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[GDC 2009#15]レベルファイブ流ヒットの法則! 売れるゲームはこうして作られる
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印刷2009/03/27 16:40

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[GDC 2009#15]レベルファイブ流ヒットの法則! 売れるゲームはこうして作られる

レベルファイブ代表取締役 日野晃博氏
画像集#001のサムネイル/[GDC 2009#15]レベルファイブ流ヒットの法則! 売れるゲームはこうして作られる
 レイトン教授シリーズで知られるレベルファイブは,「ドラゴンクエストVIII」の開発元でもある。1998年にデベロッパとしてスタートした同社は,ドラクエ8でその地位を確立したあと,2007年には「レイトン教授と不思議な町」でパブリッシングにも乗り出し,現在に至っている。
 そんなレベルファイブの代表取締役 日野晃博氏によるレクチャー「Level 5's Techniques to Producing a Hit game」(ヒットゲームを生むレベルファイブのテクニック)が,GDC09において行なわれた。

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 最初に日野氏は自社の歴史を振り返り,これまでに開発したタイトルの販売本数を発表。一部は事情により非公開としながらも,いずれも良い成果をあげており,トータルで1291万本以上のセールスを記録していると述べた。日本,北米,欧州の3地域で発売したタイトルの平均出荷本数は184万4400本,1地域のみで発売したタイトルの平均は61万4800本とのことだ。日野氏は自社を「イチローのようなアベレージヒッター」に例え,ホームランは打たないが確実に売る会社であると説明した。
 日野氏はGDCにスピーカーとして初めて参加するにあたり,ゲームの作り方などはほかのデベロッパが語っているため,それとは異なる視点でレクチャーを行うことに決めたと語った。

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 そんなレベルファイブが考える,ヒット作を生み出す方法として提示されたのが,「キャッチコピープランニング」「ブームトリガー」の二つである。
 キャッチコピープランニングとは,ゲームの企画段階からキャッチコピーにしやすいウリを用意するということだ。「レイトン教授と不思議な町」については,「頭の体操」で知られる多湖 輝氏による監修や,大泉 洋さん,堀北真希さんといった有名俳優を声優として起用したことなどが紹介された。
 また,当時のニンテンドーDS用ゲームにはあまりムービーが使われていなかっただけに,クオリティの高いムービーの存在が際立ったのだという。

日野氏が提示した「キャッチコピープランニング」「ブームトリガー」の二つの手法。ちなみにキャッチコピーは和製英語なので,「Buzzword」という訳が添えられていた
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 また「イナズマイレブン」では,現実ではありえないド派手な必殺技,収集可能な1000人以上のキャラクター,そしてアニメや漫画とのクロスメディア展開を企画段階で考え,ゲームのウリにした。8歳から11歳くらいの男の子をメインターゲットにすえてプロモーションを展開し,34万2000本という売り上げを達成。この数字自体はレベルファイブの平均本数に劣るものの,日野氏によれば,発売から半年以上が経った現在でも毎週5000本以上売れているというから驚きだ。続編「イナズマイレブン2 脅威の侵略者」は,「50万本とか100万本という夢のある数字を達成できるかもしれない」と日野氏は語っていた。

 レベルファイブの創立10周年記念タイトルとして,2009年内の発売が予定されている「二ノ国」は,ゲーム内のムービーをスタジオジブリが担当するという,とてつもなく大きなウリがある。もちろん,ほかにもウリとなる要素はあるようだが,これだけでもプロモーション効果は抜群だ。
 ちなみに,講演の最後にプロモーションムービーが公開されたのだが,残念ながら撮影は不可。ジブリらしさにあふれたアニメーションで,どんなゲームに仕上がるか,とても気になる内容だったことはお伝えしておこう。

「二ノ国」の資料。プロモーションにはあまり困らないタイトルといえそうだ
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 もう一方のブームトリガーとは,ゲームの中に盛り込まれた,ブームを起こす“しかけ”のことである。ブームは基本的に口コミで発生する可能性が高いため,プレイヤーがほかの人と情報交換できる要素を用意することが重要なのだという。
 また,どんなに面白いゲームでも,3日でクリアされてしまっては,プレイヤー間で情報交換するきっかけすら与えられない。したがって,ある程度長いあいだ遊べる要素を用意することも,ブームを起こすには肝心とのことだ。

 レイトン教授シリーズでは,解けない謎があった場合,ほかの人に解いてもらう,または自分が解いた謎に挑ませるといったことで,コミュニケーションが生まれる。また,サブゲームを集めるという時間のかかる要素も用意されている。
 イナズマイレブンでは,キャラクターの入手方法を教え合ったり,対戦プレイなどを行なったりして,ほかのプレイヤーと交流することになるという。それに加え,1000人以上用意されているキャラクターを集めるというやり込み要素もある。
 「レイトン教授と不思議な町」は,発売初週の出荷本数が12万800本で,爆発的な売れ行きとまではいかなかったものの,口コミで噂が広まり,結局93万6000本というヒット作になった。イナズマイレブンは前述したように,発売から半年以上経った現在も毎週5000本以上売れており,日野氏のいうブームトリガーが機能しているといえそうだ。

※画面写真は「レイトン教授と最後の時間旅行」のものです
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 日野氏は,作品の成功では,「お金を儲けたということ以上に,大勢の人に遊んでもらえた」という喜びのほうが大きいという。ゲーム開発者には,「売れる要素を用意する」ということに対してあまりいい印象を持たないタイプの人もいるが,遊んでもらって初めてゲームとして成立する以上,売るための仕掛けを用意するのは重要なことだと日野氏は語っていた。
 最後に日野氏は謙遜しつつも,「面白いのに売れないゲームという悲しいモノを生み出さないために,しっかりと売ることを考えながら開発してほしい」と述べ,講演を締めくくった。

 確かに,これまで遊んだゲームを振り返ってみると,自分は面白いと思ったのに,さほどのセールスは記録しなかったというタイトルがある。そういったゲームには,今回の公演で日野氏が説明した,キャッチコピープランニング,もしくはブームトリガーが欠けていたのかもしれない。

 「プロモーション効果の高い要素をゲームの企画段階から用意する」と,口に出して言うのは簡単だ。しかし実際には,広報サイドの言い分すべてをゲームに反映することは難しく,開発サイドと揉めることも多いのではないかと思う。
 そのあたりのバランスの取り方は,デベロッパとパブリッシャを兼ねているレベルファイブならではといったところなのだろう。

 次にレベルファイブがゲームを発表したとき,今回の講演を思い出すと,そのゲームの違った側面が見えてくるかもしれない。
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