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[COMPUTEX]2010年のNVIDIAは,タブレット,DX11,そして3D立体視。NVIDIAプレスカンファレンス詳報
COMPUTEX TAIPEI 2010はざっくり,TWTC(Taiwan World Trade Center)&Grand Hyatt Taipei地区とTWTC Nangang地区の2か所で開催されるが,NVIDIAは,前者の近く,会場から独立した場所に“NVIDIAテント”として単独出展しており,プレスカンファレンスはここに特設されたシアター内での開催となった。
筆者が知る限り,PC/IT系イベントで設けられたNVIDIAブースとしては最大規模のものとなっており,力の入れ具合が相当なモノであることが窺い知れる。
プレスカンファレンスはNVIDIAの社長兼CEO,Jen-Hsun Huang(ジェンスン・フアン)氏による基調講演の形で実施されたので,今回はその内容をまとめてお届けしたい。
2009年を振り返りつつ
タブレットPCブームに乗るNVIDIA
NVIDIAは2009年もさまざまな技術やマーケティングキーワードを発表したが,最初に出てきたのは「Optimus」だった。これは,IntelのチップセットやCPUに統合されるグラフィックス機能と,ノートPC向けGeForceとを,動作させるアプリケーションの種類に応じて適宜,自動的に切り替えて用いることで,3D&CUDAパフォーマンスと消費電力効率を両立させようというものだ。
続いて示されたのは「ION」GPU。IONは,AtomベースのNetbookなどに,GeForce 9400M mGPU相当のグラフィックス機能を与えるソリューションである。
先にレポートを掲載したラウンドテーブルでも氏はそう述べていたので,スレート(slate,石板)型のタブレットデバイスに氏がかける情熱は本物なのだろう。
なぜそんなにまでNVIDIAはタブレットPCを本命視するのか。ここに疑問を持つ読者も多いと思うが,その理由としてHuang氏は下に示したグラフを挙げ,「タブレットPCのほうがNVIDIAにとって潜在的ビジネスチャンスが大きいから」と,明快に理由を述べている。
存在するデジタルコンテンツを楽しむに当たって,適しているコンテンツの種類が最も多いのはタブレットPCである。リッチなグラフィックスで楽しむのであれば,そこにGPUのニーズはあり,その数たるや軽くGeForceの総数を超えるはずである。そのタブレットPC向けGPUとはなんぞや。「Tegra」である,というわけだ。
ラウンドテーブルでの説明と切り口はやや異なるが,到達する結論としてTegraがやってくる論旨は同じだ。NVIDIAとしては,2009年にあった空前のNetbookブームの次は,スレート型タブレットPCが“来る”と踏んでいるのだろう。Windows XP時代にも「タブレットPCが来る!」と騒がれて,お騒がせな嵐として過ぎ去っていったことがあったが,今回はiPadというブーム引率者があるので,これまでとは違う流れになるのかもしれない。
デスクトップPC向けには
噂のテッセレーションモンスターをアピール
NVIDIAは,とくにテッセレーションのパフォーマンスに力を入れており,競合の最上位モデルがテッセレーションユニットを1基しか搭載しないのに対し,シリーズ最上位モデルの「GeForce GTX 480」では15基も搭載している。
どうしてNVIDIAはここまでテッセレーションに力を入れたのか。その理由について,Huang氏は,ここでもグラフを用いて解説した。
いわく,「GPUが進化してきた歴史の中で,演算性能(GFLOPS,下のグラフ中オレンジの線)は順当な上昇を見せているのに対し,取り扱うジオメトリ量(GTriangles/s),同グリーン線)はそれほど上昇していなかった」。
ジオメトリ量(=ポリゴン数)が増えるとビジュアル表現は美しくなるが,アニメーション処理や物理シミュレーションの適応対象が増えてしまい,負荷は高くなる。一方,アニメーション処理や物理シミュレーションには,それほど多くのポリゴンがなくても事足りる。レンダリングにおいても,多ポリゴンモデルをそのままレンダリングすると,視点との距離によって,1ポリゴンが1ピクセル未満となる事態が頻発し,ピクセル描画時に,せっかく行ったジオメトリ演算が完全に無駄になってしまう。
演算パワーを無駄なく活用しつつ,高品位な多ポリゴン表現を行うことを可能にするのがDirectX 11のテッセレーションステージなのだ。
ATI Radeon HD 5000シリーズだと,本ステージへの対応はAPIレベルに留まるため,重度の活用を行うとパフォーマンスが低下するという特性が指摘されている。2010年のNVIDIAとしては,競合との明確な性能差として,この部分を突いていきたいということなのだろう。
すべてのPCは3D立体視対応へ
3D Visionこそがデファクトスタンダードと強調
NVIDIAは,2010年から本格化の兆しを見せつつある立体視対応テレビのブームよりもはるか前から立体視ソリューションを提供してきたが,これまでは立体視というもの自体が,SLIと同様,マニア向けのものだった。
だが,その認識は変わりつつある。昨今の立体視ブームが追い風となり,NVIDIAの立体視ソリューション「3D Vision」が,主流へ昇華していく兆しを見せているというのだ。
また,「Blu-ray 3D」と呼ばれる立体視対応Blu-rayソフトも今年後期から続々と登場する予定だが,そのPC向けのプレイヤーソフトとしてCyberlinkの「PowerDVD 10」を紹介。インターネットベースのストリーミングビデオも,近い将来,立体視に対応していくとし,その先陣を切る存在として,MicrosoftのWebアプリケーションフレームワーク「Silverlight」も紹介された。
それを踏まえると,Huang氏が「いずれ,3D立体視対応のPCが当たり前になるだろう」という予測も,なかなか示唆的である。
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Tegra
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