インタビュー
隠れた名作「MysticStone」のプロデューサーに聞く,現状と将来――「良運営」として有名なアエリアの主力作の,今後の展望やいかに
今回は,国内運営を行うアエリアにお邪魔して,MysticStoneのプロデューサー永谷典之氏にいろいろ話を聞いてみた。未読の人はぜひ開発元インタビューと併せてご覧いただきたい。
世界初のAAAクラスを実現するフリープレイMMORPGを作りたい「MysticStone」開発者インタビュー
「MysticStone -Runes of Magic-」公式サイト
4Gamer:
本日はよろしくお願いいたします。
正式サービスが始まってもう2か月になりますが,調子はいかがですか?
以前,Grand Fantasiaのときの同接の爆発的な伸びに比べ,今回は「じわじわ」という感じで伸びています。Grand Fantasiaと比べてボリュームのあるコンテンツが多いので,一度ハマッてしまうと抜けられない感じなのか,今回は力強い感じの伸び方です。一人当たりのプレイ時間が長いというのも特徴となっています。
4Gamer:
Grand Fantasiaと比べても長い感じですか?
永谷氏:
ええ,Grand Fantasiaの場合は,大人も子供もという感じで広く遊んでいただいていますが,MysticStoneの場合は,かなりがっつりと遊んでもらってますね。どちらかというと,大人のお客様の比率が高いようです。
4Gamer:
Grand Fantasiaのほうは,確かに取っ付きやすいですが,それとは逆の感じになっていますよね。
永谷氏:
はい。取っ付きやすさでいうとGrand Fantasiaのほうが上ですが,MysticStoneは,興味を持ってもらった人には長く遊んでもらっている感じです。現状ではまったりとプレイしていただいているお客様が多くて,全体になごやかな雰囲気になっています。わりと年齢層が高めなのも特徴で,Grand Fantasiaと比べても平均で3歳くらい高い感じですね。オンラインゲーム歴にしても5年以上といった経歴の長い人が多いです。
4Gamer:
なるほど。
永谷氏:
とはいえコアプレイヤーでガチガチかというとそうでもなく,Grand Fantasiaでは女性のお客様が多かったのですが,それがMysticStoneにも流れてきています。見た目だけだと,ガチの洋ゲーで男性しかいないようにも見えるのですが,ハウジングや生産などの生活系スキルが充実しているおかげで女性のお客様も結構いらっしゃるようです。それもあってか,ゲーム内の雰囲気もかなり落ち着いているんでしょうか。
4Gamer:
しかし洋ゲーぽいというか,微妙に癖がありますよね。あとはちょっと説明が少なすぎるように思います。
永谷氏:
情報不足については,公式サイトなどを通して今後改善していく予定です。開発会社とも連絡を取り合っており,コアプレイヤーとして遊んでもらっているお客様と,慣れていないお客様をつなぐようなコンテンツを作っていきたいと考えています。
4Gamer:
クエストなども親切ではあるんですが,NPCに行き当たる方法が何通りかあって,どれかでないと探せないとか。
永谷氏:
現在はゲームをプレイする際のハードルをどんどん下げていく,そこに一番力を入れています。始めてみた人が,本当に面白いゲームだと分かるところまでやっていただけるようにすることを目指しています。
クラスの偏りはあまりない――組み合わせ次第では,最初は苦労するクラスもありますね
4Gamer:
プレイヤーからの評価はどうですか?
永谷氏:
お客様には,かなり高く評価していただいています。先ほど申し上げたように,年齢層が高めのお客様が多いためか,ゲーム内も落ち着いている雰囲気があって,純粋にゲーム自体を評価してもらっている感じはありますね。
最初の部分などで分かりにくいという人もいますが,デュアルクラスなどシステム面で特化した部分まで経験した人にはかなり好評です。
4Gamer:
デュアルクラスは最大の特徴でもあるわけですが,デュアルクラスで多く選ばれている組み合わせとかありますか?
