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AndroidタブレットでPC版「Skyrim」がプレイ可能に!? ソフトウェアの拡充と新機能で攻める「Tegra 3」
AndroidタブレットでPC版「Skyrim」がプレイ可能に!?
Tegra 3に最適化されたリモートデスクトップツールが登場
最新PCゲームタイトルをリモート環境でプレイできるようになる(?)というSplashtop THD |
Splashtop THDのデモ。写真で左下に見えるのがGeForce GTXベースのホストPCで,Tegra 3タブレットとの接続は無線LANで行われていた |
NVIDIAのJen-Hsun Huang(ジェンスン・フアン)社長兼CEOは,2012 International CESの発表会で「Splashtop Remote Desktop THD」(以下,Splashtop THD)というアプリケーションのデモを披露した。これはSplashtopが開発したリモートデスクトップツールで,Splashtop Remote Desktop THDはその名のとおり「THD」(Tegra HD)版,すなわちTegraファミリーに最適化されたバージョンという位置づけになっている。
Splashtop THDでは,リモートデスクトップサーバー&クライアントの定番アプリである「Splashtop Remote Desktop」を,クアッドコアCPUと強化版GPUコアを統合したTegra 3,そしてAndroid 4.0に最適化させることで,一般的なデュアルコアCPUベースのタブレットで通常版のSplashtop Remote Desktopを使ったときと比べて最大5倍の性能を発揮できるようになっているとのこと。それにより,60fps以上のフレームレートと40ms以下の表示遅延を実現しており,「レスポンスにシビアなFPSでもない限り,最新世代のゲームタイトルも十分プレイできる」と,同デモ担当のNVIDIAスタッフは胸を張っていた。
もちろん,前述した「60fps以上,40ms以下」といった性能を実現するには,ホストとなるPC側のスペックも重要になる。前出の担当者は,「GeForce GTXクラスのGPUを搭載したデスクトップPCを組み合わせると,最新のPCゲームタイトルもタブレット端末からストレスなくプレイできる」と述べている。
「現在は,ゲームプレイ時に最も重要になる反応速度をもう少し高められないか,最終調整に入っているところだ」(Ramaswamy氏)。
2012 International CESのNVIDIAブースでは,Splashtop THDのβ版を使ってSkyrimをプレイできる試遊台が置かれていたので,今回は4Gamerでもおなじみの西川善司氏にSkyrimをプレイしてもらい,それを筆者が撮影してみた。それが下に示したビデオだが,確かに,ホストサーバー側とクライアント側との間に,画面描画のズレはほとんど見られない。
実際にプレイした西川氏によると「操作時に少し遅れるのはやはり気になる」とのことだったが,Ramaswamy氏が,イベント会場の劣悪な無線LAN環境が原因だと述べていた点も付け加えておきたい。氏は「安定したネットワーク環境でなら,反応速度はかなり改善する」と述べていた。
Tegra 3の「5番めのコア」によって実現される
「DirectTouch」と「PRISM Display」
NVIDIAは,その「5番めのコア」――NVIDIAは当初「Companion CPU Core」と呼んでいたが,最近では「Ninja Core」あるいは「Shadow Core」という表現を積極的に使うようになっているため,本稿では以下,便宜的にNinja Coreと呼ぶ――を積極的に活用することで,Tegra 3の付加価値にしようとしている。その具体的な例が,1月10日の記事でもお伝えした「DirectTouch」と「PRISM Display」である。
DirectTouchは,タッチインタフェースコントローラの代わりにNinja Coreを利用することで,コントローラ搭載のコストを抑えつつ,より優れたタッチ性能を実現するというものである。
「Ninja Coreで制御すれば,タッチインタフェースコントローラが不要になるばかりか,一般的なコントローラに比べて約6倍もの性能を実現できるようになるため,同じ画面を共有したマルチプレイゲームの実現も容易になる」(同氏)。
一般的なタッチインタフェースコントローラを採用したときのマルチタッチ性能。9本指のマルチタッチでは78サンプル/sにまで落ちるという |
対してこちらはDirectTouchを利用した場合。9本指のマルチタッチ時に,200サンプル/sを実現していることが分かる |
しかし,タブレットデバイスにおいて,電力の多くを消費しているのは紛れもなくバックライトであり,「バックライトの輝度を落として運用できるようになるため,タブレットデバイス全体の消費電力を大幅に低減可能だ」と,Ramaswamy氏はそのメリットをアピールしている。
注意したいのは,PRISM Displayの動作に,タブレットデバイスに搭載される液晶パネルの特性に合わせたカラー変換テーブルなどが必要になる点。つまり,「外部ディスプレイ接続時などには,この技術は利用できない。あくまでも“閉じたシステム”のための技術」(Ramasamy氏)というわけだ。
