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[COMPUTEX]モバイル分野で反撃に出るIntel 22nmプロセスのSilvermontは,DX11対応の第7世代グラフィックスを統合して3倍速い!?
説明を担当したのは,Intel副社長兼モバイル&コミュニケーション事業本部長のハーマン・ユール(Hermann Eul)氏である。本稿では説明会の要点をまとめて,次世代Atomの可能性をひもといてみたい。
取り組みが実を結び始めたIntelのモバイル市場向け製品
ユール氏はSilvermontの話題に入る前に,現行世代のAtomである,開発コードネーム「Clover Trail+」ことAtom Z2500シリーズの採用拡大について報告した。
会場に展示されていたClover Trail搭載タブレット(左)と携帯電話向けAtom「Medfield」を搭載したスマートフォンの数々(右) |
まずユール氏は,モバイル分野におけるIntelの強みとして,アーキテクチャとブランド,そして最先端プロセスの3点を掲げた。
Atomは“エントリー向け”から,高性能を求める“パフォーマンス向け”の製品まで,幅広くラインナップしているうえ,Intelは半導体業界でも最先端の製造プロセスを有している。さらに,ベースバンドチップやソフトウェアなどトータルプラットフォームを有すると,ユール氏はIntelの優位性を説明する。
モバイル分野におけるIntelのアドバンテージは,アーキテクチャ,ブランドバリュー,先端プロセスの3本柱である |
Clover TrailとMedfieldは着実に採用例を増やし,とくに新興市場でのローエンド端末は,さまざまな国で販売されている |
説明会場にはその言葉を裏付けるように,各国で販売,または開発中のAtom搭載スマートフォンやタブレットがずらりと展示されていた。その中には,ASUSTeK Computerの「MeMO Pad FHD10」のように高解像度液晶パネルを備えた性能重視の製品から,新興市場向けの低価格端末まで,さまざまな市場に向けた端末があった。また最新の採用事例として,SamsungのAndroidタブレット「GALAXY Tab 3」の10.1インチモデルに,Clover Trail+が採用されるという発表も行われた。
タブレットやスマートフォン市場になかなか食い込めないでいたIntelだが,ここ数年の取り組みがようやく実を結びつつある,といったところだろうか。
Clover Trail+は従来製品と比べて,性能とバッテリー駆動時間,グラフィックス性能やセキュリティを向上した |
Clover Trail+の採用製品も紹介。これにGALAXY Tab 3が加わった |
期待が集まるSilvermontアーキテクチャ
Bay Trail搭載タブレットは今年末に登場?
Clover Trailの採用事例が増加するその裏で,Intelは次世代AtomとしてSilvermontベースのCPUを,2013年後半に投入することを明らかにしている。ユール氏はSilvermontの仕様についても,おおまかに説明した。
まずSilvermontでは,第4世代Coreプロセッサと同様の22nm Tri-Gate(トライゲート)プロセスが採用される。4日に開かれたIntelの説明会レポートでも触れたが,SilvermontベースのCPUは,エントリー向けの2-in-1スタイルPCなどでも採用されるほか,データセンターからモバイル機器まで,幅広く採用される予定だと言う。ピーク性能は従来型Atomと比べて最大3倍に,同じ性能なら消費電力は5分の1になるとのことだ。
なお,Silvermontを採用するCPUは,タブレット向けが「Bay Trail」(ベイトレイル,開発コードネーム),スマートフォン向けが「Merrifield」(メリフィールド,同)と呼ばれている。
次世代Atom「Silvermont」は22nmプロセスが採用され,以降14nmプロセスのAirmontへと続くというロードマップ |
SilvermontをベースとするCPUの開発コードネーム。サーバー向けのAvoton(アヴォトン)からスマートフォン向けのMerrifieldまで,幅広い用途に展開される |
コンシューマー向けデバイスに使われるのは,タブレット用のBay Trailとスマートフォン向けのMerrifieldだ |
Bay Trailを搭載した製品は,2013年の年末商戦頃に登場の予定 |
これらに加えて,Bay Trailに統合されるグラフィックス機能(以下,統合GPU)は,Intel製の“第7世代グラフィックス”を採用するという。Clover Trailの統合GPUはIntelの開発ではなく,Imagination Technologiesが開発したPowerVRシリーズを使っていた。Bay Trailではこれが,自社製に変更されるというわけだ。
この第7世代グラフィックスでは,DirectX 11がサポートされ,その性能は3倍になると言う。下に掲載しているClover Trailとのグラフィックス性能比較のスライドを見ると,OpenGLベースのグラフィックスベンチマークテスト「GLBenchmark 2.5」で4倍,4GamerではおなじみFuturemarkの「3DMark」では,Ice Stormプリセットで4.7倍というグラフが示されている。
Clover Trail(写真左)とBay Trail(写真右)による,ビデオトランスコードに要する時間比較テストの様子。当然Bay Trailのほうが大幅に速い |
グラフィックス性能の比較。2種類のベンチマークテストで,いずれも4倍以上の性能を示したという |
スマートフォン向け次世代Atomと組み合わせる
Intel製のLTEモデムのデモも披露
スマートフォンで採用を勝ち取るには,CPUコアやSoC(System-on-a-Chip)だけでなく,無線通信を司るベースバンドプロセッサも重要な要素である。今回Intelは,自社製のLTEモデムによる速度のデモを披露した。デモのテストでは40Mbps超の通信速度を発揮していた。このモデムは,各国で使われる15種類の通信周波数帯に対応し,省電力で実装サイズも小さいことなどが利点とされている。
Intel製LTEモデムの特徴を示したスライド。競合製品に対して30%低消費電力と謳われている |
LTEモデムのデモでは,40Mbps超の通信速度を発揮していた |
IntelのLTEモデムは現在,最重要のパートナー企業(Tier 1と呼ぶ)にて検証が進められており,間もなく製品として登場する見込みだという。
Intel NewsroomのCOMPUTEX特設ページ(英語)
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