永谷氏:
そんなに極端には偏りはないんですよ。わりと満遍なく散っている感じです。現状で,それほど死んでいるクラスの組み合わせがないという声はよく聞きますね。
4Gamer:
それは非常によく聞きますね。ただ,それについては,いま一つ疑念を捨てきれないのですが。
永谷氏:
組み合わせ次第では,最初は苦労するクラスもありますが,レベル20ではピンとこなくても,レベル30になると遊び方が分かってくるということはあるようですね。やり込んでいただくごとに価値を見出してもらっている感じです。
ウィザード |
ナイト |
プリースト |
4Gamer:
なるほど。エリートスキルなどはよいのですが,武器とスキルの関係が非常に強い面がありますよね。スキルが武器と強く結びついているのに,その武器が装備できないためスキルが使えないことがあるのは,個人的にちょっともったいない部分だと感じています。
永谷氏:
そういった点につきましてもすでに開発と話を進めていまして,できるだけ「死んだ部分」がなくなるような方向に改善しているところです。各クラスの特徴を,メリハリをつける形でよりよい姿にしてきたいと思っています。
ただ,特定の武器が使えないということで特徴が出るということもありますし,使えないからスキルの意味がなくなっている場合もあります。そのへんのバランスをよく考えながらやっていきたいと思います。
4Gamer:
ある程度以上のレベルでどんなバランスになっているのかがちょっと分からないのですが,クラスについては,とくに不満は出てないということでしょうか。
永谷氏:
もちろん,オンラインゲームでは「この職業はあまり強くない」といった意見は必ず出てくるものなので,MysticStoneでも「この組み合わせだと〜」といった意見も見ないわけではありません。ただ,ほかのゲームと比べるとかなり少ない印象がありますね。多少の差はあっても,大きく劣化しているというものはないと思います。
4Gamer:
各クラスの強さというか,力の源から違っているのは珍しいと思いました。SPを使うものやテンションを使うものなどいろいろで,クラスの組み合わせ方にも影響してしますよね。
ウォーリアー |
スカウト |
ローグ |
対人部分はまだまだ未調整――プレイヤーさんが楽しめない仕様では意味がありません
4Gamer:
現状ではPvEが中心となっていますが,クラスの組み方などを考えるとPvPについても注目が集まりそうなタイトルだと思うのですが。そのあたりはどうでしょうか。
永谷氏:
現在はまだ実装されていないPvPですが,すでに「PvPが実装されたらこのクラスの組み合わせが最強」ではないかと噂も出ていたりしますし,興味を持っている人も多いようですね。
4Gamer:
海外だとすでに入っているんですよね。
永谷氏:
1on1といったものは実装されています。GvGについても開発が進んでいると聞いています。それをどのように入れるかは,これから考えていきたいと思います。
4Gamer:
海外ではPKサーバーなどもありますが,日本ではそういったものは導入されるのでしょうか。
日本ではPKに関しては慎重に検討していこうと決めています。今後皆様のご意見をもとにPvPシステムを入れていきたいと思います。
4Gamer:
クローズドβテスト時の課金アイテムサンプルでは,PK関係のものがやけに多くて正直びびっていたのですが(笑)。
永谷氏:
アイテムを落とさなくなるものとかですね。現在のサーバーではPKはありませんから,実装しても意味がないものです。
4Gamer:
現状でも同意していればできなくはないのでしょうが,まあメリットがあまりないですからね。「アイテムがドロップします」と言われて,あえてやろうという人はあまりいないと思います。
永谷氏:
PKも,それによってどこまで殺伐としていくのか,コミュニティがどう形成されていくのかというのには興味があります。一度はテストをしたいとは思っているのですが。
4Gamer:
ちなみに,GvGが実装された場合には,アイテムドロップとかはあるんですか?
永谷氏:
それはまだ分かりませんが,日本に導入するときには調整します。お客様が楽しめない仕様では意味がありませんので,開発と相談の上,日本側からの要望として出していきたいと思っています。
4Gamer:
ところで楽しむといえば,ゲームプレイ上,生産って必須だと思ったほうがいいんでしょうか。
永谷氏:
エリートスキルを習うときに生産アイテムが必要になりますので,ゲーム内でどうしても直面する問題にはなっていますが……。
4Gamer:
まあ,買えば済むという話もあるのですが……。
永谷氏:
そういう選択肢もありますので,現在のところでは絶対に必要というわけではありません。生産をもっと充実させていきたいというところでは開発と意見が一致していますので,今後は狩りやクエストに疲れたときに別の楽しみ方ができるコンテンツにしていきたいですね。
4Gamer:
それにしても生産はしんどそうな雰囲気がありますよね。
永谷氏:
どうしても生産は時間をかけさせるようになっていますから。ですので,ちゃんとそれに見合ったものが作れるようにしていきたいと思っています。
頻繁なフィーチャー追加で満足度を上げる――大規模なアップデートに向けて準備している状態です
4Gamer:
現時点で,レベルキャップまでクラスレベルを上げている人は多いんでしょうか。
永谷氏:
ゲームの性質上,レベルキャップまで到達しているお客様はそれほど珍しくありません。
4Gamer:
二つのクラスを揃えて上げている人が多いのでしょうか。
どちらかというと,ある程度の差を維持して上げているというスタイルが多いみたいですね。デュアルクラスを取得する段階でレベル10とレベル1ですから,そのときの差が影響しています。
4Gamer:
ゲーム内容は,フィールドはソロでもどんどん行けて,ダンジョンではパーティといった感じですよね。ところで,パーティプレイというのは,どれくらいやられているのでしょうか。
永谷氏:
パーティ募集はかなり頻繁に行われていて,すぐに埋まっているような状況で相当数の人が,そこに楽しみを感じているようです。
クエストなどは基本的にソロでもできるものが多く,ソロでクエストをしてストーリーを追っていけるのですが,なかにはどうしてもパーティでないと難しいクエストもあります。難度もかなりのものになっていますので,クリアできないこともあるようです。パーティクエストについては,しんどさよりも達成感を感じてもらっているようなので,バランスとしては,なかなかよいところに落ち着いているかと思っています。
4Gamer:
クエストだと繰り返し性はどうですか?
