レビュー
SideWinderマウスのエントリーモデルが持つ信頼性を探る
SideWinder X3 Mouse
» メーカー希望小売価格3990円(税込)で市場投入された,Microsoft製ゲーマー向けマウスのエントリーモデルを,fumio氏が評価する。上位モデルとは一線を画す,シンプルな外観の新製品は,コスト意識の高いゲーマーにとって,価値のある選択肢となり得ているだろうか?
ある意味でSideWinderらしくないともいえる新製品は,高くても4000円前後と,ゲーマー向けマウスとしては非常に安価なのも特徴だが,果たしてその実力はいかほどか。今回も,FPSゲーマーの視点からレビューしてみたいと思う。
持ち方を選ばない左右対称デザイン
クセの少ないデザインと軽さも好印象
本体サイズは実測で70(W)×120(D)×39(H)mm,重量はケーブル込みで同137g,ケーブルを秤からどかせた参考値で同95〜99gだった。重さは「Razer Diamondback 3G」と同程度で,サイズを考えると軽い部類に入るといっていい。
実際,いろいろな持ち方を試してみると,「かぶせ持ち」「つかみ持ち」時,手のひらにしっかり当たって安定したホールド感が得られるだけでなく,従来のSideWinderシリーズで一貫して相性のよくなかった「つまみ持ち」でも,SideWinder X3なら違和感がなく利用できるようになった。
同時に,薬指で右メインボタンを押す,いわゆる3本指スタイルでの操作性も,従来のSideWinderシリーズと同様に問題がない。もちろん,左手でも使えるようになったというメリットもあり,総じて,クセが少なくなり,うまくまとまった印象を強く受ける。
メインボタンとホイールの操作感はX5譲り
一方,サイドボタンの使い勝手は今一つ
ホイールも,見た目,操作感ともにSideWinder X5と酷似。回したときの止まり具合が若干緩い点も含めて共通だが,基本的に不満はない。
一方,指が届きやすく,押し分けがしやすいことから,高く評価していたSideWinderシリーズ伝統の縦並びサイドボタンは,影も形もなくなってしまった。左右サイドに1個ずつという,Microsoft製の一般PCユーザー向けマウスによくある配置になってしまい,どうにも「普通のサイドボタンになってしまったなあ」といったところ。
ハイセンシ&樹脂製パッドなら実用可能だが
低感度で使う人&布パッドを使う人には不向き
マウスレビューのたびに繰り返しているが,筆者は普段,マウスを約4cm移動させたときに,ゲーム内で視点が180度ターンする設定でFPSをプレイしている,いわゆるハイセンシのプレイヤーだ。当然,SideWinder X3のテストに当たっても,まずはこの設定を行ってプレイしたわけだが,樹脂製でハードタイプのマウスパッドと組み合わせて使用した限り,センサー性能に特段の不満を覚えることはなかった。リフトオフディスタンスも短いほうだ。
ただし,だからといって,すべてのゲーマーに勧められるかというと,そうでもないという話を,ここからは進めていこう。テスト環境は表1,テスト条件はその下に箇条書きで示したとおりとなる。
●SideWinder X3の設定
- ドライババージョン:6.3(※IntelliPoint 6.3)
- トラッキング解像度:2000DPI
- レポートレート(≒ポーリングレート):500Hz(※デフォルト。IntelliPointからの変更不可)
- Windows側設定「マウスのプロパティ」内「速度」スライダー:中央
- Windows側設定:「ポインタの精度を高める」:オフ
●テスト方法
- ゲームを起動し,アイテムや壁の端など,目印となる点に照準を合わせる
- マウスパッドの左端にマウスを置く
- 右方向へ30cmほど,思いっきり腕を振って動かす「高速操作」,軽く一振りする感じである程度速く動かす「中速動作」,2秒程度かけてゆっくり動かす「低速動作」の3パターンでマウスを振る
- 振り切ったら,なるべくゆっくり,2.の位置に戻るようマウスを動かす
- 照準が1.の位置に戻れば正常と判断可能。一方,左にズレたらネガティブアクセル,右にズレたら加速が発生すると判定できる
テストに用いたゲームタイトルは「Warsow」。本テストにおいて,ゲーム内の「Sensitivity」設定は,「180度ターンするのに,マウスを30cm移動させる必要がある」0.3に設定し,読み取り異常の発生を分かりやすくさせている。
そして,テスト結果を示したのが表2だ。
マウス以外のテスト環境に問題がある可能性を疑い,表1で示したテスト環境で,念のためSideWinder X5でも検証したが,結果はレビュー時と同じ。さらに,別途筆者手持ちのサブノートPCでもテストしたり,一部,担当編集にもテストに参加してもらったりしても,やはり結果は同じだったので,テスト機材や環境におかしなところはないはずだ。
以上を踏まえて傾向をまとめると,樹脂系のマウスパッドなら,低速動作(=ハイセンシティビティ)なら正常な読み取りを期待できるが,高速動作(=ローセンシティビティ)だとポインタ飛びの可能性が残る。一方の布系マウスパッドだと,低速動作どころか,中速動作(=ミドルセンシティビティ)でも問題の出る可能性がある。
低価格・軽量・クセの少ない外観は魅力
ハイセンシ志向の人には勧められるが……
端的に述べて,SideWinder X3の利用を勧められるのは,樹脂製のマウスパッドと組み合わせて,高感度設定でプレイする人。この条件を満たす人なら快適に利用できるだろう。
一方,それ以外の人には勧められない。これでセンサー性能がもう少しよければ,低価格帯の新たな定番製品となり得る可能性も感じるので,Microsoftにはぜひ,SideWinder X3のセンサー改良版を,“SideWinder X4”として出してほしいと願うばかりである。
- 関連タイトル:
SideWinder
- この記事のURL: