ASUSTeK Computer(以下,ASUS)は,世界で初めてグラフィックスメモリのレイテンシ設定変更をサポートしたという多機能モデル
「MATRIX GTX285/HTDI/1GD3」,同社独自のリアルタイム画質向上機能
「Splendid」の最新世代
「Splendid Plus」をサポートした
「Bravo 9500」,2枚のグラフィックスカードをCOMPUTEX TAIPEI 2009で公開した。
●MATRIX GTX285/HTDI/1GD3
ハードコアゲーマー向けと位置づけられるMATRIXシリーズの最新モデルが,「GeForce GTX 285」を搭載するMATRIX GTX285/HTDI/1GD3だ。同社が展開するゲーマー&オーバークロッカー向け製品ブランド
「ROG」のロゴマークがあしらわれていることから想像できるとおり,オーバークロック周りの機能が充実した製品に仕上がっている。
MATRIX GTX285/HTDI/1GD3
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最大の特徴は,冒頭でも紹介したように,同社が世界初とアピールする,
グラフィックスメモリのレイテンシ調整機能を搭載することだ。MATRIXシリーズに対応したオーバークロック用ソフトウェア「OC Tracker 2」から,PCのメインメモリよろしく,CASレイテンシをはじめとする,計14項目を設定できる。
OC Tracker 2。GPUやグラフィックスメモリの動作クロックや動作電圧,ファン回転数をプロファイルとして複数設定し,切り替える機能を持つが,それだけに留まらず,世界で初めて,メモリタイミング設定をサポートするに至ったという
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ASUSでグラフィックスカードのプロダクトマネージャーを務めるMichelle Chen(ミシェル・チェン)氏によると,オーバークロック設定は保証の範囲外となるが,ユーザーの利便性向上を図るべく,設定項目の解説などをまとめたオンラインマニュアルを,ドライバCD-ROMに同梱するという。
MATRIX GTX285/HTDI/1GD3の動作クロックは,あくまでリファレンスどおり。ユーザー側の対応が前提というわけである
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また,詳細なオーバークロック設定は,危険とも隣り合わせだが,この懸念に対して本製品は
「VBIOS Recovering」という機能を,回答として用意。I/Oインタフェースに用意された[Safe Mode]ボタンを押すことで,不測の事態が生じたときには,グラフィックスカード上のBIOS(=VBIOS)設定を初期化できるとのこと。併せて,極限のオーバークロック設定時にも安定した電力供給を行うべく,ROGマザーボードでおなじみの富士通製の機能性高分子ML-3キャパシタを搭載するのもトピックだ。
I/Oインタフェース部にある「Safe Mode」と書かれたボタンが,VBIOS初期化用だ |
カード背面,ちょうどGPUの裏側に,機能性高分子ML-3キャパシタを搭載している |
GPUクーラーが採用するヒートパイプを8mm径とすることで,冷却能力も向上したと謳われる
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もう一つの大きな特徴は,同社のNetbook「Eee PC」でおなじみの省電力技術,
「Super Hybrid Engine」を採用する点にある。
MATRIX GTX285/HTDI/1GD3において,Super Hybrid Engineは,負荷状況に応じた電源フェーズ数の自動調整機能として実装されており,オーバークロック設定時(≒高負荷時)の動作安定性を向上させるという。
MATRIX GTX285/HTDI/1GD3でSuper Hybrid Engineを実現する,ハードウェアモニタ(左)と,カード背面のフェーズ数コントローラ(右の写真で中央より少し下)
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オーバークロック機能とSuper Hybrid Engineの両方に関連して,カード側面の膨らんだ部分にはLEDが埋め込まれており,カードの負荷状況に応じて色が変わることで,インジケータとして機能する
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Chen氏によると,MATRIX GTX285/HTDI/1GD3は「価格は未定だが,すごく高い(笑)」。日本で発売されるかどうかは分からないとしつつ,カードの量産自体は2009年6月末にも始まる予定とのことだった。
●Bravo 9500
Bravo 9500は,「GeForce 9500 GT」を搭載し,ゲーマーではなく,映画やテレビを好んで観る層に対して訴求される,Low Profile対応のグラフィックスカード。それだけなら,GPUのスペック的に,4Gamer読者の興味はあまり引かないだろうが,そんなBravo 9500を特徴付けているのが,冒頭でその名を挙げたSplendid Plusのサポートである。
DVI-I,HDMI,D-Sub 15ピンインタフェースを持つBravo 9500
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環境光センサー内蔵のリモコンレシーバ(上)とリモコン(下)。リモコンはよくある安価なそれで,特筆すべき部分はとくにない
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Splendid Plusは,「Splendidの機能はそのままに,環境光に合わせたディスプレイの輝度&コントラスト調整機能を新たに追加したもの」(Chen氏)。Bravo 9500には,ワイヤレスリモコンとUSB接続のレシーバユニットが付属するが,このレシーバユニットに
環境光センサーが内蔵されており,カードとセンサーが連動することで,部屋の明るさに応じた,適切な輝度とコントラスト設定を実現するという。
Splendidはそもそも,PCでテレビ並みの画質クオリティを目指すべく開発された技術なので,最近の高解像度テレビで採用例が広がっている輝度&コントラスト自動調整機能を搭載してきたというのは,ある意味自然な流れかもしれない。
ASUSブースの照明環境で表示させた画面(左)と,レシーバユニットの環境光センサーを覆ったときの画面(右)。雲や夕焼けの表現がずいぶんと変わっているが,明るさを調整すると,リアルタイムで補正される
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Bravo 9500には,専用のメディアセンターUI「Bravo Media Center」が付属。写真でぼんやりと青く光ったように見える部分の範囲が,明るさに応じて自動調節されるギミック付きだが,基本的にはよくあるUIだ
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なお,Bravo 9500は,Cyberlink製のソフトウェアにより,ビデオトランスコードのCUDAアクセラレーションも実現するとのこと。さすがにGeForce 9500 GT搭載だと,すべてのゲーマーへ力強く勧めるわけにはいかない印象を拭えないが,「例えば省電力版『GeForce 9600 GT』や『GeForce 9800 GT』を搭載し,『ビデオも楽しみたいゲーマー』に向けた製品を投入する予定はないのか?」と尋ねたところ,Chen氏からは「Bravo 9500は,シリーズのスタートを切る製品だ。上位モデルのGPUを搭載した製品が登場する可能性はある」との答えが得られた点は,特筆しておきたい。Splendid Plusが気になる人は,頭の片隅でほんのり期待しておくといいかも。