永谷氏:
クエスト自体は,そう何度もはできませんね。現状,パーティでクエストに挑戦して,そこからコミュニケーションが生まれてギルドに入っていったりといった流れができているようです。パーティでクエストをやって面白かったという印象を持った人は,そういった流れが続くようにプレイをしていますので,パーティで行くところがないという状況にはならないでしょう。
4Gamer:
明確に繰り返し性のあるコンテンツとしては,海外ではミニゲームが結構出ていているようですが。日本での導入はどうなっているのでしょうか。
開発側でも,普通の狩りやクエスト,ギルド活動,生産など以外にも一人で楽しんだり,数人で遊べる要素としてミニゲームを数多く用意したいといっておりまして,かなり力を入れて開発しているようですね。日本で追加できそうなものもいくつかありそうですので,時期を見ながらコンテンツを追加したいと思っています。
4Gamer:
なんか海外版で出ている画面を見ても,内容がよく分からないものが多いのですが。
永谷氏:
そうですね(笑)。本当にいろんな種類のゲームがあります。
現在実装されているピエロから始まるミニゲームなどは,1日1回限定ですが攻略法などを見つけながら結構楽しんでもらっているようです。
4Gamer:
そういえばギルドキャッスルって導入済でしたっけ?
永谷氏:
ええ,実装されています。ハードルは高いのですがそこそこの数のギルドがそこまで到達されていますね。ギルドキャッスルではレベルごとにできることが広がり,恩恵を受けられるようになります。ギルドクエストや建造物も多く追加実装されていますし,たどりつければまた楽しむ要素が増えますので,今後もっとアピールしていきたい部分です。
4Gamer:
いままでの話を聞く限り,GvGはしばらく先という感じですかね。
永谷氏:
はい。もう少し先になりそうです。今は先ほど述べたミニゲームであったり,植物を育てるようなコンテンツを入れていきながら,大規模なアップデートに向けて準備している状態です。
エルフの実装は着々と進行中――さらなる新種族も?
4Gamer:
大規模というと,エルフは年内と聞いていますが。進捗はいかががでしょうか。
現在はそこに向けて,大規模アップデートに合わせつつ,基礎的な部分の整備を行っているところです。エルフ導入の時点でマップも大きく拡大されますので,かなり楽しんでいただけるかと思っています。コンテンツとしてもエルフの追加というのは大きなものですので,できるだけいい形で実装したいですね。実装日が確定次第皆様にご報告します。
4Gamer:
エルフはエルフでちょっと危機感を持っているのですが……顔は大丈夫ですか?
