrack&ワイヤレスの新型がもたらすインパクトを探る
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 最後に,仕様に関する苦言を二つ。
 一つは,ソールが硬すぎる点である。SteelSeries SPやRazer Destructorといったハードタイプのマウスパッド上で動かすと,ゴリゴリと激しくこすれる音がして,マウスパッドの寿命が心配になってくるうえ,ガラス製のIcemat Purple 2nd Editionでは,引っかいたような甲高い音が出て不快感がある。
 もともとSideWinderシリーズのマウスが採用するソールは硬すぎるきらいがあったのだが,なぜほかの製品のような,柔らかいソールに変更しないのかは疑問だ。
 マウスパッドを交換するよりは,ソールを変えるほうが手軽で安価に済ませられるのだし,既存のマウス,例えば「Microsoft IntelliMouse Explorer 3.0」などと同形状にすれば,交換用ソールも入手しやすくなり,ゲーマーの支持をより集められそうなのだが……。

 もう一つは,SideWinder X5でせっかく削られた液晶パネルとマクロ記録ボタンが復活“してしまった”点である。ゲーム中にクイックマクロを記録したくなる場面というのは(少なくともFPSにおいては)皆無。液晶パネルも,ゲーム中に目をやる余裕はない。ワイヤレス化で,バッテリーユニットを搭載するなどして重量が増すのは必然なのだから,少しでも軽くすべく,この二つは削るべきだった。

本体左サイドに配置され,トラッキング解像度やバッテリー状況などのインジケータとして機能する液晶パネル(左)と,左メインボタンの“下”に置かれたマクロ登録ボタン(右,赤く光っているボタン)。そもそも「マウスのみでマクロを登録する」ことの必要性を感じないのは,筆者だけではないはずだ
画像集#030のサムネイル/「SideWinder X8」レビュー掲載。BlueTrack&ワイヤレスの新型がもたらすインパクトを探る 画像集#031のサムネイル/「SideWinder X8」レビュー掲載。BlueTrack&ワイヤレスの新型がもたらすインパクトを探る


細かな不満は多く残るが,性能自体に間違いはなし

ワイヤレスであることに魅力を感じるならアリ


 以上,期待が大きかったこともあって,つい厳しく見てしまったが,

  • 持ち方次第では非常にしっくりくる本体デザイン
  • 素晴らしく使いやすいサイドボタン
  • 最新世代の光学式マウスと同等かそれ以上のセンサー性能
  • ワイヤレスであることをほとんど感じさせない反応速度

という点で,SideWinder X8は,ゲーム用マウスの選択肢となり得る存在だ。しかし同時に,

  • 従来のSideWinderシリーズが気に入っていた人や,指先で「つまみ持ち」する人だと,手に合わない可能性のある形状
  • 約143gという本体の重さ
  • ソールの硬さと,それに起因するガタつき
  • 体感できるレベルにないとはいえ,確実に存在する遅延と,それがもたらす不安感
  • 1万円前後という予想実売価格

というマイナスポイントも存在する。とくに,140g超級の重量は間違いなく人を選ぶ。強引にまとめてしまえば,このアクの強さこそ,SideWinder X8が持つ最大の特徴である。

製品ボックス。個人的には,センサー性能とサイドボタン,そして形状と重量を天秤にかけると,SideWinder X5のほうがSideWinder X8よりも使いやすく感じられた。このように,どこを重視するかでSideWinder X8の評価は変わるはずだ
画像集#032のサムネイル/「SideWinder X8」レビュー掲載。BlueTrack&ワイヤレスの新型がもたらすインパクトを探る
 これらメリットとデメリットを勘案し,いくつかのトレードオフを納得できる人にとって,SideWinder X8は,待望のゲーム用ワイヤレスマウスとなる。逆に,それができないのであれば,素直にあまたあるワイヤードタイプの選択肢から選んだほうが,最終的に満足できる可能性は高いだろう。

 もともと人を選ぶ傾向が強いSideWinderシリーズだったが,SideWinder X8によって,その傾向はさらに強まった。SideWinder X8に“選ばれた”人にとっては,これ以上ない選択肢となるはずだ。
  • 関連タイトル:

    SideWinder

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