Ramasamy氏は,「Ninja Coreは,もともとクアッドコアSoCをより低消費電力で動作させるために実装された。しかし,タブレットなど,消費電力や熱設計に若干の余裕があるデバイスでは,Ninja Coreを新技術の実装に使うことで,差別化を図りたいというベンダーも多い」と述べ,さらなる新機能が登場する可能性も示唆していた。
Tegra 3世代でも「専用ゲームタイトル」が登場
Tegra 3でグラフィックスの何が変わるのか
「Tegra 3世代で,魅力的なゲームタイトルは登場するのか?」という疑問に対しては,NVIDIAでゲームデベロッパのコンテンツ開発などをサポートする飯田慶太氏が,「現在のゲームコンソールに近い処理性能を実現したTegra 3を,新しいゲーム市場開拓の足がかりにしようというデベロッパは少なくない。今後,Tegra 3に最適化されたゲームタイトルが続々と登場する」と述べている。
飯田慶太氏(Director of Global Contents Management, NVIDIA) |
SHADOWGUN THD。端末はEee Pad TF201(Eee Pad Transformer Prime)である |
で,どういったタイトルが揃うかだが,飯田氏は「Tegra 3対応ゲームコンテンツの多くは,『Tegra 3推奨』になるが,一部は『Tegra 3専用』になる」と予告している。
たとえば,その高いグラフィックス品質で話題を集めた「SHADOWGUN」の拡張版「SHADOWGUN THD」は,より高いCPU&GPU性能を要求することからTegra 3専用になる見通しとのこと。そのほか,「DaVinci Heroes THD」など合計9タイトルが,2012年前半,Tegra 3タイトルとしてTegra Zoneに登場する見込みだという。
Tegra 3推奨タイトルは「ゲームをプレイしていて楽しいと思えるような,きめ細やかなグラフィックスや視覚効果に対応するタイトルが多い。『タブレットでゲームをプレイするならTegra 3』と呼ばれるように,充実させていきたいと考えている」(飯田氏)とのことだった。
ところで,Tegra 3向けコンテンツと,一般的なタブレットデバイス向けコンテンツでは,視覚効果にどういった違いが出るのだろうか。
Tegra 3に統合されるGPUコアはGeForce 7世代のもので,言ってしまえばTegra 2の拡張版に過ぎないが,飯田氏によれば,性能の向上により,モーションブラーや被写界深度効果,水面などの反射表現,爆発表現,オブジェクトのダメージなどといった簡単な物理演算処理も加えられるようになるという。
また,Tegra 3専用タイトルの投入を計画しているゲームデベロッパの多くは「GeForceコアの性能を活かし,高解像度テクスチャやシャドウマッピングを適用したり,キャラクターにより多くのポリゴンを割り当てることでグラフィックス品質を高めたりといったことを目指しているようだ」とも,飯田氏は述べていた。
なお,主なTegra 3対応コンテンツは下記のとおりだ。
「Riptide GP」をTegra 3へ最適化させてきたVector Unitの新作「Shine Runnner THD」。ゲーム機並みの描画品質を実現すると謳われる |
BrideaのMMOFPS,DaVinci Heroes THDでは,Tegra 3の性能を,より美しいグラフィックス品質の実現に用いているという |
リアルタイムシャドウや複雑な光源処理を有効にした,PitBull/Limbs Aliveの「Big Top THD」 |
“Project Kal-EL”のデモとしてもおなじみの「Glowball」も,TegraZoneで配布されている |
……今回,Tegra 3によってクアッドコアSoC競争で先行したNVIDIAだが,Qualcommも「Snapdragon S4」のクアッドコアモデル「APQ8064」の動作デモを行っているほか,Intelも次世代Atom「Medfield」(メドフィールド,開発コードネーム)でタブレット市場へ本格参入する計画を予定していたりと,2012年第2四半期以降,激しい競争が待ち構えている。そこでNVIDIAは,Tegra 3の優位性を示すために,「クアッドコア押し」ではなく,プレミアムコンテンツで,エンドユーザーの購買欲を刺激しにきたということになる。
Jen-Hsun Huang氏は,「一般消費者が新しいデバイスを選ぶときにこだわるのは,もはやCPUなどのハードウェアスペックではない。どのようなユーザー体験ができるかがすべてだ」と述べている。そういった新しいユーザー層に訴求する,遊んでみたいゲームコンテンツや,使ってみたいソフトウェアを充実させることで,Tegra搭載タブレット,ひいてはTegraプラットフォームを普及させる切り札にしたいというわけだ。
さらには,「Kal-El+」と呼ばれる強化版Tegra 3を年内に出荷する計画もNVIDIAのロードマップにはある。ソフトウェアの充実を図ると同時に,ハードウェアも確実に性能を高めていくことで,モバイルSoC市場における優位性を確保していくというのが,現時点におけるNVIDIAのシナリオだ。
Tegra Zone(英語)
NVIDIA日本語公式サイト
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