永谷氏:
MysticStoneというゲームで,お客様から最も語られることの多い項目の一つがグラフィックスについてです。顔の好みについては,どうしても個人差がありますね。より日本人の好みに適したようなものを,あくまでも現在の雰囲気を壊さない程度で,ですが作ってもらっています。エルフ導入以降,ある程度そのあたりも出していけるようにしたいと思います。
しかし,ネタキャラとして作った顔でゲーム内に入ってみると,「意外とこれ好きかも」と感じる人もいるようで,自分ではありえないと思っていたようなキャラをゲーム内で見かけて,意外といいなと思ってしまったといった声もよく聞きます。
4Gamer:
髪型とかは,相当個性的なのが揃ってましたしね。
永谷氏:
そういったものを楽しんでもらうのもありでしょう。とはいっても日本人向けぽいものも必須ですので,随時実装していきたいところです。
4Gamer:
雰囲気としては,今後もっと種族が増えても不思議はないような感じなのですが。
永谷氏:
まだ詳しくは言えないのですが,ファンタジー系の別の種族などが今後追加されるかもしれません,とだけ言っておきます。
ストレスになる部分を,出来るだけなくしていきたい――徹底した不正対応と,お客様の心に耳を傾ける誠実な対応こそが,私たちの強みです
4Gamer:
話は変わりますが,サーバーの安定性などに不安を持っている人もいるようなのですが,そのあたりはどうでしょうか。
永谷氏:
これまでサーバーがダウンしたということは基本的にないのですが,クローズドβテストの最初はラグがひどかったですね。それも開発会社の協力で解決していきました。随時,開発と協議しながら改善していますが,そのへんのレスポンスも非常によくて,CBTのときは対応に少し時間が必要かなと思ったのですが,きわめて迅速に対応してもらえました。
4Gamer:
ときにAdd-Onやマクロについては,海外版では大きく扱われていますが,日本でもとくに禁止というわけではないんですよね。
永谷氏:
利用規約に抵触しない限りは使用してかまいません。海外で出回っているもののすべてが日本版で動くわけではありませんので,運営側としては保証しかねますが。
4Gamer:
自己責任でやれということですね。マクロなどは,今後どうなるのでしょうか。例えば,スキル名などは英語表記でないと登録できませんよね。今後,日本語表記に変わるのか,そうなると作り直さないといけなくなるのかなど,気にしている人もいると思うのですが。
永谷氏:
そのあたりはまだ未定です。マクロについては,日本ではまだ,こういうことができます,と大々的にはアナウンスしていないのですが,整備を進めていって,運営のほうで対応できると判断したらきちんと出していきたいと思います。Add-Onやマクロは,それも含めてMysticStoneのよさの一つだと思いますので,完全につぶしてしまうのももったいないと思っています。
4Gamer:
最後に4Gamer読者に何かお願いします。
永谷氏:
MysticStoneは,まだ生まれたてという感じなので,現在は育てることに注力している段階です。課金しなくても,かなりの装備強化が行えたりしますので,ぜひ多くの人に触ってみてほしいですね。それなりに複雑で奥が深く,延々やっていけるゲームであるというのを伝えていくのがいまはいちばんかなと思っています。
とにかく,いまある不具合対応を含めて,なるべく遊びやすい環境にしていきます。
4Gamer:
できれば自動移動もなんらかの修正を……。
自動移動の精度も,初期に比べると大分よくなりました。ストレスになる部分を極力省いていくというのが,当面の基本方針ですし,自動移動についても,賢く動けば非常によい機能なので,なんとかよりいいものにしていきたいですね。
そういったものも含め,開発側も非常に積極的なので助かっています。テストの段階から新しいものが増えていくのを見ていると,開発スピードが非常に速いですね。
それと,エルフは音楽を含めていい感じで作り込まれています。詳細はまだお伝えできませんが,ぜひご期待ください。
また運営面では徹底した不正対応と,お客様の心に耳を傾ける誠実な対応こそが,私たちAeria Gamesの強みでもあり,現状に満足することなく運営対処能力をこれからさらに高めていけるよう,努力していきますので,これからもMysticStoneをよろしくお願いいたします。
4Gamer:
楽しみにしています。本日はありがとうございました。
読者の評価を見る限り,アエリアは「運営の良さ」で選ばれている希有なオンラインゲーム運営会社である。そんなものの存在は,もしかしたら,去年までだと笑い話扱いされていたかもしれない。狙われにくい比較的マイナーなタイトルを扱っていることもあるのだろうが,BotやRMT業者対策では,ただならぬ定評がある。なんでも,GMを呼ぶには「RMT」と打ち込むのが一番早いと噂されるほどだ。
また,選んでくるゲームもちょっと毛色が変わっている。MysticStoneは,台湾生まれのドイツ育ち。生い立ちのとおり,洋ゲーMMORPGとアジアンMMORPGをミックスさせた風味のゲームとなっている。それぞれよい点と悪い点とがあるのだが,二つの要素は相互に補完しあって,うまく弱点を打ち消しているように思われる。
なにぶん,Runewalkerの初作品,かつドイツでも数か月先行しているだけという状況では万全の完成度というわけにはいかない。完成度が低い部分や情報量の足らない部分は明確にあるにも関わらず,対応の早さでまた運営の評価を上げているような状況だ。
インタビューからも読み取れるように「プレイヤーのストレスをなくす」という一貫した方針は非常に好ましいように思える。やや荒削りな点も残っているタイトルだが,日本の状況にあわせた変更も行われており,開発元もブラッシュアップには積極的なようなのも幸運といえるだろう。日本ではなかなか根付かなかった洋ゲーMMORPGが,これを機会に花開くことを願いたい。
「MysticStone -Runes of Magic-」公式サイト
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